「MOTアニュアル2006 No Border」 東京都現代美術館 3/4

「MOTアニュアル2006 No Border -『日本画』から/『日本画』へ- 」
東京都現代美術館(江東区三好4-1-1)
1/21-3/26

東京都現代美術館のアニュアル展は数年前からチェックしていますが、その中では最も面白く見ることが出来ました。今回の括りはいわゆる「日本画」。日本画の技法を用いて制作する若手作家7名の作品が並びます。「日本画とは何ぞや。」という問い以前に、作品自体に遊び心と魅力のある、肩の力を抜いて楽しめる展覧会です。

トップバッターの松井冬子は、いきなり私を壊れた美の深みへグッと引き込んでくれました。会場でも一際目立つ暗室に並んだいくつかの屏風画。遠目から見ると幽玄な味わいを感じさせますが、近づくとなかなかおどろおどろしくもあり、また退廃的な美感の匂いをなよやかに漂わせています。腑を曝け出して横たわる白目を剥いた女性。「浄相の持続」(2004)で見せた冷たい感触の肉体とその恍惚とした視線は、薄気味悪さを大きく通り越して、耽美的なエロスすら感じる作品世界を構築しています。咲き誇る白い百合の間で、穏やかに微睡みながら気持ち良さそうに内蔵をえぐり出す。百合と肉体に見る冷めきった白みが、包み込む黒髪の闇と美しいコントラストを描いています。まるで生首から垂れ下がる髪の毛のような「思考螺旋」(2005)や、人型の魂があの世を浮遊しているような「くちなわ」(2005)と合わせて、ぞくぞくするような不思議な快感を得られる作品です。

松井冬子と同じくらい興味深かったのは、巨大な和紙上に壮大な絵巻物語を作り上げる三瀬夏之介です。金箔や墨、それにアクリル絵具やコラージュを駆使して、山やビル、それに飛行機までを奇想天外に所狭しと描いていく。会場には「日本の絵」や「奇景」と名付けられた6点の作品が展示されていましたが、どれも地域や時間がゴチャゴチャになりながら、時には戦争画のような激しさを持って、巨大なスケールの物語を提供しています。宇宙から隕石が大量に落下しているのか、それとも宇宙人が攻撃して来たのか、何やらSF的な遊び心をくすぐる作品もありました。また、アクリルなどの激しいタッチでもみくちゃにされた画面と、それでいて伝統的な大和絵や琳派を思わせる感覚もかなり新鮮です。素材の和紙は、もはや厚手のビニールのようにゴワゴワとしていて、異様な質感を見せています。MOTの巨大な展示室にも美しく映える作品です。(展力「Recommend & Review」に、三瀬のインタビュー記事が掲載されています。)

壮大と言えば、作品のサイズこそ大きくないものの、画中のスケール感が魅力的な篠塚聖哉も必見です。原始地球の鳥瞰図のような、まだ生命の気配を感じさせない火山や溶岩、それに川に海。それらが奥行き感を見せながら、精緻な筆さばきにて描かれます。「指先」や「ゆりかご」と言うタイトルとは全く異なった画面が見える点も興味深く、内省的な心象風景を思わせる雰囲気が感じられました。

お馴染みの天明屋尚や、堅牢な構成感を見せながらもコミカルな画風が可愛らしい長沢明なども見応え十分です。日本画の垣根を超えた、ハイパー日本画(?)の展覧会。これは是非おすすめします。26日までの開催です。
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