漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「甲コウ」<こうら・かぶせる> と「匣コウ」「閘コウ」「岬コウ」「胛コウ」「狎コウ」「押オウ」「鴨オウ」

2024年03月24日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 コウ・カン・きのえ・よろい  田部 jiǎ
 亀の腹甲


 甲骨文と金文はカメのお腹の甲羅
解字 甲骨文はタテ線と横線を交差させた形。意味はほとんどが十干の一番目である甲(きのえ)で用いられている。金文は十字を四角く取り囲んだ形。甲骨文と金文は、亀の甲羅の継ぎ目を描いた象形で十字になっていることから背中の甲羅(六角形)でなく腹の甲である。篆文はT字形の上に帽子のようなものを被せた形に変化し、現代字は甲になったが、カメの腹甲の模様をたどると篆文も楷書にもなる。現代字まで甲羅の影響をうけているとは思えないが不思議な一致である。
 かたどっているのはカメの腹甲であるが、意味はカメや甲殻類の外側をおおう固い外面をいう。漢字検索のための部首は田。固いカバーを「かぶせる」イメージがある。
意味 (1)かたいから。こうら。また、物のかたい外面。「甲羅コウラ」(甲はカメなどの甲、羅は網目で甲のうえに網のような模様がついているから)「甲殻コウカク」(外側を覆う固い殻)「甲骨文字コウコツモジ」(亀の腹甲や獣骨に書かれた文字)「甲板カンパン」(船のデッキ) (2)よろい(甲)。「甲冑カッチュウ」(甲はよろい、冑はかぶと)「甲騎コウキ」(よろいを着て馬に乗った兵士)「装甲車ソウコウシャ」(甲鉄板装備の車) (3)きのえ(甲)。甲乙丙丁~と続く十干の第一。等級の第一。「甲種コウシュ」(第一の種類)「甲乙コウオツ」(①順序。②優劣)「甲子コウシ」(十干の甲と十二支の子(ね)を組み合わせた年。60年に一度回ってくる最初の年にあたる)「甲子園コウシエン」(甲子の年に当たる1924年(大正13)にできた野球場)(4)[国] ①かぶと(甲)。よろい(甲:鎧)と、かぶとを誤って逆に用いる用法。 ②物の背面。「手の甲」 ③地名。甲斐かい(山梨県の略)「甲州コウシュウ」 ④カン。声の調子の高いこと。「甲高い声」

 十干とは、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10の要素の順列。これを五行(木・火・土・金・水)に配列し、おのおのに兄(え)と弟(と)を当てて訓読みする。以下を参照。

十干の読み方(オンライン無料塾「ターンナップ」より)

イメージ 
 「甲羅」
(甲)
  甲羅は表面をおおうことから「かぶせる」(押・匣・閘・胛・狎)
 「同音代替」(岬)
 「オウの音」(鴨)
音の変化  コウ:甲・匣・閘・岬・胛・狎  オウ:押・鴨
 コウとオウは、kouのkが欠落してouとなった変化。

かぶせる
 オウ・コウ・おす・おさえる  扌部 yā
解字 「扌(手)+甲(かぶせる)」の会意形声。手で外からかぶせて押さえる意。
意味 (1)おす(押す)。おさえる(押さえる)。とりおさえる。「押収オウシュウ」(証拠品を押さえて収める)「押領オウリョウ」(無理やり奪う) (2)判をおす。「押印オウイン」「花押カオウ」(記号風の署名)
 コウ・はこ  匚部はこがまえ xiá
解字 「匚(はこ)+甲(かぶせる)」の会意形声。箱にふたをかぶせる意で、ふたのついた箱。
意味 はこ(匣)。こばこ。ふたつきの箱。「鏡匣キョウコウ」(鏡をいれるはこ)「文匣ブンコウ」(手箱)「匣鉢さや」(陶磁器を焼く時、保護のためかぶせる容器)
 コウ・オウ  門部 zhá
解字 「門(もん)+甲(かぶせる)」の会意形声。水門に板などをかぶせて水量を調節すること。
中島閘門(「とやま観光ナビ」より)
富山市の富岩(ふがん)運河中流域にあるパナマ運河方式の閘門で、国の重要文化財に指定されている。
意味 (1)水門。ひのくち。「閘門コウモン」(運河や河川に設けて水量を調節して船を通過させる水門)「閘河コウカ」(河の水門) (2)せきとめる。門を開け閉めする。「開閘カイコウ
 コウ・かいがらぼね  月部にく jiǎ
解字 「月(からだ)+甲(かぶせる)」の会意形声。身体の中にあり、肩の後方から肋骨をおおっている三角状の骨。
意味 かいがらぼね(胛)。「肩胛骨ケンコウコツ」(意味は解字を参照。肩甲骨とも書く)
 コウ・なれる  犭部 xiá
解字 「犭(いぬ)+甲(=押の略体。おさえる)」の会意形声。犬を押さえつけて馴れさせること。
意味 (1)なれる(狎れる)。なれ親しむ。「狎昵コウジツ」(狎も昵も、なれ親しむこと。なれ親しみ遠慮がなくなる)「狎客コウカク」(なじみの客) (2)あなどる。軽んじる。「狎玩コウガン」(からかう)

形声字
 コウ・キョウ・みさき  山部 jiǎ
解字 「山(やま)+甲(キョウ)」の形声。キョウは夾キョウ・コウ(はさむ)、峡キョウ(はざま)に通じ、山と山にはさまれた山あいの意。日本では、両側を海にはさまれた陸地の意で使う。
意味 (1)みさき(岬)「佐多岬さたみさき」(鹿児島県南端の岬)「足摺岬あしずりみさき」(高知県南西部にある岬) (2)二つの山のあいだ。山あい。山のかたわら。「山岬サンコウ」(山と山の間)
 オウ(アフ)・かも  鳥部 yā
解字 「鳥(とり)+甲(オウ)」の形声。オウ(アフ)・オウ(アフ)と鳴く鳥。あひるを表す。日本ではカモをいう。
意味 (1)あひる。水鳥のカモ科のマガモを原種とする家禽。「家鴨カオウ」 (2)[国]かも(鴨)。カモ科の鳥のうち小形の水鳥の総称。日本では越冬のため渡ってくる鳥が多い。「野鴨のがも」「鴨脚オウキャク・いちょう」(樹木のイチョウの別名・鴨の足の形がイチョウの葉に似ていることから)
<紫色は常用漢字>
               
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