一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

394  惜しみなく刈る青年の花野道

2011年10月14日 | 

(おしみなく/かるせいねんの/はなのみち) 

 

前回のtakeさんのコメント「マツムシソウが貴重な植物となりつつある」で、この句を思い出した。

 

日金山から岩戸山への登山道。市から登山道の草刈りを委託されているのだろう。機械で草を刈る青年達に出会ったのだが、そこには、松虫草をはじめ吾亦紅、田村草、釣鐘人参、女郎花などが咲き乱れ、正に花野道である。

 

登山者にとって必要な作業であるのかもしれないが、貴重な草花が刈られて行くのは悲しい。

 

ましてや、松虫草のように1年草(越年草)の場合、刈られてしまうと種を保存できないから、絶滅しやすいのだ。

 

 

 

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393  鰯雲病む顔つきも一徹に

2011年10月12日 | 

 

(いわしぐも/やむかおつきも/いってつに)

 

私は、一度も父に逆らったことがない。というよりも怖くて逆らえなかった。ところがどういう訳か、私は父から殴られた記憶がない、なのにどうして父を恐れたのか。「やはり、タバコの火」か。

 

18才の時、家出同然に家を出た。そして、日本中を放浪して、7年振りに家に帰ってみると、父からあの威圧感はなくなっていた。今考えると、父が変わったのではなく、私が変わったのだ、と思う。

 

絶対的に強い父と従順だった息子の関係も、時間が経つと自然に逆転する。但し、柔和になったとはいっても、軍隊帰りの父の顔は、最期まで威厳を保っていた。

 

サクラタデ(桜タデ)

 

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392  爽やかや火傷の痕が消えている

2011年10月11日 | 

 (さわやかや/やけどのあとが/きえている)  

ある日、親戚の家に行った時、叔母がテーブルに菓子を出して「沢山お食べ」と私に言ったそうだ。私は、咄嗟にそのお菓子を掴んだ。その時、満州の軍隊帰りの父が私の腕を掴み、「一番最初に手を出すものではない」と言って、私の手の甲にタバコの火を押し付けたそうだ。たぶん3,4才の頃だろう。

 

この話は、幾度となく母から聞いたもので、記憶にないし、傷痕もない。

 

 今になって思うと、こうやって今日まで、私がなんとかやって来れたのは、あの時の父の「タバコの火」のお陰ではなかったか。 

マツムシソウ(松虫草)

 

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391 亡き友肩に手をのするごと秋日ぬくし   草田男

2011年10月10日 | 

  

(なきともかたに/てをのするごと/あきびぬくし)

 

初心の頃だったが、歳時記にこの句を見つけて数えてみたら、なんと7・7・6。なーんだ、575である必要なんてないんだ、と眼からうろこが落ちた。

ましてや、山頭火などの句に出会うと定型にこだわる方がおかしい、ということがよく分かる。収まるのに収めないのは困るが、字余り字足らず大いに結構。しかし、結構収まってしまうものでもある。

 

問題はやっぱり中身だね。中身が良ければ、字余り字足らずなど気にならない。

 

秋日ぬくし字余り字足らず気にならず

 

 

 

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390  親鸞と酒を蓋に乗せ夜長風呂

2011年10月09日 | 

(ふたにさけと/しんらんをのせ/よながぶろ)

 

自慢じゃないが、私は暑さには結構強いが、寒がりである。今頃の「やや寒」「うそ寒」「そぞろ寒」「肌寒」などというのは、大嫌いだ。だから、もう若くもないし、決して痩せ我慢はしないことにしている。

 

そこで四,五年前から、夜はもとより、朝風呂に入るのが日課になった。しかし、家庭風呂は、温まるまでに退屈して、じきに出たくなってしまう。

 

そこで、風呂の中で本を読むことにした。勿論、酒やラジオを、時によっては酒肴も持ち込むこともある。ぬるめの湯にゆっくり浸かり、びっしょり汗をかくまで入る。

 

先日、五木寛之氏が私と同じことをしているので、大笑い。しかし、彼は更に私の上を行っているので、感心してしまった。

 

彼は、風呂に入っても、決して身体を洗わないそうだ。勿論髪も洗わない。これは、実に理に適っている。これが分らない人は、たぶん現代病にかかっている。

 

