ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ2015 in 福島
「中川晃教による中高生のためのミュージカル・ワークショップ」10/31(土) 11:00~
あっきーの福島ワークショップを見学してきました。雑多ですが、簡単にご報告したいと思います。
トークショー書き起こしなどとは勝手が違って、動作が中心の「授業」を文章にするのが大変難しく、取り違いや思い込みが多くあると思われます。雰囲気だけでもわかっていただければ幸いです。
■ ルツェルン・フェスティバル・アーク・ノヴァとは?
音楽を通して東日本大震災からの復興を支援しようと、世界的に有名なスイスのルツェルン・フェスティバルの働きかけで、 高さ18メートル、幅30メートル、長さ36メートルの可動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」(ラテン語で新しい方舟の意)が誕生しました。
2014年1月20日に世界中の音楽ファンに惜しまれながら逝去したルツェルン祝祭管弦楽団芸術監督のクラウディオ・アバド氏の想いを受け継ぎ、アーク・ノヴァが東北地域の文化振興のシンボルとなる事を祈り、2015年はルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァが福島で開催されます。
(公式サイトより)
会場の花水坂駅までは、福島駅から私鉄に乗り20分。広場に設置された可動式ホールは、本当に船のように見えます。
横からみると、実は大きく陥没しているのがわかります。
常に空気を送っている。原理的には東京ドームみたいなんだろうか。
地元の名産品を販売していて試食もできました。いかニンジンが美味でした!
重しの石の下のあっきーチラシ…
■ ワークショップ開始
舞台はこんな感じです。
ワークショップに参加する学生さんは十数名。同じ制服を着た女子高生が目立ちましたが、
その中になんだか派手なTシャツを着た若者がウロウロしている。
…ん?参加者かな、それともお友達を見に来たのかな…と思ったら、あっきーだった!
(当日の様子は公式FBにてアップされています。 →
ここ)
この日のあっきーのお洋服は、
刺繍つきTシャツ + ベルト・ポケット・ボタン付き黒ベスト + 黒ハーフパンツ(上半身は上記FB参照)
これに、「Song Writers」でピーターが履いていたような派手色ソックスにスニーカー。
「半袖でも寒くないもん!」という気合が感じられました。
■ まずは発声練習から
「おっはようごっざいます~!」とピアノを弾きながらご挨拶。
「ぼくのことは中川さんでもあっきーでもいいけれど名前覚えてくださいね」との気さくな言葉に続き、生徒さんも自己紹介をしていきます。
「おはよう!」というフレーズで音楽の授業(というか合唱部部活)のようにしばらく発声練習をしますが、
先生はここでバランスボールを持ち出し、その上に座って跳ねてみせます。
「こんな風にオレの真似しながら歌ってみてね!」やだ~カワイイじゃないの
ハーフパンツでボールの上でボヨンボヨンするあなたの年齢はひょっとして三十…(以下自粛)
この発声練習には結構な時間をかけていましたが、とても興味深くて見ていて飽きなかったです。
ことばを変えリズムを変え、体を左右に揺らす、腰を振る、つま先で床を鳴らす。
「頭で考える前に体を一緒に動かす」ことが目的。
■ 「今日の朝起きてからやったこと」を歌にする
丸く輪になってボールを投げ合い、受け取った人が「今朝食べたもの」を言うゲームから始めます。
一人がボール受け取って「パン!」→ 次の人に投げて受け取った人が「たまご!」…という具合。
ここで「ラジウム」という言葉が出てなんのことかさっぱりわからなかったけど、「ラジウム卵」のことなのね。
飯坂温泉の名物だそうで、会場外で試食販売もしてました。
このときのルールは、受け取ったらすぐに言うこと、投げる相手の目を見ること、どんどん早くしていくこと。
これを繰り返していくうちに、ボールを投げ合いながらの「会話」になっていく。
「猫を見た」→「可愛かった」→「私は犬のほうが好き」…とかね。
お年頃の女子高生はいわゆる「箸が転がっても笑う」世代なので、途中で笑いすぎてボールが止まってしまうことも。
あっきー先生、そんなときも微笑みながら次の言葉が出てくるまでじっと待っていてくれる。
最初は緊張していた生徒さんたちも、徐々にリラックスしてきて体の動きが大きくなっていくのがよくわかりました。
「じゃあ今度は好きなメロディに載せて、食べたものを歌ってみて」
おお!だんだんミュージカルぽくなってきた。
実は予め、「今日の朝からの出来事をメモに書いておく」という準備作業を生徒さんたちに指示してました。
このメモを見ながら、あっきー先生と生徒さんがそれぞれの朝の行動を歌で繋いでいきます。
何気ない朝の出来事がだんだんメロディに乗っていく過程がとても面白かった。
客席から自然に拍手も出てきました。
■ 「Ease On Down The Road」を歌ってみよう
ミュージカルを観たことある人はいる?の問いかけに上がる手はまばら。
「ミュージカルって普通に話していたらいきなり歌うから変な感じだよね。でもね、
例えば『Over The Rainbow』を、朝忙しくて時間がないときに歌うとこんな感じになっちゃう。
(ここで歯磨きやうがいや着替えをしながらの『Over The Rainbow』特急版を披露。爆笑)
芝居と歌が繋がっている。
リズムが自分の中にあれば、今の気持ちをどうにでも表現できる」
カラオケで「Ease On Down The Road」の伴奏が流されます。
こんな歌です、と先生が見本で本気の歌唱。ノリノリ。(これカラオケ屋で歌えるの?)
