屋根裏の散歩者〈完全版〉ジェネオン エンタテインメントこのアイテムの詳細を見る |
1994日本
監督:実相寺昭雄
原作:江戸川乱歩
脚本:薩川昭夫
撮影:中堀正夫
出演:三上博史、宮崎ますみ、六平直政、加賀恵子、嶋田久作
他の作品とセット上映された企画もので、74分という短尺もの。
「乱歩プロモフィルム」という趣きで、脚本やストーリーで構築するというよりは、理屈抜きの浮遊感、狂気、歯車が狂った気分を味わう映画です。
どうにも生にどん詰まり感をぬぐえない青年が、じめじめとアパート自室の押入れで暮らすうちに、そこから屋根裏に抜けられることを発見。
屋根裏づたいに、隣室からアパート中の部屋を覗き見る。
と、それぞれの部屋にはそれぞれの奇態醜態が・・・・
ああ、人間て、どこかしら病んでいるのね。
病まずにはいられないのねぇぇえぇぇ~~~~的身もだえを思わず全身でしたくなる私なのでした。
**
この映画、なにが「病み」を担っていたか?
【その1:宮崎ますみ】
隣室の妙麗なるバイオリン奏者by宮崎ますみは、もう登場からして内に秘めた病みを隠し切れなかったが、時が進むにつれ、本筋とは関係なく一人でこわれていき、とても危うい。
宮崎ますみにこんな面があるとは知らなかったな。彼女が活動を休止したことにもなにか関係があるんじゃないかと勘ぐってしまう絶妙な危うさ。
【その2:おかしなアングル】
例によって床が斜めにかしいだり、妙にアップだったり、妙に煙っている屋根裏といいカメラの中の構図は凝りまくり。へたすると奇をてらいすぎになるこの凝りは、この映画ではかなり成功しているのでは?
根拠無い不安感、健常なものすら侵そうとするひそやかな狂いを、空気でしっかり(いや、おぼろげに)捉えていたと思う。
ちなみに撮影は実相寺作品常連の中堀氏。
【その3:加賀恵子】
いや、これぞ熟れたというか、爛れ始めた女性というものの具体者といいましょうか。
余人を持って換えがたし(石原語録より)
まだあるけど、まあいいか。
(なんかしらんけどいつも縛りをやってる男女とかね)
しかし、
このはかとない奇妙な空間のなかでは、容貌的には一番特異といえる嶋田久作が、一番まともな常識人に見えるというのも笑えた。
メインのお話である、ちょっとした出来心の完全犯罪(笑)も、証拠も無く開陳される犯人追及も、妙にまっとうなドラマに見えて、最後の最後で乱歩の浮遊感を抜け出してすっぽりと収まるところにおさまっちゃったという感はぬぐえないな。
三上・嶋田コンビには、もっともっと、どろどろしてほしかったですな。
**
「インターナショナル版」と「R指定版」があるそうですが、いまレンタルに出ているDVDは前者です。
コメンタリーは監督とプロデューサ(脚本だったっけ?)の対談形式なんだけど、ほとんど飲み屋の与太話的なノリで、なかなかよいな。
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ブログを拝見し取り上げている映画などmanimaniさんとなんとなく趣味が似てそうな気がしました。
もしよろしければ相互リンクさせていただけないでしょうか?このようなことを申し出るのは初めてなんですけれども・・・。よろしくお願い致します。
コメントありがとうございます。
相互リンクの件、ぜひお願いします。
深みのある飾釦さまのブログにくらべ、当方はかなり広く浅くな感じですが、どうかよろしくお願いします。
さっそくのお申し出を受けていただきありがとうございます。当方ブログでもリンクさせていただきました。過去のmanimaniさまの記事を拝見しているとセンス良さを感じてなりません。
どうぞよろしくお願いします。
確かに『押絵と旅する男』と2本セットで製作されましたが、
私の朧げな記憶では(笑)
劇場公開時は1本のみの上映で2本立てではなかったでした。
連続して公開されたと記憶してます。
今は無き新宿南口のシネマアルゴでした。
全作読破を戦後で中断中の
中途半端な乱歩読みとして(苦笑)この映画を観ると、
乱歩の持つ合理性=本格推理への指向と
心的危うさへの嗜好の双方が巧く混ざっていると思うのです。
でもって実相寺ファンとして観ると
縛り絵に関しては、
実相寺監督の伊藤晴雨へのオマージュだと考えてます。
これは実相寺監督の乱歩連作『D坂の殺人事件』に引き継がれたテーマですね。
残念ながら結局実現化しませんでしたが、
実相寺監督は、団鬼六が書いた伊藤晴雨伝を映画化したかったそうですので、乱歩モノと合体させたのでしょう。
映画版『D坂...』の小林少年を観ると、
やはり実相寺監督が映像化したかったという
少年探偵団モノの『青銅の魔人』も観てみたかったと思います。
子供向けではない妖しい少年探偵モノ...。
『乱歩地獄』内の『鏡地獄』にも原作と異なり
明智と小林少年が出てきますが、
自分的にはこちらのキャスティングは不満だったりしますです...。
あ、そうそう「押絵・・」でした。
同時上映じゃないんですね。確かにコメンタリーで同時製作と言っていました。
これまでみた感じですが、いわゆるエロ・グロという世界は、実相寺さんは希求する気持ちは強いけれども最後まで満足には具現化できなかった分野なのかなという気がします。
初期のatgの印象が強すぎるのかもしれませんが。
「乱歩地獄」もみたいですが、近所の蔦谷にはまだないようで・・・
こうなれば、やはりエロス3部作もご覧にならなければいけないかもしれませんね(笑)。
3部作の最後には、
時に監督がエロ・オヤジ呼ばわりされてしまう(笑)生々しさと
監督の持ち味とも言える仏教的無常観が矛盾無く見事に融合していて
そのような意味でも初期作からの到達点と言えるとも思います。
また、その生々しさの追求においても実相寺監督ならではのものを
感じ取ることができると思います(付いていけるかどうかは観た人次第ですが...<笑)。
実相寺的エロ・グロ世界は、
遺作の『シルバー假面』にて統合された形で
その世界観を窺うことが出来たのでは
と自分では思っております。
エロス3部作にも挑戦の予定です(笑)
エロ親父と仏教的無常観って最高のとりあわせかもしれませんね。
「シルバー假面」はレイトショー公開なんですよね。
なかなか観にいけないです・・・DVDまで待つかなあ。
『悪徳の栄え』の人形の発展系に加えて
乱歩の某作品をヒネッた内容ということでは
乱歩連作の番外編とも言えるものとして
『ウルトラQ dark fantasy』第24話「ヒトガタ」。
『悪徳の栄え』の演劇的な世界を含むメタ話として
『ウルトラマンダイナ』38話「怪獣戯曲」と
『ウルトラマンマックス』22話「胡蝶の夢」もオススメします。
もうやりたい放題という感じでハッキリ言って
特撮だからと観ないのは勿体無い濃い内容です。
メモっておきまする。