劇団☆新感線2012年春興行 いのうえ歌舞伎「シレンとラギ」
6/19(火)マチネ 青山劇場1階B列上手
【 作 】中島かずき
【演出】いのうえひでのり
【出演】藤原竜也 / 永作博美 / 高橋克実 / 三宅弘城 / 北村有起哉 / 石橋杏奈
橋本じゅん / 高田聖子 / 粟根まこと / 古田新太 ほか
新感線舞台、やっぱりこのワクワク感は他では味わえない。
幕開けのジューダスと発車ベルを聴くときの高揚感。
クライマックスで主要人物が勢ぞろいするときの充実感。
今回の作品も、テーマパークに来たときのような楽しさがありました。
産みの母と交わり、父親に刃を向ける息子。
作品のテーマ自体は、暗くタブーな領域に踏み込んでいます。
ギリシア悲劇「オイディプス王」に由来する(ということを後から知った)重い主題が柱とになり、
北と南の対立、空から降り注ぐ毒、裏切りと寝返り、
今私たちがいる実世界が抱える問題を透かしているのだと思いますが、
私はそれほど「現世」との繋がりは感じませんでした。
というより、むしろ、いのうえさんの「ドロドロの恋愛劇に挑戦します」との言葉通りの、
狂おしいような愛憎の感情を受け取りました。
途中から「…かも?」という伏線ぽい台詞がある程度の展開を予想させますが、
「決して抱いてはいけない人を抱いてしまった」という真相が、
一幕クライマックスで明かされるとき、私も絶望の淵に立たされました。
もう心は藤原竜也くんと一心同体(笑)
一幕終わりの、ラギが全ての真実を知ったときの絶叫。
そしてラストで「愛は殺し合いだ」とシレンと刀を交えるときの、包み込むような眼差し。
何度もエロい場面が出てきますが、もう胸をかきむしられるようでした。
藤原竜也くん、やはり素晴らしい役者です。
受けてたつシレン役の永作さんも、潔く凛としていて、台詞の響きがよかったです。
ただ大阪公演から「回りまわって辿りついた」という感のある役作りなのでしょうが、
「母性」のようなものが感じられなかったのが、私からすると物足りなかったかな。
この役にそれは必要ないという解釈なのかもしれないけれど。
そして特筆すべきは高橋克実(あえて呼び捨て)!
教祖としてカリスマたるところ、無能であるところ、目覚めて悪の権化と化するところ、
その落差のつけ方にもうひれ伏してしまいました…
何層もの「内面」を次々に暴露しては変化する古田さん、今回はあまり暴走しないのかな。
その分、他の劇団員が思い切りオチャラけているのが楽しかった。
劇団員の役割が固定化してきたところ(粟根さん=小悪党、みたいな図式)は
むしろ「冗長な説明が不要」ということで受け取るべきなのでしょうか。
伏線が張り巡らされ、大勢の役に何層もの物語を仕込む脚本なので、
一度観ただけでは、細かいところまでは理解できません。
シレンの目線とラギの目線でそれぞれの物語を観たかったな。(資金力不足)
ゲキシネを期待しよう…
ともかく。
他のエンタメ系芝居が「なんちゃって新感線」と揶揄される理由を、改めて痛感しました。
他の作品が目指しているかいないかに関係なく、やはりここはエンタメ系作品の頂点です。
私たちは毎回高いチケ代を払っている。
代償として3時間余りの舞台を観ても、観終わった後は跡形も残らない。
でも隅々まで「あー面白かった!」と言える魅力を、この劇団は確実に持っています。
衣装の素晴らしさ(豪華という意味ではなくても)、照明や音楽や装置のクオリティ、
アクションと殺陣を交え、3時間の長丁場でひとときも退屈させない芝居運び。
「常連」をいつまでも引きとめる奥の深さ。
最近は、劇団員の高齢化(笑)が進みつつあり「勢い」は弱くなった気もしますが、
それを「スケール」で補い、いつまでも膨らみ続けます。
期待したものを、期待通りに投げてくれるこの確かさ。
次回作もよろしくお願いします!
