向かいに座った会員氏は、ペンクラブ交流会で面識があるが、名前を憶えていない。その会員氏は、現在社団戦を2部で戦っているという。そして1部のときだったか、8勝7敗で降級したという。社団戦の、というか1部の厳しさを如実に物語るものである。
Tag氏とは、10月21日(日)に行われる「将棋文化検定」の話になる。これが記念すべき第1回で、2級・4級・6級・9級が受験できる。私は受験しないが、Tag氏は受けるそうだ。
何か想定問題がほしいというので、「神谷広志七段の28連勝を止めた棋士は誰か」と出題する。6月の稚内ツアーで、中井広恵女流六段が作った将棋クイズにも出ていたものだ。
「室岡七段!」
すかさず西川慶二七段が答える。
「先生は答えないでください!」
私は苦笑しながら釘を刺す。
するとKun氏が、カバンから将棋文化検定の想定問題集を出した。将棋世界の付録にあったものだが、それを携行しているというのがスゴイ。Kun氏も立派な将棋バカだ。
私はその2級問題をTag氏に出題するが、3択まで言わなくても、正解を答えてしまう。しかもそれぞれ解説付きだ。西川七段が固まってしまっている。
今度は私がTag氏に、歴代最多連勝者を出題する。28、24、22、20、18…。Tag氏はその該当者をスラスラ答える。基本といえば基本だが、さすがだ。
私はさらに続ける。
「竜王戦の前身は?」
「十段戦」
「じゃあその前は?」
「九段戦」
「…。じゃあ天王戦の前身は?」
「…連盟杯?」
「正解。じゃあ天王戦は、どのタイトル戦に合流した?」
「…棋王戦?」
「正解。…Tagさんには常識問題だったな」
「じゃあ私からも出題。その棋王戦の予選として行われてた棋戦は?」
「…。名棋戦?」
「…正解」
「うん、確か最後は、北村昌男八段が福崎文吾六段を破って優勝したはずだよ」
西川七段が、(あんたたち…)という顔で、目を白黒させた。
いかん、と思う。Tag氏とこんなやりとりをしていたら、私まで将棋オタクに思われてしまう。
再び小冊子に戻る。「一番多い段位は?」で、3択は六段、八段、九段の3つ。むかし天王戦があったとき、七段はいちばん数が少なかったから、これはないだろうと思った。
ところが西川七段の答えは「七段」。これは意外だった。もっとも冷静に考えると、当の西川七段はじめ、植山悦行先生、大野八一雄先生は七段。また、私が応援する「七段」は、桐谷広人、武者野勝巳、室岡克彦、堀口弘治、神谷広志、中座真、野月浩貴、松尾歩とおり、各段の中で断トツであった。七段万歳!!
湯川博士幹事は、相変わらずあちらの席で熱弁をふるっている。
竜王戦の話になる。
私「ヤマザキ七段が挑戦者になってたら面白かったんだけどな」
Tag氏「ヤマサキです」
私「グッ……」
もう、Tag氏の2級合格は確実だろう。
「でもボクはダメなんですよ。棋士がどのクラスまで昇級したとか、全然知らないから」
とTag氏。私は言い返す。
「それはないでしょう、それは。将棋ファンなら知らなくちゃ。西川先生は、C1まで行きましたよ、ねぇ!」
「…私はB2まで行きましたけど…」
あっ! また失礼なことを言ってしまった! 私はすかさず言い繕う。
「あ、あ、すみません、そうだ西川先生はB2まで行きましたよね! そうだそうだった。でもいまはC2じゃ、ヤバイじゃないですか」
「……」
ああっ!! 私はまた余計なことを…!! 悪手は悪手を呼ぶ、とはよく言ったものだ。西川七段には失言ばかり。穴があったら入りたくなった。
木村晋介会長が退席するようだ。ではと西川七段も席を立つ。そのタイミングがあまりにもドンピシャで、私は再び頭を垂れた。
東京の将棋ファンには毒舌が多い、と妙な印象がインプットされなければいいのだが…。
空いた席に、LPSA所属の大庭美夏女流1級が座る。きょうは茶系のきもので、よく似合っている。けど、面と向かってホメる勇気はない。
また私は、最近はLPSAに全然お邪魔していないので、肩身が狭い。美夏1級も、そこを振ってくれればいいのだが、黙っておしゃべりを聞いている。
