「Divine Intervention」 アラブ映画祭2006 3/11

国際交流基金フォーラム(港区赤坂2-17-22 赤坂ツインタワー1F)
「Divine Intervention」
(2002年/仏=パレスチナ/エリア・スレイマン監督)
アラブ映画祭2006



「映画、アマデウス、アラブ映画祭」という拙いエントリでも紹介した、アラブ映画祭2006。先日、会期終了日に上映された「Divine Intervention」を見てきました。スレイマン監督自らが出演した、パレスチナの今をシリアスな笑いで描いた作品です。

ともかくまず、この映画の語り口に慣れるまでには相当の時間ががかりました。いわゆる分かり易いストーリーでパレスチナの現状を描くことは一切せず、あるのは一見下らないパレスチナの人々の日常だけ。それがプロット別に断片的になって淡々と描かれていきます。一応メインの流れは、おそらくスレイマン演じるパレスチナ人の男性の父子の物語と、スレイマンに絡む女性との謎の関係の二つでしょうか。それらが全編意味ありげに、しかしながらどこかコミカルに、ただし恐るべき弛緩した時間の中にてバラバラに描かれる。しかもスレイマンは殆どセリフを発しません。スレイマンと関係する女性も、最後はテロリストの暗喩のような存在に化け、目を覆わんばかりのB級アクションにて、パレスチナの暴力の現状が逆説的に示される。欠伸の出るようなシーンから、その奥に潜む、対立や支配の構図を抉り出す様子は圧巻とも言えますが、如何せん構成が散漫で、どうしても集中力が削がれてしまう。完成度としても非常に危ういラインにたっている作品かと思いました。

この映画で最も印象深いシーンは、スレイマンと彼女の逢い引きが執拗に繰り返される検問所の様子です。ここで二人は検問所の様子を無表情で傍観しながら、そこで起きる不条理な状況をただひたすら提示します。唯一美しいシーンであった、アラファトの似顔絵が描かれた風船が飛ぶ部分も、ここから彼らが飛ばしたものです。フワフワと検問所を超えて、ユダヤやイスラムの寺院をかすめながらエルサレム上空を飛ぶアラファトの似顔絵。その不気味な微笑みには、風船の下で起きている、まさに検問所のような不条理さを嘲笑うスレイマンの思いがこめられています。この映画の白眉がそこにありました。



単純に面白かったかどうかと問われれば、即座に「つまらない。」と答えてしまいそうな作品でしたが、簡単に駄作だと決めつけられないような、パレスチナをシニカルな笑いで見つめる目は見事です。スレイマンの無表情な顔(画像参照…。)が頭に焼き付く作品でした。
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