一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「第24回将棋ペンクラブ大賞贈呈式」にお邪魔する(その2)

2012-09-23 00:05:41 | 将棋ペンクラブ
しかし私は、口にめいっぱいパスタを頬張っており、さすがに声を掛けるのは憚られた。米長邦雄永世棋聖は、そのまま私の前を通りすぎる。このとき、私の千載一遇のチャンスは逃げていったのである。
もっとも、パスタを口に含んでいなくとも、話し掛けられたかどうか。高校のときの文化祭で、瀧野川女子学園高等学校将棋部部長にアタックできなかった。旅行で一緒になった女子に、声を掛けられなかった。イベントの席で、山口恵梨子女流初段に声を掛けられなかった。W氏と談笑している室谷由紀女流初段に声を…。誰にも声を掛けられず、グズグズしているのが私の人生なのだ。
お楽しみ抽選会が始まる。景品は棋士の直筆色紙や棋書。全員に当たることになっているが、早く当たるほど景品選択の自由があるのはいうまでもない。
鷲北繁房幹事がビンゴマシーンを回す。2人目でKun氏が当たった。次は「17」で私。LPSAイベントなどでは、いつも何がしかの景品をゲットし、その強運を恐れられた私ではあるが、その運はきょうも健在だったようである。
色紙コーナーに目をやると、米長永世棋聖のものがある。「忍」「無心」とはどこかで見た揮毫だ。茶目っ気たっぷりである。
Kun氏が悩んでいるので、私はお先に「無心」をいただく。Kun氏は「忍」を選んだ。
部屋の壁際では、大庭美夏女流1級が指導対局を始めた。挑戦者は木村晋介将棋ペンクラブ会長ら。私も一局お願いしたいが、いまはその時間を歓談に回したいところである。
木村一基八段とTag氏が歓談している。さしずめ○○同盟というところか。私も入れてもらいたい。
ノースリーブの美女が、抽選に当たったようだ。大阪の佐藤圭司氏の知り合いらしいが、選んだ景品を見せてもらうと、「米長邦雄の本」だった。なかなかいい選択である。
きょうは棋士が大勢来場している。入賞者以外の方にも、演台で一言いただくことになった。
青野照市九段「最近は雑誌に書く内容が過激になってまして…。今月はいじめの話だったですけど、来月はロンドンオリンピックについて一言書きます…」
今月号の「将棋世界」、「いじめは犯罪である」は名言だった。これは来月号も買う一手だ。
三浦弘行八段「きょうは対局だったんですが、どうしても大賞贈呈式に出たくて…。もし相手が長考するようなら、こっちが投了してでも、こちらに駆けつけるつもりでした」
これはうれしいコメントだった。三浦八段は、交流会でもサイン扇子や色紙を提供し、将棋ペンクラブに理解を示してくれている。ありがたいことである。
神谷広志七段、西川慶二七段は東京で対局があったが、滞在を伸ばしての参加とのこと。こちらもありがたいことである。
上野裕和五段「9月に著書を出しますので、来年は受賞者としてここに上がります」
これは頼もしい、受賞宣言が出た。
木村八段「受賞者は皆さん喜んでるんですけど、それはいいんですけど、ちょっと何というか…誇らしげというか、ほかの人とは違うんだ、って顔をしてるんですね。それが面白くないですね。私も今度棋書を出しますので、来年はよろしくお願いします」
千両役者・木村八段のユーモアあふれるスピーチだった。
その間にも私は、米長永世棋聖と何とか…とばかり、米長永世棋聖の動向を注視していたが、風のように消えてしまった。これが米長流なのだろう。「米長将棋勝局集」はよかった、と伝えたかった。
木村八段に、思い切って声を掛けてみる。
「いつも植山先生と大野先生にお世話になっている者です」
「ああはいはい」
木村八段は先刻承知、というふうだ。木村八段とは初対面のはずだが…と思ったら、3年前に新宿のホテルで行われた、天河戦第1局の公開対局のとき、私は木村八段に挨拶していたのだった。
しかし木村八段がそのときのことを覚えているはずがない。つまりこの気さくさが、木村八段の魅力ということだ。
「私、木村先生の四間飛車破りの、NHKの本を所有しております」
「ああ」
「でもちょっとあれ、図面に誤植が多かったんですよね」
「……」
私はいらんことを口走る。しかしその後も、会話は弾む。「本を出すときもタイミングがありましてね。あの本を出した後に渡辺竜王の『四間飛車破り』が出たときは参りました。喫茶店の前にドトールが出来たようなもんですよ」
客(読者)をすべて持ってかれた、ということか。しかし巧妙な比喩ではないか。「しかしまあ、私のほうも好評でした」
「今度機会があったら、指導対局をよろしくお願いします」
「はいはい。ボクは厳しく指しますから。植山先生と大野先生とはどの手合いで指してるんですか?」
「角です」
「勝ったことはあるんですか?」
「は? はい、何番か緩めていただきました」
「ほうそれはすごい」
「でも指導対局ですから…。木村先生とは飛車落ちで…」
これは失言した。植山悦行七段と大野八一雄七段に角落ちで、木村八段に飛車落ちを所望するとは、両七段より木村八段のほうが手強い、と暗に言っているようではないか。やはり木村八段には、角落ちで教えていただくしかないのか…。
湯川博士幹事が来て、「また(原稿を)書いてくれよ」と私に言う。さっきも鷲北幹事に言われたが、そんな簡単に書けるものではないのだ。
しかしこれはマジで、何か書かねばなるまい。
(つづく)
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