一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「第24回将棋ペンクラブ大賞贈呈式」にお邪魔する(その1)

2012-09-22 01:38:52 | 将棋ペンクラブ
21日(金)は、東京・四ッ谷で「第24回将棋ペンクラブ大賞贈呈式」があり、2年振りに参加した。
午後6時15分、JR四ッ谷駅麹町口に出る。以前も書いたが、ここ四ッ谷は私のサラリーマン時代の最寄駅だ。当時は会社でのいい思い出がなく、いまもそれを引きずっているが、とにもかくにも、四ッ谷駅を降りて会社に戻らなくてよいのは、精神衛生上よろしい。
「スクロール麹町」に入り、6階-7階-5階と迷いまくって、やっと着いた。
ときに6時20分。開演は6時半からだから、ちょうどいい。
受付で順番待ちをしていると、湯川恵子さんが、「かずきみさぁん」と声を掛けてくれた。「かずきみ」は私の本名だが、みなは私を「イッコー」と呼ぶ。正確に呼んでもらって、ちょっと照れくさかった。
続けて湯川博士幹事。「元気そうで…」と一言。恐らく私の名前は忘れているだろうが、顔を覚えていただいているだけでも、ありがたい。
受付を終え会場に入るが、ガランとしている。もらった式次第に書かれてあるナンバー(のちの抽選会のときに使う)は「17」。一般入場者がここまでで17人しかいないわけで、ちょっとさびしい。
と、大庭美夏女流1級が現われた。きょうのゲストで、指導対局を行ってくれる。さらに神谷広志七段が一般客として訪れた。神谷七段は5月の関東交流会でお話をさせていただいた。棋士らしくない、気さくな先生である。
そして谷川浩司九段(十七世名人)の入場。谷川九段は、詰将棋作品集「月下推敲」で特別賞を受賞している。しかし大阪からわざわざ来ないだろうと一人合点していたので、これにはビックリした。ちなみに私は、「ナマ谷川」を拝見するのは初めてである。
続けて米長邦雄永世棋聖が入場する。米長永世棋聖を拝見するのは、数年前の女流王位戦就位式、マイナビ女子オープン挑戦者決定戦の控室、将棋ペンクラブ関東交流会の席と、都合3度のみ。きょうはその米長永世棋聖に、私の存在をアピールできる最初で最後のチャンスだが、どうなるだろう。
後を追うように村山慈明六段。さらに広瀬章人七段が入場する。どちらも技術部門で、それぞれ大賞と優秀賞を受賞している。
さらに三浦弘行八段、木村一基八段が入場。こちらは純粋にお客としてだ。ただしペンクラブ側は、参加費は取っていないだろう。
一般入場客もそこそこ来たようだ。知った顔では、Kun氏、Tag氏ら。
定刻の6時半になり、選考委員・西上心太氏の講評からスタート。司会進行は長田衛幹事。
西上氏ご本人はスピーチは苦手だとおっしゃっていたが、そういう人ほどウィットに富んだスピーチをする。真面目な中にコネタを挟んで、私たちを飽きさせない。
そこに青野照市九段が見えた。あとで分かったのだが、西川慶二七段、上野裕和五段もいらしていた。
私も贈呈式にだいぶ参加しているが、これほど棋士が集まったのは初めてだ。将棋関係者も多く、これは棋士の集まりなのかと錯覚する。やはり米長永世棋聖、谷川九段の受賞が大きいと思う。
スピーチが終わって、表彰式。観戦記部門は激戦で、それゆえに大賞が出なかった。優秀賞が朝日新聞記者の佐藤圭司氏。
西上「今年じゃなければ大賞だったんだけど…」
佐藤「ええっ!?」
とかいうやりとりを交え、表彰式は粛々と進行していく。バックでは女性3人組によるピアノの演奏とコーラスが花を添えている。
続いて受賞者のスピーチ。
佐藤氏は、今回の受賞で、会社での自分を見る周りの目が少し変わった、とのこと。ペンクラブ大賞は権威があるのだ。
文芸部門大賞の米長永世棋聖は、「人間対コンピュータ」の今後について。来年も棋士とコンピュータの対戦があるが、棋士がコンピュータの強さを理解しないと、仮に棋士が10人出ても、10人負けるだろう、と大胆な予言をした。
同じく文芸部門大賞の橋本長道氏は、元奨励会員。いままでさまざまな苦労を重ねており、受賞のよろこびもひとしお。声にならない声が、それを端的に物語っていた。
村山六段「私はスピーチが苦手で…。(受賞作の「ゴキゲン中飛車の急所」に掛けて)『スピーチの急所』っていう本はありませんか」で爆笑を取っていた。
広瀬七段「タイトルが『勝局集』で、勝ち将棋ばかりで、ほかの棋士の皆さんに申し訳なかったんですけど…」で、これまた爆笑。
棋士はスピーチの名手ぞろいだ。
トリは谷川九段。その谷川九段がマイクを取り、ソソソと端へ移動したので、驚いた。
「米長会長はじめ、受賞の皆様方にお尻を向けて話すことはできませんので…」
私がきょう最も感動したのは、この一言だった。
谷川九段は文字どおり腰が低く、恐縮しきり、というふうだった。谷川九段は十七世名人の有資格者で、将棋界の大看板である。もっと堂々と振る舞っていいのだが、それを言ったらミもフタもないわけで、その謙虚な人柄に、ファンはしびれるのである。
ただその優しさが、現在の成績に反映されていないか。もっと図々しく立ち回れば、勝ち星も増えると思うのだが…。
谷川九段は詰将棋の創作中、盤上に駒を10枚置いたところを、何とか1枚減らせないかと考えて、1か月かかったこともあるという。
天才谷川九段にしてこの努力。私も現状で諦めず、さらに高みを目指して、精進しなければならない。
さらに谷川九段は、総評という感じで、ほかの5人に対しての所感を述べる。
佐藤氏は感激したようで、目頭を押さえた。
橋本氏は、井上慶太九段門下。したがって、谷川九段とは同門になる(正確には違う)。橋本氏もまた、こみあげてくるものがあったようだ。
ペンクラブ最年長氏の音頭で乾杯。しかし本当に、豪華な顔ぶれだ。
上野五段が佇んでいたので、声を掛けようと近寄ろう…としたら、鷲北繁房幹事に声を掛けられた。
「大沢さん以外に今回のレポートをお願いするとしたら、誰にする?」
「Kunさんでしょ」
私は右側を見た。Kun氏がビールを飲んでいる。
さっそく鷲北さんが、Kun氏に「交渉」する。しばらくやりとりがあったが交渉は成立したようで、Kun氏が私を見て、ニヤリと笑った。
「こんなことになるのなら、もっと早くからメモを取っておくべきでした」
レポートの類は会員の持ち回りで、誰もが経験するものである。しかし鷲北氏をはじめとする幹事は、のべつまくなし声を掛けているわけではない。「この人なら書ける」という確信のもと、交渉しているのである。そしてその目は、100パーセント正しい。
次号のKun氏のレポートが楽しみである。
さて、腹が減った。私は小皿にパスタを盛って元の位置に戻り、バクバク食べ始める。と、右から米長永世棋聖がやってきた。こ、これは、最大のチャンス到来か!?
(つづく)
コメント (2)
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