借刀殺人
Hit Man in the Hand of Buddha
1981
▼香港映画には意外な人の主演作があったりする(しかも完全な善役で)。例えば有名どころでは高飛・狄威・任世官が、更には白彪(バイ・ピョウ)・呉明才(ウ・ミンツァイ)・楊斯・慮恵光・孟海などの主演作まである。思っても見ない顔合わせも功夫映画の面白いところだが、更に意外な人の主演作がある。それが今回紹介する『借刀殺人』だ。
本作の主演はなんと黄正利(ウォン・チェン・リー)だ。足技ファイターとして有名な彼は韓国で多く主演作に出ているのであまり珍しそうではない気がするが、今回の黄正利はいつもの彼からは想像できない顔を披露してくれている。
■いきなり始まって画面に"香港黄正利影業公司"とでっかく出てきたので驚いた(笑)。そう、この映画は黄正利の監督作でもあるのだ。物語がスタートするや否や、黄正利が金持ちから金をむしり取った。やはり今回も悪役かと思いきや、これは元奎(ユン・ケイ…今回武術指導も担当)ら一団に襲われそうだった金持ちを助けるための芝居だった。
その後、ある街に立ち寄った黄正利は、子供を使ってスリを繰り返す樊梅生(ファン・メイサン)と出会う。樊梅生の格好は『燃えよデブゴン7』っぽい乞食姿だ。たぶんそこらへん意識していたものと思われるが、黄正利VS樊梅生という変な対決は決着付かずという形で終わった。
所変わって、ここは2件の穀物屋さん。小さい方の穀物屋と大きい穀物屋(こちらが悪役)の間でトラブルが巻き起こるのだが、黄正利は小さい方の穀物屋へとやって来た。黄正利の妹がそこへ嫁いでいるのだ。
偵察に出かけて大きい方の穀物屋に捕まっていた妹の旦那を助けた黄正利だが、大きい方の穀物屋は黙っていなかった。さっそく報復に現れるが、こちらには無敵の黄正利がいる!ザコ連中はあっという間に叩きのめされ…っていうか、どう見ても黄正利の方が悪役に見えます(爆
「黄正利を倒すには並大抵の奴でなきゃいかん!」
大きい方の穀物屋の旦那は、めっぽう強いと噂の楊威を尋ねる。楊威ってまた微妙なところをチョイスしたなぁ…と思ったら、突然王將(ワン・チン)が出てきて楊威をボコボコにしてしまった!もちろん旦那は予定を変更し、黄正利の始末を王將に依頼した。茶屋を貸し切り、黄正利を茶会に招待する王將。この2人といえば『南拳北腿鬥金狐』だが、もちろん王將がピンで黄正利に勝てるはずも無かった。
一方、樊梅生らは今日も子供たちを使ってスリをしていたが、1人の子供が高雄(エディ・コー)から時計をスってしまう。高雄が危険な男だと知っていた樊梅生はすぐさま高雄のとこへ返却に行くが、実はこの高雄の部下が王將だった。
「ドラえも~ん…じゃなかった高雄様、ジャイアン…じゃなかった黄正利がオレをぶっとばしたんだ!」
「誰がドラえもんじゃ!」
…というわけで、高雄と王將はケリをつけにやって来た。黄正利のいない間に穀物屋へ押し入り、黄正利の妹は王將に犯された挙句に自害。奇襲を受けた黄正利も高雄の鷹拳にやられてしまう。樊梅生に助けられたものの、今の実力では高雄に勝てない…。そこで樊梅生は「わしがお前を特訓したら『燃えよデブゴン7』のパクリだとか言われそうじゃから、代わりに少林寺っぽいとこへ行って修行して来い!」と言って(嘘)黄正利を修行に向かわせる。この少林寺っぽいとこで見せる黄正利の笑顔がとてもまぶしくて素敵だ(爆
しかし黄正利が修行している間に、妹の旦那も王將に殺されてしまう。修行を終え少林寺っぽいところから下り、樊梅生から事情を聞いた黄正利は、怒り心頭で怒涛の反撃に出る!やはりこの男だけは怒らせてはならなかった…。黄正利は敵の一味を蹴り殺し、続いて王將も拷問の末に葬り去った。そして最後に残った高雄だが…これは結末を言わずともいいですね?(笑
▲この映画からは「俺だってジャッキーっぽく修行とかしたかったんだ!いつも最強で仏頂面の悪役とかじゃなくて、普通の好青年の役とかしたかったんだぁ!」という黄正利の叫びが聞こえてくるような気がしてならない。
考えてみるとこの人、演じてきた役のバリエーションが極端に少ない。決して演技力が悪いわけではない黄正利だが、そもそものデビュー作である『南拳北腿』からずっと最強の悪役として君臨し続け、ジャッキーを始めとしたありとあらゆる功夫スターたちを苦しめ抜いてきた。確かに彼の悪役演技は素晴らしい。だが、彼本人としてはもっと色々な役もやってみたかったのではないだろうか?
