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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ダブルドラゴン』

2008-11-11 21:57:22 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ダブルドラゴン」
原題:DOUBLE DRAGON
製作:1994年

●その昔、ヴァンダムの『ストリート・ファイター』や威龍(ロビン・ショウ)の『モータル・コンバット』といった、ゲームが原作の映画がいくつか作られた。中には実写版『スーパー・マリオ』なんていうトンデモない代物まで作られたが、本作もそのうちの一本である。
本作の粗筋はとても簡単。主人公のマーク・ダカスコスとスコット・ウルフの兄弟が、未知なる力を秘めたメダリオン(ジャッキーのアレとは無関係?)を巡って、悪党のロバート・パトリックと戦っていく話である。しかしゲーム原作とはいえ、本作は『ストリート・ファイター』や『モータル・コンバット』のように有名なタイトルではないので、いまいちピンとこない。舞台設定の説明がややこしいのも難点で、初見した際はちょびっととっつきにくさを感じてしまったほどである。
とはいえ、作中ではこれでもかと格闘アクションが展開されており、殺陣に関しても単調になっていないところは評価できる(アクション指導はジェフ・イマダ)。このほかにもジェフ・プルートなどのスタントマンが大挙して参加しているため、マーシャルアーツ映画にあるような愚鈍な動きをする人は皆無であると言ってもいいかもしれない(ちゃんとアリッサ・ミラノやジュリア・ニクソンもアクションやってますよ)。
だが、ラスボスのロバート・パトリックがあんまり強そうじゃなかったり、いざ決戦!となっても着ぐるみキャラに分身したり、生身に戻ったら戻ったらで一方的にボコられたりと、威厳の感じられないキャラだったのにはガッカリ&肩透かし。側近のジェフ・イマダとアル・レオンも、本来ならもっと動ける人なのに、単なるボケ役で終わってしまっているのは勿体無い。せっかくコンビで出ているのだから、クライマックスでロバートの前哨戦として、ダカスコスとスコットの相手をさせても良かったのではないだろうか。
まぁ、ここらへんは原作があるので仕方がないかもしれないが、今では貴重な青年・ダカスコスが見られるというのもポイントか。個人的にはダカスコスVSロバートや、ダカスコスVSジェフ・イマダ&アル・レオンというガチンコ対決が見たかっただけに拍子抜けしてしまったが、マーシャルアーツ映画としてはスケールもアクションも破格の一本。ダカスコスファンも見逃せない作品、といったところでしょうか。

『ネイビー・ストーム』

2008-11-04 15:02:03 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ネイビー・ストーム」
原題:HOSTILE ENVIRONMENT
製作:1998年

▼マーシャルアーツ映画ファンなら、誰しも一度はマシアス・ヒューズという男を見た事があるはずだ。
ドイツ出身のマシアスは、役者になる前は193cmの長身を生かしてモデルの仕事などをこなしていたという。そんな彼が映画界へ踏み込むきっかけとなったのが、かの傑作『レイジング・サンダー』だ。当初、マシアスがこの作品で演じた悪の将軍は『シンデレラ・ボーイ』で呉思遠(ウン・シーエン)に発掘されたジャン=クロード・ヴァン・ダムが続投する予定だった。だがスターとなったヴァンダムはその依頼を蹴り、結果的にマシアスという新たな格闘スターが誕生することとなったのだ。
ちなみに話は反れるが、ヴァンダムはその後『キックボクサー』のヒットでスターへの階段を駆け上っていく事になるが、続く『キックボクサー2』にはマシアスが参加している。ヴァンダムとマシアスは呉思遠が製作した海外資本向けの擬似マーシャルアーツ映画の第1作と第2作にそれぞれ出演していたが、ハリウッドでも同様の構図が再現されるとは、なんとも不思議な縁である。
話を元に戻そう。その後ヴァンダムは格闘映画スターとして羽ばたいていったが、マシアスはあまりメジャー作品には出演せず、その映画人生をB級映画に捧げた。大作にこそ縁が無かったマシアスだが、彼は多くの格闘映画スターと拳を交える事となる。
『アンダー・カバー/炎の復讐』でジェフ・ウィンコットと、『バウンティ・ハンター/死の報酬』でロレンツォ・ラマスと、『キングオブドラゴン』でビリー・ブランクスと、『シューティング・サンダー』でドン・"ザ・ドラゴン"・ウィルソンと対決。極めつけは『ダーク・エンジェル』でのVSドルフ・ラングレン戦もあった。

