ヴィム・ヴェンダース「アメリカ、家族のいる風景」

アメリカ、家族のいる風景 レントラックジャパン このアイテムの詳細を見る

２００５ドイツ／アメリカ
監督：ヴィム・ヴェンダース
原案：サム・シェパード、ヴィム・ヴェンダース
脚本：サム・シェパード
音楽：Ｔ＝ボーン・バーネット
出演：サム・シェパード（ハワード・スペンス）ジェシカ・ラング（ドリーン）ティム・ロス（サター）ガブリエル・マン（アール）サラ・ポーリー（スカイ）


ってな～、この邦題はなんだろうか？？
原題はDon't Come Knocking
「邪魔するな」かしら？？
初めのほうでハワードのトレーラーのなかにDon't Come Knockingと書かれた札がぶらさがっていたけれど、これはハワードが家族を求めていったときに示される反応であり、結局そこからなにもかわらないわけで、タイトルとしてはなかなかよく考えられていると思うんだけどな～

***

ヴェンダースの映画愛というのは、どこか屈折していて、この作品だとたとえば冒頭、これでもかっていうくらい西部劇的な風景を撮っておきながら、すーっとカメラが引いていくと撮影隊のトレーラーが写ってスコッと抜いてみせる、「正統な」映画作法をしっかり身に着けていながら、そういうずらしやオチ抜きには作法を発揮できないかのようだ。

馬に乗ってさっそうと荒野に現れた人物を次のシーンでは車に乗せてみたり、古色蒼然とした街のバーにiMacをおいてみたり、いちいちそんなこだわりがあり、ヴェンダースって、常にストレートに勝負に出ない変化球的人間なんだろうな～と、いちいち笑えて好感。（というかこの辺で好みが別れちゃうのかも？）

（まあ、カメラを引いていくと実は映画撮影シーンだった・・なんていうのはトリュフォーとかヴェンダース自身の作品ですでにお馴染みな手法なわけで、そういう屈折自体ももはやある意味正統な作法なのかもしれないけどね。）

**

この作品、サム・シェパードとヴェンダースが「パリ・テキサス」以来２０年ぶりに組んだということで、世代的には結構ワクワクする出来事なんだけれども。。

サムはかなり大上段に構えて、これはアメリカの家族の問題を取り上げたモノだ～とインタビューで語っていたけれど、結局どう言うことだったんだろう？
若いうちは個人主義に支配されて家族を顧みないけれど、年を食ってみるとふと家族を思い出す。これまた身勝手な発想なんだけれども。で、家族を回復しようとするけれど、家族の方も結局それぞれの道を歩き出しているから迷惑でしかない。
家族は成立せず、回復もしない。
ということは、成立せず回復しない家族が再生産されていくってことで。
それがアメリカなのかな。

だからどうしようとかこうしろとか言わないところがサムとヴェンダースらしいという気がするな。

「パリ・テキサス」のときも結局なにも回復できなかったわけだし。




***

サムは馬に乗れるのか～？すごいな
クレジットではサムのスタント役もいるみたいだったけどな。
しかしサム、年とったね。
ローリングサンダーレビューはもう３０年も前のこと、「ライト・スタッフ」からは２０年・・・

スカイの存在はいまひとつよくわからなかった。
もうちょっと人間関係に作用する人であってもよかったのではないかな。
天使みたいな存在なのかな。

音楽はTボーン・バーネット
アールの歌う歌なんかは、ちょっとニック・ケイヴばりの現代感があって驚き。
さすが。

同じ年の作品のジャームッシュ「ブロークン・フラワーズ」との類似が気になるが、ヴェンダースは以前にも「都会のアリス」と「ペーパームーン」という相似形を作っている。ヴェンダースの問題意識というのはそれだけ普遍性があるというべきなのか、ありきたりというべきなのか？（笑）
ちなみに「アメリカ・・」「ブロークン」両方にジェシカ・ラングは出演。


好き度：


人気blogランキングへ
↑ぼちっとオネガイします。


↑お買い物はこちらで