京都府舞鶴市杉山
京都府と福井県の境、大浦半島の付け根あたりに青葉山という山がある。
白山火山帯に属するコニーデ式の死火山で、若狭高浜付近から、その秀麗な姿を望むことが出来、若狭富士とも呼ばれている。
京都府側から見ると、全く異なった無骨な山容となるが、私はこちらから見た青葉山が好きだ。
若狭出身の小説家、水上勉の初期の作品に「霧と影」というものがある。
推理小説なのでフィクションではあるが、その舞台として登場する青峨山が、この青葉山であると思われる。
私が中学生の頃、植物の豊富な山、ということで青葉山の存在を知り、そしてこの「霧と影」を読んだ。
そこに描かれる深い樹海と山麓にある閉鎖的な集落。殺人の舞台になるのだから、小説での描写は不穏な空気を孕んで不気味さが漂っているが、実際には海を望む明るい山だ。
ただ、深い樹林もあるし、山頂で一泊した際には不思議な体験もしているので、明るさだけでなく、どこか陰を感じる山でもある。
前置きが長くなったが、山麓をうろついただけのものも含めれば、青葉山へは6回以上訪れていて、とても思い出深い山なので、麓にある神社のどこかに行ってみたいと思っていた。
地図を見て気になったのが、山の西側にある杉山集落そばの神社記号。
火山の裾野を思わせる緩やかな傾斜にあって、背後には深い森がありそうに思える。
更にgoogleの詳細な地図を見てみると、僅か150メートルほどの距離に、熊野神社、秋葉神社、大杉神社の三つの神社が記載されていた。
いったいどんなところだろう、と興味を抱かせるに充分であった。
集落の外れに車を駐車し、舗装された狭い横道に入る。
地形図にある神社記号の位置は熊野神社で、その一本隣の道を進めば大杉神社へと辿り着く。
大杉神社の名前の通り、杉の巨木が目に飛び込んでくる。
神社の下からは水が湧き出ており「大杉の清水」と呼ばれ、平成の名水100選に選ばれている。
柄杓や立て看板はあるものの、水自体はコンクリートの溝を流れており、溝から直接すくって飲むので「名水」という雰囲気でもなく、素朴であるのが好ましい。
各地の山で谷川の水を飲んできたが、ここの水は相当おいしいと感じた。
鳥居も質素であるのが嬉しい。
神社の向かいはワサビ田で、かつて杉山のワサビと言えば、日本一の味と言われるほどだったらしい。
一度は途絶え、現在は復活に向けて取り組まれているようだ。
当然、栽培には大杉の清水が使われているから、さぞかし風味豊かなのではなかろうか。
大杉の樹齢は800年を超えるという。
右に伸びる大木はタブノキ。
長い歳月を生きてきた木には、他の植物も根を下ろす。
社殿、というか祠は、前後に並んでいる。
大杉神社の横手から山へ登っていく道があり、それを少し進むと石灯籠が現れる。
短い石段の先に岩が聳えていて、その基部に祠がある。
どうやらこれが秋葉神社で、独立した神社としてみるのは少し厳しい気もするが、水、大木、岩と、この辺り一帯の環境自体が信仰対象に相応しいと言える。
秋葉神社から更に山道を進む。ほぼ平坦なので苦労は無く、それなりに踏まれた道を3分も歩けば熊野神社前に出る。
電柱が無粋だが、緑豊かな空間が迎えてくれる。
鳥居と社殿の間の鮮やかな緑は公孫樹の葉で、色付けばさぞかし美しいだろう。
鳥居横の杜を見る。
向こうに見える祠のようなものは、実はトイレだったりする。
それにしても濃密な緑だ。
雨が降る中の参拝だったが、滴る水滴まで緑に染まってしまいそうな場所。
本殿。
本殿左手には、さざれ石のような露岩があり、何か祭祀されているようだ。
その背後の杜。
よく見れば、斜面の先、木々の奥に岩肌が見える。
踏み跡程度の小道があったので登ってみることにする。
ぐずぐずと崩れ易い嫌な斜面を登りきると、先ほどの秋葉神社と同じく、安山岩質と思われるざらついた岩が聳えており、そこに穴が穿たれ木枠が嵌め込まれている。
ちょっと高い位置にあるので、中をしっかり見ることが出来なかったが、何かの像が置かれていた。
かつては修験道の山として女人禁制だった時代もあるらしいから、その関係かも知れない。
熊野神社から集落への道を歩く。
山の間を雲が覆っているが、その下は海である。
風光明媚で気持ちの良いところで、いずれ晴れ渡った日にも再訪してみたい。
2万5千分1地形図 青葉山
撮影日時 081023 6時半~8時50分
駐車場 神社への分岐近くで道が広くなっている場所がある。
地図
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近所に式内社ってありましたっけ?