■現在も活動を続けているマシアスだが、今回紹介する作品はそのマシアスの唯一といってもいい主演作だ。
作品自体は非常にスカスカで、設定やストーリーにもアラが多い。恐らくはメインの舞台となる場所が戦艦だったことが、本作の首を絞めたのではないだろうか?戦艦一隻をレンタルしてスケール感を出そうと背伸びをしたが、その他の部分に予算が回せず、結局は作品全体がショボいものになってしまった…というのが本作の真相だろう。明らかに失敗作の典型だが、しかしマシアスの事を考えると無下に否定することは出来ないし、共演のダレン・シャラビもいい格闘シーンを見せているので、一見の価値ぐらいはあるはずだ。
近未来の地球は水が汚染され、一握りの権力者が新鮮な飲み水を独占して世界を支配していた。ブリジット・ニールセンが率いる組織の一団は、抵抗する住民グループのリーダーから娘を奪い、ついでに反抗したマシアスも誘拐し、本拠の戦艦へと連れ込んだ。ここでは大勢の捕虜が犬のように労働を強いられている、まさに監獄のような場所だった。マシアスは一大反抗作戦を計画するが、同様に裏では組織の幹部による革命も着々と動いていた…。

▲まず本作は設定の根本からしておかしい。
人間の体は80%が水分で出来ているのだから、こんな設定だったら人類のほとんどは死滅しているはずだし、ラストでの超なげやりなオチも頂けない。また、戦艦で働かせている囚人たちの生活がかなり良い待遇だったのも妙な話だ。なにしろメシは食えるし貴重な水もちゃんと分配されている。強いられる労働自体もそんなにキツいものには見えなかったし、拷問を受けていたマシアスがちゃんとベッドに寝かされるシーンまであるのだ(普通ならそのまま鎖に繋いでおくはずなのに)。もしかしてこの戦艦、そんなに悪い所じゃなかったのかもしれない(苦笑
そして肝心のアクションだが、こちらは終始もっさり気味。マシアスはちゃんと動いているのだが、殺陣にバリエーションが無いのが欠点だ。その代わり本作で一番凄い動きを見せるのが、後半から登場するダレン・シャラビのアクションである。ダレンは『太極神拳』で呉京(ウー・ジン)と闘い、他にもいくつか香港映画に出ている人。その足技たるや素早くて力強く、ザコを一蹴するシーンはとても見ごたえがあった。
どうしてダレンのアクションだけこんなに良いのかというと、実はダレンの格闘シーンはダレン本人が振り付けている。本作には他にもファイトプロデューサーやスタントコーディネーターがいるのに、どうしてダレンにだけこんなことが起きたのかはよく解らない。多分、ダレンが現地のスタントマンの鈍さに痺れを切らし、せめて自分が活躍する所だけでも自分なりのやり方で貫き通したかったからこうなったのではないかと推測される(あくまで推測)。
けど、こんなに良質のアクションをやってくれるなら、アクション指導をダレンに一任させてしまっても良かったのでは?ダレンが目立ち過ぎたせいで、マシアスが完全に置いてきぼりを食わされた形になってしまっているので(折角の完全主演作なのに…)、そこらへんはもうちょっとどうにかしてほしかったです。

『サイボーグコップ2』

2008-10-20 23:05:45 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「サイボーグコップ2」
原題:CYBORG COP II/CYBORG SOLDIER
製作:1994年

