毎日毎日、飽きもせず・・・

韓国のドラマ・映画・音楽を楽しんでいます。
そんな小さな楽しみを綴っていきたいと思います!(完全ネタバレしています)

『春夏秋冬そして春』

2006-03-29 23:39:35 | MOVIE
出演:オ・ヨンス(老僧)、キム・ヨンミン(青年)
   ソ・ジェギョン(少年)、キム・ジョンホ(子供)
   ハ・ヨジン(少女)
監督・脚本・編集:キム・ギドク
2004年


山奥の静寂に包まれた湖上に浮かぶ小さなお寺に暮らす老僧と小さな子供。
そして四季を通し成長していく姿を季節が変わるごとに表現していく。
この題名の通り季節は巡っていくそして終わりがない。
そんな四季を人間の一生そして輪廻転生のようなものを描いている。

映画のHPにこうあります。

  幼い頃~無意識に犯した小さな罪
  思春期~欲望と執着を知り
  成年期~裏切りに憤怒し
  壮年期~罪も傷跡も全てを受け入れて心の安らぎへ至る
  そして春~新しい生命は再び過ちを繰り返す

人は何かを傷つけそして傷つきその営みは決して途絶える事はないと。


 まず冒頭の門が開いて景色が見えた瞬間からこの世界に引き込まれました。
とても幻想的な湖上のお寺。
現実のモノとは思えずこれから始まる全てが絵空事のように映る。

春(子供時代)は誰しもが子供の頃したであろう、
子供特有の純粋がゆえに残酷な動物へのいたずらに対し老僧が
いのちについて最も子供に理解しやすい方法で諭す。
それは動物に石をくくりつけたのならその子にも石をくくりつけ
どれだけ苦しい事か身を持って体験させます。

夏(思春期)は初めて寺に女の子がやってきます。
そしてその女の子の体に興味を持ち、老僧の目を盗んでは快楽に耽ります。
そしてその女の子と離れる事ができずとうとう寺を後にします。

秋(成年期)、彼は罪を犯して寺に戻ってきます。
執着により人を殺めてしまいました。
自殺をしようとするも老僧は心を静めるために般若心経をナイフで彫らせます。
最後は警察に捕まりまた寺を後にします。

冬(壮年期)、罪を償って寺に戻って来たけれど老僧は自らの命を絶っていました。
その供養をし日々体を鍛えます。
ある日顔を隠した女が一人の赤ちゃんを寺に置いて行きます。

そして春、その赤ちゃんが大きくなり最初の春のシーンと同じ大きさになります。
あの時老僧に育てられていた子供が今はその捨てられた子供を育てているのです。

 春夏秋冬、それぞれの湖の景色は息を呑むほど美しく、
それぞれに色があって本当に見とれてします。
あと湖上の寺と陸を行き来する船。
船に書かれた絵も素敵で寺の中の仏像の顔も何とも柔和で優しいです。

私は秋の部分がとても印象深いです。
自殺をしようとするときに「閉」と紙に書き目や口を覆う行動が
見ていて滑稽だったし、なんと言っても老僧がネコのしっぽで
床に般若心経を書く所。そして見事な色づけ。
あの行動によって警察官も皆が穏やかになっていました。

あと景色的には冬に湖が凍ってしまい誰でもが歩いて来れてしまうという状況のお寺。
幻想的に水に浮かんでいる時とは違う季節でした。

多分欧米の人がこれを見たら、こういうのが「東洋の神秘」なのではないかと思います。
因果応報、輪廻転生といったものを考えさせられる、でも見た目も美しく
心に優しい作品だったと思います。


それにしてもキム・ギドク監督という人は本当にいろんな色を持った監督ですね。
彼の作品については本国では賛否両論あるようですが、海外で高く評価されているようですね。
その辺もなんか北野武監督と似ているような気がします。
私は振り幅の大きい人にとても魅力を感じるので、この監督の作品は好きです。