都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「藤原靖子 個展『-LOGUE』」 現代美術研究所 3/12
現代美術研究所(墨田区墨田1-15-3)
「藤原靖子 個展『-LOGUE』」
3/4-19
ローカルムード満点の東武伊勢崎線浅草~北千住間。その浅草よりにあり、かつて玉ノ井と呼ばれた東向島駅近くに、思わぬ興味深い現代アートの拠点があります。それが工場跡をそのまま利用したと言うギャラリー、現代美術研究所です。今は藤原靖子さんの個展が開催されています。
まるで倉庫の裏口のようなドアを開けると、場違いなファッションショー会場と見間違えてしまうようなモデルたちのポスターと衣装が、カジュアルな感覚で展示されていました。それが6名のブロガーをモデルにした作品です。キャプションに頼らなければ、これらのモデルたちがブロガーだとも、そして彼ら彼女らの纏うビニール衣装に印字された文字がブログのエントリだとも気がつかない。それだけ洗練された、とても美的な印象を与えるインスタレーションです。エントリに覆われた半透明のビニール衣装を着て体を露出しながら、それでいて最も個を示す目の部分はサングラスでしっかりと隠されている。そこには、ブログの持つ匿名性と非匿名性の間が示唆されています。また、サングラスがエントリ記事でびっしり埋め尽くされている点も興味深く、「個を隠す最後の砦はエントリ製のサングラスだった。」と言う何やらシニカルな批判精神も鑑みることが出来ます。しばらくその膨大なエントリに包まれたモデルたちの姿を見ていると、いつの間にやらエントリによって人格が形成されている、つまりブログがリアルな人格を超えようとして勝手に膨れ上っている様子を捉えているようにも感じられました。ブログの無数のエントリに隠された、見えるようで見えないブロガーの本性。それがこのモデルたちによって体現されています。まさにブロガー必見の作品でしょう。(?)
この作品に続いて奥の部屋にて展示されていたのは、これまでに藤原さんが手がけたユーモアあふれる作品でした。ここにもなかなかシニカルな表現が随所に潜んでいて、ビスコシリーズ(「ドローイング#1 ビスコ」)のピーポーなどは、関係者が見たら思わず怒り出しそうなメッセージがこめられています。また、宅急便の「わるもの注意」や、奇想天外な動きをするスイッチも見逃せません。素材はお菓子の箱や新聞など、どれもありふれたものばかり。ビニールの衣装にも通じる部分がありますが、簡素な素材から生み出される思いの外に高い質感と、驚きや笑いを提供するセンスには脱帽です。
「まさか、こんな所で!」という偶然もあるのでしょうか。現代美術研究所でバッタリお会いしたのは、作家の藤原さんに取材中のDADA.さんでした。と言うことで「芸力」には、近いうちに藤原さんのインタビュー記事が掲載されると思います。そちらも楽しみです。(芸力のインタビュー記事は、何故かいつもひっそりと更新されていますが、どれも今タイムリーな作家さんの本音トークばかりで、非常に面白く出来ています。必見かと。)
駅からは徒歩3、4分。一カ所ある左折ポイントさえ間違えなければ、すぐに駅から着くことが出来ます。(ただしそこを間違えると、二度と抜け出せない迷路のような街区に突っ込むので要注意です…。オフィシャルサイトの地図をプリントアウトして持って行くことをおすすめします。)19日の日曜日までの開催です。(日曜開催が非常に嬉しい!)これはおすすめしたいと思います。
*期間限定の藤原さんのブログ「藤原靖子の付録」。(ヤスコのマークがとっても可愛らしいのですが、記事にはこの個展の開催が一時危ぶまれたことなども書かれていて、そうした苦労を微塵も感じさせない藤原さんの作品には改めて頭が下がります。ちなみに藤原さんには会場でも少しお話させていただきましたが、全く気さくな方で、作品についてとても丁寧にお話して下さいました。おっちょこちょいな私は、初め藤原さんのことをギャラリーの方と勘違いしたりして…。本当に申し訳ありません。そしてどうもありがとうございました。)
