神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

継桜王子

2019年03月09日 | 和歌山県

和歌山県田辺市中辺路町野中


久しぶりにT君と出掛けることにする。
だが、季節的に中途半端でもあるので、あまり撮りたいものが思い浮かばない。
梅の花ならそろそろ咲いていそうだし、昨年訪れた賀名生梅林にはもう一度行ってみたいが、満開にはまだ早い。
それならと、もっと南の梅林を検討するものの、南部梅林は人が多そうで、その周辺の梅林を調べてみても、惹かれる風景が見当たらない。
更に南へと範囲を広げていくと、小森梅林というのが目に入った。
地図に記載は無く、ごく僅かな記事がネットで見つかるのみ。
実際に小森梅林という名称が使われているのかどうか知らないが、旧日置川町の小森というところにある。
ということで、今回はそこを起点に、他に行きたい場所を決めていったのであるが、結局、小森梅林はオマケ扱いの記事になってしまった。

いつも阪神高速だけ使って、あとは下道で行くことが多いけれど、今回は贅沢にも田辺まで高速で行く。
その先の日置川へも無料の高速で、二時間ほどで南紀白浜を過ぎ、遥か遠いイメージの日置川には意外と早く辿り着く。
日置川インターからは日置川沿いの県道を走り、安居の集落で山への狭い道に入ると、暫くで山に囲まれた小盆地のようなところに出る。
そこが小森で、盆地を埋めるように梅の木が植わっている。



辺り一面が梅で、梅の花の香りが漂っている。
日曜にも関わらず花見客は皆無で、逆に梅林を手入れする人は多い。
狭い道では軽トラを除けてくださったり、出逢う方みんなが挨拶してくださったりと、素敵な場所で素敵な人達である。



だからオマケ扱いなどしたくはないのだが、良くも悪くも、ここは観光梅林ではなく、鑑賞向きではないのだ。
ただ見る分にはそれでもいいのだが、写真を撮るとなると、青いネットが目障りだし、パイプが通っていたりする。
この盆地を見下ろす高いところへも上ってみたが、梅林を一望できて美しいものの、写真にするには木々が邪魔であったりと、何かと欲求不満になる。



一画には、小さな牧場があって、黒毛の和牛らしきものがいた。
熊野牛というやつだろうか。
楽しくはあったが、写真的には不満の残るまま、次の目的地へ向かうことにする。

これから向かう継桜王子は結構離れており、元来た道を暫く戻って、国道311号線に入る。
ドライブイン的なところに立ち寄って昼食。
T君は熊野牛の肉うどん、私は和歌山ラーメンとめはり寿司のセットを食べる。
そこからは直ぐに国道を離れ、やや狭い道を野中へと進む。



神社の少し手前に「駐車場」と傾いた看板に書かれた場所があったのでそこに車を入れる。
参拝者、もしくは観光客用駐車場と思うのだが、そのような文字は無かったし、もしかしたら停めては駄目なところかも知れない。
かやぶきの茶屋を過ぎると神社入口が見えてくる。
付近は素朴ながらも観光客を迎えるような雰囲気があるが、ここも余所者は皆無。



ここは、鳥居前と参道両脇に立つ巨杉が見事。
樹齢800年ほどであるらしいが、本来、もっと木々が繁っていたところ、明治の神社合祀令の際に多くが伐採されたという。
今残っている杉の巨木は、南方熊楠の尽力によるものらしい。
ここの杉は一方杉とも呼ばれ、枝が那智大社の方を向いていることによるが、これは植物の向日性によるものである。
それはともかく、随分前に、このすぐ近所にある野中の清水までは来たことがある。
まだ神社巡りを始めて間もない頃で、その時はまだ「〇〇王子」という文字を地図で見ても、何のこっちゃ、であったので、ここには立ち寄らなかった。
熊野古道に興味のある方は当然ご存知であろうし、そうでない方も、王子社で検索すれば詳しい説明は簡単に見つかるので、あえてここに書く必要もないだろうが、べつに継桜神社と書いても差し支えないと思われる。



参道はかなり急であるにも関わらず、手摺の類いは設置されていない。
写真を撮るにはありがたいが、足腰の弱った高齢者には厳しいだろう。



石段を上りきると少し開けた場所に出て、その右寄りに本殿が建っている。



数年前に地元の人が書かれた記事で、この社殿の傷みが激しく修繕のために寄付を募っている、といった内容のものを見たことがある。
そこに掲載されていた写真では、塗装は剥げ、高欄は朽ち、土台も腐って社殿は傾いていた。
私は王子社について詳しくはないが、継桜王子は数ある王子社の中でも比較的有名なところだと思っていたので、その写真を見たときは驚いた。
今回、実際に訪れてみて、無事、その社殿が修繕されたことを知り嬉しくなった。



