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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『レッド・ウォリアー』

2009-07-17 21:27:59 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「レッド・ウォリアー」
原題:Nomad/Nomad The Warrior
製作:2005年

●本作はフランスとカザブスタンが製作した歴史大作で、いつも紹介しているマーシャルアーツ映画のようなB級作品ではない。物語はカザフの民がジュンガル族の侵攻を受け、救世主として育てられた王族の青年が友の死などの試練を乗り越え、ジュンガルの軍勢を打倒するまでを描いた物語である。
だが正直言うと、私がこの作品をレンタルしてみたのは出演者の顔ぶれに惹かれたが為だった。なにしろ主人公の育ての親で賢者の役をジェイソン・スコット・リーが、ジュンガル王の息子役にマーク・ダカスコスが扮しているのだ。この2人が出ているとあらばレンタルしない訳にはいかない!…ということで見てみたのだが、残念ながら「夢の対決」は実現していない。『DRAGON BATTLE EVOLUTION』もそうだったけど、なんでいつもマーシャルアーツ映画ってこうなっちゃうんだろうか?
ジェイソンは先述の通り賢者という役回りだが、並みの兵士なら太刀打ちできないほどの武術の腕を持っている。そんなジェイソンは救世主の到来を感じ、襲われていた王の子を助けて師となるなど、なかなかの存在感を発揮。対するダカスコスも、救世主を殺そうとする襲撃シーンでは見事な剣劇アクションを繰り広げ、たまにキレのいい蹴りを放ったりしている。これでこの2人が全編に渡って活躍してくれればなお良かったのだが、ジェイソンは後半から救世主の元を離れてしまい、ダカスコスに至っては中盤に救世主との一騎打ちに敗北し、生首を晒す羽目になってしまうのだ。
ジェイソンは演技面でまだ見せ場があったが、ダカスコスが強くなさそうな救世主にやられるのは個人的に納得がいかなかった。このダカスコスが一騎打ちを持ちかけてきた際、対応に出たのがジェイソンだったので「ジェイソンVSダカスコスの夢の対決か!?」と期待が膨らんだが、直後にジェイソンが救世主にバトンを渡した時点で私のテンションはあっという間に急降下(爆)。ちなみに本作の格闘アクションは、なんとリチャード・ノートン(!)が担当している。ジェイソンにダカスコスにノートンまで揃っているのに、この仕打ちはちょっとなぁ…。
全体の感想としては、作り手の「超大作を作るぞ!」という気合は良く伝わってくるし、CGに頼らない壮大なロケーションやアクションシーンも楽しめる。しかし主人公と親友の女性を巡る確執や、敵の妻になってしまったヒロインや、敵の姫が主人公に思いを寄せる場面など、盛り上がりそうな要素がことごとく放置されていた。はっきり言って本作には山場がないため、スケールの大きい作品なのにどうしても物足りなさを感じてしまうのだ。決して悪くない作品だが、ジェイソンとダカスコスの格闘シーンを目当てにしている人は要注意を。

『ユニバーサルキッド』

2009-07-08 22:54:24 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ユニバーサルキッド」
原題:MAGIC KID
製作:1993年

●タイトルを見ると『ベストキッド』っぽい作品のように見える本作。実際はどちらかというと『ホーム・アローン』っぽいキッズコメディで、主演とされているドン・"ザ・ドラゴン"・ウィルソンもゲスト出演扱いでしかないのだが、これがなかなか悪くない作品なのだから堪りません(笑
テッド・ジャン・ロバーツ君は、子供ながらに空手のチャンピオン。大好きなスターはドン・"ザ・ドラゴン"・ウィルソンという、とても将来が心配な…もとい、夢見る少年だ(笑)。そんなテッド君は姉のションダ・ウィップルと共に、ハリウッドで仕事をしている叔父さんのところへ遊びにいく事になった。映画の都でドンに会えるとウキウキ気分のテッド君だが、当の叔父さんは借金まみれのデブ中年。おまけにアル中のどうしようもないおっさんだった。
結局、ドンにも会えず意気消沈のテッド君。ところが叔父さんのところへ借金の取立てに来たマフィアの連中を返り討ちにしたことから、彼らは命を狙われてしまう事に。ハリウッドを右往左往しながらマフィアの追及に四苦八苦するテッド君たちだが、そんな彼の元にあの大スターが現れる…!

