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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『スウィーパーズ』

2009-04-10 23:31:19 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「スウィーパーズ」
原題:SWEEPERS
製作:1998年

●前回・前々回とエロエロでアングラな作品を取りあげてしまったので、今回は無難な作品をひとつ。『ジルリップス』に続いてのドルフ・ラングレン主演作である。今の所、彼の作品で良作にめぐり合うことは中々なかったのだが、本作は佳作に入る類の作品だ。
ドルフはアンゴラで地雷除去を行っていたが、あるとき作業中に息子が地雷原で地雷を踏み、不幸にもドルフの目前で死んでしまう。それから数年後、ドルフは息子の死というアクシデントに遭遇したことで、仕事から離れて酒びたりの日々を送っていた。そんなアンゴラの地に、かつてアメリカで作られた新型地雷を巡り、クレア・スタンフィールドが地雷除去のために現れた。だが、回収したはずの高性能地雷により仲間の除去スタッフ全員が爆死。難を逃れたクレアは、このまま引き下がるわけにはいかないと地雷の調査を続行し、ドルフの協力を仰いだ。
最初こそは拒否していたドルフだが、多発する地雷の被害に怒りを燃やし、クレアと共に地雷の謎を追い始める。謎の敵に襲われながらも真実に近付いていくドルフとクレアは、やがてダイヤモンド鉱山を牛耳る連中との戦いに発展し、そこで予想だにしなかった真実を知るのだった…。
本作は地雷を主題にした作品で、息子を失ったドルフの苦悩などが描かれている。だが特に頭の固い作品というわけではなく、勧善懲悪なアクション映画としてきちんと成立している。もちろんドルフの格闘アクションもちゃんとあり(序盤の酒場での闘いがちょっと面白い)、地雷を扱った作品だけに派手な爆破シーンが随所に挿入されていた。『ジルリップス』みたいにドラマに凝って変な方向に行ったりせず、ドラマとアクションがちゃんと両立している。ある意味、ドルフ作品の理想系とも言える作品なのだ。
しかし本作で、どうしても解せない点がある。それはクライマックスで繰り広げられる2つのアクションシーンに関してだ。クレアが捕らわれていると知ったドルフは、敵の巣窟であるダイヤモンド鉱山へと突入。非道なヒゲオヤジを始末する。続いて敵のボスが機関車で逃走を図り、ドルフがこれを派手に爆破して本作は幕を閉じる。どちらも迫力ある爆破シーンが展開されているが、両方とも似たようなオチであるためかインパクトが薄く、面白みはあまり感じる事が出来ないのだ。
たぶん本作の監督は、ラストのアクションを鉱山にするか機関車にするかで悩んだに違いない。物語的には鉱山で終わらせてもいいが、監督としてはどうしても機関車のシーンも入れたかったのだろう。そこで無理矢理どちらも詰め込んだ結果、2つのアクションの迫力が相殺される事に…これはあくまでも私の憶測だが、鉱山で全てのケリを付けていたらテンポもよかったと思うし、キリのいいラストになったはず。ここらへんはちょびっと残念です。

『リアル・キックボクサー』

2009-03-20 19:34:36 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「リアル・キックボクサー」
原題:AMERICAN KICKBOXER 2
製作:1993年

