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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ストリート・ソルジャー』

2007-08-21 22:21:52 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ストリート・ソルジャー」
「ストリート・ソルジャー/炎の逆襲」
STREET SOLDIERS
1990

●本作の筋書きは、主人公たちタイガース(野球団みたいな名前だが、町の治安を守る愚連隊のような集団)とストリートギャングの一味との血で血を洗う抗争を描いた物語なのだが、作中空手道場の師範として主演し、製作も兼ねたジュン・チョンのおかげか、アクション・ストーリー共になかなかの良作となっている。
アクションはどちらかというと蹴り技中心のテコンドーに近いスタイルなのが特徴だが、本作の注目どころといえば、何と言っても黄正利(ホアン・チェン・リー)が、ジェイソン・ウォン名義で参加している点に尽きるだろう。今回の黄正利はギャングのボスと共に刑務所を出所し、ジュン・チョンらタイガースと戦っていくのだが、やはりその電光石火の蹴り技は凄く、ラストにおけるジュン・チョンVS黄正利の対決は一番の見所と思われる。
話自体は暗くて単調で、『L.A.ストリート・ファイターズ』の時のような泥臭い迫力も薄れ気味だが、他のマーシャルアーツ作品の中では別格のクオリティであり、香港映画に目のなれた人でも満足して見られることだろう。ジュン・チョン関連作はこの他にも『サイレント・アサシン』があり、今後も要注目と思われる。
ところで1つ気になるのが、この時期の黄正利の動向である。黄正利はこの前後に『レイジング・サンダー』『フューチャー・ハンター』といった海外作品に連続して出演している(『レイジング~』は一応香港映画だが)。やはり彼も他のスターのように海外進出を夢見ていたのだろうか?しかし、この4年後に黄正利は韓国映画『ボス』に出演したのを最後に銀幕から遠のいている。彼の映画人生の晩年にあったこの不可解な動きは、果たして何を意味していたのだろうか…?

『ザ・フューチャーハンター』

2007-08-05 22:13:00 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ザ・フューチャーハンター」
FUTURE HUNTERS
DEADLY QUEST
SPEAR OF DESTINY
1986

▼本作はアンソニー・マハラジ監督作品である。
マハラジといえば、リチャード・ノートン&呂小龍のしょぼい戦争映画『ミッション・ターミネート』、同じくノートン主演でベニー・ユキーデが出演したしょぼいロッキーもどきの『ザ・ファイター/炎のラストマッチ』などがあるが、今回のマハラジ監督は本気だ!なにしろ今回3人の特別ゲストが登場するのだ!彼にしては頑張っているようで好感が持てる!

