神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

瀞川稲荷神社

2018年05月01日 | 兵庫県

兵庫県美方郡香美町村岡区板仕野


石部神社を思い出して俄に活気付いたものの、やはりその後に続く場所が思い浮かばない。
取り敢えず国道9号線を更に進むが、天気が下り坂のせいもあって、周囲の風景はますます冴えなくなっていく。
運転はT君に任せて私は地形図と睨めっこが続く。
ちょっと寄りたいな、と思う場所があって、「あ、そこを右に」なんて言うこともあったが、「言うのが遅いっす」と却下される。
わざわざ引き返してまで寄りたいとも思わないので、まあ、いっか、で済ます。
現在地付近で行きたい場所を探すと間に合わないので、進行方向の先へと地図を移動させると、村岡地区の棚田に目が留まった。
まだ水は張られていないだろうなぁ、と思いつつ、棚田へと向かう。
国道から外れて、やや狭い道に入ると、標高が上がって棚田のある風景になるが、案の定、絵になるような風景は無く、ちょっと途方に暮れる。
悪あがきのようにスマホの地形図の表示を上下左右にスライドさせると、現在地からさほど遠くない場所にある、瀞川稲荷神社の文字が飛び込んできた。
ああ、ここがあったか、と思う。
何年か前に知って、いつか行こうと思っていた場所だ。 

村岡から峠を越え、棚田を縫うように進む道を下ると板仕野の集落。
そこから林道入って暫くで鳥居が見えてくる。
一目見て、ああ、もっと緑いっぱいの季節に来たかったなぁ、と、ちょっと残念に思う。



とは言え、初めて訪れる、それも奥深そうな神社だから、ワクワクする。



まずは急な石段で味気ない。



が、上りきれば、奥へといざなう気配を漂わせた参道に変わる。
杉の枯葉が参道を埋めているので掃除がしたくなるけれど、べつに信仰心とか綺麗好きというわけじゃなく、写真映えのためにだけど…。



やっぱりもっと緑があればなぁ。
いい参道だけに、不満が出てくる。



朽ちかけた鳥居をくぐると、やや広い場所に出る。



右から上ってきて、左の鳥居をくぐっていくわけだが、何やら参道らしき道が合流している。
「この先に何があるんやろ?」
「トイレでしょ?」
T君が即答する。
ふと見ると立て札があって、「トイレ→」と書かれている。
「いやいや、こんだけ立派な道でトイレしか無かったらビックリするわ!」



まあ、とにかく進んでみる。



すぐに鳥居が見えてきて、くぐってから振り返ると、ここも入り口の一つなのだと理解する。
車道がここまで来ていて駐車スペースもあるから、車で楽に参拝したい場合はこちらからがいいのだろう。



ショートカット的な参道であるが、雰囲気もあって悪くない。



先ほどの分岐点に戻る。



桜が残っていて、その向こうの谷底には雪が残っていた。
右上に見えている建物は休憩所のようなもので、中を覗いたT君が、「猪がいますよ!」と言う。
確かに猪の剥製らしきものがあるが、私は残雪の方に驚いたのでそれを無視し、「雪が残ってる」と言った。
「ちゃいますね」
「いや、雪やろ」
「ちゃいますね」
どうも猪をスルーされたことに対抗して雪を認めないつもりのようだ…。 



まあ、馬鹿なやり取りはともかく、やはり但馬は奥深く雪深い。



そして、参道も深い。



ここからは参道が狭くなるが、右上には本殿の屋根も見えている。



奥にベンチがあって、そこの屋根が見えてしまうのが残念。



ただ、岩も目立ちだして、神域の気配は濃くなる。



このような露岩があちこちにある。
さざれ石っぽくもあるが、土石流が堆積して出来たものらしい。






参道が右に折れた先に本殿がある。



人一人が通れるだけの幅しかない岩と岩の間を行く。



本殿は小さいが、独特の雰囲気に満ちた場所だ。



岩から顔を出すギボウシの若芽が瑞々しい。



参道を、本殿側の右に進まず真っ直ぐ行けば、数多くの境内社がある。









撮影していないものもあるが、たぶん、全部を見て回ったと思う。
「面白い」と言えば語弊があるかも知れないが、数多くの境内社や露岩、そしてその雰囲気は、巡っていて楽しいものだった。
ただやっぱり、緑豊かな季節なら、もっと美しい風景に出逢えただろうし、この先、谷川の上流にある滝にも行かなかったことが惜しまれる。 


撮影日時 
180417 14時15分~15時10分

地図