神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

甲森谷 その2

2010年10月05日 | 滝・渓谷



カツラの巨木を後にして、更に上流へと進む。
地形図でも判る通り、両岸の勾配は緩やかになり、谷間はゆったりとした空間が広がり出す。



緑が深くなってきた。



斜面には下草や潅木が無く、地面が剥き出しになっているのは多雪地帯だからだろう。
木々も密集せず、一本一本のテリトリーが広い。



それでいて大きな木が多いから、緑が疎らな印象は無い。



特にカツラの大木は次から次へと現れる。






見上げた斜面上にはトチの大木が多い。
トチの実は大きいので、地面に落下してくる度に、パキッとそれなりに大きな音を立てる。
こちらもその都度、クマか!? と思って振り向いてしまう。



トチも多いが、やはりカツラの方が圧倒的な存在感を放つ。






太さもそうだけれど、他の木には無い表情を持っていて、武骨な、陰翳の深い姿に見入ってしまう。






巨樹の向こうにも巨樹。
一部の登山者の間で、「トチとカツラのワンダーランド」と呼ばれているようで、なるほどとも思うが、私は横文字での表現はあまり好きでは無いので、ほかに何か的確な表現は無いものかと思案する。
結局、陶然とするばかりで何も浮かばない。






ここも、巨樹と巨樹と巨樹。



カツラには水辺がよく似合う。



これも大きい。






ここもまた、巨樹の向こうに巨樹。
クマへの不安は付き纏うものの、夢見心地にさせられる。






幹だけでなく、その根もまた逞しい。






こんな森が、地図にも載らず、何の保護指定も受けず、あるがままに残っているのは不思議なくらいだ。






これもまた、一、二を争う大きさ。
だが、もうどれが一番大きいとか、そんなことはどうでもよくて、この環境がいつまでも残ってほしいと願うばかりだ。



水と、木漏れ日の調べ。



叢生する幹に、命の漲る様。



苔や、羊歯や、その他、多くの植物をも育んでいる。
たぶん、目に見えない微生物や、気づきもしない昆虫たちも養っているのだろう。





















やがて谷が大きく左へカーブするところで、左岸から支流が流れ込んでくる。
巨樹の森は、だいたいこの辺りで終わる。
もっと遡っていけば、今度はブナの森に逢えるようだが、私はそこまで行く気力も無いので引き返すことにする。

往きは出来るだけ水際を進んだが、帰りは出来るだけ踏み跡を辿ることにする。
途中、茂みの中からイノシシが飛び出して肝を冷やしたが、向こうが逃げてくれて助かった。
鹿の声も、まだ時おり聞こえてくる。



横谷川まで戻る。
往きとはまた違った表情になっていた。



美しい石が多く、写真のように青いものや、緑色を帯びたもの、それから、石英の白い石が谷のあちこちに散らばっている。



途中、雨で三時間近いロスがあったとはいえ、もう谷間に西日が差し込む時間になっていた。



往きは雨で撮らなかった吊り橋も、明るくのんびりした雰囲気になって、重い筈の足も軽くなる。

林道に出て、駐車場所に戻ると、朝に見た風景が嘘みたいに穏やかで長閑な場所になっていた。
視野の隅で黒いものが動いたので、「クマか!?」とまた焦ってしまったが、二頭の黒毛の牛がのんびり草を食んでいるのだった。


撮影日時 100921 11時半~15時40分