「影裏」
2020-02-22 | 映画
『日本で一番悪い奴ら』などの綾野剛と『舟を編む』などの松田龍平が共演した、沼田真佑の小説が原作の人間ドラマ。主人公が失踪した親友を捜すうちに、彼の闇の部分に踏み込んでいく。監督は『るろうに剣心』シリーズなどの大友啓史。『よこがお』などの筒井真理子をはじめ、中村倫也、平埜生成、國村隼、永島暎子、安田顕らが共演する。
原作どころか予告篇も観ないまま鑑賞。
久しぶりに重厚で切ない…ラブストーリーでした。少なくともわたしにとっては。
とにかく話の進み方が遅くて、何も起こらず淡々と日常が描かれる。
でも少しずつ見えてくる。
今野(綾野剛)の目の光がだんだんと光度を増し、日浅(松田龍平)との物理的な距離が1ミリづつ近づいてくときに、ああそういえば…と冒頭からの場面を思い出す。
執拗なまで今野の艶めかしい脚や唇をやたらと強調してたなって。
今野は渡された柘榴の実を一粒づつ摘まんで食べていたのに、「違うよこう食べるんだよ」と日浅に言われて…がぶっとかぶりつくんですね。
実際には入ってないのに「ぱっきーん」という感じの効果音が聴こえました。
二回目の「ぱっきーん」は、中村倫也。
父親役の國村隼、兄のヤスケンさんと共に数分間の出番なのに、どういう関係なのか、どんな人物なのかを滲ませて、最小限の台詞なのに強烈な印象でした。
でも親なのになぜ?とかじゃあ今野はそれまで誰とどうやって生きてきたの?と一気に謎要素が深まります。
「人を見る時はその裏側、影の一番濃い所を見るんだよ」という台詞は、日浅だけではなく誰にでも当てはまる。
少ない台詞を補う表情や情景描写から読み取るべきことが多過ぎて、一部のサイトでの酷評(ある層の方々)も認めざるを得ないけれど、純文学の香り漂う忘れられない映画でした。