5月12日付 よみうり寸評
{19世紀後半に活躍したイギリス人の写真家、フェリーチェ・ベアトは、幕末から明治にかけて、20年以上日本に滞在し、数多くの作品を残した。
◆英仏蘭米の4か国連合艦隊による下関砲撃にも従軍。長州藩の砲台が占領された様子を写真に収めている。
◆「愛宕山から見た江戸のパノラマ」(東京都写真美術館所蔵)は代表作の一つ。手前に長く続く大名屋敷の白壁と瓦屋根、後方には東京湾や台場を望む壮大な写真だ。明治の近代国家に移行する前夜の風景を今に伝える貴重な資料と言えるだろう。
◆都教育委員会が独自に作成した教科書「江戸から東京へ」の巻頭に、このパノラマ写真が掲載されている。今年度から全都立高校で日本史が必修となった。
◆松尾芭蕉の旅立ちの地、彰義隊が立てこもった上野の寛永寺……。都内各地の史跡の写真も紹介され、それらを手がかりに郷土の近現代史をたどる構成だ。
◆東京への理解を深めつつ、先人の営みに思いを巡らせる。暗記物でない歴史の面白さを知るきっかけになればと思う。}
幕末の江戸の風景が、写真に納められていたのは奇跡か。今のデジタル写真技術は誰もが気軽にで画像が残せまた、その場で画像がチェック出来る。しかし、当時の最先端の写真技術は、高価であり撮影者自らが、現像焼き付けを行った。絵画は忠実に描くのは難しいが、写真は忠実に情景や時代を切り取ることができた。仁ではないが幕末の江戸時代にタイムスリップ出来るような気がした。