●突然現れた謎の男たちによって、キャシー・シャワーは我が子を目の前で誘拐されてしまう。多額の身代金を要求されて警察も頼れぬ中、キャシーは2人の男に望みを託した。1人は彼女の離婚した夫であるデイル・"アポロ"・クック、もう1人は彼女の元恋人で
あるエヴァン・ルーリーだ。2人とも腕っ節の方は文句なしの実力者だが、過去の確執で決して馴れ合おうとはしなかった。しかし連れ去られた娘はクックかエヴァンどちらかの子であるため、2人は協力して敵に立ち向かっていく。ところが、真の黒幕は意外なところに姿を見せ…。
『 バトル・ウルフ』に続き、再びクックの主演作の登場だ。原題を見ても解るとおり『アメリカン・キックボクサー』の続編である…ようだが、キックボクサーすら出てこないのでタイトルだけの続編ということなのだろう。
作品自体はひと捻りを加え、単なる格闘映画ではないストーリーを作り上げている。が、本作は最初の30分が全く面白くない。なにしろ短気な暴力夫のクックを筆頭に、女の事しか考えていないロクデナシのエヴァン、浮気しまくりなキャシーと、登場人物が揃いも揃ってアホキャラばかりなのだ。そのため前半30分がとても見辛くて鬼門なのだが、クックとエヴァンが協力し合うところから徐々に話は盛り上がりを見せていく。
 作中の格闘シーンは上質で、クックとエヴァンのファイトスタイルもきちんと差別化が図れており、受けのスタントも含めて上々の出来である。特に素晴らしい動きを見せていたのがエヴァンで、ラストではクックを差し置いて格闘シーンの見せ場を一人占めしている。彼は他にも『ダブル・インパクト』『アンダー・カバー』『タイガークロー2(未公開作)』等、幾多の格闘映画に関わってきた経歴を持つ。いっそのこと、クックじゃなくてエヴァンが主役でも良かったと思うが(苦笑)きちんと2人の対戦も用意されており、格闘シーンへの配慮も行き届いている。
ただし、ラストバトルがゴチャゴチャしていてこれといった山場が無く、前述した登場人物の不備も含めて不満は若干残る。キャシーを巡るやり取りを半分ぐらいカットし、そのぶん格闘シーンに凝っていれば更に面白くなったはず。流石に『バトル・ウルフ』並みの傑作ではないが、この手の作品では良質な部類に入るのではないだろうか。

『ヒューマノイド』

2009-03-10 21:54:18 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ヒューマノイド」
原題:DISPLACDE
製作:2006年

●数百年前より、地球は2組の宇宙人によって監視されていた。宇宙人たちは地球に一切干渉しない事を旨としていたが、一方の宇宙人が地球の重要人物に接触し、極秘裏に勢力を拡大しつつあった。そこでもう一方の宇宙人の代表者が地球に行き、敵の悪事を探ろうとしたのだが捕らえられてしまう。彼を奪還すべく、代表者の息子であるマーク・ストレンジは地球に降り立つのだが、そのころ地球では秘密組織による内紛が発生していた…。
本作は『12 TWELVE』のスタッフによって作られた作品だ。元は自主制作の短編映画から始まった企画であり、場面ごとに作調が違うように見えるのはそのためなのだろう。
しかし結論から言わせてもらうなら、本作には2つの大きな欠点が存在する。ひとつは物語の冒頭に挿入される世界観の説明と、もうひとつはアクションシーンにおける編集についてだ。世界観の説明は劇中でも再度行われるため、わざわざオープニングに持ってくる必要は無い。更に問題なのがアクションシーンの演出で、こちらはカット割りが多すぎて何が何だか解らなくなってしまっているのだ(気を付けないとマジで映像酔いしてしまうので、初見の方はご注意を)。
前者はともかく後者の問題はとても酷いのだが、本作はそれらマイナスポイントに対して余りある程、格闘アクションの出来は良い。なにしろ『12 TWELVE』のスタッフが作っている上に、格闘シーンではマークの教え子(つまり格闘家やスタントマンの卵)たちが参加しており、質に関しては何の問題も無いのだ。中でもマークの活躍っぷりは『12 TWELVE』よりも凄いもので、彼は主人公だけではなく敵側の人造兵士も演じている。
人造兵士は書類を奪った一味を追い、競売会場や森を駆け抜け次々と敵を駆逐していく。この追跡劇がとてもテンポ良く、一度に2~3人を相手に闘う姿はとても素晴らしい。これで最後はマークVS人造兵士の壮絶なバトルで終われば最高だったのだが…そう、マークと人造兵士は同一人物。よって2人は一度も顔をあわせることも無いまま物語は終り、人造兵士に至ってはマークの協力者である人間の男にあっさり仕留められてしまうのだ。その代わりマークと敵の一味のボスとの対戦が用意されているが、人造兵士の前で右往左往しているだけだったボスには何の威圧感も無かった(動きは悪くないのだが)。
う~ん…これは評価の難しい作品だ。自主制作映画と考えれば上々の出来だが、普通に評価するとダメダメな演出に閉口してしまうし…。とりあえず映画としては『12 TWELVE』が圧倒的に上で、格闘シーンのクオリティなら本作といったところだろうか。もし同スタッフで第3作を作るのなら、果たしてどんな作品になっているのだろうか?

