Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「スキャナー・ダークリー」リチャード・リンクレイター(リベンジ)

2008-03-19 04:29:53 | cinema
スキャナー・ダークリー 特別版

ワーナー・ホーム・ビデオ

このアイテムの詳細を見る


A Scanner Darkly
2006アメリカ
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
原作:フィリップ・K・ディック
出演:キアヌ・リーヴス、ウィノナ・ライダー、ロバート・ダウニー・Jr 他


以前劇場で観たけれど8割がた眠ってしまったので、リベンジ。
で、あれ?こんな結末だったかなあ??^^;
まあ大筋はしっかり原作を守っているので、おそらく私のほうの記憶がワヤなのに違いない。

細かなエピソードはかなり省略されていると思われるが、ディックの特徴である「なにが現実かが怪しくなる仕掛け」とその中を生きる人間の「底のない悲しみ」の二つはしっかり保たれている。ということでは、他のディック原作モノ映画のなかでも、かなり「原作に忠実な」部類に入るだろう。(『ブレードランナー』が原作とはかけ離れていてもなお琴線に触れるのは、このディックの基調線を守っているからだ。)

ということで、ワタシの賛辞はこれで終了。
ディックファンとしては原作に忠実だという以上の賛辞があろうか?(笑)


とはいえ、最後に明らかになる、ドナが実は×××だった!というネタと、ボブが実は自覚なく巨大+善の組織の陰謀を暴くために送り込まれている、という二重のアイデンティティネタについては、ちょっと記憶になかった。割と最近原作を読んでいるにも関わらず。ワタシの記憶はまさにダークリー(おぼろげ)&ファン失格。

*****

映画としてはどうなのかな~見かけとは違ってSFでもサスペンスでも犯罪モノでもないので一般的には退屈しちゃうんでないかな。そういう意味では、「底のない悲しみ」のほうの描きこみがちょっと足りないのかもしれない。プロットだけでは魅了しきれない作品だけに、もう一方の深みに観客を引き込む必要があると思うのだ。

それは思うに、ドナの人物像を描ききれなかったことにあるのでは?
ディックの小説においては実は女性の存在が常に大きな問題なのであって、女性像だけで作品の構造の半分くらいを担っていることだってあると思う。
ドナは、ヤクの売人であり、ボブの恋人未満の存在であり、自らも中毒で、不感症、でも人に情けをかけることや、正義に対する思いもある、ディックには珍しくアンビバレンツな人間味を見せる。
ドナは自らの荒廃のためにボブを突き放さざるを得ないけれども、その上で最大限にボブをいたわろうと努力もする。その悲しい優しさは、ボブ自身のジャンキー/捜査官としての二面性の中での崩壊と対になるものである。
しかし映画では視点がボブの悲劇のほうに傾きすぎだったかもしれない。

残念です。

勝手に憶測+糾弾するならば、これは、製作総指揮にジョージ・クルーニーとスティーヴン・ソダーバーグがいるせいではないのか?(笑)
彼らのせいでドナはおざなりになっちゃったのではないのか??(笑)
まあ総指揮だから金だけ出したんでしょうけどね。

その他の感想はだいたい前の記事のとおり。

***

ああ、そうそう!
特典映像にディックのインタビュー映像がある!!
動きしゃべるディックを初めて見てしまったかもしれない!!!


ああ、そうそうそう!
やっぱり自転車ネタのオチは描かれておらず。
ありゃなんでしょうねえ??
オチまで出さんでも十分変だということかなあ??


****

これを機に、買って積んである原作最新訳を読んでみるかな。
(ラストの顛末を確かめよう)

前に読んだときの感想はこちら




スキャナー・ダークリー (ハヤカワ文庫SF)
フィリップ・K. ディック
早川書房

このアイテムの詳細を見る





人気blogランキングへ
↑なにとぞぼちっとオネガイします。


son*imaポップスユニット(ソニマ)やってます。
CD発売中↓
小さな惑星
son*ima

詳しくはson*imaHPまで。試聴もできます。




↑お買い物はこちらで

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「Killing Time」massacre(... | トップ | 「パレスチナ1948・NA... »

コメントを投稿