ストーリーはあっちこっちへ寄り道ばかりで、結局マフィアとの対決も有耶無耶に終わってしまっているのはPMエンターティメントのクオリティだから仕方が無いとして(苦笑)、本作の注目どころはテッド君の八面六臂に渡る活躍ぶりである。テッド君は若干11歳にして黒帯を習得したという少年で、本作では打点の高い蹴りや武器術などを披露している。アメリカ系の好小子(カンフーキッド)といえば、これまで『クロオビキッズ』の面々やアーニー・レイズJrなどを紹介しているが、テッド君はら先達たちと互角かそれ以上の格闘アクションで画面を彩っている。
全体的にこの映画はアクションの質が高く、あのドンですら結構よさげなアクションを見せていたのは驚きだ。が、そんな猛者たちを押しのけて一番いいファイトを見せていたのは、他ならぬテッド君である。彼は本作の続編である『GUY/俺たちの戦場』や『クライム・ジャングル/怒りの鉄拳』などのPMエンターティメント作品で活躍し、その後は『マスクド・ライダー』(『仮面ライダーBLACK RX』を『パワーレンジャー』方式で製作した作品)で堂々の主演を飾った。その後は勢いが続かずスクリーンからフェードアウトしてしまったのは残念だが、これらのテッド君出演作もいずれは見ていきたいところである。

格闘映画総特集(終)『拳 アルティメット・ファイター』

2009-06-21 23:16:24 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「拳 アルティメット・ファイター」
原題:HONOR
製作:2006年

●これまで二ヶ月に渡って続いてきた格闘映画特集も本作でいよいよラスト。今回も再び本物の格闘家を起用した作品で…って、なんだか最近のマーシャルアーツ映画はこんな触れ込みばっかだなぁ。ロレンツォ・ラマスとかジェフ・ウィンコットとか、90年代に活躍していた格闘映画スターたちはどこにいっちゃったんでしょうか?
ジェイソン・バリーは軍を退役し、養父であるロディ・バイパー(!)のもとへ戻ってきていた。警察官だったバイパーは職を退き、現在は小さな飲食店を経営しようとしているようだが、街ではラッセル・ウォンら悪党グループが幅を利かせていた。このラッセルという男、かつてはジェイソンとも旧知の仲だったのだが、今では外道に堕ちて冷酷非常な男となっていた。
レミー・ボンヤスキー、ドン・フライ、西冬彦といったそうそうたる顔ぶれを部下に従え、反抗した船木誠勝の日本料亭をぶち壊したりとやりたい放題の限りを尽くすラッセル。その暴力の矛先はジェイソンとバイパーの元にも及び、遂にはバイパーの店が襲撃されて昔馴染みだった刑事が命を落としてしまう。怒りを爆発させたジェイソンはラッセルの元に向かい、虚しき死闘のゴングが響き渡るのだった…。
まず本作で目を引くのがロディ・バイパーの存在だ。バイパーと言えば千葉真一の『リゾート・トゥ・キル』や、ミスコン版『ダイハード』だった『ハードネス』なんかに出ていた往年の格闘映画スターだ。しかし本作では「これがバイパーか!?」と驚くほどの老けっぷりで、それどころか職場を引退した優しき父親という役柄があまりにもハマっており、かつての面影はほとんど残っていない。これには誰もが残念がるだろうが、その判断は早計至極。なんと本作の大詰めで、今まで寛大だったバイパーがブチ切れて悪党どもをボコボコにしてしまうのだ!さすがに途中でスタミナが切れてしまうが(笑)、それでも最終決戦にまでバイパーは参加し、幹部のドン・フライと対決するのである。私はまさか老齢のバイパーが格闘アクションまでやってのけるとは思っていなかったので、この展開には大きな衝撃を受けました。
ちなみに本作はジャケ裏の解説で「また裏社会の格闘大会か」と思ってレンタルした作品だが、どちらかというとオリビエ・グラナーの『エンジェル・タウン』に近い感じ。バイパーたちとジェイソンのやり取りも少々冗長であり、それほど大した作品ではなかった。だが一方で格闘シーンは出来が良く、ちゃんとレミー・ボンヤスキーやラッセルらも動けているように撮れている点は中々よさげ。ちょっと編集で見づらい部分もあるが、ここまで紹介してきた最新の格闘映画では最もいいファイトだった事は確実だ。ただ1つだけ言わせてもらえるなら、ラストバトルの乱戦は一組ずつじっくり見せるタイプでやって欲しかったなぁ…とは思いますが(笑

という事で、今回の特集では90年代の秀作群と2000年代の新たなマーシャルアーツ映画を甲乙織り交ぜて紹介してみました。これら2つの世代の作品を見渡してみて解ったのは、現在のマーシャルアーツ映画界に大きな人材がいない…という事です。この点は香港映画や邦画も抱える問題で、類稀なる実力を持つ人間が徐々に業界から消えていくのは万国共通の悩み。この問題は今回紹介した作品群を比較するとよく解りますが、最近の作品になるにつれて特色の薄い作品になっていく様子が見て取れます。
最近は映画技術が発達し、アクション超人たちの登場も話題になっていますが、本当に格闘映画はこのままでいいのだろうか?格闘家ぐらいしか動ける人材がいなくなってしまうのではないのだろうか?…その答えは、これからも作られていくであろう数多のマーシャルアーツ映画たちの中にあるはず。今後格闘映画がどのような変化を見せるのかは、拳と拳で闘う男たちが作り上げていく事でしょう(またも逃げ気味の結論で、この項は〆…苦笑)。

格闘映画総特集(9)『パウンド』

2009-06-15 22:05:59 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「パウンド」
原題:STREET WARRIOR
製作:2008年