■2025年、世界はまんまマッドマックスな世界となり、唯一の希望は時空を超越できて過去を変えられる謎のアイテム"ロンギヌスの槍"だった。…というわけで、今回は誰かが過去に戻って未来の異変回避という、しょぼいターミネーターもどきの作品だ。
最初に登場する特別ゲストその1はリチャード・ノートン!ただの田舎の道路としか思えない未来で、ダサい装飾の車で逃げるノートン!戦車なんか登場してマハラジ監督の気合いの入れようがわかるワンシーンだ。ロンギヌスの槍を手に入れてハリボテのような神殿から現代(製作年度参照)へタイムスリップしたノートンだが、たまたまそこにいたカップルを助けて暴走族の凶弾に倒れてしまう。そのカップルに未来の存亡を託し…って、ちょっと待て!
主人公(?)は乗り気ではなく、ヒロイン(?)の方がロンギヌスの槍の研究をしていたという都合のいい設定で使命に目覚める。案の定、刺客の大男が現れて2人のいた食堂をボロボロにして去っていった。信じようとしない主人公はヒロインと共に専門家から槍の話を聞く。それにしても、この手の作品で主人公がひたすら弱いというのも珍しい。帰り道にまた襲われ、話を信じるほか無くなった主人公は、槍のことを知るハイタワー博士がいる香港へ半ばヤケ気味で承諾し(笑)、現地の友人の協力を得て行方を捜す。
ここで現地の友人として登場するのが特別ゲストその2である呂小龍!そして主人公らが接触した現地に現れる刺客が、特別ゲストその3黄正利(ウォン・チェン・リー)!ノートンと呂小龍はマハラジ繋がりで解るけど、どうして黄正利が…?呂小龍と黄正利の功夫対決という本筋とは関係なさそうな、それでいてなかなかのクオリティの対決が唐突に開始!80年代でも李小龍モドキを演じている呂小龍が素敵だ(?)
ホテルに帰ってみるとヒロインが襲われているので救出。ハイタワー博士は誘拐され、居場所がマニラと目星を付けた2人はマニラに飛ぶ(この時点で呂小龍は離脱)。そこに現れたのは以前襲ってきた大男だ。ヒロインを追って敵の根城に潜入し、銃撃戦を繰り広げる主人公…が、結局捕まってしまう。
敵の首領の正体が冒頭登場した専門家だったのは腰砕けだが、一緒に捕まっていたハイタワー博士から槍の話を聞けた。しかし博士は殺され、敵はヘリで引き上げていく。追いかけようとする2人は別のヘリにフライトプランがあったので、それを頼りに敵のもとへ向かった(それくらい管理しておけ!)。だが敵もさるもの、ヘリには爆弾が仕掛けられていた!
飛行手段を失った2人は現地でセスナ機をちょろまかし、二分された槍の一方が眠るジャングルへパラシュートを使って侵入する。それにしても作中総じてサントラがなかなか雰囲気出ていてイイ感じだ。敵の軍団、獰猛な部族、アマゾネス部族、そして協力してくれる小○の部族…物語は架橋へ突入する!

▲SF要素やカンフーと、『マトリックス』の先駆けともいえる要素がある気がするが、たぶん偶然。舞台が荒野のような未来→アメリカ→香港→マニラ→ジャングルと、どんどんスケールダウンしているのがいとおかし(爆
しかしマハラジ監督にしてはストーリーのテンポもいいし、しょぼくなっているがロケ地もワールドワイドで工夫を凝らしメリハリをつけている。やればできるじゃん、マハラジ!
ちなみに主人公はロバート・パトリックという人。『ターミネーター2』のT-1000といえば大体の人がわかると思うが、まさかこの時バッタもん作品に出演していた自分が正当な続編に出演できるとは夢にも思っていなかったに違いない(ヒロインのリンダ・キャロルは洋ピンアダルトへ転向してそのまま消滅)。
肝心のアクションはというと、少ない出番でノートンも頑張っていたし、呂小龍と黄正利の対決もなかなかだ。最初は弱かった主人公とヒロインが終盤の戦闘ではそれなりに強くなっているが、その行程の描写が無いので納得いかず、やはりここらへんはマハラジクオリティといったところか(爆
『ミッション・ターミネート』よりかは若干アクションに満足できないけど、ストーリーはこっちが上かな。

『復讐の掟』

2007-07-20 21:48:24 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「復讐の掟」
Fighting Mad
1984

▼『Martial Arts 50 Movie Pack』には無名の作品が多く収録されているが、中には日本でビデオ化されているものがあったりするから侮れない。本作もそんな中のひとつで、日本での発売元は『ミミズバーガー』などで有名なメーカー、MIMIビデオがリリースしている。
このMIMIビデオという会社はビデオバブル時代に栄華を誇ったメーカーで、最近は某映画雑誌に取り上げられたり、非公式のファンサイトが存在している。誰も望まないようなコアでディープではっきり言ってゴミ同然の作品を次々と販売した事で、ある世代のビデオファンからは忘れられないレーベルだという。自分はMIMIのソフトはリチャード・ハリソン&ゴッドフリー・ホー&フィルマークの最凶トリオで作られた『サンダーホーク/死霊伝説の謎』なるものを見かけたことはあるが、実際に視聴までは至っていない。

