毎日毎日、飽きもせず・・・

韓国のドラマ・映画・音楽を楽しんでいます。
そんな小さな楽しみを綴っていきたいと思います!(完全ネタバレしています)

『サマリア』

2006-03-19 01:55:13 | MOVIE
出演:クァク・チミン、ハン・ヨルム
   イ・オル
監督:キム・ギドク
2004年
ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀監督賞)受賞

 
 高校の友達同士の二人チェヨンとヨジン。
チェヨンは援助交際をし体を売り、ヨジンは相手との連絡係とお金の管理、そして
警察が来ないように見張りをしている。
ある日ヨジンが見張りをしていた時、少し目を離した隙に警察がチェヨンの部屋意踏み込みます。
チェヨンは窓から飛び降りてしまい死んでしまう。
その後チェヨンへの罪滅ぼしのためにチェヨンが関係を持った男に次々と会っていき
そして自分もその男たちと関係を持ちその後チェヨンがもらったお金を返していく。
警察官であるヨジンの父はヨジンのそんな姿を見て男達に対し怒りをぶつけていく・・・


 なんとも切なく痛いお話でした。
本当なら痛いと思う事も若さゆえにそれを痛みと思わず
無邪気に淡々と時にはこれが愛だと錯覚しながらも援助交際を続けるチェヨン。
彼女が関係を持つ男にいつも職業を聞く事をヨジンはすごく嫌がるんだけど
チェヨンはそれを聞くことでその場限りの関係が、そうじゃないような気がして聞き続ける。
彼女が何故援助交際を始める事になったのか、単にお金が欲しかったからでは
ないはずです。
彼女は例え援交であっても人とのつながりを求めていたんだと思います。
彼女が死ぬ間際でも親の連絡先も言わなかったのはここに何かがあるんでしょうね。
飛び降りるときも警察から逃げると言うよりは、いたずらっぽい表情で
飛び降りても死なないとでも思っているかのようなダイブでした。
そして笑顔で死んでいった事。とても衝撃でした。
最後まで無邪気なまま、何も悪い事をしていないかのように・・・・


 彼女の死後、ヨジンもチェヨンへの罪滅ぼしの為に関係を持っていくのですが、
ヨジンには彼女を大切に思ってくれる父親がいた。
父親はヨジンには何も言わず相手の男ばかりを追い詰めていきます。
そしてその娘への愛情から父親は理性を失う所までいってしまいます。
警察官という立場の父が自らが罪を犯してでも守るべきものがあった。
最後の車の運転を練習さすシーンがなんとも切なかったです。
一緒に右、左、と言いながら踏み外した道をちゃんとした道へ戻していく作業。
あれはヨジンの生きていく道ですよね。
チェヨンが死んでしまい、ヨジンは生き残っている事、その違いは
大きな親の愛情があったか、なかったかという気がします。

ラストの河原で父がヨジンをヘッドフォンをつけて埋めてしまい
ヘッドフォンのコードだけが出ていてそこにCDを繋ぐシーン。
あれはなんと表現したら良いのか、暴力的な行為の中にも静と繊細な何かを表現する
とても心に残るシーンです。
キム・ギドク監督は“韓国の北野武”と言われているようですが、
「暴力」と「優しさ」という一見真逆の所にあるものを、
常に一緒に描いている部分が似ているんでしょうね。