喜多院法興寺

住職のひとりごと

「奇跡の一本松」保存の為、12日に切断

2012-09-12 06:53:56 | Weblog
9月12日 編集手帳 読売新聞

 {ベランダの鉢植えが花をつけただけで、あるいはわが子の寝顔を見つめただけで、悩みがふと軽くなる。そういう経験は誰にもあるだろう。心の算数は、いつも不思議である。10の重荷を支えるには10の助けが必要かといえば、そうとも限らない。たった1の励ましが100の重荷を軽くしてくれることもある◆詩人の伊藤桂一さんに『微風』という詩がある。〈 掌 ( て ) にうける/早春の/ 陽 ( ひ ) ざしほどの 生甲斐 ( いきがい ) でも/ひとは生きられる…〉◆岩手県陸前高田市の高田松原で、津波から唯一残った「奇跡の一本松」も被災者の陽ざしであったろう◆家族を亡くした絶望のなかで、この一本松の姿に生きる心を暖めた人もいたはずである。被災者を慰め、励まし、ついに枯死した一本松は、きょう、保存作業のために切断されるという◆大震災から1年半がすぎた。あのとき、英国のある新聞は1面全面に「日の丸」のイラストを掲げ、日本語で〈がんばれ、日本。がんばれ、東北〉と書いてくれた。アフリカの子供たちは日本語で唱歌『 故郷 ( ふるさと ) 』を歌ってくれた。そして一本松は…凍える掌にうけた陽ざしの数々を思い出す。}


 東日本大震災の発生から1年半となった、岩手県陸前高田市の高田松原で、津波から唯一残った「奇跡の一本松」は12日に切り倒される。地元の人らが、次々訪れ花束をささげたり、切断される前の姿をカメラに収めたりしていた。切断された松は幹の中心をくりぬいて筒状にし防腐処理を施す。来年2月の予定で、元の場所に金属製の棒を立て、幹をはめ込み、複製の枝や葉を取り付けて、津波を耐えて生き残った姿にする。人々に勇気をくれた「奇跡の一本松」に感謝したい。



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