私の日常

毎日の生活で印象に残った出来事を記録しておきたい。

中年を過ぎてからの壁

2015-11-18 07:20:25 | 日記

November 20, 2015

読み終わっていたがなかなか取り上げることが出来なかった、岩城けい『さようなら、オレンジ』(筑摩書房)について書こう。新聞の書評を読んで図書館に予約した本だ。簡単に読めるが、内容は深かった。二人の女性が登場する。一人はアフリカから戦火を逃れてこの地、オーストラリアに来た黒人女性、いわゆる難民である。もう一人は、研究員の夫の就職に同伴してきた日本人女性。二人は英語学校で知り合う。難民の女性は、2人の息子がいるが、夫はアメリカに行ってしまい帰ってこない。彼女は食肉加工所で働いている。日本人の女性は、大学に通い始めるが、幼い娘が預けていた託児所で死亡し、大学をやめる。二人の女性の生活を通して、異国で暮らす人たちのさまざまな壁、特に言葉の問題がある。大学卒業後単身オーストラリアに渡り結婚、渡豪20年になるという著者の体験が織り込まれているのだろう 。小説としても面白いと思ったが、 難民の問題を含め、世界中の人々が抱えている問題を提起してもいる。私は、生きるという一点を見つめた時、それぞれの人が持つ価値観を超えて、人間として大切なものは何かということを考えさせてくれる読みものだったと思う。

本書では、言葉の問題がネックとして取り上げられているが、30歳を過ぎてからの言葉の壁は子どもとは違う。特に部族語しか知らない難民の女性が、たどたどしい英語を学んでいく姿に、今、世界で増え続けている難民、特にヨーロッパの戦火の地の人びとが重なった。と同時に、点訳を通して少し知るようになった眼の障害者の世界についても思いが及んだ。最近は、病気や事故で、中年過ぎてから失明する人が多い。こういう方々が点字を習得することはなかなか困難であり、音声を使った支援の機器がいろいろ作られてきてもいる。フランス人のブレイユの発明から始まった点字も、これからは姿を変えていくのかもしれない。

画像は、妹のメールから。散歩していると、この花が懸崖になっているのを見かける。ミントの一種だと思うが名前が分らない。