映画「先生の白い嘘」を観た。
オトコに人格を蹂躙されて、心底オトコを憎んでいるオンナ。
オンナの人格を認めず、性のはけ口としての利用価値だけを求めるオトコ。
オトコの愚かさを理解し、利用しようとするオンナ。
オンナの欲望が恐ろしくて二の足を踏むオトコ。
四者四様のバイアスが、それぞれの生き方に影響し、全員が不幸という絶望的な状況からスタートする。そして徐々に関係性が変化していく様を描く。微妙な演技が求められる訳で、奈緒と風間俊介の卓越した演技力があればこそ成立した作品だと思う。
前日に、女性の立場の苦しさを体現した作家シャーリー・ジャクスンをモデルにした映画を観たばかりだったので、同じく女性差別をテーマにした作品かと思う部分もあったが、どうやらバイアスを手がかりに、人間の精神の闇を表現するのが主眼のようだ。
ただ世界観は狭く、人物像がなべて浅い。マウント争いみたいなシーンも登場するので、もう少しマシな登場人物がいてもよかった気がする。人間はそれほど単純ではない。原作も同じなのだろうか。
あまり面白い作品ではないが、性と生殖という、動物にとっては同じ意味のふたつの言葉が、人間にとっては実は決定的な違いがあるものだという着眼点は、古くて新しい。性に振り回され、生殖に未来と安定を夢見る人間という生物の不条理は、俳優陣の見事な演技で存分に表現されていた。