いくつか韓国時代に主演した作品には正義の人を演じたこともあったろうが、本作のような香港映画では珍しい…というかほとんど無かった事だ。そしてついに掴んだ正義の主役である。彼なりに全力を尽くした本作のアクションは、とても見事なものだった。
ストーリー面は弱いが、本作の黄正利は足技を抑え気味にしたアクションを披露し、蹴り一辺倒ではないアクションをこなしてポテンシャルの高さを誇示している。もちろんいつもの足技も冴えており、最後のVS高雄戦での怒涛の蹴り技ラッシュは鬼気迫るものがあった。それにしても、いつも黄正利は鷹拳使ってるイメージがあるなぁ…。
Hit Man in the Hand of Buddha
1981
▼香港映画には意外な人の主演作があったりする(しかも完全な善役で)。例えば有名どころでは高飛・狄威・任世官が、更には白彪(バイ・ピョウ)・呉明才(ウ・ミンツァイ)・楊斯・慮恵光・孟海などの主演作まである。思っても見ない顔合わせも功夫映画の面白いところだが、更に意外な人の主演作がある。それが今回紹介する『借刀殺人』だ。
本作の主演はなんと黄正利(ウォン・チェン・リー)だ。足技ファイターとして有名な彼は韓国で多く主演作に出ているのであまり珍しそうではない気がするが、今回の黄正利はいつもの彼からは想像できない顔を披露してくれている。
■いきなり始まって画面に"香港黄正利影業公司"とでっかく出てきたので驚いた(笑)。そう、この映画は黄正利の監督作でもあるのだ。物語がスタートするや否や、黄正利が金持ちから金をむしり取った。やはり今回も悪役かと思いきや、これは元奎(ユン・ケイ…今回武術指導も担当)ら一団に襲われそうだった金持ちを助けるための芝居だった。
その後、ある街に立ち寄った黄正利は、子供を使ってスリを繰り返す樊梅生(ファン・メイサン)と出会う。樊梅生の格好は『燃えよデブゴン7』っぽい乞食姿だ。たぶんそこらへん意識していたものと思われるが、黄正利VS樊梅生という変な対決は決着付かずという形で終わった。
所変わって、ここは2件の穀物屋さん。小さい方の穀物屋と大きい穀物屋(こちらが悪役)の間でトラブルが巻き起こるのだが、黄正利は小さい方の穀物屋へとやって来た。黄正利の妹がそこへ嫁いでいるのだ。
偵察に出かけて大きい方の穀物屋に捕まっていた妹の旦那を助けた黄正利だが、大きい方の穀物屋は黙っていなかった。さっそく報復に現れるが、こちらには無敵の黄正利がいる!ザコ連中はあっという間に叩きのめされ…っていうか、どう見ても黄正利の方が悪役に見えます(爆
「黄正利を倒すには並大抵の奴でなきゃいかん!」
大きい方の穀物屋の旦那は、めっぽう強いと噂の楊威を尋ねる。楊威ってまた微妙なところをチョイスしたなぁ…と思ったら、突然王將(ワン・チン)が出てきて楊威をボコボコにしてしまった!もちろん旦那は予定を変更し、黄正利の始末を王將に依頼した。茶屋を貸し切り、黄正利を茶会に招待する王將。この2人といえば『南拳北腿鬥金狐』だが、もちろん王將がピンで黄正利に勝てるはずも無かった。
一方、樊梅生らは今日も子供たちを使ってスリをしていたが、1人の子供が高雄(エディ・コー)から時計をスってしまう。高雄が危険な男だと知っていた樊梅生はすぐさま高雄のとこへ返却に行くが、実はこの高雄の部下が王將だった。
「ドラえも~ん…じゃなかった高雄様、ジャイアン…じゃなかった黄正利がオレをぶっとばしたんだ!」
「誰がドラえもんじゃ!」
…というわけで、高雄と王將はケリをつけにやって来た。黄正利のいない間に穀物屋へ押し入り、黄正利の妹は王將に犯された挙句に自害。奇襲を受けた黄正利も高雄の鷹拳にやられてしまう。樊梅生に助けられたものの、今の実力では高雄に勝てない…。そこで樊梅生は「わしがお前を特訓したら『燃えよデブゴン7』のパクリだとか言われそうじゃから、代わりに少林寺っぽいとこへ行って修行して来い!」と言って(嘘)黄正利を修行に向かわせる。この少林寺っぽいとこで見せる黄正利の笑顔がとてもまぶしくて素敵だ(爆
しかし黄正利が修行している間に、妹の旦那も王將に殺されてしまう。修行を終え少林寺っぽいところから下り、樊梅生から事情を聞いた黄正利は、怒り心頭で怒涛の反撃に出る!やはりこの男だけは怒らせてはならなかった…。黄正利は敵の一味を蹴り殺し、続いて王將も拷問の末に葬り去った。そして最後に残った高雄だが…これは結末を言わずともいいですね?(笑
▲この映画からは「俺だってジャッキーっぽく修行とかしたかったんだ!いつも最強で仏頂面の悪役とかじゃなくて、普通の好青年の役とかしたかったんだぁ!」という黄正利の叫びが聞こえてくるような気がしてならない。
考えてみるとこの人、演じてきた役のバリエーションが極端に少ない。決して演技力が悪いわけではない黄正利だが、そもそものデビュー作である『南拳北腿』からずっと最強の悪役として君臨し続け、ジャッキーを始めとしたありとあらゆる功夫スターたちを苦しめ抜いてきた。確かに彼の悪役演技は素晴らしい。だが、彼本人としてはもっと色々な役もやってみたかったのではないだろうか?
いくつか韓国時代に主演した作品には正義の人を演じたこともあったろうが、本作のような香港映画では珍しい…というかほとんど無かった事だ。そしてついに掴んだ正義の主役である。彼なりに全力を尽くした本作のアクションは、とても見事なものだった。
ストーリー面は弱いが、本作の黄正利は足技を抑え気味にしたアクションを披露し、蹴り一辺倒ではないアクションをこなしてポテンシャルの高さを誇示している。もちろんいつもの足技も冴えており、最後のVS高雄戦での怒涛の蹴り技ラッシュは鬼気迫るものがあった。それにしても、いつも黄正利は鷹拳使ってるイメージがあるなぁ…。