ミュージカル「100万回生きたねこ」
1/23(水)マチネ 東京芸術劇場プレイハウス 1階I列センター
【原作】佐野洋子「100万回生きたねこ」(講談社刊)中島かずき
【演出・振付・美術】インバル・ピント、アブシャロム・ポラック
【脚本】糸井幸之介、戌井昭人、中屋敷法仁(50音順)
【音楽】ロケット・マツ、阿部海太郎
【出演】森山未來 / 満島ひかり / 田口浩正 / 今井朋彦 / 石井正則 / 大貫勇輔 / 銀粉蝶 / 藤木孝 ほか
ミュージカルとわざわざ冠つけているんだから
「歌で話が進むもの」と思っていたら、全く違ってました。
歌ではなく、ダンスとパントマイムのような身体表現で多くが語られます。
そのダンスも、「華麗な」「かっこいい」動きではなく、なんとも不思議なモチーフが繰り返される。
舞台装置も不思議でした。
プレイハウスの舞台ってこんなに奥行きがあったっけ?と錯覚するような
奥行きが強調されたシンプルな部屋のセット(実際に錯覚を狙っているのかも)。
でも天井に、壁に、床に、ベッドの下に、そこかしこに穴があいていて
ねこや泥棒がするりと出てきたりいつの間にか消えてしまったり。
しかけ満載のオモチャ箱みたい。
ストーリィは原作を忠実に表現していて、一場面一場面がまるで絵本のようですが、
台詞の言葉遊びがリリカルでした。
特に二幕、白ねこと愛を育むシーンは「しりとり」で台詞が綴られる。
その動きと言葉選びの美しさ。
演出家のお二人のうち女性の方は、イスラエルのダンサー出身だとか。
独特の世界感が、衣装やメイクにも表れていました。王様の衣装が秀逸。
歌われる歌もひっくるめて「どこか寂しい」んだよね。
暖房をつけないままで過ごす冬の夕方のような印象です。
未來くんの飄々として風来坊なねこ、動きがしなやかで見事だったけれど、
銀粉蝶さん演じる老婆のかぼそい声に泣かされました。
実は。
このところ公私ともに忙しく、
というか諸々が自分のキャパをめいっぱい超えてしまっていて。
このチケットは去年の夏に勢いに任せて買っていたので、
「どんな作品かわからないしミュージカルの小品なら観なくてもいいかも」と
自分の中で期待値が低くなり、嫁ぎ先を探しかけてもおりました。
でもでも、本当に観てよかった。
「今まで全く見たことがないテイストの作品」に出会い、
それが自分の好みにガコッと嵌る機会はなかなか訪れません。
こういうことがあるから、細々とでもチラシをチェックしてチケ手配をしていかないとね。
中身が乏しいお財布と相談しながらだけど…
そうそう、原作の絵本「100万回生きたねこ」ですが。
私が出産したときに、何人もの友人が「この本プレゼントするね」と言ってくれました。
「子供に読んであげてもいいし、大人が読んでも感動するから」って。
きっと子供のいるおうちには「一家に一冊」なんだろうな。
もちろん我が家の本棚にもあります。
まだ少女だった私に、母親が初版本を買ってくれていました。
永遠に読み継がれる絵本ですよね。