功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『威震四方』

2007-11-19 23:23:15 | 王羽(ジミー・ウォング)
威震四方
英題:The Hero/Rage of the Masters/The Destroyer/Rage of the tiger
製作:1972年

▼これはジミー先生が切磋琢磨していた台湾時代の作品です。作品としては『片腕カンフーVS空とぶギロチン』のような正統派なもので、ジミー先生の作品にしてはいつもの奇抜な面はあまり見られません(敵の手駒として出てくるムエタイファイター四天王が笑えるくらいでしょうか)。
内容は『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』のような道場破りに関する話で、恐らく本作はそっちを意識して作られたのではないかと思われます。作品のテイストもなんとなく似通っていますが、いちおう『吼えろ!ドラゴン』よりはドラマ性が(ほんの少しだけ)強くなっているようです。

龍飛や山茅らムエタイ四天王を率いる薛漢(シェ・ハン)は、焦[女交](『片腕必殺拳』でもヒロインを演じる)のいる道場を襲撃した。道場生や師範はことごとく皆殺しにされ、唯一脱出した焦[女交]は身内である李藝民(サイモン・リー)の元に身を寄せる事となる。
薛漢らにリベンジしたい焦[女交]であったが、彼女や李藝民の腕ではとても歯が立たない。そこで焦[女交]のおじさんは「伝説の拳士であるジミー先生に強力を仰いだらどうだろう?」と提案した。しかし当のジミー先生は母親と共に隠遁生活を送っており、他人の争いごとに加担する気はさらさら無かった。
 そこで焦[女交]たちは「承諾してくれるまでここを動かない!」と、ジミー先生の玄関先に居座った。あくまで闘いたくないジミー先生もであったが、焦[女交]が毒蛇に噛まれたため仕方なく家の中へと通した。闘うことは拒むくせに、なんだかんだで焦[女交]と良い感じになっているところは流石ジミー先生だ!(笑
一方、薛漢によって奪われた道場は賭場に成り果てていた。そして回復した焦[女交]を送り届けようとしたジミー先生の元にも追っ手が迫る。なんとかこれを撃退したものの、焦[女交]が隠れ住んでいた家がバレてしまい、襲撃を受けておじさんの息子が殺されてしまう。
 それを聞いて怒りに震えるジミー先生は、遂に不戦の誓いを破って敵の本拠へと飛び込んだ。だが、さすがのジミー先生も物量の差には敵わず返り討ちに…。さらには彼の不在を狙った薛漢一味によって、焦[女交]を始めとした身内全員が皆殺しにされるという悲劇に発展する。
再び怒りに震えるジミー先生は賭場へ正面から突入!ザコを蹴散らして薛漢を倒し、残るはムエタイ四天王と田野のみ!改めて海岸へ彼らを呼び出したジミー先生は、最後の対決に挑む…!

▲本作はなんといっても若々しい李藝民の存在に目を惹かれます。張徹作品に出演し、台湾で主演作を連発する以前にこんなところに顔を出していたとは驚きです。残念なのは彼がジミー先生と本格的に絡むシーンが無かったこと。まぁ、さすがにこの頃は駆け出しだったから仕方ないのですが…。
さて肝心のストーリーについてですが、ご覧のように至極悲惨なものとなっています。ジミー作品らしい痛快さはどこにも無く、そこにあるのは陰惨な戦いだけ。仲間は次々と死ぬし、ストーリーのテンポも悪く、不戦の誓いが足を引っ張っているせいでジミー先生も全然活躍してくれません(涙
 ジミー先生によるアクションシーンも、クライマックスを除くと都合3回しか存在しないという有様。賭場へ乗り込む場面は『吼えろ!ドラゴン』っぽい派手な立ち回りを披露するんですが、反対にラストバトルが異様にあっさり終わるので、まったくと言っていいほど盛り上がれませんでした。
おふざけ無しの正統派な作品ではあるけど、ジミー先生特有のカタルシスは皆無な作品。どうせなら、もうちょっとはっちゃけて欲しかったなぁ…。