一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

三十四たび大野教室に行く(後編)・ためになる自戦解説

2012-09-18 00:05:19 | 大野教室
手合いはもちろん角落ち。私は2筋の歩を切ったあと、棒銀に出て、3筋の歩も切る。しかし△3四歩に▲4六銀と、こちら側に引いたのは失敗だったか。
大野八一雄七段に△3三桂と跳ばれ、△4五歩に▲3七銀と引くようではうまくなかった。
私は矢倉に組んだが、居玉のまま。大野七段に△4四銀と上がられ、5筋攻めを目指され、この将棋も守勢に立たされてしまった。
私は▲7七桂と跳ねて6五で桂交換。しかしその数手後の△9五歩の端攻めが厳しかった。ここからは筋に入ってしまい、もういけない。
私は金桂交換を甘受し粘るが、こういうのは粘りとはいわない。ただだらだらと指しているだけだ。
指導対局を終えた植山悦行七段が覗きに来たが、私が余りにもヒドイ将棋を指しているので、「どういうことですか」と呆れている。私と指しているときのあの強さはどこへ行ったんですか、というわけだ。こちらは返答のしようがない。
△8六歩▲同歩△同飛。ここで▲8七歩と指そうとしたら、△8九角▲同玉△8七飛成▲8八歩△7八金以下の詰みがあった。といってほかに受けもなく、ここで私は駒を投じた。
感想戦では、6五での桂交換後に私が▲6六歩と金を追ったのが最後の失着で、ここは▲6六銀とぶつける一手。△同金▲同角と8四の飛車に当てて、勝負だったという。
たしかに▲6六歩は冴えない手で、これで下手の駒の働きが全部止まってしまった。こんな気合の悪い手を指していてはダメである。
大野七段は多面指しを続けていたが、W氏との飛車落ち戦は、上手がいつの間にか植山七段に代わり、しかも実戦がそのまま感想戦になっていた。
W氏の飛車落ち下手は右四間飛車が定番だが、きょうは三間飛車を指していた。囲いは銀冠だったが、いつも平美濃のW氏がここまで手厚く囲ったのも珍しい。
感想戦では、▲3六歩と突き上げる手を植山七段が推奨していた。
我々アマチュアから見ると、自分の囲いを崩す▲3六歩はなかなか突きにくいが、ここは下手の制空権なので、恐れる必要はないという。
この辺の機微がもう少し理解できれば、下手はもう少し強くなるのだろう。
さてもう一局ぐらい指したいところである。私はHon氏に恐る恐る聞く。前回誘ったらやんわりと断られ、私ひとりが将棋好きにされてしまった。今度は同じ轍は踏まない。
今回はHon氏もOKだった。振り駒で私の先手。私の居飛車明示にHon氏は三間飛車。▲4六歩には△4三金と上がった。藤森奈津子女流四段が得意にしている形で、Hon流でもある。
しかし△4二角から△6二銀と引いたのが不用意で、私が▲4五歩から▲1一角成と労せずして香を取れては、一遍に指し易くなった。
ところが、▲1一馬・2五歩・3六歩・3七銀・4八飛、△2三歩・3二飛・3三桂・3四歩・4三金・6四角…の局面で、私が▲2八飛と回ったのが悪手。
すかさず△3五歩と突かれ、一遍に有利が吹き飛んでしまった。▲6六香は△3七角成▲同桂△3六歩で敗勢。私は▲2四歩だが、△3六歩▲2三歩成△3七歩成に▲2四飛の辛抱がまた疑問手で、これでハッキリ悪くなった。
▲2四飛では当然▲3二とと飛車を取るところ。以下△2八と▲3三とと進めて勝負するのだった。
本譜は以下、Hon氏に緩急よろしく指され、私の完敗。植山七段が見たらまた顔をしかめられそうな、ヒドイ将棋にしてしまった。
植山-W戦?の感想戦も終わったようである。そこで私は植山七段に、先日の王位戦・甲斐智美女流四段との自戦解説をお願いする。私が大野教室で最もためになる勉強、それは指導対局でも感想戦でもなく、棋士の自戦解説だと思っている。
プロが心血を注いで指した対局を、当時の読み筋も交えて再現してくれるのだ。私たちの筋違いの質問にも、丁寧に答えてくれる。アマにとって、これ以上の上達手段があるだろうか。
植山七段が、初手から並べてくれる。男性棋士の読み筋で、最も感心するのは序盤の構想である。何気ない一手に数十分考えて、何をそんない考えることがあるんだと私たちは訝るが、そのヨミを聞くと、なるほどと唸るばかり。私たちと同じ手を指していても、中身がまるで違うのである。当然とはいえ、お互いのレベルの違いを痛感する。
解説は淀みなく続く。途中、植山七段は、「甲斐さんは男性棋士と見紛うばかり。強かったですよ」と何度も口にした。
早いと思われた投了図も、解説をいただくと、納得できるものがあった。
約40分の実戦講義が終わり、植山七段に感謝して、さあ食事をどうしようかというとき、Fuj氏が私に、A4判の束を見せた。
何これ、と表紙を見ると、「一公の将棋雑記まとめ(大野教室編)」とあった。まさか…!? こ、これ、私のブログ記事を、プリントアウトしたものか!?
中を見ると果たしてそうで、用紙の表と裏にびっしり文字が印刷され、その端には付箋がビッシリ貼られていた。これ…大変な作業だったんじゃないか!?
しかもA4の束はそのほかに7つあって、それぞれ「ジョナ研編」「合宿・イベント編」「その他イベント編」「棋友・懇意棋士編」「社団戦編」「主張編」「傑作編」とタイトルが付けられていた。はああーー!?
「『似ているシリーズ』とか旅行記とか、将棋に関係ないものはプリントしなかったんですけど…」
と、何事もなかったようにFuj氏がいう。
何とFuj氏、3年半に亘るこのブログの、将棋に関するエントリを、すべてプリントアウトしてきたのだった。
何だこれ。何だこれ!? 何だこれーっ!!
…私は開いた口が塞がらなかった。
(つづく)
コメント (2)
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