●この映画はデビッド・ブラッドリー主演『サイボーグコップ』の続編ということで、私は最初全く期待していなかった。なにしろ前作はヘボい展開、ヌルいSFX、ショボいターミネーターもどきの博覧会だっただけに、入手した当初はおいそれと見る気にはなれなかったのである。だが今回改めて見てみたのだが…これが面白い(笑)。いや、確かに前作同様ショボいところもあるが、前作の改善点をきちんと処理している点など、やや持ち直した内容になっているのは評価できる。
ストーリーはヴァンダムの『ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン』と全く同じ。要するに、政府が作っていたサイボーグが突然暴走して人類に反旗を翻して主人公に倒されるという、ごくごくシンプルな話である(ただし『ザ・リターン』は暴走した原因について言及していたが、本作では暴走した原因についての説明が一切無い・笑)。
本作で登場するサイボーグは、前作のハリボテターミネーターから一転し、見た目があんまり人間と変わらない『ユニバーサル・ソルジャー』タイプに変更されている。この措置に関しては正解であるといえるだろう。前作のサイボーグはショボいSFXのせいで見るも無残な結果に終わっていた。この反省を踏まえ、本作では予算が増えたのかメカ部分の描写がパワーアップしており、更にアタッチメント式の武器を装備させるなどして、サイボーグであるという説得力を持たせている。
また、デビッドの格闘シーンも前作より格段に向上しており、打点の高い蹴りを放つデビッドの姿は前作以上の迫力に満ちている。スタント面でも大きな規模の爆破シーンが随所に見られ、前作を越える作品にしようというスタッフの気迫が感じられるのだ。同じ続編でも、最悪な結果になった『キックボクサー2』とはえらい違いである。
しかし、だからといって本作が完璧な作品であると結論付けるにはまだ早い。いい点が増えたが、悪い点も増えているのだ。
例えばサイボーグたちの機能に関しても、疑問符の付くものが多々ある。例えば熱感知システムで標的を追うというシステムが、消火器と発炎筒ごときで撹乱できてしまうというのは、いくらなんでもいい加減すぎるのではないだろうか(爆)。仮にも政府が開発に関わったサイボーグなのに、ちょっと重武装した男女カップルに全滅させられるというのもおかしな話。特にツッコミどころ満載だったのが、ラストのデビッドVSモーガン・ハンターの対決シーンだ。
モーガンはデビッドの同僚を殺した死刑囚だが、政府によってサイボーグに改造される。しかし暴走して研究所を破壊すると、仲間のサイボーグを引き連れてサイボーグの量産に着手し、世界征服を企んだ。相棒の仇であるモーガンを追うデビッドは、次第にサイボーグを巡る死闘に遭遇。そこでサイボーグのボスとなったモーガンと闘う…ここまで盛り上がっていると、ラストバトルはデビッドとモーガンの一騎打ちが展開されるだろうと、誰もが予想するだろう。
ところがデビッドはモーガンとまともに戦おうとせず、モーガンの身体に爆弾を仕掛けたりと卑怯な手を使いまくり、挙句の果てにモーガンを高圧電流で仕留めている。そりゃあ正面からぶつかったら苦戦するのは目に見えているが、いくらなんでもこの戦いぶりはあんまりだ(苦笑)。ここを2人の一騎打ちで終わらせてくれれば一番良かったのだが…。

『キックボクサー4』

2008-09-20 20:46:15 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「キックボクサー4」
原題:KICKBOXER 4: THE AGGRESSOR
製作:1993年

●『キックボクサー』シリーズ中唯一未見だったこの作品、遂に見ました!
これで『キックボクサー』シリーズは完全制覇。念願かなって見ることが叶ったんですが、監督は何誌強(ゴッドフリー・ホー)や藍乃才(ライ・ナイ・チョイ)に並んで私の中ではワースト監督として君臨している(苦笑)アルバート・ピュン…まぁ見る前から作品の出来は予想できてました。
主人公のサシャ・ミッチェルは現在刑務所暮らしの真っ最中。実はミッチェル、カメル・クリファ(前作のミシェル・クイシからトン・ポー役は交代)に陥れられて監獄送りとなり、妻も誘拐されてしまっていたのだ。
そんなミッチェルの元に麻薬取締局から、ある取引が舞いこんだ。今やカメルはメキシコで麻薬王としてブイブイいわせてるのだが、今度格闘大会を開くらしい。そこでミッチェルが潜入してカメルを始末して欲しいという。もちろんミッチェルはこれを承諾。道中出会った格闘少女や旧友ブラット・ソーントンと共に、ミッチェルは再び戦いの中に飛び込んでいくのだった。
かつてピュン作品である『キックボクサー2』では、クライマックスの戦いがほぼ全てスロー処理されるという疎き目にあったが、今回はちゃんと普通のアクションに仕上がっている。また、格闘大会ということで様々なファイターが絡んでくるため、格闘シーンもそれなりに充実。『3』を見たときは不安に思っていたが、ちゃんとキックボクサーらしいアクションに立ち返っていたのは感心だ。
相変わらずミッチェルの動きはいまひとつ冴えないものの、格闘少女やソーントンらの動きには目を見張るものがあり、ミシェル・クイシからトン・ポーを引き継いだカメルも違和感無くトン・ポーを演じている。残念ながらデニス・チャンも降板しているのは残念だが、本作はそれどころではないある問題を抱えている。

