三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版」

2024年05月23日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版」を観た。
映画『ソイレント・グリーン -デジタル・リマスター版-』公式サイト

映画『ソイレント・グリーン -デジタル・リマスター版-』公式サイト

映画『ソイレント・グリーン -デジタル・リマスター版-』 5月17日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

 ジョージ・オーウェルの小説「1984」と同じく、未来のディストピアを描いた作品である。登場する施設やデバイスや人物の衣装などは、いかにも50年前に想像した50年後で、これが精一杯だろうと窺える。ただ、暴動鎮圧のために警官が被るヘルメットは、どう見てもアメリカン・フットボールのヘルメットで、多分ジョークだろう。

 テーマは、いまでも十分に通用する。文明が加速度的に発展し、生活が便利になった反面、大量消費、大量廃棄でゴミが大問題となり、エネルギーの消費と大量生産で産業廃棄物が公害を生む。核分裂発電所は、核のゴミを生み出し続け、処分場を地方に押し付けている。カネをやるからゴミを受け入れろというゴリ押しだ。そのカネはもとはといえば税金で、要するに国民のカネなのだが、ほとんどの政治家と役人は、自分のカネだと思っている。世界中同じだ。

 強欲資本主義が、強欲な政治家と癒着したら、ろくでもない未来になるのは目に見えている。強欲の連中が食欲と性欲を独占する。50年前の価値観では、いい酒といい食物といい女が、いまも同じかもしれない。そのために人々からあらゆるものを搾取する。最後は人権どころか、人々の生命さえも蹂躙することになる。
 そして生産性のない者や反体制的な人間は排除される。2022年の邦画「PLAN 75」で示された政策を、本作品はもっと過激にした形で表現している。暴動鎮圧は、重機を使って人間をゴミと同じようにかき集めて運んでいく。なんとも凄まじい。

 どう考えても将来のない状況だが、強欲の連中は、いまだけ、自分だけよければいい訳だ。自民党とまったく同じである。チャールトン・ヘストンが人類に向かって危機を叫んでいるのに、誰も聞く耳を持たない。
 交換所の冷めきった老人たちは、神を否定し、人間を否定する。ソル老人は、神はきっとhomeにいると言うが、homeがどんなところか、彼は百も承知だ。つまり神は死後の世界にいるということだ。言い方を変えれば、死ぬことだけが救いだという絶望である。それはある意味、人類の絶滅を予言していると思う。

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