■はてさてその内容だが、まず軍人の主人公が軍用金の強奪の片棒を担がされた挙句に殺害される場面から始まる。しかし主人公は生きていて、海に放り込まれた挙句に無人島へと流れ着いた。そこで主人公を助けたのは、旧日本軍の軍人だった!しかもチョンマゲ結ってるし、いつの時代の人だ!
彼らは終戦したことをアメリカン・プロパカンダと一刀両断(爆)し、主人公に武士道精神を無理矢理伝授する。はた迷惑なラストサムライに振り回される主人公だが、彼らに勝たなければ島から脱出させてもらえないので、ブラック・サムライとなって剣道に打ち込むのだった。
その後、主人公は捜索に来た軍人たちに救出されて故郷に帰国した…のだが、妻と子が待っているはずの家が売地になっていたりと、どうも様子がおかしい。実は、主人公をハメた連中が横暴の限りを尽くしており、さっそく主人公は敵に復讐するべく行動を開始した。
だが主人公をハメた連中が反撃に出て、やっと再会できた妻子は誘拐されてしまう。怒りに燃える主人公は再び日本刀を手に取り、復讐鬼と化す!

▲…なるほど、こりゃ強烈だ(爆
要はこの映画は黒人アクション映画なのだが、小野田さんもビックリな奇天烈軍人が爆笑モノだ。劇中のサムライアクションも割と良質であり、特にリトル・トウキョーの敵道場へ殴りこみに行く場面も悪くはない。
しかし前半のシークエンスがあまりにも強烈だったためか、後半の闇討ち展開は前半ほどのインパクトを残してはいなかった。なにしろ主人公が敵を討つ方法は毎回同じで変わり映えしないし、主人公と相対する1番の強敵の存在が無かったのも致命的だ。
黒人映画は総じて地味と聞くが、本作にはもうちょっと派手さが必要だったかも。特におかしなところは無いぶん、そこは残念か。ちなみに旧日本軍人の1人が何度も歌っていたあの歌は「朝日を浴びて・ラヂオ体操の歌」という軍歌である。

『クエスト』

2007-06-28 23:04:48 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「クエスト」
THE QUEST
1996

●ヴァンダムが初監督した記念すべき(?)作品。
NYスラム出身の泥棒ながら腕っ節の強いヴァンダムは、ある日警察に追われてある船に逃げ込んだ。実はその船は密輸船で、更にその密輸船が海賊に襲撃されてしまった。母国に帰りたいヴァンダムだが、訳の解らないうちにロジャー・ムーア(役名はドブス郷…ってなんちゅう名前じゃ)に売られ、生きる為にムエタイを習得。トントン拍子にチベットの山奥で開催されている世界格闘技選手権に出場することとなる…。
話を見てもらうと解るとおり、ジミー先生の『片腕カンフー対空とぶギロチン』、倉田さんの『ファイナルファイト/最後の一撃』、ケイン・コスギの『ザ・格闘王』などに見られる、世界各国の奇妙奇天烈武道家とのトーナメント映画である。想像したら面白そうだけど、この手の映画は一歩間違えると結果が両極端になりやすく、本作はまあまあな部類に入る。
ちなみに冒頭思わせぶりに登場したおじいさんヴァンダムはあまり関係なし。その登場シーンを削除しても、物語には一切影響はありません(苦笑
アクションは結構頑張っていて、中国人の拳法家や日本のスモウレスラー(演じるは何とあの北尾光司…ってまたか!)など、イロモノキャラのインパクトも上々だ。
ちなみにドイツ代表を演じたハビー・ヘスケ(モノホンの柔術家らしい)は『金城武の死角都市・香港』で黒人に化けたユンピョウをロン毛の仲間とボコボコにしていたり、アフリカ代表を演じたウィンストン・エリス(こんな名前だが強面な黒人のオッサン)は『刑事ディック・キプロスの虎』でソフィア・クロフォードと高飛の部下を演じたり、韓国代表を演じたオン・スハン(本作以外にもヴァンダムとは共演経験があるらしいが、その後はフェードアウト)は『キング・オブ・キックボクサー』でローレン・アヴェドンと共演している。
ヴァンダム絶頂期の佳作の1つだが、もうちょっとハジけても良かったと思う。