本作はとりあえず「マーシャルアーツ映画(中)」のカテゴリに入れているが、それは単にアクション面を評価しての事。問題なのはストーリーの方だ。
作中、ミッチェルは格闘大会に挑み、妻の奪還を試みてカメルのアジトに潜入する。しかし協力していたソーントン共々捕らえられ、大会で見せしめとして処刑されてしまう事に。だが、ハナっからカメルは参加者を生きて帰すつもりは無かった。生き残った参加者は反乱を起こし、ミッシェルはカメルと相対する…これが上記に記した以降の物語の展開である。
これはもうどこからどう見ても『燃えよドラゴン』以外の何物でもない。主人公が密約で異郷の地に渡り、潜入して敵の動向を探る。一方、仲間の1人は敵側の女といい感じになるが、その女も結局は命を落とす。最後は暴動が起き、主人公とラスボスの一騎打ち…と、ご覧のように完全にそのまんまといっていいぐらい、本作は『燃えよドラゴン』をパクっているのだ。
出だしと格闘大会で「ちょっと『燃えよドラゴン』に似てるなぁ…」と私は思ったが、まさかほぼ全編に渡って模倣に徹しているとは呆れるしかない。似たような作品でジャッキーの『神拳』そのままの物語だった『くノ一五人衆VS女ドラゴン』という作品があるが、あちらは「自分たちなりに面白い作品にしよう!」という作り手の熱意が感じられたのに対し、本作にはそういった意思は感じられなかった。
かつて私はシリーズの評価を『5』≧『1』>『3』>『2』としたが、ここに本作を入れるとすると『5』≧『1』>『3』>『4』>『2』となる。ストーリーを余り気にしないならそれなりに楽しめるかもしれないが…やっぱダメだなぁ、ピュン。

『レイジング・フィスト』

2008-09-10 07:06:06 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「レイジング・フィスト」
原題:FIST OF HONOR
製作:1993年

●おなじみPMエンターティメント作品である本作は、マーシャルアーツ映画と黒社会アクションをドッキングした作品で、主演は『フラッシュ・ゴードン』のサム・ジョーンズある。
サムはマフィア一家の用心棒で、元ボクサーの腕を生かして借金の取立て屋として生活していた。一方、サムを飼っているマフィア一家のボスは、抗争相手のマフィアと和平を結んでいた…が、腹の底では全てを支配してしまおうと画策していた。そして遂にはそのマフィアの親分を殺害し、あろうことかその罪をサムに擦り付けたのだ。
サムはいわれのない罪で投獄され、将来を誓い合った恋人も殺されてしまう。一方、親分を殺されたマフィアは跡継ぎの息子の手に渡っていた。跡継ぎ息子は父の仇を取るために獄中のサムと手を組み、利害の一致した両者はそれぞれの仇敵を殺すため、行動を開始していく…。
この作品、前半はサムの集金とマフィアの行動が完全に分離しているため、「ちょっとダメかな…」と思いながら見ていたのだが、サムが投獄された辺りから次第に物語はヒートアップ。後半以降はそれなりに盛り上がりを見せている。
本作でサムはボクサーだったということで拳闘アクションが中心となっているのだが、その動きはちょっと鈍い。それどころか普通にザコとの戦いでボコボコにされ(結果的には逆転勝ちするのだが)、敵が2人以上だとすぐ劣勢に追い込まれてしまう。この手の作品だったらザコぐらい簡単に蹴散らしてしまうものだが、サムの場合はかなり苦戦気味だった。
作り手はそうすることによって作品にリアリズムを持たせようとしたのかもしれないが、はっきり言って逆効果。サムの技量も関係していたかもしれないが、敵に結構いい動きをする連中が揃っていただけにこうなってしまったのは、非常に勿体無いと言える。マーシャルアーツにするか黒社会にするかハッキリさせていればもっと面白くなりそうだったんだけどなぁ…。