湯川幹事も戻ってきた。三上幸夫幹事が、Mo幹事をこちらのテーブルに呼ぶ。Mo幹事は寡黙だが将棋界の情報に詳しく、交友範囲も広い。そんなMo幹事の話は、一日聞いても飽きないほど面白いはずなのだが、Mo幹事の酒は真夜中型で、私とは活動サイクルが違う。とことんまで飲む機会がないのが残念だ。
私が、twitterの独り言を読む気はしない、と言うと、Mo幹事がfacebookを勧めてくれる。これは本名でやりあうから、私の特性にあっているらしい。
ただ私は、ネット上でもリアル上でも他人との会話が苦手だから、どちらもやらないと思う。
湯川幹事やTag氏の話も面白く、私は左右の耳をフル活用して聞き分けた。
いつの間にか10時半をすぎ、お開き。三上幹事が、美夏女流1級の帰宅方面に誰か同乗するよう促す。そしてそれはどうも、私が該当するようだった。美夏女流1級は千葉県在住。私は上野方面なので、秋葉原までご一緒できる。
お送りするのはやぶさかでないが、美夏女流1級は、帰りくらいひとりになりたいのではなかろうか。
JR四ッ谷駅の改札を抜けると、美夏女流1級は総武線方面に向かった。私は中央線方面に向かおうとすると、三上幹事が再び、「大沢クン!」。
結果、私は総武線ホームに移動することになった(ヒマな読者は、この辺りの路線図を確認してほしい。私の行動の意味が理解できるはずだ)。
「女流棋士とふたりきり状態」は、中井広恵女流六段以来。妙に緊張してしまう。何となくLPSAの話は避けて、当たり障りのない話をする。
美夏女流1級の娘さんが、バリバリ将棋が強くなっているという。何年か前私と対局したときは、娘さんは級位者だった。それがいまは、アマ二段だという。それじゃあ私と平手の手合いではないか! まったく、子供の上達は恐ろしいほどに早い。
御茶ノ水着。次の秋葉原でお別れである。
「来月のLPSAファンクラブイベントにも来てください」
と、美夏女流1級。
ついに来たか、と思う。私は苦笑いしつつ、電車を下りた。
Tag氏とは、10月21日(日)に行われる「将棋文化検定」の話になる。これが記念すべき第1回で、2級・4級・6級・9級が受験できる。私は受験しないが、Tag氏は受けるそうだ。
何か想定問題がほしいというので、「神谷広志七段の28連勝を止めた棋士は誰か」と出題する。6月の稚内ツアーで、中井広恵女流六段が作った将棋クイズにも出ていたものだ。
「室岡七段!」
すかさず西川慶二七段が答える。
「先生は答えないでください!」
私は苦笑しながら釘を刺す。
するとKun氏が、カバンから将棋文化検定の想定問題集を出した。将棋世界の付録にあったものだが、それを携行しているというのがスゴイ。Kun氏も立派な将棋バカだ。
私はその2級問題をTag氏に出題するが、3択まで言わなくても、正解を答えてしまう。しかもそれぞれ解説付きだ。西川七段が固まってしまっている。
今度は私がTag氏に、歴代最多連勝者を出題する。28、24、22、20、18…。Tag氏はその該当者をスラスラ答える。基本といえば基本だが、さすがだ。
私はさらに続ける。
「竜王戦の前身は?」
「十段戦」
「じゃあその前は?」
「九段戦」
「…。じゃあ天王戦の前身は?」
「…連盟杯?」
「正解。じゃあ天王戦は、どのタイトル戦に合流した?」
「…棋王戦?」
「正解。…Tagさんには常識問題だったな」
「じゃあ私からも出題。その棋王戦の予選として行われてた棋戦は?」
「…。名棋戦?」
「…正解」
「うん、確か最後は、北村昌男八段が福崎文吾六段を破って優勝したはずだよ」
西川七段が、(あんたたち…)という顔で、目を白黒させた。
いかん、と思う。Tag氏とこんなやりとりをしていたら、私まで将棋オタクに思われてしまう。
再び小冊子に戻る。「一番多い段位は?」で、3択は六段、八段、九段の3つ。むかし天王戦があったとき、七段はいちばん数が少なかったから、これはないだろうと思った。
ところが西川七段の答えは「七段」。これは意外だった。もっとも冷静に考えると、当の西川七段はじめ、植山悦行先生、大野八一雄先生は七段。また、私が応援する「七段」は、桐谷広人、武者野勝巳、室岡克彦、堀口弘治、神谷広志、中座真、野月浩貴、松尾歩とおり、各段の中で断トツであった。七段万歳!!