この句にあえて「親鸞」を選んだのは、五木寛之氏への賞賛の故である。

 

シオン(紫苑)

 

 

 

 

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389  兄弟におくれて一人十三夜    登美

2011年10月08日 | 

 (きょうだいに/  おくれてひとり/  じゅうさんや)

 

陰暦9月13日(十三夜)の月を「後の月」という。「豆名月」、「栗名月」、「名残の月」、「女名月」、「姥月」ともいう。

今年の十三夜は、明日10月9日である。一月遅れの名月を、十五日ではなく、何故13日に祝うのか、理由は分らない。

 

 さて、兄弟の集まる十三夜の月見の宴に、ある事情で作者一人が遅れてしまった。急がなくっちゃ、という意味にも取れるが、どうやらそうではないようだ。

 

 この句に併記して「九十才吾に驚く十三夜」という句があるから、「遅れて」は、どうやら「あの世へ行き遅れて」という意味らしい。

 つまり、兄弟が皆あの世へ逝ってしまって、私一人残されて十三夜の月を眺めている、ということらしい。

 

 長生きは、素晴らしいことではあるが、なかなか、辛いことや淋しいもあるようである。しかし、「長生きは命の芸術」という言葉もある。ですから長生きして、金さん銀さんのように、私達に元気を与えて下さいませませ。

 

エゾリンドウ(蝦夷竜胆)

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388  明暗を分けし一投子規忌かな   となみ

2011年10月07日 | 

(めいあんを/わけしいっとう/しききかな)

 

正岡子規の忌日は、明治35年9月19日。糸瓜忌(へちまき)、獺祭忌(だっさいき)ともいう。子規はわずか36才でこの世を去ったのだが、俳句・短歌などその功績は偉大。子規は、幼名「のぼる」から「野球」という雅号を用いたそうである。

 だから、この句の「一投」は、野球の投手の「一投」に決まっている。「明暗を分けた」と言っているが、子規の親友、漱石の小説「明暗」とは関係ないのかな。

 

明暗を分けたと言っているが、明と暗では大違いなのに、打たれたのか打たれなかったのか、勝ったのか負けたのか、どっちなのか、言っていない。

しかし、私の結論を言うと、この試合、明から暗へ、つまり逆転サヨナラ負けしたのである。

仙石の花野

 

 

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387  大根を蒔くだけの雨希ひしに  千恵女

2011年10月06日 | 

(だいこんを/まくだけのあめ/ねがいしに) 

 

この句は、10月3日の朝日俳壇の稲畑汀子選の一句。評には

 

「大根を蒔くだけの一雨が欲しい作者。いざ降ると、大洪水を誘うほどだったのであろう。ままならぬ自然を託つ」とある。

 

この句の「希ひしに」は、「作者の願い通りにはならなかった」、という意味だが、降ったのか降らなかったのか、降ったとしてもどの程度降ったのか、は一言も言っていない。

 

確かに、評の通り①大雨が降ったのかもしれない。先日の12号、15号があったから、当然の解釈だろう。

そしてもう一つ、②何日も全く降らなかったのかもしれない。つまり、雨乞いの句かもしれないのである。

 

 

 

仙石原の湿性花園とススキ

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386  天高し三日坊主の一万歩   稱子

2011年10月05日 | 

(てんたかし/ みっかぼうずの/ いちまんぽ)

  

 

  この句、「三日坊主」とあるから、「天高し」なのに今日は歩かなかった、のかもしれない。

 

  それとも、「天高し」だから、歩きたくなって万歩計を付けて歩いたのかもしれない。ところが私は、「何を隠そう、何をやっても「三日坊主」なんです。だから、この散歩も今日が終わりかな、いつまで続くのかな」という自虐的俳句なのかもしれない。

 

  勿論、この句には主語がないから、作者自身のことではなく、家族の例えばご主人のことを匂わしているのかもしれない。うん、これが一番面白いか?よし、これにしよう。

 

 

 

ガマズミ(莢蒾)

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385  勝負あり法師蝉対彼岸花      空白

2011年10月04日 | 

(しょうぶあり/ ほうしぜみたい/ ひがんばな)

 