マーシャルアーツ映画特集・その9『ドラッグマスター』

2007-05-30 23:54:46 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ドラッグマスター」
WHITE TIGER
1996

●かつて実写版『北斗の拳』でケンシロウに扮した男がいた。その映画は散々な出来映えで、原作ファンからは煙たがられ、格闘映画ファンからはあまり注目を得られないまま終わった。しかしその男はその後も戦い続けたのである…。
…と、なんだか思わせぶりな出だしですが、今日紹介するマーシャルアーツ四天王3人目は、ゲイリー・ダニエルズであります。
ゲイリーはキックボクサー出身のスターで、かのジャッキー主演『シティーハンター』でリチャード・ノートンの部下を演じて以降、次第にその名を挙げていきます。本作はゲイリーが最も輝いていた90年代の作品で、低予算ながらなかなかのアクションを見せています。
ストーリーは親友を殺された麻薬捜査官のゲイリーが、ケイリー=ヒロユキ・タガワ率いるチャイニーズマフィアと戦っていくというもの。はっきり言って薄っぺらい話ではあるのですが、ラストでのゲイリーVSケイリーの対決はこの手の映画では上出来な迫力。あとはヒロイン関連の話を膨らますことができれば、もうちょっと話に奥行きが出来たかも…と思います。
ちなみにゲイリーは00年代以降もそこそこ出演を続けていくのですが、すこぶる作品に恵まれなくなっていき、とうとうある時期から映画出演自体が少なくなっていくのです。ようやく久しぶりに彼の姿を見たと思ったら、セガールの『沈黙の追撃』で無様に倒されるザコ役に成り果てていました…(泣
考えてみると、これまで紹介してきたマーシャルアーツ映画のスターたちは、皆例外なく絶頂期と落ち目の時期が両極端で、しかも全盛期があまり長く続きません。果たして、こんな調子で未来のマーシャルアーツ映画界はどうなってしまうのか?
その答えは、次回の最後の特集にて…。

マーシャルアーツ映画特集・その8『キング・オブ・フィスト』

2007-05-29 10:22:10 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「キング・オブ・フィスト」
Live by The Fist
1993

●格闘アクションというものは演じる俳優の技術も大事だが、それを受け止めてくれる受け手側の技量も重要である。例えば同じ蹴り技を喰らうとしても、蹴られてそのまま呻くよりも大回転して倒れたほうが迫力が増す…攻め手がいくらいい動きをしても、受け手がそれを受け止めないと絵にならないという事だ。
香港映画はこの2つの要素が十分色濃いので安心して見ることができるが、欧米のマーシャルアーツ作品では2つの要素自体が疎かになっている場合がよくある(最近の作品はそれほどでもない)。その点から考えれば、本作はギリギリこの2つの要素をクリアしているといえるだろう。
主演は『ハード・ブラッド』で李連杰とも対決したジェリー・トリンブルだ。彼自身もかなりのセンスの持ち主であるが、カレン・シェパード主演の『ターミネーター・コップ』などでは武術指導の力量不足か、あまり満足のいくアクションは披露してくれなかった。だが本作は前述の通り、ちゃんと見られる殺陣になっている。
この映画はスケープゴートで罪を着せられたトリンブルが、刑務所内で様々な抵抗に遭いながらも脱出するという監獄アクションだ。そこに人種間の差別云々といった問題を組み込んでいるが、話のテンポが後半に入ってからガクンと落ちてしまうのが惜しい。アジア系囚人のリーダー格を演じたジョージ・タケイの演技も光るが、結局はトリンブルのアクションだけが浮き足立つ結果に終わってしまった。あっちがダメならこっちがダメ…映画というものはなかなか上手くいかないものである。

