漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

紛らわしい漢字 「第ダイ」 と 「等トウ」

2018年09月13日 | 紛らわしい漢字 
 「第ダイ」と「等トウ」は、上が竹かんむりで共通、文字を書くために用いる竹を割った細い棒である竹簡の意。第の下は弟が略されたかたち、等の下は寺だ。弟と寺の隠された意味が分かると、この2字の違いが明瞭になる。

  テイ <順序よく巻く>
 テイ・ダイ・デ・おとうと  弓部

解字 甲骨文字は、武器であるほこ(戈)の柄(戈の刃がない形)に、すべり止めのため、なめし革の紐を巻いた形の象形。順序よく巻いてゆくので「順序よく」の意味がある。また、柄の部分は刃の下部なので、兄弟の順序の下にある「おとうと」を示す。現代字は上部がソ、紐を巻いた部分⇒弓に変化した弟になった。
意味 (1)おとうと(弟)。「兄弟キョウダイ」「弟妹テイマイ」(弟と妹) (2)でし。門人。教え子。「弟子デシ」「門弟モンテイ」「師弟シテイ」 (3)順序。

イメージ  
 「おとうと」(弟)
 「順序」(第)
順序
 ダイ・テイ  竹部
解字 「竹(竹簡)+弟の略体(順序)」の会意形声。竹簡に書いた文章を綴じるため一本ずつ順番にならべること。順序を定めることをいう。転じて昔の試験の意となり、順序が下位だと落第となる。また、邸テイ(やしき)に通じ、屋敷の意を表す。
意味 (1)しだい。順序。「次第シダイ」 (2)順序を表す語。「第一番」「第三者」 (3)昔の試験。「落第ラクダイ」「及第キュウダイ」(試験に合格する) (4)やしき。「第宅テイタク」(大きな屋敷)「聚楽第ジュラクダイ」(豊臣秀吉が京都に造営した壮大な邸宅)

  ジ <下級の事務役人>
 ジ・シ・てら  寸部

解字 金文第一字は、「之(すすむ)+又(手)」の会意形声。之(音符・之)は、足が下の線から出る形で、前に進むことを示す。又は手で、手にものを持つ意。金文第二字は又⇒寸になっており、この寸は手の意。之と寸が合わさった寺は、手に文書などを持ち、足で前にすすむ「使い」を表し、宮中などで働く事務系の下級役人の意。転じて、役人が働く場所である役所や朝廷などを表す。現代字は上部が土に変化した寺になった。この字を見ると我々はすぐ寺(てら)を思い浮かべるが、この意は仏教伝来以降、渡来した僧侶を外国使節の応接・対応を司る役所(鴻臚寺コウロジ)にしばらく住まわせたことから出た。
意味 (1)役所。朝廷。官庁。「寺人ジジン」(宮中の小臣) (2)てら(寺)。「寺院ジイン」「仏寺ブツジ」 (3)はべる(=侍)。

イメージ
 「下級の役人」(寺・侍・等・待)
音の変化  ジ:寺・侍  タイ:待  トウ:等  
下級役人
 ジ・さむらい・はべる  イ部
解字 「イ(人)+寺(下級役人)」 の会意形声。下級役人が身分の高い人に付き添うこと。
意味 (1)はべる(侍る)。さぶらう。仕える。「近侍キンジ」「侍従ジジュウ」「侍医ジイ」 (2)[国]さむらい(侍)。武士。武術をもって主君に仕えた人。「侍所さむらいどころ
 トウ・タイ・ひとしい・ら・など  竹部
解字 「竹(竹簡)+寺(下級役人)」の会意形声。事務の下級役人が筆記の用具である竹簡の長さを揃えること。一つの文書を作るのに、竹簡の長さを測って同じ長さのものを揃えことから、長さがひとしい・同じたぐいの意となる。長さの揃わないものは、そのほかの意となる。
意味 (1)ひとしい(等しい)。「等分トウブン」「等閑トウカン」(閑に等しい。即ち、なおざりにする意) (2)たぐい。同じもの。「等級トウキュウ」(同じもののあつまる段階)(3)ら(等)。など(等)。ほかにも。「僕等ぼくら
 タイ・まつ  彳部
解字 「彳(路上)+寺(下級役人)」の形声。下級役人が路上で上司の帰りを待つこと。彳は十字路(行)の左半分の字で、通常は「行く」意だが、ここでは路上の意。
意味 (1)まつ(待つ)。まちうける。「待機タイキ」(機会を待つ)「待望タイボウ」(望んで待つ)「期待キタイ」(当てにして待つ) (2)もてなす。あつかう。「待遇タイグウ」「接待セッタイ
<紫色は常用漢字>



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