「早ソウ」は夜明けの意、「艸ソウ」は、くさの意。この二つがなぜ一緒になって「草ソウ」ができたのか。
早 ソウ <朝はやい>
早 ソウ・サッ・はやい・はやまる・はやめる 日部
解字 戦国古文(戦国時代に使われた字体。篆文の前の文字)は、「日(太陽)+十(こうら)」で、現代字と同じ早である。篆文は、十の部分が、Tに帽子をかぶせたような形に変化し、現代字は、再び戦国古文と同じ早となった。十は、こうら(甲羅)なので、解字は「日(太陽)+十(=甲:こうら)」 の会意となる。
この字の解字は、まだ定まっていないようで、字典によりさまざまな解釈がある。中には全体をサジ(スプーン)の形だとし、はやい意は仮借カシャ(当て字)とする説もある(字統)が、これは無理がある。日の下部が甲であることは字形からも間違いない。
解字の一つは、甲が甲乙丙~と続く十干の最初の文字であることから、甲を第一段階と位置付け、日(太陽)が昇ってくる最初の段階、すなわち、まだ日が昇るまえの夜明けを意味する、というものである。この説は覚えやすいし、それなりに説得力もある。しかし、こうした解字は甲の付く他の字では見当たらない。
音符「甲」の一般的解字は、甲が甲羅であることから「かぶせる・おおう」イメージを使う。(音符「甲」を参照)。例えば、閘コウは、水門に板などをかぶせて水量を調節する閘門(水量を調整する水門)の意。匣コウ(はこ)は、「匚(はこ)+甲(かぶせる)」で、箱にふたをかぶせる意で、ふたのついた箱の意になる。そこで第二の解字は、かぶせるイメージを当てはめたもので、日(太陽)に甲羅をかぶせたように、日光がまだ直接差してこない夜明けの意となる。しかし、この解釈の難点は、甲羅をかぶせるならば何故甲が上にこないのか、ということだろう。しかし、閘の字は、門にかぶせるのに甲が門の中に入っているし、匣も、はこにかぶせるのに匚(はこ)の中に甲が入っているので、あまり気にしないでよいのかも知れない。
以上、両説とも少し疑点の残る解字であるが、どちらがいいかは読者におまかせしたい。現在の字体は、篆文の、T字に帽子がかぶさったような形(甲)⇒十に変化した。ではなぜ、甲が現代字で十に変化したのだろうか。甲の古代文字をみてみよう。
甲骨文・金文第一字は、十の形をしている。これは亀の腹の甲に十字紋があることから甲羅を意味する。ところが篆文はT字に帽子がかぶさったような形に変形した。篆文の甲の部分が、「早」の字で十になったのは、古い字形に元返りしたかたちなのである。
意味 はやい(早い)。 (1)朝がはやい。よあけ。「早朝ソウチョウ」「早暁ソウギョウ」 (2)時期がはやい。「尚早ショウソウ」(いまだ早い)「早計ソウケイ」(はやまった計画。軽率な考え) (3)季節がはやい。「早春ソウシュン」「早稲わせ」(稲の品種のうち早く実るもの) (4)すぐに。「早急ソウキュウ」「早速サッソク」
艸 ソウ <くさ>
艸 ソウ・くさ 艸部
解字 草の芽生えである屮テツを二つ合わせた形。並び生える草を表す。「くさ」の意味で使われていたが、のち艸が草冠として使われるようになり、新たに草の字が作られた。
意味 (1)くさ(艸)。くさの総称。 (2)くさかんむり(草冠)。旧字では「十十」、新字体では「十十」の横線をつなげた「艹」で草の意味を表す。
卉 キ・くさ 十部
解字 屮テツ(くさ)を三つ重ねて、たくさんの草を表した形。広く草花を表す。字形は、屮が十に変化した、十が三つから、十に廾をつけた卉になった。
意味 くさ(卉)。草や花の総称。「卉服キフク」(草織りの衣。くず麻の衣)「花卉カキ」(くさばな。鑑賞のため栽培する植物)「花卉園芸かきえんげい」(観賞用植物の栽培またその産業)「卉木キモク」(草花と樹木)
草の字の誕生
草 ソウ・くさ 艸部
解字 戦国古文(篆文の前の字体)は、「艸(くさ)+早(ソウ)」 の形声。艸(くさ)はもともとソウと呼ばれており、草を表わしていた。艸が「くさかんむり」に専用されるようになったので、ソウという発音をもつ「早」を下に付けて「くさ」を表わした。つまり草冠となってしまった艸と区別するため、同音の早を付けた次第。篆文で早の字体が変化したが、現代字は戦国古文の艸が「くさかんむり」に変化した草になった。
意味 (1)くさ(草)。くさはら。「草原ソウゲン」「雑草ザッソウ」 (2)そまつな。草でできた。「草庵ソウアン」(草ぶきのいおり)「草屋くさや」(くさぶきの家) (3)くさわけ。はじまり。「草創期ソウソウキ」(初めて創ったころ) (4)したがき。「草案ソウアン」「起草キソウ」
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