マーシャルアーツ映画特集・その6『リトルトウキョー殺人課』

2007-05-26 21:22:07 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「リトルトウキョー殺人課」
SHOWDOWN IN LITTLE TOKYO
1991

●これまで紹介してきたヴァンダムとセガールは日本でも一般的な認知度は高い。しかしこの三巨頭最後の1人であるドルフ・ラングレンは、いまいち知名度不足という不運を背負っている。
原因は色々考えられるが、まず第1に、TV放映や劇場公開された作品が他の2人に比べて少ないのと、無骨なファイターばかりを演じる彼のスタイルが地味に見えてしまうという事も大きいと考えられる。
実際に彼の出演作で比較的よく知られているのはスタローンの敵役として鮮烈にスクリーンデビューした『ロッキー4/炎の友情』や、ヴァンダムと夢の対決を展開した『ユニバーサル・ソルジャー』くらいでしか印象に残る活躍はしてない(あくまで一般的な認知についての話)。
実はかなりの数の主演作が日本でビデオリリースされており、今回彼の主演作から取り上げたこの映画もその中の一つである。
本作はドルフ主演作というより、むしろバカ映画の1つとして有名だ。というのも、作中における珍妙な日本描写の数々や、アクの濃すぎるキャラクターなどがその所以である(爆
だが、本作で李小龍の息子である李國豪(ブランドン・リー)と共演した事は彼にとっても快挙であり、決してアクションも悪くはない。彼は極真流空手を習得しており、本来ならセガールやヴァンダムともヒケをとらないほどの技量を持っているのだ(でもやっぱりこの映画、ヒドすぎる日本描写の方がインパクト強すぎてドルフの存在感がますます薄くなっていたような…)。
どちらにしろ、"静"のセガール、"動"のヴァンダム、そしてドルフ。彼らの活躍があったからこそ、今日のマーシャルアーツ映画が存在するのである。(強引な締め)

※…次回からはマーク・ダカスコスやゲイリー・ダニエルズら、"マーシャルアーツ四天王"(勝手に命名)を紹介していきます!

マーシャルアーツ映画特集・その5『レプリカント』

2007-05-26 20:30:05 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「レプリカント」
REPLICANT
2001

▲続いてはマーシャルアーツ映画界三巨頭の1人、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演作の紹介だ。
ヴァンダムは『シンデレラ・ボーイ』で呉思遠に見初められてデビューし、立て続けに格闘アクション映画に主演し続けた、三巨頭中最も活躍していた男である。更に、彼は香港映画に興味を持っていたらしく、徐克(ツイ・ハーク)ら香港から来た監督の作品に出続け、二度に渡って楊斯(ヤン・スェ)と闘い、その他にもショー・コスギとも渡り合った。
しかし寄る年波には勝てないのか、最近の彼の出演作は軒並み小物だったりビデオスルーだったりと、なかなか作品に恵まれていない。そんな中で今回紹介するこの映画は、そこそこ健闘した方と思われる。