『レディ・ファイター/怒りのエンジェル』

2008-09-04 21:33:06 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「レディ・ファイター/怒りのエンジェル」
英題:ANGEL OF FURY/TRIPLE CROSS
製作:1991年

●シンシア・ラスロック主演の本作はインドネシア映画である。
これまでフィリピン産の動作片を見たことはあるが(ユンピョウの『香港麻薬捜査官』やドニーの『ドラゴン電光石火'98』などはフィリピン系の作品)、インドネシアのアクション映画なんて初めてだ。『ブルー・リベンジ』の件もあるのでかなり不安だったが、これが意外にも面白い作品でした。
ストーリーは、主人公のシンシアが凄いコンピュータを巡って巻き起こる争奪戦で奮闘する物語である。とにかく本作は事あるごとにアクションが盛り込まれており、海で、デパートで、市街で、そして大空でシンシアが闘いを繰り広げている。そのスケールたるや凡百のB級作品にあらず、ヘリコプターを大量投入したりと、それなりに予算をかけている様子が伺える。
当然アクションは格闘・スタント共に充実。スタント面ではシンシアが『検事Mr.ハー』のユンピョウのようにヘリに捕まって宙を舞うなど頑張っており、格闘シーンでは香港式の素早いアクションを堪能することができる。絡み役の面々はインドネシアのスタントマンが参加しているようで、彼らも中々の動きで画面を盛り上げていた。ちょっと香港時代のシンシアを髣髴とさせるカットもあり、作品全体の雰囲気はプチ『皇家師姐』といった感じだ。
これらのアクションを指導したのは、なんと『ブラッド・ウォリアー』『ブルー・リベンジ』のタナカだ(またお前か!)。
ただしご覧のように、本作では前二作のような体たらくには陥っておらず、タナカ自身も悪の組織のナンバー3みたいな役で出演している。しかも台詞は多く、シンシアとは何度もバトルを展開し、アクションのキレもかなりのもの。もしかすると本作はタナカの仕事としてはベストではなかろうか。シンシア迷は勿論、タナカのファンも必見だ!(笑

『キックボクサー3』

2008-08-27 19:10:19 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「キックボクサー3」
原題:KICKBOXER 3: THE ART OF WAR/KICKBOXER 3
製作:1992年

●シンプルだがヴァンダムの魅力が弾けていた第1作、明後日の方向へ突っ走ってしまった第2作と続いてきた『キックボクサー』シリーズも、今回でとうとう第3作を向かえる。このあと更にもうひとつ『キックボクサー4』もあるのだが、残念ながら当方は『4』だけは未見。なので本シリーズのレビューは(今現在は)ここまでということになりますので悪しからず…。
今回はミッチェルとデニスが遠くブラジルの地で活躍する話だ。ブラジルでアルゼンチンのキックボクシング・チャンプであるミゲル・オニガと闘うことになったミッチェルだが、現地で出会った浮浪児のカップルと共に、汚い陰謀に巻き込まれてしまう…といった物語である。
流石にシリーズ第3作ともなるとマンネリ化が懸念されるところだが、本作はその打開策としてガンアクションを加えている。だがマーシャルアーツ映画で格闘シーンが減るような仕様にしてしまうなんて、いくらなんでも愚の骨頂としか言い様が無い。
最終的に悪党を蹴散らした主人公たちは何の罪に問われる事も無いまま幕を閉じるのだが、7人ほど射殺しているミッチェルたちをそのまま見逃していいものだろうか?(ボスを刺したガキに関しても、何のお咎めも無しというのは…う~ん)
また、本作はこれまで物語の根本として存在していたキックボクサーという要素が、幼女の捜索を本筋に置き換えてしまったが為に疎かになってしまっている。とりあえず格闘アクションのグレードは『2』から持ち直しているものの、クライマックスで繰り広げられるミッチェルVSオニガのバトルが、単なるオマケのような印象を受けてしまったのは頂けない。
今まで見たシリーズ(『4』を除く)の面白さを比較すると、『5』≧『1』>『3』>『2』といったところだろうか。未だ見ていない『4』が、ちゃんとキックボクサーらしい作品に立ち直っているかが気になります…って、『4』の監督はまたアルバート・ピュンかよ!なんかもう…見なくても結果が目に見えてくる気がします(萎

