それはまた別のお話

観劇とか映画とかの感想文を少しずつ

「怪物」

2023-06-16 | 映画
チマタの噂に従って事前情報をほとんど入れずに鑑賞。
予告編だけは見ていたので、ぼんやりとモンペの話かなと思っていた。

「思ってたんとなんか違う」と感じはじめたのは、最初に母親が学校に乗り込む場面。
いくら何でもそこまでしないよね?という違和感が可笑しさに代わってきて、まるでコント番組のよう。
実際映画館も笑い声が起きてたし。

おかげで、以降は感情移入せずにフラットな見方ができた。
人は見たいものを見たいようにしか見ることができない。
忘れてしまいたいことは「なかったこと」にする。
出来事は自分の都合のよいように誇張して記憶され、それをまるで真実のように語ってしまう。
私も男の子の母親だから、実際に経験したら同じように怒り狂うと思うけど。

画面の隅々に仕込まれた情報量が多くて目が忙しかった。
かかとを踏んだまま履いた靴。
いつも消しゴムをガシガシこすっている男子。
交わされる会話の後ろで手を洗っている女子。
組体操の練習で教師が何気なく口にする言葉。
時系列の並びがくっきり表現されることはないけど、展開が読めないからこそ集中して観ることができた。

「怪物ゲーム」は自分の頭にかざしたカードのキャラクターを当てっこするゲームだけど、必勝法は「どんな質問をすれば相手からキーワードを引き出せるか」を考えること=自分がどう相手に見えているかを想像すること。
こんなゲームが楽しめる子供たちには、明るい未来が待っていると信じたい。
ラストの解放感は、決して悲劇ではないことを示していると私は感じました。
とにかく「すごい映画」としか言えないので、事前情報や他人の感想は一切触れずに見てほしいです。
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「渇水」

2023-06-08 | 映画
「湯道」で銭湯を継ぐの継がないのでバシャバシャしていた生田斗真くん、今度は水が渇くのか…とかなりの期待。
観たあともいろいろ考えさせられる作品でした。

ただ、ネグレクトされた姉妹があまりにも不憫で、どうしてもそちらに引っ張られてしまう。
今なら児相に即刻通報だろうに誰も動かない違和感。
原作は30年前の出版だそうで、あの時代ならそれこそ「誰も知らない」ことになるのかも?
30年前の設定なら喫煙シーンの多さも納得か(あれ?スマホは出てきたよね)。

岩切は妻と上手くいかず家族の問題を抱えている上、決して幸せとは言えない家庭で育った過去を持っていて…そのことを貧困にあえぐ姉妹と重ねて表現したかったのがテーマなのかな。
生死に関わる貧困問題と私的な家庭不和では問題の大きさがアンバランスで、しかも家庭不和に至る原因を深く描いてないのでこれも違和感が残った。

ラストの「流れを変えるためのテロ」、ここはすごく気持ちよかった。
そこまでのザラザラして乾ききった質感の映像が、怒涛の水流で押し流されるような。
あとみんな大好き磯村勇斗、「どこにでもいそうな後輩」感が見事でした。
今上映している全ての邦画に出てるんじゃない?
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「THE FIRST SLAM DUNK」

2023-05-18 | 映画
湘南住みなので、いろんな人から驚かれた。
「えー、まだスラムダンクの映画観てないのぉ?」
そう言われる度に、映画館に行く気が失せた。
だって、バスケ好きってわけじゃないし…
原作漫画も昔ちょっと読んだだけで覚えてないし…
江ノ電のあの踏切も最近は人が多過ぎて、地元民としてはちょっとねぇ…
でも溜まったポイント使って無料でこっそり観てもいいかも…

という私にピッタリな映画だった。
途中まで花道も流川も三井もわからなかったけど、
夢中になって彼らを応援してた。
映画を観ながら文字通り「手に汗握る」って体験を初めて味わった。
キャラの一人一人に奥深い背景があるだろうし、
観る人が観ればいくつもの伏線を見つけられるだろうけど、
知識ゼロでもバスケ嫌いでも十分感動できるようになっていた。

前にみた「BLUE GIANT」もそうだけど、
アニメならではの表現の素晴らしさが究極だった…
これこそ映画館で体験すべき作品。
応援上映に参加したい気持ちがいまMAXです。
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「シング・フォー・ミー ライル」

2023-03-24 | 映画
正しいファミリー映画であり正しいミュージカル映画でした。

子供から大人まで楽しめるし、物語はひねりのない王道で、ズートピアのように現代社会の問題点を突くわけでもないし、難しく考えず気持ちよい読後感を得られます。
ひとりひとりにフルコーラスのソロ曲があって、ダンスも歌も完成度が高い。
突然歌いだすっていうミュージカルあるあるも随所に見られるし、若干ゴーインに進むのもお約束。
ライルの表情や動きも可愛かったです。

吹替版で鑑賞しましたが、言われなければ大泉洋とはわからないんじゃないかな。
オリジナルのショーン・メンデスの歌も予告で聴いたけど、声質が近いので途中原語から日本語にチェンジする歌も違和感ありませんでした。
ただ…「歌声だけで聴衆を総立ちにさせる」という説得力は、歌が上手いとか練習を重ねたというだけでは持ちえない、技術を要するものだと思うんですよね。
その意味で「やっぱりプロのミュージカル俳優のほうが良かったかも」と途中までは思ってました。
でもそんなケチな感想も最後の法廷の場面でオチがつくんだけどね!
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「BLUE GIANT」

2023-03-11 | 映画
久々に映画館で「音楽になぎ倒される」感覚を味わいました。
漫画が原作であることさえ知らずなんとなくタイトルに魅かれて観ただけなのに、得難い体験ができてよかったです。

ライブパートのCGに違和感持つ人が多いようだけど、わたしはこの映画の真髄だと思っています。
楽器から放たれる眩い光線、うねる風景、アニメでなければ見られない表現が実に多彩で面白かった。
ほかの2D場面がすっごい地味だったのは落差を狙ったのかな…

ストーリーもど真ん中青春根性モノで、気持ちよいほど予想したように進む。
主人公3人のキャラがわかりやすいことに加えて周りにいろんな大人が出てくるのも魅力。
力を貸す大人、そっと見守る大人、正面から諭す大人、見下す大人…
でもみんな音楽が、JAZZが大好きなんだよ!

映画館はおひとり様の男性9割でちょっとアウエーだったけど、隣席のオジサマが観終わったあとそっと涙を拭いていたのがなんか嬉しかったなぁ。
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