■子持ちのシングルマザーばかりを狙い、殺害したあと家に放火するという残忍極まりない殺人犯のヴァンダムは、今日も熟年刑事の追跡を振り切って意気揚々と逃げていた。
一向に進展しない捜査に苛立ちを募らせる熟年刑事…そんな彼の元にある組織から連絡が入った。わけも分からぬままにとある研究所に足を運んだ彼が見たものは、あの殺人犯のクローンであるヴァンダム(一人二役)だった。研究員らによると、クローンはモノホンと同じ思考能力を持っているから彼を捜査に協力させれば必ず殺人犯を捕まえられるという。
…何か色々ムリあり過ぎの設定だと思うのは気のせい(爆)?クローンがいきなり大人の姿で生成できないだろうし、ましてやDNAレベルで潜在意識が同じパターンを辿るというのも無茶苦茶だと思うのだけども…(本作の監督はヴァンダムと何度も組んできた林嶺東(リンゴ・ラム)である)。
善のヴァンダムは生まれたばかりなので右も左も分からない子供同然。熟年刑事はしぶしぶ協力することになったが、目の前にいる男が自分が追っている悪いヴァンダムのクローンであり、いつ悪に覚醒するかも分からないため気が気ではなかった。
刑事の自宅での誤解や歓楽街での乱闘などのイベントを経て、ついに善と悪…二人のヴァンダムが初めてまみえた。悪ヴァンダムは自分そっくりの善ヴァンダムに驚きつつも、薄々クローンだと気づき始め、悪への誘いを囁きかける。戸惑う善ヴァンダム…そんな時、熟年刑事と善ヴァンダムは悪ヴァンダムの秘密を知った。
悪ヴァンダムの母親は彼が幼い頃虐待をしていて、悪ヴァンダムは当時の経験が尾を引き、我が子に暴力を働く女性を見ると無性に殺したくなるという特異な感情を抱くにいたったのである。
早速二人は悪ヴァンダムの母親が入院している病院へ向かうと、悪ヴァンダムが自分の母を殺していた!クローンとはいえ自分の母親を殺された善ヴァンダムは悪ヴァンダムに立ち向かう!善と悪、二人のヴァンダムの死闘が始まった!

▼ヴァンダムといえば忘れてならないのが開脚である。とにかく、どの出演作でもこれ見よがしに披露するのだが、見た目のインパクトだけのあまり意味のないパフォーマンスかと思うのだけど…(爆
さて、本作はSFや推理サスペンスなど様々な要素を組み込もうとした結果、よくわからない出来になってしまった感が強い。とはいえ、これまで何度も"一人二役"を演じ続けてきたヴァンダムによる"一人二役"映画としてはおそらく一番の完成度だろう。
格闘アクションも三巨頭の中では一番の良い動きを誇り、その景気の良い蹴り技は彼の代表作である『キックボクサー』などでも遺憾なく発揮されている。
セガールを"静"と表するのなら、さしずめヴァンダムは"動"である。では三巨頭残りの1人、ドルフ・ラングレンは…?それは次のレビューに続きます。

マーシャルアーツ映画特集・その4『刑事ニコ/法の死角』

2007-05-26 19:58:49 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「刑事ニコ/法の死角」
Above the Law
1988

●なかなか更新できなかったので、今日は一気に3つのレビューをお送りします。
さて、マーシャルアーツ映画には欠かせない三巨頭がいることをご存じでしょうか?1人はジャン=クロード・ヴァン・ダム、もう1人は人間核弾頭ことドルフ・ラングレン。そしてあと1人が、かの有名なスティーブン・セガールだ。
そして本作こそセガールの原点で彼のデビュー作でもある。
見てみたところびっくりしたのが、セガールが凄くスリムであるという事だ(爆
それも含めた話だが、最初の主演作という事で、今のセガール映画からは想像のつかないような場面がいくつかあったりする。
まず、本作は社会派サスペンスであるということ。非行少女を捜していたら、麻薬の事件にぶつかり、それが政界をも巻き込んだ巨大な闇が相手であることが解ると、セガールは単身立ち向う…というものだ。今のどこか軽いセガール作品を見慣れた人なら、後半にかけて難しいセリフの飛び交う難解なシーンに戸惑う事は間違いないだろう。
次に、本作のセガールは決して無敵ではないという事。彼の作品では傑作と呼び声の高い『暴走特急』では狙撃されてもカスリ傷だった彼が、物語終盤に敵勢に捕まってボコボコにされるという場面が登場する。
今回の彼は元CIAで、日本で合気道も学んだ経験がある刑事という、セガール自身に近い設定となっている。確かに敵を自慢の武術でぶちのめすシーンもある…が、その後の彼の活躍と比べてみると、どうにも地味な印象を受ける。これは作品自体の色合いも大きく影響しているようだ。
本作は刑事アクションではなく、格闘アクションのある刑事ドラマのような感じ。従って物語自体も印象は暗い。しかしその後数々の作品で悪党共の手首をひねりつづけるセガールの原点がここにあると見ればなかなかに興味深いものである。
なお、セガールのアクションは合気道を基礎とした相手を張り倒すスタイルのため、ヴァンダムその他と比べるとアクションに華はない。だが、他ではあまり見ない関節主体に狙っての攻撃や、そしてなによりも彼独自の存在感が全てを駆逐し、今では一種のブランドにまで認知されている。この手のスターでは間違いなく一番の出世頭と言えよう(今は落ち目だけど)。
そういえばこんな人が香港にもいたような…確かジミー・ウォ(省略