『キックボクサー』

2008-08-24 22:53:19 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「キックボクサー」
原題:KICKBOXER
製作:1989年

●ジャン=クロード・ヴァン・ダムの初期主演作の中でも、傑作と名高いマーシャルアーツ映画である。物語は至極シンプルなもので、再起不能にされたキックボクサーの兄の仇を取るべく、ヴァンダムがリングに上がって闘う話だ。
デニス・アレクシオはキックボクサーのチャンプで、弟のヴァンダムと共にキックの本場であるタイへ遠征に出立した。だがそこで待っていたのは桁外れの強さを誇る怪物、ミシェル・クイシだった。非道なミシェルはアレクシオの背を叩き折り、一生歩く事が出来ない身体にしてしまう。ヴァンダムは仇討ちを誓ってムエタイの達人であるデニス・チャンのもとに弟子入りする…。
本作はさながら香港映画のような「特訓&仇討ち」映画だ。質素な小屋で暮らす世捨て人のデニスは袁小田(ユェン・シャオティエン)を髣髴とさせ、ヴァンダムが挑む特訓の数々も『酔拳』『蛇拳』のそれを連想させる(こちらの方が多少リアルスティックであるが)。
ストーリーはヴァンダムが兄を倒されて特訓してミシェルを倒して終りという単純なものだが、ここらへんの薄っぺらさも香港映画っぽい。のちにヴァンダムは楊斯と死闘を演じる『ブラッド・スポーツ』に主演。更に徐克(ツイ・ハーク)や呉宇森(ジョン・ウー)ら香港映画のスタッフと仕事をしていくが、すでにこの頃から香港映画を意識していた様子が垣間見え、とても興味深いものを感じることができる。
アクションに関してはそこそこ。殺陣は蹴り一辺倒で代わり映えはしないものの、劇中ヴァンダムによって「これでもか!」と披露される華麗な回し蹴りの数々は素晴らしい。近年はこういったコテコテのマーシャルアーツ映画を撮らなくなったヴァンダムであるが、本作での活躍ぶりは目を見張るものがある。是非とも本作のようなテンションの高い作品をまた作ってくれないかなぁ…?
なお、本作の武術指導はなんと成家班の張午郎(チャン・ウーロン)がジョン・チャン名義で担当(どうりでデニスの替身などの見せ方が上手かった訳だ)。この他にもミシェルを飼っているボスの手下に李家鼎(リー・ガーデン)が参加している。
この李家鼎、かつて『闘え!ドラゴン』というドラマで倉田保昭を相手に鉄の爪で戦ったことがある。クライマックスのヴァンダムVSミシェル戦で切り傷を受けたヴァンダムを見た李家鼎は李小龍っぽく血を嘗める仕草をしたが、もしかしたら同じ様な傷を倉田に付けた自分の事を思い出していたのかもしれない…って、さすがにそれは無いですね(苦笑

『サイボーグ・ウェポン』

2008-08-20 19:26:03 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「サイボーグ・ウェポン」
原題:The Mosaic Project/Infernal Soldiers
中文題:魔鬼再制人
製作:1993年

