漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「合ゴウ」<ふたと器の口があう> と「閤コウ」「袷コウ」「蛤コウ」「恰コウ」「龕ガン」「給キュウ」「拾シュウ」「拿ダ」

2024年01月29日 | 漢字の音符
 ゴウ・コウ・ガツ・カツ・あう・あわす・あわせる 口部 hé・gě

解字 甲骨・金文は「(ふたの象形)+口サイ(器のかたち)」の会意。うつわにフタをかぶせ、ぴたりと合わせる形。あう。あわせる意を表わす。篆文以降、は𠆢 と一に分かれ「合」になった。
意味 (1)あう(合う)。あわす(合す)。あわせる(合わせる)。ぴったりあう。「投合トウゴウ」「合作ガッサク」 (2)あてはまる。「合致ガッチ」「適合テキゴウ」 (3)あつまる。あつめる。「集合シュウゴウ

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 「あわせる」
(合・給・拾・閤・袷・洽・蛤・拿・翕・盒・
  ふたと器の口が「あう」(恰)

音の変化  ゴウ:合・盒  コウ:閤・袷・洽・蛤・恰  ガン:  キュウ:給・翕  シュウ:拾  ダ:拿  

あわせる
 キュウ・たまう・たまわる  糸部  gěi・jǐ
解字 「糸(いと)+合(あわせる)」の会意形声。機織りに使う織り糸の残りが少なくなると、新しい糸をあわせる(追加する)こと。足りないところをたす意になる。
意味 (1)たす。足りないものをたす。「給油キュウユ」「補給ホキュウ」 (2)たまう(給う)。たまわる(給わる)。「支給シキュウ」「給付キュウフ」「給食キュウショク」 (3)あてがい。てあて。「給料キュウリョウ」「俸給ホウキュウ
 シュウ・ジュウ・ひろう  扌部 shí・shè
解字 「扌(手)+合(あわせる)」の会意形声。落ちているものを手とあわせること。ひろう・ひろいあつめる意となる。また、発音が同じ十ジュウの大字(代りの字)となる。
意味 (1)ひろう(拾う)。あつめる。「拾得シュウトク」(拾って自分のものにする) 「拾遺シュウイ」(もれ落ちたものを拾う) (2)数字の十のこと。「拾円ジュウエン
 コウ・くぐりど  門部  gé・hé・xiá   
解字 「門(もん)+合(あわせる)」の会意形声。大門の傍らにあるくぐり戸をいう。大きな門に小さな門があわさっている意。また、くぐり戸のある大きな門をもつ宮殿の意味にも使う。
意味 (1)くぐりど(閤)。大門のわきの小門。「閤門コウモン」(2)宮中の小門。女性の部屋。「=閨ケイ」「閨閤ケイコウ」(3)宮殿。ごてん。役所。「太閤タイコウ」(①摂政または太政大臣の敬称。②豊臣秀吉の称。)「閤下コウカ」(宮殿に住む身分の高い人の尊称)「高閤コウカク」(たかどの)
 コウ・あわせ  衣部 jiá・qiā・ jié
解字 「衣(ころも)+合(あわせる)」の会意形声。裏地と表地を合わせた衣をいう。[説文解字]は「衣の絮(わた)無きもの也」としている。
意味 あわせ(袷)。裏地と表地を合わせた衣。裏地のついた着物。「袷衣コウイ」⇔単衣タンイ(一重の衣)。「袷羽織あわせはおり」「袷帷子あわせかたびら」(裏地付きかたびら。帷子とは裏地のない衣)
 コウ・ゴウ・あまねし  氵部 qià
解字 「氵(みず)+合(あわさる)」の会意形声。水があわさる意で、あまねく水がゆきわたること。うるおう、また広くゆきわたることから、あまねしの意となる。
意味 (1)うるおう。うるおす。「洽汗コウハン」(汗をかく)「洽衿コウキン」(えりがぬれる。泣く) (2)あまねし(洽し)。広くゆきわたる。「洽覧コウラン」(あまねく見ること。書物をあまねく読むこと)「洽覧深識コウランシンシキ」(見聞や知識が広く深いこと)「普洽フコウ」(広く行き渡る)「洽博コウハク」(博学)
 コウ・はまぐり  虫部 gé・há
解字 「虫(かい)+合(あわせる)」の会意形声。虫はここで貝。蛤は、貝がらを合わせる意で、二枚貝のはまぐりをいう。はまぐりは、自らの貝以外の貝と合わせてもぴったりとあわないことから、貝合わせに用いられる。
蛤の接合部分
意味 (1)はまぐり(蛤)。日本各地の内湾に生息する二枚貝。名前の由来は、浜辺の栗から。肉を食用とする。「蛤蜊コウリ」(はまぐりとあさり)「蛤鍋はまぐりなべ」「蛤灰コウカイ」(蛤の殻を焼いた灰。石灰にする) (2)はまぐりに似た二枚貝の総称。「蜃蛤シンコウ」(①おおはまぐり(大蛤)、②みずち(蛟)。想像上の動物)
 ダ・ナ  手部  ná
解字 「手(て)+合(あわせる)」の会意。手を相手につけた形で、捕える意。
意味 とらえる。つかまえる。「拿捕ダホ」(拿も捕も、つかまえる意)
 キュウ・コウ  羽部  xī
解字 「羽(はね)+合(あわせる)」の会意形声。鳥が羽をあわせて一斉に飛び立つ様子を表す。
意味 (1)おこる。多くのものがいっせいに起こるさま。「翕如キュウジョ」(いっせいに整って起こる) (2)さかん。「翕赫キュウカク」(さかんなさま)「翕習キュウシュウ」(勢いのさかんなさま) (3)あつまる。あつめる。「翕然キュウゼン」(集まるさま。集まり一つになる)「翕合キュウゴウ」(あつまる) (4)(吸キュウ・すう、闔コウ・とじる、と通じ)すう・おさめる。「翕翼キュウヨク」(翼をおさめてじっとしている)
 ゴウ  皿部  hé
解字 「皿(深い皿)+合(ふたをあわせる)」の会意形声。ふたと身をあわせる容器。
飯盒
意味 ふたもの。身とふたをあわせて閉じる容器。「飯盒ハンゴウ」(キャンプなどで使う炊飯兼用の弁当箱)「香盒コウゴウ」(香料をいれる容器。=香合)
 ガン・ずし  龍部 kān
解字 金文は「今(ふさぐ)+龍(龍の置物)」の会意形声。龍の置物を入れてふさぐ容器。篆文から今⇒合に変化したガンになった。発音は今コンの変化形(今に含ガンの音がある)。現代字の解字は「合(あわせる)+龍(龍の置物)」の会意で、龍の置物を入れて蓋を合わせる容器となる。仏教用語で、仏像を納める両開きの扉が付いた厨子ズシをいう。