英語詞が印刷されているレジュメを見ながら「じゃあ一緒に歌ってみよう」と練習しますが、
「Ease on down, ease on down the road」のところは何とかなるけど、それ以外の英語が難しそう。
じゃあカモーン!のところは自由にしてみよう、と少しずつ進めていきます。
合わせて「The WIZ」のストーリーの説明も。
「これはドロシーとブリキとカカシとライオンの4人が旅をする話で、
黄色いレンガの道に沿って、この道の先に何かがある…と希望を持って踊りながら歌う。
こんな風にステップを踏みながらね」
と言って、あっきー先生はここでなんと、靴を脱いだ!
もしかしてこのためにキュートな色のソックスを選んだのか!と思わせるような軽快な動きでステップを踏む。
スキップ、ボックスステップ、ツーステップ、
「じゃあみんなで一緒に!」と、あっきーを先頭にみんなで歌いながらピアノの回りをグルグル。
「今度は二人組になって~!」と生徒さんの手を取って、ジルバのようなダンス。
参観している私たちも手拍子で応援。
ものすごく楽しそうだったので、これは本当に一緒にやりたかったです!
(って本当にFCイベントでやったらどうしよ…)
■ 「Home」、そしてワークショップを通して伝えたかったこと
そのあと、ピアノの回りに生徒さんを集めて「Home」を弾き語り。
それはそれは素晴らしかった。
アーク・ノヴァの独特な雰囲気も手伝って、とても厳かであり、なおかつ開放的な歌声でした。
まさかここで聴けるとは…(感激しすぎて私は思わずホロリと頬を濡らす)
というか、靴を脱いだまま裸足で(ソックス履いてるけど)スタインウエイを弾いている人を初めて見ました…
最後にあっきー先生からメッセージ。
ワークショップは、番組の企画で気仙沼で開催して以来、二度目です。
そのときも話したこと、それは自分を知らないと「表現する」ことはできないということ。
自分を表現するということはとても大切なことだよね。
ミュージカルということに囚われなくても、自分というものを表現することはすごく素敵なことだと思う。
自分が感じていること、思っていること、それが「歌」という形になるから。
自分も(芝居の稽古などで)先輩ばかりに囲まれると、ビビります。
でも本気でぶつかっていくことで乗り越えてゆける。それぞれのぶつかり方があるけれど。
今日経験したことが、歌ったりダンスしたりするときに、少しでも参考になればいいと思っています。
■ 終了のご挨拶、そして思ったこと
12:30までの予定でしたが結局13:00近くまで、熱気のこもったワークショップでした。
最後は生徒さん一人一人が今日の感想とともに、歌いながらご挨拶を。
バレエが得意な女の子はピルエットをダブルで決めてくれましたが、
数少ない参加者の男の子が「もっと時間をいっぱい取ってくれ~!」と叫んだのが本日の敢闘賞でした。
バランスボールに座りながら記念写真を撮るときも、カメラに向かってニッコリのあっきー先生、
本当に本当にお疲れさまでした!
私自身も貴重な体験をさせていただきました。
なにより、あっきーがミュージカルに対するアプローチが実感できた。
譜面を見てその通りに歌うのではなく、自分の中から湧き起こるリズムを大切に感情を乗せていく。
声を出す→自分の思っていることを言葉にする→メロディに乗せてみる→相手と会話しながら歌う→体を使って表現する、
この道すじが手に取るようによくわかり、生徒さん一人一人に伝わっていく様子が見えました。
授業参観している私たちも、体の中にあるリズムを感じることができて、とてもありがたかったです。
いろんな機会でいろんな場所でやってほしいなぁ。
■ おまけ
せっかく福島まで来たので、帰りにちょっとだけ飯坂温泉を観光。
アーク・ノヴァの会場から飯坂温泉までは歩いて10分ぐらいで、ほのぼのした温泉の雰囲気が味わえました。
駅に立っている松尾芭蕉さん。
足湯にも入ってきました。
駅から少し歩くと、愛宕山に登る坂道があります。この日はとてもよい天気だったのに、なぜかここで天気雨になった。晴れ男が帰京したのかな。
紅葉がちょうどいい感じ。
登り切ったところにある愛宕神社からの風景が、見事でした!
ぽっこりと見えるアーク・ノヴァの上に光が差して、それはそれは綺麗でした。(写真が上手でなくて再現できずすみません)
急に決めた日帰り遠征でしたが、得難い経験ができて本当に幸せな1日でした。