ウェットなのは天気のせいもあると思いますが、
日本海側特有の陰みたいなものもあるのは確かです。
焼肉十人前って・・・
やっぱり肉を食べないと太れませんかね?
175センチ59キロ、高校時代から殆ど変わらないです。
もうちょっと肉を付けたいんですが・・・。
まあ式内社に限らず良い神社は各地にありますし。
いや、それはそれでマニアは忍耐力の鍛錬が出来ているかと(笑
写真を撮るにしても、いい光を待つということで、
私も日々、忍耐力の鍛錬を・・・。
って、日常で役に立つとは思えませんが(笑
私も何とか休みが取れそうな感じです。
でも、丹波辺りが桜の満開になりそうなときに、
桜の散った南紀に行くのは勿体無いなぁ・・・
何も考えずに撮ると2000枚くらいは電池が持つんですが、
悩みながら撮るので、たぶん1100枚くらいでしょうか。
電池三つに記録メディア3ギガぶん、
フルに使ってきます。
なんですね。何度かネットで調べたことあるんで
すが全然印象違いますね。もっとカラッとした感じ
かと思ったんですが凄くウエットですね。
自分は大阪に行くと必ず肉うどん食べますよ。
関東で食べたらガッカリしたんですよ。。。
肉苦手なんですかぁ!hiro1jzさん痩せ型ですね。
自分は四十近いのに、この前、焼肉十人前を・・・
してしまいましたよ。トホホ。
ぐえ!関西は式内天国ですね。自分なら年に三百の
式内参拝するだろうなぁ・・・
この前初めて武蔵の式内の論社の神主さんに嫌味
言われましたよ。
「うるせぇインチキ式内のくせに」と喉まで出か
かったんですが御朱印欲しいから我慢しました。
マニアは人間を駄目にしますねぇ。
今日休みとると社長に報告したら失禁しそうになる
ほど嫌味言われましたよ。私は貝になりましたよ。
何故か本部長も死ぬほど嫌味言ってました。
そんなの関係なく元気に楽しむだけですわ。
二千枚って!どんだけ写真撮ってくるんですか?
楽しみに待ってますよ。
若狭富士は、眺めてよし、登ってよしの名山です。
周辺の神社を幾つか周りましたが、
どこも小さい神社ながら、大木が多くていい雰囲気でした。
特に山の北側の集落は、海が望めて伸びやかな気持ちの良いところです。
なるほど、ざるそばが好きな私には関東でも無問題ですね。
肉をあまり食べない私は、お店で肉うどんを食べたことが無いです・・・。
確かに、祖父母の家、親戚の家、近親者を見渡してみても、
すべて徒歩圏に式内社がありますね。
神主さんたちにとって、そういう風に関心持ってる人がいる、
というのは嬉しいんじゃないでしょうか。
まああまりに熱心すぎると、なかには閉口される方もいるかもですが(笑
式内参拝が一段落って、目処はあるんでしょうか?
全国をターゲットにされているわけではないと思いますが、
それでもかなりの広範囲ですよね?
ホントに終わりの無い世界だと思いますが、
ロマンですよねぇ。
お、宮城ですか。
今週は寒いですし、体調と路面にお気をつけ下さい。
私は南紀行きに備えて、カメラのバッテリーを買い足しました。
これでバッテリーが三つ。
2000枚は撮れそうです。
>幽黙さん
ロケーションは最高でした。
神社だけでなく、周辺の小道を歩いているだけで、
しみじみ「いいなぁ」と思えるようなところです。
本殿は、かなり暗くてジメジメしたところにある割には、
比較的きれいに管理されていて良かったです。
やっぱり山の神ですかね?
