三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「威風堂々奨学金って言い方やめてもらっていいですか?」

2024年09月01日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「威風堂々奨学金って言い方やめてもらっていいですか?」を観た。

 なるせゆうせい監督は、前作の「君たちはまだ長いトンネルの中」では、経済の側面から国民の暮らしを描き、政治が何をして、何をしていないのかを暴いてみせた。
 本作品でも、同じく経済の側面から個人の暮らしを描くのだが、奨学金に焦点を当てて、政治が国民の困窮をまったく理解していないこと、それでも各個人がなんとか困窮を打開しようとしていることを明らかにした。なかなか尖った作品である。

 スガが総理大臣をしていたとき、日本学術会議の新規会員について、6名の任命を拒否した。6名が安保法制などの安倍政治に反対の立場であったことが理由だと思われるが、そもそも学術会議の会員を総理大臣が任命するのは国会が指名した総理大臣を天皇が任命するのと同じで、形式的なことだ。天皇が任命を拒否したら前代未聞の事態が出来する。
 学術の発展が経済の発展に寄与することを理解していないから、こんな無理を通してしまったのだ。自民党の経済オンチは、森喜朗が首相のときにピークを迎えた。同時期にアメリカの大統領だったクリントンは、来るIT時代を想定して「情報ハイウェイ」構想を打ち出し、IT技術者を熱心に育成した。森はと言うと、ITという言葉さえ知らず「イットってなんだ?」と言っていた。以来、アメリカと日本の経済格差は開く一方で、アベノミクスが日本経済の息の根を止めた。
 日本の奨学金の殆どが、返済を要求される学生ローンと同じなのは、学術会議会員の不任命や森喜朗の経済オンチ、アベノミクス等と同じで、大学の研究が経済に寄与することを理解していないことに由来する。お陰で日本は後進国まっしぐらだ。

 スガは所信演説で「自助、共助、公助」の順番を示して、国は個人を助けないという姿勢を明らかにした。お陰で貧しい人々はますます貧しくなり、貧富の格差は増大した。本作品もそのあたりを意識しているようで、主人公の彼氏が着ているTシャツに書かれている「貧乏人」「戦力外」は、皮肉が効いている。
 成人年齢が18歳になった状況で、女子高生から女子大生にかけての主人公の奮闘ぶりは、それなりに共感できるところがあって、面白く鑑賞できた。困っている人に優しくない日本社会の病巣が炙り出されていて、改めて政治や経済を考えるきっかけになったと思う。

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