『レディ・ウェポン』(マグニフィセント・ミミ主演作)

2009-03-06 20:46:42 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「レディ・ウェポン」
原題:PUSHED TO THE LIMIT
製作:1991年

●本作はモノホンのアメリカ女子プロレスラー、マグニフィセント・ミミが主演した作品である。マーシャルアーツ映画でプロレスラーというと、どうしてもノロノロとした動きの木偶の坊ばっかり想像しがちだが、本作でミミが見せる動作は結構なものだ。流石にシンシア・ラスロック並み…とまではいかないが、それなりにスピーディーな動きを披露してくれている。
主人公のミミは全米女子プロレスリングのチャンピオン(つまりほとんどミミまんまの役)。旦那や家族に囲まれ、仕事でも充実した生活を送っていた。そんなある日、遠征先のラスベガスで不肖の弟が殺されたという話が飛び込んできた。曰く、ミミの弟は麻薬密売人のヘンリー・ハヤシとその一味の手によって始末されたというのだ。
復讐を誓ったミミは、ヘンリーが催している闇の格闘トーナメントに出場し、奴の懐へ飛び込もうと画策した。そこで武道の師匠であるベラル・リードの元に弟子入りし、彼のつてによってトーナメントへと参戦を果たす。しかしヘンリーはミミの動向と目的に気付き、出場していたミミの親友を無残にも殺害たらしめてしまう。ミミは親友を殺した女子チャンプと相対し、同時に潜入して捕まっていたベラルもヘンリーの元へと迫るのだった…。
アクション事態に関してはそれほど悪く無い。プロレス技を交えた殺陣はそれなりに派手だし、登場するファイターたちもみんなバリバリ動いているが、そんな本作で珍しかったのは女性同士のファイトがあったという点だ。
香港映画では女性同士のバトルは珍しくも無いが、意外なことにマーシャルアーツ映画でこういった対戦を見かけることは少ない。女性メインの作品でも相手が屈強な男だったりする事が多く、女性VS女性というカードはなかなか見られないのだ。その点、本作はラストで闘う相手も西脇美智子みたいなマッチョ女なので、女闘美アクションという観点からは十二分に良い仕上がりを見せてるといえる(その代わり、ラスボスのヘンリーが完全にザコだったりとアラはあるが…)。
だがこの作品、カメラワークが非常にチープであるという問題を抱えている。私が特に気になったのが、先述した女チャンプの試合の場面だ。ここでミミは初めて女チャンプの凄惨なファイトスタイルを目にするのだが、肝心な止めを刺す場面で思いっきり観客の後頭部が被ってしまい、女チャンプが何をしたのか解らなくなっているのだ(!)。視聴者に対しても女チャンプの強大さを魅せるための場面であるはずなのに、いくらなんでもこれは杜撰過ぎる。
他にも、中盤の試合で選手のツバがレンズに付着したままになっていたりと、もうちょっとしっかり撮ってくれと言いたくなるようなカットが多い。普通のアクションシーンにしても単調な撮り方ばっかりだったし、少しぐらいカメラワークに変化を持たせてくれればよかったのだが…。

『ファイアーイーグル』

2009-02-10 22:43:49 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ファイアーイーグル」
原題:OPEN FIRE
制作:1994年