古からの素朴な信仰がさりげなく───
まさにそんな感じです。
山も海も、木々も岩も水も、すべてが豊かで、
人と自然が溶け合うような雰囲気があります。
信仰も垣根なく融合していきそうな・・・。
>Junさん
雨が降っていて、かなり陰気ではありましたが、
環境は素晴らしいところです。
ホントに溶けてしまいたいような場所です。
HNは使い慣れたものがいいですよねぇ。
私も元々はただの「hiro」だったんですが、
ありがちなので当然すでに誰かが登録してますし、
色んな場面であまりにも被る可能性が高いので、
いまのHNにしています。
もう今くらいの時期になると、
曇りの日の方が狙い目でしょうね。
でも、都会の神社は撮影したことが無いので、
ちょっと勝手が判りませんが・・・。
都会とはいえ、ちゃんと鎮守の杜が守られているのは嬉しいですね。
>uziさん
大木と水が主役の、素朴でいいところです。
水は本当に美味しいです。
逆に私は松尾寺のそばは何回も通っているのに寄ってないんですよねぇ。
写真を見ると良さそうなところなんですが・・・。
各地の山の神を見てらっしゃるから間違いないでしょう。
この周辺は、あちこちで火山岩が露出してますので、
探せば岩石祭祀されているような場所がありそうです。
写真で見た事がありますが、あの枝垂桜は見事ですよねぇ。
7分咲きくらいから、被写体としても見映えがするように思います。
家の近所の桜はまだ一輪も咲いてないですし、
思っていたより今年は早くないような。
丹波のどこかを周ろうとは思っているのですが、
南紀行きの都合もあって、ピークを外してしまいそうです・・・。
最近、こういう感じの神社に引かれます。
>さざれ石のような露岩があり、何か祭祀・・・
幽黙さんと同様、私も山の神か?と思いました。
岩石祭祀にも興味があります。
2年前、元伊勢皇大神社へ行った帰り、松尾寺に寄ったのですが、
こんな素敵な神社があったのですね。
先日、奈良公園にある氷室神社に行って来ました。
古い大きな枝垂れ桜があり、奈良県で最も早く咲く桜とどこかで読みました。氷室神社の解説には「エドヒガン系の里桜」とありました。
7分咲きほどでしたが十分美しかったです。
何年か前に行った時は満開で、重たい様に垂れておりました。
その時はソメイヨシノも咲いておりましたので、
来週辺り、京都でも行こうか・・・
悩みます。
自分もそこに溶けてしまいたいなぁ。
gooにブログを作ったら、HNが変わってしまって、投稿の度に使い慣れたものに訂正してます。
面倒ですが、こっちの方が好きなので(笑
gooの方は、まだ瑞ヶ丘八幡しかアップしていません。
この季節になると朝の8時にはもう日差しが強くて駄目ですね。
でも早起きも辛いし(普段4時40分に起きているので休日はゆっくり寝たい)
八幡さんはマンションに囲まれた都会の神社なんですが、杜は昔のままで嬉しかったです。
小さいながらも原生林なので、かなり太い木が生えているのですが、他の木と重なって正体がわかりません。
その素朴の中にあって
熊野の本殿彫刻の瀟洒なこと
これもまたいいですねぇ
さざれ石傍に祭祀されてあるのは
山の神かもしれませんね
岩に穿たれた孔の木枠の中も
修験道の役行者や明王や権現かもしれませんが
あるいはまた山の神的存在かもしれません
いずれにしても
古からの素朴な信仰がさりげなく
豊かに残されている空間は素晴らしい
雰囲気なんですね。思ったいじょうに深い緑が印象
的ですね。御神木も凄いですね。
最後の集落の写真も良いですね。ノドカだなぁ。
関東とかの汁は好みわかれますけど冷たい蕎麦の
汁は、かわらないですよ。
肉うどんは、絶対関西の方が美味しいですよ。
長野は神社の社殿も緑・・・そんで蕎麦も満足
できますよ。
友人の産土さんが式内と聞いて失神しそうになっ
た記憶あります。関西では、、そんなに珍しく
ないんでしょうね。
式内にこだわりなかったんですけどね。なんで、
こんな生き物になったんだろ?
式内みると御朱印と伝承もとめて電話しまくり
とかなんですよ。これは迷惑ざんす。
旧社=終わりなき世界。。。良いフレーズ。
気に入りました。でも高い山の山頂とかパスした
いです。根性ないですぅ。
でも式内参拝が一段落したら旧社地も行って古代
を夢想したいなぁ。
やっと休日の許可を言い出しました。WBCの
おかげで簡単にクリア。今週は宮城でぇ~す。
hiro1jzさんも爆走してください。神社が待って
ますよぉ。