派手なようでいて渋さがある。
なかなか味わい深く、周囲の風景とも違和感なくある。



誰も来ず、思いのほか寛ぐことができた。
さて、次の目的地に向かうとしよう。


撮影日時 190224 小森 9時30分~10時15分   継桜王子 12時50分~13時10分 
地図 小森 継桜王子


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6 コメント

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南紀の休日 (Jun)
2019-03-11 20:50:46
こんばんは

久し振りに南紀の風景を拝見しています。
梅は今こちらでも満開。
写真からも甘い香りが漂って来そうです。
派手さはなくても美しい、梅が好きです。

王子はみなべの伯母がよく口にしていました。
子供の頃はなんのことかわからず、でも訊くのも恥ずかしくて大人になるまで謎でしたよ。(笑

階段の急な傾斜を写真に撮るのは意外に難しくて、最後の写真を拝見してこんな風に撮れば良いのか、と思いました。
正面から撮影しても分かり難ですよね。

赤は緑の中にあってもあまり違和感がありませんね。
少しだけなら大丈夫。
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桜も南紀へ (hiro1jz)
2019-03-13 03:25:46
Junさん

こんばんは。
まだ確定ではありませんが、今月末には南紀へ桜を撮りに行こうと思ってます。
昨年に行った、花木の里と迷ってはいるのですが…。

一輪だけ見ると、梅も桜も似ていて、同じバラ科の植物だなと思うのですが、
どちらも甲乙つけがたい良さがありますね。
写真としては桜の方が撮りやすい気はします。

ですよね!
王子ってなんやねん、って感じです(笑
もしネットが無かったら、今でも知らないままだったと思います。

特に急傾斜を意図して撮ったわけではないですが、
確かに上から撮る方が伝わりやすいですね。

社殿の修復には1300万ほどかけたようです。
家の近所の神社は、一億ほどかけて新築していましたが、
何だかなぁ、という感じでした。
新しければいいというものでもないですし、
こういう社殿の方が親しみが持てます。
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Unknown (kuzu_araragi)
2019-03-15 12:04:43
2018年5月に継桜王子に行きました。熊野古道スタンプラリーで押印所がここでした。急な階段とまっすぐに伸びた木が印象的でスマホで何枚も写真を撮りました。本当はこの日に神倉神社にギンリョウソウが咲いているから
見に行きたかったのですが、予定を変更してスタンプラリーに行きました。高原熊野神社~大門王子~十丈王子をスタンプ求めて歩いていたら、大門王子から十丈王子の間にギンリョウソウが偶然にも咲いていてスマホで撮りまくり!
ペットボトルにお茶を入れて、おにぎりを握って行ったので景色の良い所で昼食にしました。初めて見る花で今年も見に行くつもりです。熊野古道を歩いていて外国の方ばかりとすれ違い、少しショックでしたが、日本人よりマナーはいいです。
帰りに湯ノ峰温泉でお風呂に入って帰りました。いつもながら同じ場所を撮っても、カメラマンが違えばこんなに違うモンかと・・・勉強になります。日常を忘れて自然の中で居るのがとても居心地がいい。神社と自然がスゥ~っと一体化して
その中に自分が居る空間が心地よい。あなたの写真からいつも心地よい風が吹いてきます。
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Unknown (hiro1jz)
2019-03-15 23:21:52
kuzu_araragiさん

おお、既に参拝済みでいらっしゃいましたか。
高原熊野神社は私も行ったことがありますが、いわゆる王子社はここが初めてです。

ギンリョウソウは腐生植物の中ではありふれているほうなので、
山を歩いていれば、時おり見かけることもあります。
ただまあ、私はいつもタイミングが悪く、既に茶色くなっていたり、
まだ地面から顔を出したところだったりして、写真に撮ることが出来ないままでいます。
あの白銀色の姿を、ぜひ神秘的に撮ってみたいのですが…。

スマホはスマホで、パシャパシャと気軽に撮るのは楽しいですが、
やはり表現力や、撮影者の意図を反映させるには、一眼に分があります。
カメラの力によるところも大きいとは思いますが、
私なりの表現を気に入っていただけるのは嬉しい限りです。
ありがとうございます。
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狛犬 (uzi)
2019-03-27 19:39:56
お腹の引き締まったここの狛犬にひかれました。
(腹筋が割れていそう)

暖かくなってきました。家にこもってないで、外へ出るぞ!と思っております。
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確かに (hiro1jz)
2019-03-28 13:22:55
uziさん

本当ですね!
顔だけ見て、割と有り触れたタイプの狛犬だなぁ、
くらいにしか思っていませんでした。
このタイプで、こんなに胴体が細いのは珍しいかも。

uziさんは毎日ウォーキングをされてるみたいですし、
通勤以外に殆ど外に出ることのない私は、
もっと出かけなければと思います。
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