功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

空手映画特選(05)『吼えろ鉄拳』

2007-07-05 23:28:44 | 千葉真一とJAC
「吼えろ鉄拳」
Roaring Fire
1981

●千葉真一の映画諸作や志穂美悦子の登場ときて、いよいよJACスターとしては最高の人気を誇る真田広之の登場である。子供の頃から役者として活動していた真田は『忍者武芸帖・百道三太夫』で初主演を華々しく飾った。だが内容的には不発なもので、突然炎の前でダンスを始めたりするなど、意図が掴めない演出と相まってよくわからない映画になってしまっている。
また、当時はジャッキーの人気が高まってきた頃でもあり、かつてJACが得意とした空手アクションは時代遅れの風潮さえ匂わせていた。千葉ちゃんも1977年の『空手バカ一代』で空手アクションを止め、その後は時代劇に新たな活路を見出したり、角川映画で大作に出演しだした。だがJACは、この『忍者武芸帖・百道三太夫』ではワイヤーを使うなど、新たなアクションを目指そうとしていた。
だが『忍者武芸帖・百道三太夫』は、それが結実し成功したとはあまり言い切れない。アイドル映画としては真田の売り出しに成功したが、いきなり丹波哲朗からジャッキー映画っぽい修業を施されたり、志穂美悦子がダブルヌンチャクで戦ったりと、ごちゃまぜ感は否めなかった。
そのあたりをスマートにして、更にもう一歩進んだ新しいアクションを…とJACが目指したのがこの『吼えろ鉄拳』だったと思われる。
この作品では真田が走ってくる車に蹴りを放ったり、断崖絶壁(当時のインタビューでは自殺の名所だったらしい)から飛び降りるなど、『忍者武芸帖・百道三太夫』よりもスタント色を濃くしている。それが最も解る場面が、クライマックスでの追跡劇だ。逃げる悪党の成田三樹夫を追い、真田は馬を駆ける。だが、敵は別個にヘリを用意し、真田に爆撃を仕向けた。かなり近くでもの凄い噴煙が舞い飛ぶ!これはかなり危ないスタントだ。
かつて『片腕カンフー対空とぶギロチン』で、空とぶギロチンを破ったジミー先生に金剛が爆弾を投げた。あれも危ないスタントだったが、真田はジミー先生と同じような距離で、更に大きな爆発をくぐり抜けながら走っている!恐らくは、当時の邦画ではかなり派手なスタントであっただろう。当時のジャッキー映画(『ドラゴン・ロード』)と比較しても染色のないものである。
加えて、本作は一部香港でもロケを敢行している。香港ロケではバスと看板を使ったアクションを披露し、『ポリス・ストーリー2』を先取りしているようで興味深いワンシーンもあった(このバスを使ったアクションは『ゴルゴ13/九竜の首』で千葉真一も演じた)。
もちろんキャストも充実しており、千葉ちゃんや志穂美悦子らを筆頭にJAC総動員で制作されている。まだ下積み時代だった黒崎輝が出ているのもポイントだが、特別出演のアブドラー・ザ・ブッチャーが美味しいとこを持っていっているので、あまり印象には残らない(爆
また、これは『女必殺拳』からの影響か、バラエティな敵キャラも登場している。流石に"字幕でキャラクター紹介"まではしなかったが、パンフレットにいくつか名前が紹介されている。中南米の巨大ボクサーギロチン・ジャック、韓国棒術の崔斗(演じるは福本清三!)、現代忍者シャドウズ甲賀10人、神伝流居合の達人・御子上大蔵、そして東南鬼(なんとグレート小鹿!)等々…。この他にも力也や田中浩も登場している。
話の方は、生き別れの兄を訪ねてテキサスから日本に戻った真田が、成田三樹夫と香港マフィアの黒い陰謀に立ち向かっていくというストーリーだ。しかし、本作はそれほど評価はされていない気がする。というのも実は本作、今では結構なレア作品となっているらしい。
私は本作のビデオは某店で運良く見つけられたが、この他にも真田広之関連では『燃える勇者』『冒険者カミカゼ』などがレア物らしい。『忍者武芸帖・百地三太夫』は海外でもDVDが出ているしレンタルショップにも置いている割合が高く、同じく真田広之主演の『伊賀忍法帖』はポニーキャニオンから2度ビデオが発売されている。
現在も『ラッシュ・アワー3』でジャッキーと共演したりと、脱・アクションしても人気のある真田広之だというのに、一体どうしてなのか?これ以外にもJAC関連では『けんか空手極真無頼拳』『空手バカ一代』『逆襲!殺人拳』『子連れ殺人拳』『女必殺五段拳』『必殺女拳士』『ウルフガイ/燃えろ狼男』などが国内ソフト化すらされていないのだ(一部はCSなどで放送されたことはある)。
本作は今一歩知名度が無いが、アクション俳優時代の真田主演作としても、またJAC映画としても一級品である。良い作品だけど、ここらへんどうにかならないのかなぁ…。