▼『アンダーカバー』『アンダーカバー/炎の復讐』『マーシャルコップ』『バウンティ・ハンター/死の報酬』と、傑作マーシャルアーツ映画をいくつも排出してきたカート・アンダーソン監督。そんな彼が、お馴染み主演のジェフ・ウィンコット&スタント指導ジェフ・プルートと共に製作したものの、これまで特に取り上げられる機会の少なかった作品が本作だ。
それというのも、本作のジャケがとてもマーシャルアーツ映画に見えない(どちらかというと戦争アクション風のパッケージ)事が少なからず影響しているものと思われる。しかし『ストリート・クライム』や『ファイヤー・パワー』みたいな前例もあるし、ジェフ・プルートが関わっているのならあまり心配する事もないと思いレンタルしてみたのだが…?

■作品自体はよくある『ダイ・ハード』タイプの作品である。
先走った行動の末に相棒を死なせた過去を持つ元FBI捜査官のジェフは、今は薬品工場のおっさんの元で静かに働いていた。ところが武装したテロリストグループが工場を乗っ取り、テログループのリーダーを釈放せよと要求を突きつけてきたのだ。事件当時バーにいたジェフは、役立たずのFBI連中を尻目に1人で工場に潜入。内部では工員やおっさんらを人質に取ったテログループが、神経ガスを精製したり爆弾を仕掛けていたりするのを目の当たりにする。
難を逃れていたヒロインと合流したジェフだが、一方で要求を呑んだ警察によってリーダーのパトリック・キルパトリックが釈放され、新たにダイヤの原石を持ってくるよう要求を受けていた。二重三重に計略を重ねていたテログループは、ヒロインとおっさんを人質にヘリでの国外逃亡を目論む。連中はまんまと警察の目から逃れるが、そうはジェフが許さない。荒野に佇む廃墟を舞台に、ジェフとパトリックたちテログループとの最後の死闘が始まる!

▲『ダイ・ハード』同様に限定されたシチュエーションを舞台にした本作は、テログループが工場から脱出するまでは中々面白い。物語の展開はありきたりなのだが、所々にユーモアを含んだ演出を取っており、それなりには楽しめるのだ。ただし工場から出た途端にペースがガックリと落ち込んでしまい、その後の展開も尻すぼみになってしまったのは残念だ。
ただし、格闘アクションについてはジェフ・プルートが関わっているだけあってか、意外と激しいバトルが多い。本作で敵となるテログループは10人ほどいるのだが、そのうち7人ぐらいは素手での勝負に持ち込まれている。敵の中には意外と鋭い蹴りを放つ奴もいたりして、ここらへんの攻防戦は面白いのだ(ちなみにテログループのメンバーにはスタントマンのレオ・リーもいるのだが、彼が活躍する格闘アクションはあまり無いです)。
最後はもちろんジェフVSパトリックの対決で、こちらも格闘アクションの出来はすこぶる良い。特にジェフがパトリックを殴った際のアクションがまんま『ポリスストーリー』(馮克安にジャッキーが殴られてガラスにぶち当たる例のアレ)だったのには思わずニヤリ。本作に坂本浩一は加わってはいないはずなのだが、このラストバトルには『皇家戦士』っぽいカットもあったりしたので、もしかするとジェフ・プルートの趣味だったりして…(笑
総評すると冒頭に挙げた4つの作品よりクオリティが落ちるため、特に無理して見るほどの作品では無い。やはり取り上げられない作品にはそれ相応の理由があった…という事でしょうか。

『ストリートファイター 2050』

2009-01-21 21:34:16 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ストリートファイター 2050」
原題:BLOODFIST 2050
制作:2005年