マーシャルアーツ映画特集・その1『ミッション・ターミネート』

2007-05-22 15:38:36 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ミッション・ターミネート」
MISSION TERMINATE
1987

▲そもそも私がマーシャルアーツ映画にハマるきっかけとなったのがこの映画。そしてまさかのリチャード・ノートン主演作でもある。
この映画は安っぽい戦争モノだが出演陣が凄まじく、主演のノートンを始め、狄威(ディック・ウェイ)、呂小龍(ブルース・ライ!)らが登場して画面を盛り上げてくれます。
ちなみに一応戦場アクションということなのだが、監督のアンソニー・マハラジの手腕ゆえか、非常にまったりとした仕上がりになっています(笑

■1970年、ベトナム戦争時に密かに金塊をゲリラの村から強奪したアメリカ軍の連中がいた。ところがそれから数年後、次から次にその連中が闇討ちされていく事件が発生する。その金塊を奪った部隊のリーダーだった士官は、闇討ち犯人を始末して、ついでに上層部への事実発覚の隠蔽もするため、軍の本部から離れたはみだし者のリチャード・ノートンを呼び寄せた。
ノートンはまず手始めに、友人であり士官の元部下であった男を訪ねるが、そいつは何かを知っていながら隠し事をしている様子。そして士官の元部下でありながら、元部隊の名簿に載っていなかった男・呂小龍を尋ねに香港へと飛ぶが、事件に関わりたくないとして聴取を拒否する。
一方、闇討ち犯人の狄威は極秘ゲリラ部隊の指導員であり、その狄威はというとベトナムの山奥にある伊賀忍者の寺でむかし弟弟子(呂小龍のこと)と共に修業していたが、破門された経歴を持っていた(なんじゃそりゃ!?)。そして、ゲリラ組織内の狄威の様子を見ていたかつての師匠は、その狄威にボコボコにされてしまう。
師匠危篤の知らせを聞いた呂小龍はベトナムへ飛び、死に際の師匠から伝家の宝刀を授かり(ちなみにこの刀はその後出番なし)、打倒狄威を誓ってノートンと力を合わせることに。ノートンは、呂小龍から師匠から聞いたというある山中へと赴き、そこで過酷な特訓(といっても訓練施設がショボ過ぎる)に励むゲリラ達の姿を確認する。
組織の存在を確認したはいいが、国境付近にある同基地を米軍に攻撃してもらうわけにもいかず、ノートンは友人が隊長をやってるタイの一個小隊に協力を依頼し、仲間と共に敵陣に乗り込む。果たしてノートン、呂小龍はゲリラ部隊を殲滅することができるのか!?

▼非常に淡泊。要は当時流行した『ランボー』を倣って作られた"ベトナム帰還兵"モノである。この手の安上がりな戦争アクションは80年代後半に狂ったように作られ、東南アジアの森林でムサいおっさんが適当に銃をブッ放すだけの映画が多く作られた。
本作も話はノートン捜査→呂小龍仲間に→突入して決戦…と、これだけだ。
そんなこの映画を大きく支えているのは、やはり狄威らを始めとした香港勢の存在感であろう。クライマックスでは呂小龍VS狄威、ノートンVS狄威という異色の対決が見られるだけでも、本作の価値は大きいと思われる。
あれ?マーシャルアーツ映画を紹介するはずが、何故にこんな流れに…?(爆