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早 ソウ <朝はやい>
早 ソウ・サッ・はやい・はやまる・はやめる 日部
解字 戦国古文(戦国時代に使われた字体。篆文の前の文字)は、「日(太陽)+十(こうら)」で、現代字と同じ早である。篆文は、十の部分が、Tに帽子をかぶせたような形に変化し、現代字は、再び戦国古文と同じ早となった。十は、こうら(甲羅)なので、解字は「日(太陽)+十(=甲:こうら)」 の会意となる。
この字の解字は、まだ定まっていないようで、字典によりさまざまな解釈がある。中には全体をサジ(スプーン)の形だとし、はやい意は仮借カシャ(当て字)とする説もある(字統)が、これは無理がある。日の下部が甲であることは字形からも間違いない。
解字の一つは、甲が甲乙丙~と続く十干の最初の文字であることから、甲を第一段階と位置付け、日(太陽)が昇ってくる最初の段階、すなわち、まだ日が昇るまえの夜明けを意味する、というものである。この説は覚えやすいし、それなりに説得力もある。しかし、こうした解字は甲の付く他の字では見当たらない。
音符「甲」の一般的解字は、甲が甲羅であることから「かぶせる・おおう」イメージを使う。(音符「甲」を参照)。例えば、閘コウは、水門に板などをかぶせて水量を調節する閘門(水量を調整する水門)の意。匣コウ(はこ)は、「匚(はこ)+甲(かぶせる)」で、箱にふたをかぶせる意で、ふたのついた箱の意になる。そこで第二の解字は、かぶせるイメージを当てはめたもので、日(太陽)に甲羅をかぶせたように、日光がまだ直接差してこない夜明けの意となる。しかし、この解釈の難点は、甲羅をかぶせるならば何故甲が上にこないのか、ということだろう。しかし、閘の字は、門にかぶせるのに甲が門の中に入っているし、匣も、はこにかぶせるのに匚(はこ)の中に甲が入っているので、あまり気にしないでよいのかも知れない。
以上、両説とも少し疑点の残る解字であるが、どちらがいいかは読者におまかせしたい。現在の字体は、篆文の、T字に帽子がかぶさったような形(甲)⇒十に変化した。ではなぜ、甲が現代字で十に変化したのだろうか。甲の古代文字をみてみよう。
甲骨文・金文第一字は、十の形をしている。これは亀の腹の甲に十字紋があることから甲羅を意味する。ところが篆文はT字に帽子がかぶさったような形に変形した。篆文の甲の部分が、「早」の字で十になったのは、古い字形に元返りしたかたちなのである。
意味 はやい(早い)。 (1)朝がはやい。よあけ。「早朝ソウチョウ」「早暁ソウギョウ」 (2)時期がはやい。「尚早ショウソウ」(いまだ早い)「早計ソウケイ」(はやまった計画。軽率な考え) (3)季節がはやい。「早春ソウシュン」「早稲わせ」(稲の品種のうち早く実るもの) (4)すぐに。「早急ソウキュウ」「早速サッソク」
艸 ソウ <くさ>
艸 ソウ・くさ 艸部
解字 草の芽生えである屮テツを二つ合わせた形。並び生える草を表す。「くさ」の意味で使われていたが、のち艸が草冠として使われるようになり、新たに草の字が作られた。
意味 (1)くさ(艸)。くさの総称。 (2)くさかんむり(草冠)。旧字では「十十」、新字体では「十十」の横線をつなげた「艹」で草の意味を表す。
卉 キ・くさ 十部
解字 屮テツ(くさ)を三つ重ねて、たくさんの草を表した形。広く草花を表す。字形は、屮が十に変化した、十が三つから、十に廾をつけた卉になった。
意味 くさ(卉)。草や花の総称。「卉服キフク」(草織りの衣。くず麻の衣)「花卉カキ」(くさばな。鑑賞のため栽培する植物)「花卉園芸かきえんげい」(観賞用植物の栽培またその産業)「卉木キモク」(草花と樹木)
草の字の誕生
草 ソウ・くさ 艸部
解字 戦国古文(篆文の前の字体)は、「艸(くさ)+早(ソウ)」 の形声。艸(くさ)はもともとソウと呼ばれており、草を表わしていた。艸が「くさかんむり」に専用されるようになったので、ソウという発音をもつ「早」を下に付けて「くさ」を表わした。つまり草冠となってしまった艸と区別するため、同音の早を付けた次第。篆文で早の字体が変化したが、現代字は戦国古文の艸が「くさかんむり」に変化した草になった。
意味 (1)くさ(草)。くさはら。「草原ソウゲン」「雑草ザッソウ」 (2)そまつな。草でできた。「草庵ソウアン」(草ぶきのいおり)「草屋くさや」(くさぶきの家) (3)くさわけ。はじまり。「草創期ソウソウキ」(初めて創ったころ) (4)したがき。「草案ソウアン」「起草キソウ」
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