●昨年(2008年)の9月26日、エクスプロイテーション・ムービーの雄であり、B級映画の帝王ロジャー・コーマンの片腕として活躍していた男がこの世を去った。彼の名はシリオ・H・サンチャゴ…多くのB級映画に足跡を残してきた男で、当ブログでも監督作の『ザ・フューチャー・ハンター』『キング・オブ・フィスト』等々を紹介している。その作風は良くも悪くもB級的なものばかりだが、格闘映画・コマンドアクション・コメディ・SF・ホラーから女囚モノまで手広く手がけており、この手のジャンルの象徴ともいえるような存在の人物でもあったのだ。
本作は、そんなサンチャゴの日本に上陸した(現時点で)最後の作品である。この作品が作られた当時、格闘映画界はトニー・ジャーの登場によって震撼させられ、同時に多くのアクション超人が誕生していた。2004年に『アルティメット』でシリル・ラファエリが、その翌年にはマティス・ラントヴェアーが『バレット・フィスト』で市場を席巻。2006年にはマルコ・ザロールが『Kiltro』で彗星の如く現れた。無論、この流れにサンチャゴとコーマンも便乗し、本作のような格闘映画が完成したのだ。
荒廃しきった近未来のロサンゼルス。そこへ兄を探して現れたマット・マリンズは、兄がロスの闘技場でファイターとして活躍していた事と、その兄が何者かによって殺された事を知る。ストリッパーのねーちゃん(脱ぎ要員)と気のいいファイター(最強の敵への噛ませ犬要員)から話を聞いたマットは警察に駆け込むが、当然の如く役に立たず。そこで出会った不良刑事(ちょっと『アカギ』の安岡っぽい)の助言で、犯人を探すために闘技場へ参戦するのだが…。
別の映画から持ってきた流用映像で始まるオープニング、使い古された舞台設定と展開、絶えず裸のねーちゃんが乱舞する物語…とまぁ、ご覧の通り本作はバリバリのB級映画だ。ストーリーに真新しいものは何一つ無く、その既視感は『NO RULES/ノー・ルール』とタメを張るほど。だが、それでも本作がそれなりに見ていられるのは、良質な格闘アクションの連発で画面を彩ってもたせているからに他ならない。

主演のマット・マリンズは本物の格闘チャンプで、アクロバティックな動作もそつなくこなすオールラウンドタイプの猛者。その技量は他のアクション超人たちと比較しても何ら遜色無いものだが、この人、ちょっと個性に乏しいのだ。シリル・ラファエリには野性味溢れる魅力があったし、マティス・ラントヴェアーは顔も技もキレる人だった。ではマットはどうだろうか?…と、改めて本作の彼を見てみると、単なるアクションの凄い人としか見えないではないか!
この先、恐らく格闘映画界には幾多のアクション超人が現れるはずだが、そうなったらアクション超人たちのインフレが発生する危険性がある。もしその時が来た時に生き残れるのは(当たり前だが)他とは違う個性の強いスターだけだ。本作を見る限りマットの技量に問題は無いが、スター性や個性という点では明らかに既存のアクション超人たちよりも劣っている。現在マットはアメリカ版『仮面ライダー龍騎』などで活動を続けているようだが、願わくば更なる躍進を期待したい。

ちなみにストーリーはクライマックスまでお決まりの展開をなぞるが、ラストでちょっとしたどんでん返しがあるのが見もの。もし本作がヒットしていたなら、そしてサンチャゴが存命していたのであれば、ドン・ウィルソンを担ぎ出した時と同様に、マットを主演に添えて大量の格闘映画を製作したのかもしれない…(合掌)

『NO RULES/ノー・ルール』

2009-01-15 22:01:20 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「NO RULES/ノー・ルール」
原題:RING OF DEATH
制作:2008年

