イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

アンドロイドは電気炬燵で夢を見るか?

2007年12月27日 23時52分13秒 | Weblog
熱い……。焼けるように熱い。ここは熱帯か? 汗がにじむ。今は、冬ではないのか? それに、周りがやたらとうるさい。これは夢なのだろうか? きっと夢だ。ヘンな夢。深夜にやっているちょっと地味目のドラマ、あるいはB級映画の世界に飛び込んだみたいだ。それにしても、やたらとうるさいじゃないか、やけに明るいじゃないか、そしてやっぱり、やたらと熱いじゃないか~。

なんてことを思ってふと目を覚ますと、案の定、コタツの中でいつのまにか寝ていたのであった。テレビもつけっぱなしで。汗びっしょり。

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昨日の話の続きだけど、仕事をしていると、ふとしたはずみで、とつぜん離人症になったかのような気持ちになることがある。俺たちって一体何なんだ? っていう気分。僕もそうだけど、周りもみんな、じ~っとコンピューターに向かっている。ただそれだけのことなんだけど、あらためて俯瞰してみると、これってなんかおかしくないか? 異常事態ではないか? って思う。自分の会社ならまだしも、ほかの会社に行って、大きなフロアにパッと入ったとき、百人くらいの人がみんな画面とにらめっこしてる光景がジオラマで目に飛び込んできて、それがやたらとおぞましく映ることがある。テクノポリスの迷宮に迷い込んだ気持ちになる。だって、不思議なのだ。素朴な疑問なのだ。バカボンのパパなのだ。だってだって、いつのまにか多くの人が、気がつけば「一日の大半を椅子に座り、ディスプレイとみつめてキーボードを打つ人」になってしまっている。子供のとき、大人になったらそんな風になるなんて、誰も教えてくれなかったような気がするんだけど(まあ、当時の大人はここまでのIT化を予測できなかったろうからしかたない)。そして、僕もそのうちの一人だ。流れ行く雲を眺めて、人生の不思議、宇宙の不思議に胸をときめかせていた少年の行く末は、「椅子座り電脳人間」だったのである。

もし、人間に形状記憶シャツみたいな機能があって、死んだ後に過去に一番多くとった姿勢が再現されるとしたら、おそらく、現代人の多くは、昼間コンピュータと向かい合っているのと同じ姿勢をして棺おけのなかで眠っているだろう。椅子に腰掛け、両腕を前に伸ばして、眉毛を八の字にして、ディスプレイに向かっているにちがいない。加えて、翻訳者の場合は、ひょっとしたら空也上人よろしく、口から仏像ならぬ3Dの訳文を吐き出しているかもしれない。奇妙なことだな、と思う。数億の人たちが、一日中、ディスプレイを見つめて、カチャカチャとキーを叩いている。まあるい顔と、四角いディスプレイのセットが、世界中に数億組もあって、地球上のいたるところに存在しているのだ。空はこんなに青いのに、周りには人がいっぱいいるのに、切り取られた四角い世界だけを、みんな飽きもせずに覗き込んでいるのだ。

とはいえ、僕も翻訳という仕事が非常に好きなのであるし、好きで選んだ仕事なのであるわけで、それでお金をもらっているというのは本当に死んでもいいくらい幸せなのであり、そして翻訳者なるものITの助けを大いに受けているからにして、コンピュータなくしては生きていけないのであり、だから、このIT化社会を否定的には思っていないし、一日の大半をディスプレイとともに過ごすことも決して厭わない。けれど、人間の電脳依存というのは日増しに深まっていくな、この先ますますみんなディスプレイばっかり見つめて一日を過ごすようになるのかな、と思うと、確固たる理由は思い浮かばないにしても、やはりちょっとやりきれない気もする。なんだかディスプレイを眺めているときのほうがリアルで、それ以外の時間がバーチャルにも思えてきたりさえもする。が、実際、人間とITの融合、もっといえばミームとシリコンの結合?というのは現実的に進行しつつあるのであって、われわれのアンドロイド化というのはもはや避けて通れない道なのだろう。

翻訳者がたっぷりと仕事をする、ということは、たっぷりとコンピュータの前に座り続ける、ということとほぼ同義でもある。だからこそ、テクノストレスについてなんらかの方策をとるべきだとおもうし、画面を見ていいない時間も大切にすべきだと思うのである。と、だんだんまじめな話になってきたので明日またこれについて書きたいと思う(つづく)。
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