「藤原靖子 個展『-LOGUE』」
3/4-19
ローカルムード満点の東武伊勢崎線浅草~北千住間。その浅草よりにあり、かつて玉ノ井と呼ばれた東向島駅近くに、思わぬ興味深い現代アートの拠点があります。それが工場跡をそのまま利用したと言うギャラリー、現代美術研究所です。今は藤原靖子さんの個展が開催されています。
まるで倉庫の裏口のようなドアを開けると、場違いなファッションショー会場と見間違えてしまうようなモデルたちのポスターと衣装が、カジュアルな感覚で展示されていました。それが6名のブロガーをモデルにした作品です。キャプションに頼らなければ、これらのモデルたちがブロガーだとも、そして彼ら彼女らの纏うビニール衣装に印字された文字がブログのエントリだとも気がつかない。それだけ洗練された、とても美的な印象を与えるインスタレーションです。エントリに覆われた半透明のビニール衣装を着て体を露出しながら、それでいて最も個を示す目の部分はサングラスでしっかりと隠されている。そこには、ブログの持つ匿名性と非匿名性の間が示唆されています。また、サングラスがエントリ記事でびっしり埋め尽くされている点も興味深く、「個を隠す最後の砦はエントリ製のサングラスだった。」と言う何やらシニカルな批判精神も鑑みることが出来ます。しばらくその膨大なエントリに包まれたモデルたちの姿を見ていると、いつの間にやらエントリによって人格が形成されている、つまりブログがリアルな人格を超えようとして勝手に膨れ上っている様子を捉えているようにも感じられました。ブログの無数のエントリに隠された、見えるようで見えないブロガーの本性。それがこのモデルたちによって体現されています。まさにブロガー必見の作品でしょう。(?)
この作品に続いて奥の部屋にて展示されていたのは、これまでに藤原さんが手がけたユーモアあふれる作品でした。ここにもなかなかシニカルな表現が随所に潜んでいて、ビスコシリーズ(「ドローイング#1 ビスコ」)のピーポーなどは、関係者が見たら思わず怒り出しそうなメッセージがこめられています。また、宅急便の「わるもの注意」や、奇想天外な動きをするスイッチも見逃せません。素材はお菓子の箱や新聞など、どれもありふれたものばかり。ビニールの衣装にも通じる部分がありますが、簡素な素材から生み出される思いの外に高い質感と、驚きや笑いを提供するセンスには脱帽です。
「まさか、こんな所で!」という偶然もあるのでしょうか。現代美術研究所でバッタリお会いしたのは、作家の藤原さんに取材中のDADA.さんでした。と言うことで「芸力」には、近いうちに藤原さんのインタビュー記事が掲載されると思います。そちらも楽しみです。(芸力のインタビュー記事は、何故かいつもひっそりと更新されていますが、どれも今タイムリーな作家さんの本音トークばかりで、非常に面白く出来ています。必見かと。)
駅からは徒歩3、4分。一カ所ある左折ポイントさえ間違えなければ、すぐに駅から着くことが出来ます。(ただしそこを間違えると、二度と抜け出せない迷路のような街区に突っ込むので要注意です…。オフィシャルサイトの地図をプリントアウトして持って行くことをおすすめします。)19日の日曜日までの開催です。(日曜開催が非常に嬉しい!)これはおすすめしたいと思います。
*期間限定の藤原さんのブログ「藤原靖子の付録」。(ヤスコのマークがとっても可愛らしいのですが、記事にはこの個展の開催が一時危ぶまれたことなども書かれていて、そうした苦労を微塵も感じさせない藤原さんの作品には改めて頭が下がります。ちなみに藤原さんには会場でも少しお話させていただきましたが、全く気さくな方で、作品についてとても丁寧にお話して下さいました。おっちょこちょいな私は、初め藤原さんのことをギャラリーの方と勘違いしたりして…。本当に申し訳ありません。そしてどうもありがとうございました。)
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