6/19(火)マチネ 青山劇場1階B列上手
【 作 】中島かずき
【演出】いのうえひでのり
【出演】藤原竜也 / 永作博美 / 高橋克実 / 三宅弘城 / 北村有起哉 / 石橋杏奈
橋本じゅん / 高田聖子 / 粟根まこと / 古田新太 ほか
新感線舞台、やっぱりこのワクワク感は他では味わえない。
幕開けのジューダスと発車ベルを聴くときの高揚感。
クライマックスで主要人物が勢ぞろいするときの充実感。
今回の作品も、テーマパークに来たときのような楽しさがありました。
産みの母と交わり、父親に刃を向ける息子。
作品のテーマ自体は、暗くタブーな領域に踏み込んでいます。
ギリシア悲劇「オイディプス王」に由来する(ということを後から知った)重い主題が柱とになり、
北と南の対立、空から降り注ぐ毒、裏切りと寝返り、
今私たちがいる実世界が抱える問題を透かしているのだと思いますが、
私はそれほど「現世」との繋がりは感じませんでした。
というより、むしろ、いのうえさんの「ドロドロの恋愛劇に挑戦します」との言葉通りの、
狂おしいような愛憎の感情を受け取りました。
途中から「…かも?」という伏線ぽい台詞がある程度の展開を予想させますが、
「決して抱いてはいけない人を抱いてしまった」という真相が、
一幕クライマックスで明かされるとき、私も絶望の淵に立たされました。
もう心は藤原竜也くんと一心同体(笑)
一幕終わりの、ラギが全ての真実を知ったときの絶叫。
そしてラストで「愛は殺し合いだ」とシレンと刀を交えるときの、包み込むような眼差し。
何度もエロい場面が出てきますが、もう胸をかきむしられるようでした。
藤原竜也くん、やはり素晴らしい役者です。
受けてたつシレン役の永作さんも、潔く凛としていて、台詞の響きがよかったです。
ただ大阪公演から「回りまわって辿りついた」という感のある役作りなのでしょうが、
「母性」のようなものが感じられなかったのが、私からすると物足りなかったかな。
この役にそれは必要ないという解釈なのかもしれないけれど。
そして特筆すべきは高橋克実(あえて呼び捨て)!
教祖としてカリスマたるところ、無能であるところ、目覚めて悪の権化と化するところ、
その落差のつけ方にもうひれ伏してしまいました…
何層もの「内面」を次々に暴露しては変化する古田さん、今回はあまり暴走しないのかな。
その分、他の劇団員が思い切りオチャラけているのが楽しかった。
劇団員の役割が固定化してきたところ(粟根さん=小悪党、みたいな図式)は
むしろ「冗長な説明が不要」ということで受け取るべきなのでしょうか。
伏線が張り巡らされ、大勢の役に何層もの物語を仕込む脚本なので、
一度観ただけでは、細かいところまでは理解できません。
シレンの目線とラギの目線でそれぞれの物語を観たかったな。(資金力不足)
ゲキシネを期待しよう…
ともかく。
他のエンタメ系芝居が「なんちゃって新感線」と揶揄される理由を、改めて痛感しました。
他の作品が目指しているかいないかに関係なく、やはりここはエンタメ系作品の頂点です。
私たちは毎回高いチケ代を払っている。
代償として3時間余りの舞台を観ても、観終わった後は跡形も残らない。
でも隅々まで「あー面白かった!」と言える魅力を、この劇団は確実に持っています。
衣装の素晴らしさ(豪華という意味ではなくても)、照明や音楽や装置のクオリティ、
アクションと殺陣を交え、3時間の長丁場でひとときも退屈させない芝居運び。
「常連」をいつまでも引きとめる奥の深さ。
最近は、劇団員の高齢化(笑)が進みつつあり「勢い」は弱くなった気もしますが、
それを「スケール」で補い、いつまでも膨らみ続けます。
期待したものを、期待通りに投げてくれるこの確かさ。
次回作もよろしくお願いします!