漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「本ホン」 と 「末マツ」<本末>

2018年04月01日 | 漢字の音符
     ホン <おおもととなる>
 ホン・もと  木部    

解字 木の下部の太い部分に肥点(金文)や一印(篆文)をつけて木の根元を示す指事文字。木のふとい根もとの意味を表す。
意味 (1)もと(本)。物事のおおもと。はじまり。もともと。「本源ホンゲン」「本能ホンノウ」 (2)もとで。元金。「資本シホン」 (3)正しい。正式の。「本名ホンミョウ」 (4)この。当の。自分。わが。「本件ホンケン」「本人ホンニン」 (5)書物。文書。学問のもとになるものが書物であることから。「本箱ホンバコ」「原本ゲンポン

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 「おおもととなる・根もと」
(本・体・笨)
  「その他」(鉢)
音の変化  ホン:本・笨  タイ:体  ハツ・ハチ:鉢

おおもととなる・根もと
 タイ・テイ・からだ  イ部
解字 「イ(人)+本(おおもととなる)」の会意。人のおおもととなる身体の意。もとの字は體タイであるが、古くから體の代わりとして用いられた。
意味 (1)からだ(体)。「体格タイカク」「身体シンタイ」 (2)形のあるもの。まとまり。「物体ブッタイ」「体積タイセキ」「体制タイセイ」 (3)おおもと。もとになるもの。「実体ジッタイ」「正体ショウタイ」 (4)ようす。「体裁テイサイ」(外からみた様子) (5)身につける。身をもってする。「体験タイケン」「体得タイトク」 (6)仏像などを数える語。
 ホン・あらい  竹部
解字 「竹(たけ)+本(根もと)」の会意形声。竹の根もと。竹は一年で10~20mも成長するが中空で木と比べると根もとはしっかりしていない意から、人に移して、あらい・粗雑・おろかの意味になる。
意味 (1)あらい(笨い)。粗雑。粗末。「粗笨ソホン」(あらくて雑なこと。粗も笨も、あらい意)「笨拙ホンセツ」(粗末でつたない) (2)おろか。のろま。「笨貨ホンカ」(愚かな人)「笨漢ホンカン」(のろま・愚かな男)

その他
 ハツ・ハチ  金部


解字 篆文は盋ハツで、「皿(うつわ)+犮(ハツ)」の形声。ハツという名のうつわを言い、梵語でpatra(ハッタラ=仏寺で使う食器)の音訳語のハッを表す語として使われた。また、盋に代わり鉢も、patra(鉢多羅ハッタラ)として用いられ、この語が主流になったので、鉢の字で僧侶の食器を表した。したがって鉢は盋と同字とされている。なぜ、盋の代わりに鉢が当てられたかは不明。現在の鉢は本ホンの発音を受け継いでいないことから「金+本」の会意である。金が付くが必ずしも金属の器ではない。日本では、植木鉢や、あたまの意でも使う。
覚え方 浄財のおかね()の、もと()は、托タクハツで  <浄財を集める僧侶>
意味 (1)僧侶の食器。「托鉢タクハツ」(修行僧が米や銭を手に持つ鉢で受けること)「鉢盂ハツウ」(僧侶の食器) (2)はち。深く大きい皿。「乳鉢ニュウバチ」 (3)[国]うえきばち。「植木鉢」 (4)[国]あたま。頭蓋骨。「鉢巻ハチまき」「鉢合わせ」


    マツ <木の最も遠い部分>
 マツ・バツ・すえ  木部

解字 木の上部に肥点(金文)や、一印(篆文)を加えて、木の最も遠い部分を示した指事文字。「本」が木の下部に一を加えたのに対応した文字[字統]。物の末端、行くすえ、終り、重要でないこと等の意となる。
意味 (1)すえ(末)。物のさき。「末端マッタン」「末子バッシ・マッシ」 (2)行く先。将来。「行く末(すえ)」 (3)子孫。「末代マツダイ」 (4)終り。はて。「年末ネンマツ」「週末シュウマツ」 (5)しも。ひくい。「末席マッセキ」「末座マツザ」 (6)こまかい。こな。「粉末フンマツ

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 「木の末端」
(末)
  意味の(6)の「こまかい・こな」(抹・沫・秣)
 「マツの音」(茉)
音の変化  マツ:末・抹・沫・秣・茉

こまかい・こな
 マツ  扌部
解字 「扌(手)+末(こまかい・こな)」の会意形声。手でこすって粉にする。また、粉をこすりつけること。
意味 (1)する。こする。粉にする。なする。「抹茶マッチャ」(臼で挽いて粉末にした茶)「抹香マッコウ」(粉末の香)「一抹イチマツ」(ひとなすり)(2)ぬりつぶす。消す。「抹消マッショウ」(ぬりけす)「抹殺マッサツ」(こすり消してなくす)
 マツ・あわ  氵部
解字 「氵(水)+末(こまかい)」の会意形声。水のこまかなしぶきや泡。
意味 (1)あわ(沫)。「泡沫ホウマツ」(あわ。うたかた) (2)しぶき。「飛沫ヒマツ
 マツ・まぐさ  禾部
解字 「禾(こくもつ)+末(こまかい)」の会意形成。穀物の砕けた細かいものの意で、牛馬のエサにする穀物の飼料が原義。のち、わらや草を含めた牛馬のエサをいう。
意味 (1)まぐさ(秣)。かいば。牛馬の飼料となる砕けた穀物やわらや草。「蒭秣スウマイ」(どちらもまぐさの意。蒭は、草のえさ、秣は穀物系のえさ)「糧秣リョウマツ」(軍隊で、兵隊と馬の食糧)(2)まぐさかう。「秣馬マツバ」(馬にまぐさをあたえる)

マツの音
 マツ  艸部
解字 「艸(草木)+末(マツ)」の形声。モクセイ科ソケイ属の植物(ジャスミン)のサンスクリット名・mallikaマリカー(茉莉花)に当てる語。
意味 「茉莉花マツリカ」とは、モクセイ科の常緑小低木。ジャスミンの一種。花は芳香があり中国では乾燥させてお茶にする。「茉莉マツリ」(=茉莉花)「茉莉花茶マツリカチャ」(ジャスミンティー)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



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