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「辿りつけない光景 カオスモス'05」 佐倉市立美術館 2/26

佐倉市立美術館(佐倉市新町210)
「辿りつけない光景 カオスモス'05」
1/31-3/5

佐倉市立美術館で開催中の「カオスモス'05」(カオスモスとは、『カオス=混沌』と『コスモス=秩序』の造語。同美術館より。)です。大竹竜太、さわひらき、関根直子、田口和奈、ムラタ有子の計5名が告知されていましたが、まずは思いっきりさわひらきの名前に惹かれて行ってきました。

さわひらきは映像作品が全部4つほど紹介されています。おそらくどれもこれまで他で出品されたものでしょう。昨年の横浜トリエンナーレに展示されていた「trail」(2005)や、リビングに飛行機が飛び交うお馴染みの「dwelling」(2002)も見ていて楽しめますが、今回の4点の中で特に興味深かったのは、三分割の画面を使った作品「Between」(2004)でした。モニターの前に天井からぶらさがる、まるで電灯のカサのような物体の下に立つと、パチパチというような音が出ていることが分かります。ミニマル的な作品が目立つ中でも、こればかりはかなり物語的です。そのカサのような物体が画面へ入り込み、まるで月のように昇っては沈んで行きます。そして小さな鳥たちが主人公のようでもありますが、最後の観覧車はやはり見逃せません。また、やかんや糊、メガネからスプレー、さらには鍋からマッチ、ライターまでが全ててくてくと足を付けて歩く「elsewhere」(2006)も実に愛嬌のある作品です。そもそも、さわの作品をこれだけまとめて見ること自体が初めてだったので、この展示だけでも十分に満足出来るものでした。

さてさわ以外で気になったのは、ムラタ有子の瑞々しい油彩画です。大小様々の風景画や動物画がランダムな高さにて並んでいます。特に目につくのはともかく可愛らしい動物を描いた作品です。一推しなのは、小さなハムスターが両手をちょこんと前に出してポーズをとっている「Untitled」(2002)でしょうか。ポチッとくっ付いている目に、ヨレヨレとした不安定な線にて象られた体が、温もりある大きなタッチにてペタペタと描かれています。また風景画では、まるで色彩分割をしているような抽象性を持つ「Cherry tree」(2005)に惹かれました。枯れ枝が水色の空に伸びている様を捉えた美しい作品です。

その他では、ムラタと同じ展示室に並んで一際目立っていた田口和奈や、鉛筆やシャープペンシルを用いて細かいタッチの抽象画を描いた関根直子の作品も印象に残りました。明後日、日曜日までの開催です。

*佐倉市立美術館へは今回初めて行きました。市の玄関口でもある京成佐倉駅から徒歩10分弱。(JR佐倉駅からもバス便あり。)駅からの道のりは決して明るい雰囲気ではありませんが、思いの外に早く着くことが出来ました。美術館の建物は大変立派です。1918年建造で、県の指定有形文化財でもあるという本館の旧川崎銀行佐倉支店には街の歴史を感じさせますが、新館部分にある展示室もかなりゆったりとしたスペースがとられています。また興味深いのはあちこちに並んでいる椅子です。これらはどれも20世紀のデザイナーによる個性的な作品とのことで、お気に入りのものを見つけるのも楽しいでしょう。佐倉市は人口20万弱と決して大きな街とは言えませんが、このような立派な美術館を所有し、また良質な現代アートの展覧会を開催するところはあまり他に例がありません。同じく佐倉にある川村記念美術館国立歴史民俗博物館(これもまた非常に立派な施設です。)などと一緒に、ぐるっと「佐倉・アートの旅」というのもまたおすすめしたいです。
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