湯川博士幹事は、相変わらずあちらの席で熱弁をふるっている。
竜王戦の話になる。
私「ヤマザキ七段が挑戦者になってたら面白かったんだけどな」
Tag氏「ヤマサキです」
私「グッ……」
もう、Tag氏の2級合格は確実だろう。
「でもボクはダメなんですよ。棋士がどのクラスまで昇級したとか、全然知らないから」
とTag氏。私は言い返す。
「それはないでしょう、それは。将棋ファンなら知らなくちゃ。西川先生は、C1まで行きましたよ、ねぇ!」
「…私はB2まで行きましたけど…」
あっ! また失礼なことを言ってしまった! 私はすかさず言い繕う。
「あ、あ、すみません、そうだ西川先生はB2まで行きましたよね! そうだそうだった。でもいまはC2じゃ、ヤバイじゃないですか」
「……」
ああっ!! 私はまた余計なことを…!! 悪手は悪手を呼ぶ、とはよく言ったものだ。西川七段には失言ばかり。穴があったら入りたくなった。
木村晋介会長が退席するようだ。ではと西川七段も席を立つ。そのタイミングがあまりにもドンピシャで、私は再び頭を垂れた。
東京の将棋ファンには毒舌が多い、と妙な印象がインプットされなければいいのだが…。
空いた席に、LPSA所属の大庭美夏女流1級が座る。きょうは茶系のきもので、よく似合っている。けど、面と向かってホメる勇気はない。
また私は、最近はLPSAに全然お邪魔していないので、肩身が狭い。美夏1級も、そこを振ってくれればいいのだが、黙っておしゃべりを聞いている。
湯川幹事も戻ってきた。三上幸夫幹事が、Mo幹事をこちらのテーブルに呼ぶ。Mo幹事は寡黙だが将棋界の情報に詳しく、交友範囲も広い。そんなMo幹事の話は、一日聞いても飽きないほど面白いはずなのだが、Mo幹事の酒は真夜中型で、私とは活動サイクルが違う。とことんまで飲む機会がないのが残念だ。
私が、twitterの独り言を読む気はしない、と言うと、Mo幹事がfacebookを勧めてくれる。これは本名でやりあうから、私の特性にあっているらしい。
ただ私は、ネット上でもリアル上でも他人との会話が苦手だから、どちらもやらないと思う。
湯川幹事やTag氏の話も面白く、私は左右の耳をフル活用して聞き分けた。
いつの間にか10時半をすぎ、お開き。三上幹事が、美夏女流1級の帰宅方面に誰か同乗するよう促す。そしてそれはどうも、私が該当するようだった。美夏女流1級は千葉県在住。私は上野方面なので、秋葉原までご一緒できる。
お送りするのはやぶさかでないが、美夏女流1級は、帰りくらいひとりになりたいのではなかろうか。
JR四ッ谷駅の改札を抜けると、美夏女流1級は総武線方面に向かった。私は中央線方面に向かおうとすると、三上幹事が再び、「大沢クン!」。
結果、私は総武線ホームに移動することになった(ヒマな読者は、この辺りの路線図を確認してほしい。私の行動の意味が理解できるはずだ)。
「女流棋士とふたりきり状態」は、中井広恵女流六段以来。妙に緊張してしまう。何となくLPSAの話は避けて、当たり障りのない話をする。
美夏女流1級の娘さんが、バリバリ将棋が強くなっているという。何年か前私と対局したときは、娘さんは級位者だった。それがいまは、アマ二段だという。それじゃあ私と平手の手合いではないか! まったく、子供の上達は恐ろしいほどに早い。
御茶ノ水着。次の秋葉原でお別れである。
「来月のLPSAファンクラブイベントにも来てください」
と、美夏女流1級。
ついに来たか、と思う。私は苦笑いしつつ、電車を下りた。