諸尊仏龕ブツガン(九州国立博物館蔵「文化遺産オンライン」より)
意味 (1)ずし()。仏像などを納める両開きの扉がついた厨子。「仏龕ブツガン」「石龕セキガン」(石の厨子。石の塔)「石龕寺セキガンジ」(兵庫県丹波市にある寺、奥の院に石窟がある) (2)仏壇。「龕灯ガントウ」(①仏壇のともしび。②桶やブリキで釣り鐘形の外枠をつくり中に回転するローソク立てを付けた提灯)

あう
 コウ・カッ・あたかも  忄部 qià
解字 「忄(心)+合(あう)」の会意形声。心にぴったりと合うこと。思ったとおりにうまく合うこと。
意味  ちょうど(恰度)。あたかも(恰も)。まるで。ちょうどあう。「恰好カッコウ」(①ちょうどよい。②外見のようす)「恰幅カップク」(幅がちょうどあう意から、転じて人の体つきをいう)

関連音符 荅・答へ
 トウ   艸部  dá・dā              
解字 「艸(草)+合(あわさる)」の会意。さやの合わさった草である、さやまめの意から、小豆の意味がある。後漢の[説文解字]は、「小尗シュク(小豆)也。艸に従い合の声。発音はトウ(都合切)」とする。また、同音である答トウ(こたえる)と同じ意味で使われる。しかし、単独ではほとんど用いられず、トウの発音を生かして音符として使われる。
意味 (1)あずき(荅)。小豆。「荅菽トウシュク」(小豆) (2)こたえる。(=答) (3)あう。あわせる。
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 「あずき」(荅) 
 「形声字」(塔・搭・鞳・剳)
 音の変化  トウ:荅・塔・搭・鞳・剳
 トウ・こたえる・こたえ  竹部
解字 「竹(たけ)+合(一致する)」の会意。合は一致する意があり、相手から質問されたとき「トウ」(合っている)と返事したことから、答える意味があった。それに竹や艸をつけた答・荅も「こたえる」意味をもつが、主に答が使われる。
意味 こたえる(答える)。こたえ(答)。応ずる。報いる。「回答カイトウ」「答弁トウベン
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 「こたえる」(答)
 「形声字」(箚)
 音の変化  トウ:答  トウ・サツ:箚
<紫色は常用漢字>

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※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




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