一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

三十九たび大野教室に行く(その2)・植山悦行七段の思いやり

2013-01-25 00:05:17 | 大野教室
上手・植山七段:7六馬、8四桂、8七香 持駒:銀、香
下手・Ha氏:1一竜、9五玉、9六歩、9八馬 持駒:金、銀、桂2…

ここで植山悦行七段は△8三銀。以下▲8六桂△9二香(△9一香は▲1一竜がいる)▲9四桂打で、寄せの見えない泥仕合となった。
岡目八目だが、△8三銀では△9三銀がよかったようだ。これなら▲8六桂にも△9四香▲同桂△同馬▲8六玉△7六馬▲9五玉(▲9七玉は△8五桂)△8三桂までの詰みがあった。
ちなみにこの日放送されたNHK「将棋フォーカス」の講座で、先手▲9九玉、後手持ち駒・金銀桂の局面をやっていた。正解は△9七銀で、これで必至。△8七銀はのちの△8七桂が打てず、必至にならないのだ。上の局面も、これと同じ理屈なわけだった。
指導対局は結局上手が勝ったのだが、感想戦で私が「△9三銀」を述べると、植山七段は「△9二香で1枚トクするつもりだった」と言った。
さて、私の指導対局である。私は居飛車を採り、飛車先の歩を交換したあと、▲3五歩。対大野八一雄七段戦の序盤を踏襲したわけだ。そして植山七段も△4四銀。この進行は前局の経験で下手十分と見ていたので、ここでは自信があった。
左ではFuj氏が指導を受けているが、下手が芳しくない形勢だ。私なら投了しているところ。
私は居玉のまま突っ張る。ここで3時休憩となった。Hon氏が来ており、生徒はこれで6人(+W氏)になった。ここで大野七段からの提案があり、ミニトーナメント戦を行うことになった。参加費はもちろんかからない。景品はプロ棋士扇子だった。
アミダクジを行い、私は1回戦シード。休憩後、そのまま植山七段との指導対局を続行した。数手後の局面が下である。

上手(角落ち)・植山七段:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3二玉、3三銀、4二金、4三歩、5二金、5五歩、6三歩、6五銀、7三桂、7四飛、8五歩、9一香、9三歩 持駒:歩2
下手・一公:1七歩、1九香、3六飛、3七桂、4五歩、4七銀、4八金、5七歩、5九玉、6六歩、6九金、7六歩、7七銀、8七歩、8九桂、9六歩、9七角、9九香 持駒:歩2
(▲6六歩まで)

以下の指し手。△7六銀▲7五歩△2四飛▲2五歩△3四飛▲同飛△同銀▲7六銀△2九飛▲6八玉△1九飛成▲7四歩△3六歩▲同銀△2八竜▲3三歩△同桂▲5八金寄△3七竜▲7三歩成
△6四桂▲6一飛△3六竜▲6七銀△4五桂▲1一飛成△5七桂成▲同金△5六歩▲2二銀△5七歩成▲7九玉△4一金▲5四桂 まで、一公の勝ち。

▲6六歩に△5四銀は▲4二角成~▲7五金があるので、上手は勢い△7六銀だが、▲7五歩とフタをして銀得が確定した。しかし飛車交換になり、△2九飛と先着されたところでは、まだまだ難しい形勢と見ていた。
△6四桂に▲6一飛が微妙なところで、これに△7六桂なら▲7七玉と上がり、次の▲4二角成を見て上手も忙しいだろうと思った。
植山七段は△3六竜とこちらの銀を取り、駒損を回復。さらに△4五桂と懐を拡げ、気が付くと下手が劣勢になっていた。下手はどこで悪くしたのだろう。
植山七段は△5七桂成~△5六歩。受けていてはキリがないので、寄せられたらしょうがないと、私は▲2二銀と開き直った。
幸い下手玉に寄りはなかったようで、上手は△5七歩成を利かしたあと、△4一金。私は▲5四桂と待ち駒をして、下手の勝利となった。以下△4四歩も▲4一竜△同玉▲5三桂△同金▲4二金までである。
しかし…。どうも釈然としない。
大野七段を交えた感想戦で、植山七段は「ずぅっと悪かった」「▲7四歩がいい手だったね」と言った。しかし上手が△4五桂と跳ねたところでは4四からの逃げ道ができ、上手が優勢になっていると思う。したがって△5七桂成では、△3三玉と早逃げされたら、下手が容易でなかったはずだ。
私がそれを言うと、「(下手に)桂香がいっぱいあるから(それでも捕まる)」とのことだった。
それはそうかもしれないが、実戦的には下手が勝ちにくい。ただ植山七段は、「▲1一飛成では▲6三とがよかったね」と言った。ううむ…。
これはLPSA駒込サロンのころから感じていたのだが、植山七段が指導対局のとき、下手が優勢になると、あまり抵抗しない。それどころかヨリが戻ると、わざと?悪手を指して、花を持たせてくれることがある。下手がここまでうまく指したのだから、あなたの勝ちにしてあげましょう、というわけだ。
こんなこと植山七段に聞けないし私の憶測にすぎないのだが、きょうの将棋を見ていると、明らかにその意図を感じるのだ。この将棋は完全に逆転していた。そしてそうなったら、プロは逃さないものである。
上手は負けても何でもない。下手は勝てれば一日がハッピーだ。植山七段はそんな下手の心理を熟知しているのではないかと思う。
今年の初勝利は、植山七段のありがたい配慮があったのだった。
(27日につづく)
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