●物々しいタイトルの本作だが、実際はSFでもなんでもないタダのスパイアクションで、SF的な要素は皆無だ。
ストーリーは手術によってパワーアップした主人公達の活躍を描くものだが、その手術というのも単に脳へマイクロチップを埋め込む程度のものでしかない。パッケージはいかにもそれっぽくあつらえてあるが、「看板に偽りあり」もここまで来ると見事というしかないだろう(笑
主人公のジョー・エステベスとジョン・タブラーは中途半端な生活を送るしがないチンピラだった。ところがある日奇妙なチップを拾ったことからCIAによって強化手術を受け、無敵のスパイとして巨悪と戦っていくこととなる…と、話としてはたったこれだけである。
ストーリーはスッカスカでテンポが悪く、ヒロインも悪党も中途半端な死に方をしたりと完全に破綻しており、正直言って全然面白くない。が、本作の格闘シーンはマーシャルアーツ映画にありがちな妙な間を取りながら技の応酬をするものではなく、香港映画のような丁々発止のファイトに取り組んでいる。
アクションシーンの演出もそこはかとなくジャッキー映画の香りが漂っており、序盤の工作員が脱出するシークエンスやラストの刺客2人とのバトルもそれなりの盛り上がりを見せている。主なキャストの中にスタントマンとして二重にクレジットされている人が多々いたので、恐らく本作でいい動きを見せていた人はみんなスタント方面の方々だと推察され、だからこそこのようないい格闘シーンが作られたのだと思われる。
しかし、やはり惜しむらくはストーリーがお粗末過ぎた事だろう。ボンクラコンビが突然超人に!というシチュエーションは料理次第で面白くなりそうな題材だっただけに、そして格闘シーンがいい出来だっただけに、この結果に甘んじてしまったのは残念でならない。監督がアイザック・フロレンティーンとかだったらまだマシだったんだろうけどなぁ。

『タイムコップ2』

2008-08-05 22:00:00 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「タイムコップ2」
原題:TimeCop 2/TimeCop: The Berlin Decision
製作:2003年

▼ジャン・クロード=ヴァン・ダムの主演作には、続編が作られた作品がいくつか存在します。しかしヴァンダムが主役を継続するケースは少なく、『ブラッド・スポーツ』『キックボクサー』『サイボーグ』の続編では、別の俳優に主演が変わっています。
ヴァンダムがそのまま続投した作品といえば、2008年の時点では『ユニバーサル・ソルジャー』の続編である『ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン』だけとなっています(とはいえ、『ザ・リターン』は第一作を無視しまくった内容なので、別物と言ってもいい代物なのですが・汗)。
さて、本作もヴァンダムが続投できなかった続編のひとつで、代わりの主演を務めたのは、『ドラゴン/ブルース・リー物語』のジェイソン・スコット・リー。対するはトーマス・イアン・グリフィスで、この両名による激しいアクションこそが本作最大の見どころとなってます。

■時は近未来。タイムコップのジェイソンは、時空を超えてヒトラー暗殺を企むトーマスを捕らえるが、その最中にトーマスの妻が死んでしまう。様々な任務に追われながら、タイムコップの在り方に苦悩するジェイソンであったが、突如として謎の時空の乱れが発生する。
 この現象によってタイムコップのメンバーが次々と消されていくが、これは脱獄したトーマスの仕業だった。ジェイソンは脱獄する前の彼を止めようとタイムスリップするが、対するトーマスはジェイソンの両親を殺そうとタイムスリップを繰り返していった。
この滅茶苦茶になった時間軸を元に戻すには、トーマスを捕らえるしかない! 己の記憶に現れたトーマスの影を追って、ジェイソンは自らの少年時代へと決着を付けに向かうのだが…。

▲う~ん…なんだかどうにも忙しない物語でした(苦笑
本作は序盤こそジェイソンのモノローグが挿入され、少しかったるい印象を受けるんですが、トーマスが暗躍を開始するとノンストップで話が動き始めます。これが本当に「休む間もなく」といった感じで、ジェイソンは常に全力疾走で事件を追い続けるのです。
おかげで気の休まるようなカットはほとんどなく、タイムスリップものらしくストーリーも実に複雑。ラストも事件が解決したのか否かモヤモヤしていて、もどかしさだけが残る結果となっていました。
 さて、肝心の格闘アクションについてですが、本作は全編に渡ってジェイソンが大立ち回りを披露。殺陣が受け・攻めの一辺倒になりやすいものの、最後の大一番となるジェイソンVSトーマスの対決は迫力満点で、息をつかせぬ技の応酬を見せています。
ちなみにジェイソンのファイトスタイルが何処となく李小龍(ブルース・リー)っぽく、これは『ドラゴン/ブルース・リー物語』を意識した演出かな…と思いきや、なんと本作のアクションはジェリー・ポティートまたかよ!)が指導しているのです。
そういえば『ドラゴン~』でもジェイソンはジェリーの指導を受けていたようですが、その縁で本作に関わったのでしょうか?