●マーシャルアーツ映画において、裏世界の闘技場と潜入捜査モノという2つのジャンルは定番中の定番だった。『アンダー・カバー』系列を例に挙げるまでも無く、『サイバー・ウォーズ』『キングオブドラゴン』など、2つの要素を含んだ作品は無数に存在する。本作もそのうちのひとつなのだが、内容は90年代からまったく進歩していないシンプルな作風で…というか、ここまで単純で良いのか?と思うほどのスカスカな作品である(笑
 ジョニー・メスナーは元・武闘派捜査官で、現在は妻と別居中の身。そんな彼の元に、FBIで働いているかつての相棒から、ある事件の潜入捜査を持ちかけられた。
曰く、ステイシー・キーチが所長を務める刑務所で異様な数の囚人が死亡しており、この異常の原因を調べて欲しい…というもの。説得されたジョニーは、妻や子にも真実を伝えぬまま悪の巣窟へと飛び込んだ。その刑務所では秘密裏に秘密の闘技場でデスマッチが行われており、ネットで配信されて巨額の金が動いていた。身分を隠して捜査を続けるジョニーはこのデスマッチに挑むのだが…。
 無論、このあとはジョニーと一緒に刑務所に来た貧弱くんが死んだり、刑務所で仲良くなった男が「出所したら家族とよろしくやるんだ…」と語った直後にデスマッチで死亡したり、身分がバレて妻と子が人質に取られたりするのはご想像の通り。とにかくお決まりのパターンばかりで物語は進んでいく。これが94年ごろにPMエンターティメントあたりが作った作品ならまだしも、本作は2008年に作られたバリバリの最新作だ。なのにここまで新鮮味の無い展開ばかりというのは凄いのではないだろうか(苦笑
まぁこの辺はご愛嬌と言える許容範囲内なのだからまだいいが、個人的にはラストの結末がちょっと納得ができなかった。あの後、キーチが収監された先の牢で相部屋になったのがあのデカブツ黒人だった…なんてオチがあればスカッと出来たのだが、結局キーチは自分の王国に帰ってきてニヤニヤしたまま幕は下りる。一応は社会的な制裁こそ受けたのだろうが、根源悪たるキーチが五体満足で健在なのではフラストレーションが残りっぱなし。これだけはどうにかして欲しかったなぁ…。
 格闘シーンについては拳闘というかケンカアクション的なスタイルが中心であり、編集も最近はよく見られるチャカチャカしたタイプのもの。しかし血みどろで繰り広げられる戦いは壮絶であり、まさしく「血で血を洗う」という言葉が相応しいバトルが展開されている。ジョニーの動きも悪くは無く、ラスボスとして立ちはだかるデカブツ黒人も体格の割には見られるアクションを見せていた。こちらについては及第点一個上といった感じである。

『サイバー・ウォーズ』

2009-01-08 23:57:33 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「サイバー・ウォーズ」
原題:EXPECT NO MERCY
制作:1995年

●ビリー・ブランクスとジャラル・メルヒの『キングオブドラゴン』コンビが再び組んだ本作は、大まかに現すとビリー版『アンダー・カバー/炎の逆襲』といった感じの作品だ。ストーリーは裏で暗殺を請け負う格闘養成機関の陰謀を、ビリーとジャラルの筋肉コンビが金髪ねーちゃんの協力を得て倒すという、至極シンプル(悪く言えば単純)な物語である。
作品自体の規模に関しては、大勢のエキストラを動員したり派手な爆破シーンを用意していたりと、頑張っている様子が伺える。一方で物語は随分と凡庸な印象を受けるものの、劇中の格闘アクションは中々見応えのある物に仕上がっている。
同じビリー&ジャラルのコンビで製作された『キングオブドラゴン』は、鷹拳を取り入れた野心的な作品ではあったものの、格闘アクション自体は少々もたつく印象があった。しかし、本作の場合はマーシャルアーツ映画的なスタイルに従事しており、全編に渡ってビリーの伸びやかな蹴りが炸裂する快作となっているのだ(ちなみに武術指導はビリーとジャラルの両名)。
本作にはもう1つ、取り上げるべき事柄がある。劇中、敵の刺客の中に白髪の大柄な黒人が登場しているが、彼こそはビリーの弟であるマイケル・ブランクスその人だ。マイケルは兄譲りの腕で序盤からいいファイトを披露しており、クライマックスに至っては夢の兄弟対決が実現する。その暑苦しさたるや、以前紹介した『少林童子功』の羅鋭VS唐龍の極悪兄弟とタメを張る暑苦しさ(笑)!動作自体もかなりの迫力で、この手の映画としても珍しい顔合わせのレア・バトルとして、本作にそれなりの価値を与えている。
惜しむらくはボスであるウルフ・ラーソンとのラストバトルが、このビリーVSマイケルを越える物ではなかったことだ。序盤から後半まで一貫したアクションのテンションを保っていたのに、ウルフとの戦いはショボいCGワールドに移動したりと、いまいち高揚感に欠けている。もし最後のビリーVSウルフの対決が派手であれば、本作は間違いなく傑作になっていただろうに…。
いかんせんCGが本格的に進歩する前の作品なので、随所に挿入されるCGのカットが恐ろしくショボい。そこだけに目を瞑ることができるなら、本作は良質のマーシャルアーツ映画として楽しむ事が出来る筈だ。ところで本作でビリーと共に主役を務めているジャラルは、『キングオブドラゴン』など複数の作品で製作者としても映画に携わっている。もしかしてメルヒって苗字から察するに、PMエンターティメントのジョセフ・メルヒと関係があったりするのだろうか?