 わかんない俳句だね。法師蝉と彼岸花が戦って、勝負があったって? 動物と植物を比べるなんて無茶ですよ、空白さん。よくそんなことを思い付いたね。無茶ではあるが考察してみよう。

 

鳴き出したのと咲き出したのと、どちらが早かったか。(法師蝉の勝ち)

鳴き止んだのと枯れたのとどちらが遅かったか。(彼岸花の勝ち)

美しさを比較したのか。(引き分け)

人間にどちらが好かれたか(引き分け)

花が終わってから葉が出て、春まで元気だから、寒さに強いのは、圧倒的に(彼岸花の勝ち)

 

いづれにしても、先日の時点では、法師蝉は最後の1匹と思われるようにかそけく鳴いていて、彼岸花は咲いているというか、はや枯れ始めていた。

 

 はてさて、何を基準にしてどちらが勝ったと思いますか?

 

コウホネ(河骨)

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384   日の丸を揚げし家あり敬老日    洋子

2011年10月03日 | 

 (ひのまるを/ あげしいえあり/ けいろうび)

 

 日の丸を振って、兵隊を太平洋戦争に送り込んだ軍国日本人も本当に困り者だったが、戦後の国旗掲揚を拒否した日本人も困り者だ。 

 

 何故なら、例えばサッカー「なでしこジャパン」の優勝を大騒ぎして喜ぶ日本人を見ると(私もその一人)、「この国に生まれて良かった、と思いたい」という国民的願望がよく理解できるからだ。

 

 竹下首相が、ふるさと創生事業として各市町村に1億円をばらまいたことがあるが、私だったらスポーツ振興に使わせたい。日本全国に多種多様なスポーツ施設を作り、将来のオリンピック選手を目指し、特に青少年に無料で開放、指導する。

戦争ではなく、スポーツで戦い国旗を振る。勝っても負けても、平和のシンボルとして、日の丸を振ってもらいたい。

 

 さてこの句、今や祝日に日の丸を揚げる家が、珍しくなってしまった。そういう世相を皮肉った句だとも言える。 

 

「敬老の日」とは、なんて馬鹿げた名付けだろう。つまり「敬」の字がいらないのだ。尊敬されない老人が、尊敬されたくて「敬」の字を入れねばならなくなったのだ。

単に「老人の日」でいいのだ。「子供の日」「成人の日」には、愛とか敬の字など、ないではないか。

 

翁(おきな)・媼(おうな)という言葉がある。これは、老人のことで、死に近い人と言う意味の他に、神に近い人、という尊敬の意味があった。

 

イワシャジン(岩沙参)

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383   太閤忌流るるラップミュージック  炎火

2011年10月02日 | 

(たいこうき/ ながるるラップ/ ミュージック)

 

 

 今月の兼題は、太閤忌だった。太閤忌とラップミュージック、全然関係ない。1600年と2011年、太閤秀吉は今から400年も昔の人だ。ラップミュージックなど知る由もない。

 

しかし、秀吉は、“チョー”新らし物好きだったし、金キラ金が大好きだったそうだから、今生きていたら、最新の流行に心酔したんじゃないか。一見、無関係なラップミュージックを取り合わせたのは面白い。

 

ちょんまげの秀吉が、ラップで踊っていると想像したら、その軽薄さというか、ミスマッチが実に笑えるではないか。

 

仙石原のススキ

 

 

 

 

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382   かぐや姫が落せし鏡月の海     薪

2011年10月01日 | 

 (かぐやひめが/ おとせしカガミ/ つきのうみ)

 

かぐや姫の登場する竹取物語は、平安時代前期に書かれた日本最古の物語とされている。作者不詳ではあるが、紀貫之が最有力だとか。

 

竹取物語には、様々な特徴があるそうだが、竹は神の依代(よりしろ)であり、呪力を持つと考えられていたようで、故に七夕に竹を使うなど神聖視してきた歴史があった、という。

 

そこで、気になるのが竹の種類であるが、どうやら「淡竹」という竹らしい。真竹の可能性もあるようだが、日本を席巻してしまった孟宗竹はあり得ないとか。

 

 さてこの句、十五夜の月を映す海を、月に帰るかぐや姫の落とした鏡と想像した、という。

  

ヤマトリカブト(山鳥兜)

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