喜多院法興寺

住職のひとりごと

今が蛍の季節か

2013-06-19 12:10:21 | Weblog

6月19日 編集手帳 読売新聞

 {妻が亡くなり、男のもとには二人の幼い子供が残された。男は子供たちを連れて蛍を見にいった。みどり色の、光の尾をひいて舞う蛍を見て思う。さびしいわが子を慰めようと、亡き妻が蛍に姿を借りてあの世から訪れたのだ、と◆〈其子等そのこらに捕とらへられむと母が魂たま蛍と成りて夜を来たるらし〉。窪田空穂うつぼである。一首の「母」を「父」に、「祖父」や「祖母」に、そっと置き換えて読んだ人もいるだろう。震災から迎えた3度目の、蛍の季節である◆何日か前の本紙・東京版で、東京都板橋区にある「ホタル生態環境館」の記事を読んだ◆福島第一原発の事故で全町避難がつづく福島県大熊町の川から卵を採取したゲンジボタルを、縁あって24年前から繁殖させてきたという。明滅する光に故郷の山や川が映るのだろう。期間の限られた一般公開の日には、涙を流す来館者もいると聞く◆〈太宰忌の蛍ゆきちがひゆきちがひ〉(石川桂郎)。都会の雑踏に暮らす身で、旅に出たときのほかはゆきちがう機会もあまりないが、この梅雨はどうだろう。「もしかして、あなたは…」と、昔の名前を尋ねてみたい虫である。}

 昔は家の近くで蛍を見たが、ヘリコプターでの稲の空中散布の影響と河川のコンクリートで囲まれた事で、蛍に欠かせない「かわにな」貝が減り、蛍がいなくなってしまった。いすみ市では山田川周辺を源氏ほたるの里として、自然保護を実施してうる。「源氏ほたるの里鑑賞の夕べ」は5月29~6月1日まで開催していた。あくまで鑑賞のためで、飛んできた源氏ほたるの捕獲は禁止している。今ならもしかしてほたるの光りが見えるかもしれない。

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