『アルティメット・マシーン』

2008-12-24 20:32:53 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「アルティメット・マシーン」
原題:HEATSEEKER
制作:1995年

●前作のハッピーエンドを台無しにした『キックボクサー2』、李小龍の有名作品をパクった『キックボクサー4』、笑えないアクション喜劇の『ワイルド・スマッシャー』、ベニー・ユキーデが宝の持ち腐れと化した『ブラッド・マッチ』…今年は一年を通してアルバート・ピュンに悩まされる年でもありましたが、今回もピュン印の作品の登場です(萎
舞台は近未来。人体に改造を施した半機械のファイターが席巻していた格闘大会で、キース・クックは生身の体でありながら王者となった。しかし、クックに倒されたゲイリー・ダニエルズが更なる改造を受けて復活。ゲイリーの雇い主はクックの恋人(兼トレーナー)を強引に誘拐し、自ら企画した格闘大会にクックを半ば無理矢理に出場させてしまう。ヒロインはゲイリーの雇い主からゲイリーを指導せよと強要され、否応なしに大会へ参加したクックはゲイリーとの最終決戦に挑むのだった…と、話だけを見るなら結構ありがちな感じだ。
だが本作は、格闘大会が始まった途端に無個性な格闘アクションが淡々と続くだけの作品に成り下がってしまう。
言うなれば、『片腕カンフー対空とぶギロチン』の格闘トーナメントが延々と続いていく(ただし選手は全員没個性的で、ファイトスタイルは全く差別化されていない)と言えば解りやすいだろう。この格闘大会での演出もまたクセモノで、全体的に画面がボカシ気味の効果で覆われており、正直言って見え辛いことこのうえないのだ。クックとゲイリーの格闘アクションは流石に素晴らしいものの、この全編を通して炸裂するピュン独特のタルい雰囲気で、全てがご破算となっている。
ストーリーは格闘大会モノにありがちな八百長やそれぞれの確執を挟み、クライマックスに向けて展開していく。だが、最後の戦いに挑むクック・2人の男の間で揺らぐヒロイン・疑問を感じ始めるゲイリー・雇い主の末路などといった物語の決着を、ああいう形で処理してしまったのは流石に酷過ぎる。香港映画ならこの終わり方でも許せたかもしれないが、いかんせんこの作品は近代のハリウッド映画。それなのにあんなラストで締めてしまうなんて、ピュンは他所から文句を言われなかったのだろうか?
かつてクックとゲイリーは、共にゴールデンハーベストのスクリーンで闘い(クックは『チャイナ・オブライエン』、ゲイリーは『シティ・ハンター』)、共に呉思遠の薫陶を受けた(クックは『キング・オブ・キックボクサー』、ゲイリーは『BloodMoon』)。そんな上質の素材も料理人の腕がトンチキならゲテモノに成り果ててしまうものなのだと、本作を視聴する前に2人の名前を見て少しでも期待していた自分に言い聞かせてやりたい気分になる映画でした(爆

『地獄の捜査線』

2008-11-19 20:48:02 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「地獄の捜査線」
原題:LOGAN'S WAR: BOUND BY HONOR
製作:1998年

●本作は「チャック・ノリスVSキャデラック」という売り文句にどことなく不安を感じたため、中古で購入しておきながら中々見る気の起きなかった作品だ(苦笑)。まぁ確かにヌルめの作品である事は確かで、『地獄のステルスコマンド』同様に後進指導モノの要素も含んでいる。物語は定石通りの展開ばかりだが、これを良しとするか否とするかで本作の評価は割れる事と思われる。
とある検事がマフィアを訴え、その刺客によって一家ともども皆殺しにされるところから本作は幕を開ける。検事の兄弟であるノリスは、唯一生き残った検事の息子を引き取って育てる事になった。最初は家族を殺された事にショックを受けていた息子だが、次第にノリスとの交流で心を開いていき、いつしかエディ・シブリアンへと成長を遂げていた。エディは陸軍のレンジャー部隊に入隊したりと充実した日々を送っていたが、家族を亡き者にしたマフィアへの怒りは健在だった。
軍を除隊したエディはマフィア一家への復讐を開始し、身分を隠して敵の内部へと潜り込む。任務をこなして信頼を得たエディは一家の仲間入りを果たすが、そこで遂に自らの正体を明かした。ノリスも駆けつけた一大決戦は、壮絶な銃撃戦の末にエディVSマフィア幹部の一騎打ちと、ノリスVS逃走を図るマフィアのボス…が乗ったキャデラックへと移行(笑)。最後の死闘が始まるのだった。
まぁ元はTVムービーということなので、ストーリーの規模はこんなものか。だが爆破スタントなどの視覚効果にも力を入れており、ノリスと共に本作の主演を飾るエディも格好良く撮れている。格闘アクション的には双方ともいい動きをしており、こちらに関しても合格点。ノリスは『デルタ・フォース』を髣髴とさせ、エディはキックボクサースタイルでそれぞれ頑張っている(欲を言えばエディのアクションをもう少し見たかったところだが)。
ただひとつ、合点が付かない所は本作の結末だろうか。劇中で復讐を遂げる決意を固めたエディに対し、ノリスは「復讐をすれば元の生活には戻れない」と何度も指摘している。ということは、このあとエディは復讐心に打ち勝ち、マフィアのボスをFBIに引き渡して不殺を貫くのでは…と私は予想した。が、クライマックスではご覧の通り、ノリスともども悪党をボコボコ殺しまくっていた。じゃあエディは警察に御用になるのかと思いきや、最後はノリスとの別れのシーンだけで本作は終わっている(エディが逮捕されたような描写は無い)。
まぁ、大活躍したヒーローが警察に出頭するなんて描写は、重くなりそうだから入れなかったのだろう。しかし復讐に対してあれこれ語っていたのに、結局エディ自身には何のお咎めも無いまま完結してしまうのには、ちょっと違和感を感じざるを得ない。せめてFBIの捜査官がジャッキーの『ポリス・ストーリー』みたいに「私は何も見ていない」と見逃してくれる場面があれば納得できたものだが…。
この他にもDVに苦しむ少年との交流がサイドエピソードとして挟まれるが、この話は物語の本筋とは一切関係がない。父親に抗う少年の姿を見て、エディが自分自身の復讐心に疑問を抱く…なんてシーンがあったら、作品に更なる深みが出ていたはず。全体的に無難な作りの本作だが、もう少し背伸びをしてもよかったのでは?