●かつて軍人として活動していたマックス・マーティーニは、上官をシバいた罪で除隊処分にされて故郷に戻ってきた。顔なじみのヴァレリー・クルスとの挨拶もそこそこに弟夫婦の元へと向かったマックスだが、そこで弟がボロボロの昏睡状態になっていることを知り、愕然とする。弟の妻が言うには、大金を稼ぐために非合法の闘技場へ出場した末にこうなってしまったと言う。さっそくマックスは調査を開始し、ニック・チンランドが支配する格闘イベントへと単身乗り込んだ。
そこではマックスを含めて8人の闘士がおり、トーナメントで優勝の座を巡って激しい戦いが繰り広げられるのだった。このトーナメントで優勝した者には、高額の賞金と不敗の王者シドニー・J・リューフォ…というかハート様(どう見ても『北斗の拳』のハート様にしか見えません・笑)への挑戦権が手に入る。このハート様が弟に重傷を負わせた宿敵で、加えて弟の妻が人質に取られたため、嫌がおうにもマックスは闘いに勝たなければならなくなってしまう。数々の死闘を越え、いよいよ最後のハート様と闘うマックスだったが、そこには意外な結末が待ち受けていた…。

今回も新作の裏社会闘技場モノだが、こちらは『ザ・スコーピオン~』に比べて随分と普通な作品だ。「俺には家族が居るんだよ…」と話したファイターが次の試合で即退場したりと、ストーリー展開等についてはいつもの如しといった感じで、特に拾い所はない。ただ、前回の『ザ・スコーピオン~』は恋愛ドラマと格闘アクションのバランスが崩れていたのに対し、こちらは恋愛も格闘もきちんと振り分けられており、ストーリーのテンポも良かったので最後までサラッと見ることが出来ました。個人的には、本作と『ザ・スコーピオン~』とどっちを見るか聞かれたら、迷わず本作を選ぶかと思います。
一方の格闘アクションは安定した作りで、各個のキャラクターとファイトスタイルもきちんと描き分けられているし、キャラ的にもいい奴が多かったので好印象。ラスボスのハート様がメタボ体型で凄まじく嫌な予感がしたが、ちゃんと動けているように撮れていたのでこちらも合格だ。ファイト・プロデューサーはあの『NO RULES/ノー・ルール』と同じ人だが、本作では道具や武器で程よくアクセントを効かせているため、無個性で終わった『NO RULES』から進歩している様子が伺える。こちらも『NO RULES』と本作のどちらを見るかと言われれば、本作に挙手したいところである。

ただ、本作で気に食わなかったのはラストバトルに至るまでの展開だ。マーシャルアーツ映画は最後の戦いでいかにスカッとした気分を味わえるかで、視聴後の感想もだいぶ違ってくる。もちろん重いラストであっても面白ければそれでいいのだが、本作では少々こじれた点が見られた。
上記の粗筋を見た人は、最後にマックスとハート様が壮絶な戦いを繰り広げ、ニックはムショにぶち込まれるだろうと予想するはず。ところが中盤で弟が意識を取り戻してしまうので、弟の仇討ちというマックスの目的が揺らいでしまう。そのため「ハート様は実は悪くない奴だった」というフォローがされているが、そのためにマックスVSハート様のバトルはあっという間に終わってしまうのだ(しかもマックスはハート様を説得しようとしていたため、完全に無抵抗なまま)…あれだけ最強の敵として煽っておいたのに、この仕打ちは無いよ!(涙
その後、マックスの説得によって改心したハート様はニックに詰め寄るが、武術の達人だったニックによってハート様はあっさり死亡。なんと、真のラストバトルはマックスVSニックという顔合わせだったのだ。確かにニックが強い事は劇中でチラッと触れられているが、最後の敵として立ちはだかるにはキャラが弱いんじゃないか?ここでの日本刀VSトンファーというウェポンバトルはそれなりに見られたが、どうもこのへんの展開が私は釈然と出来ません。『ザ・スコーピオン~』もそうだったけど、どうしてみんなゴチャゴチャした結末にしちゃうんだろうかなぁ…?

格闘映画総特集(8)『ザ・スコーピオン キング・オブ・リングス』

2009-06-12 23:37:08 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ザ・スコーピオン キング・オブ・リングス」
原題:SCORPION
製作:2007年

●今回は特集という事で、普段はあまり紹介する機会のない新作もいくつか取り上げてみよう。本作はK1ファイターのジェロム・レ・バンナが出演している事がウリになっている作品だ。しかしこの手の「本物の格闘家が出演!」という売り文句は、マーシャルアーツ映画ではあまり信用できないキャッチコピーの代表格として有名だ。
確かに格闘家は身体能力が高く、またネームバリューも無名のスタントマンよりは遥かに大きい。だが映画の格闘シーンというものは乱暴な言い方をすると「技斗」であり、現実の格闘技とは全く異なることを忘れてはならない。また、「本物」をウリにする場合は格闘家の起用によって生まれるリアリティも狙いなのだろうが、リアリティと素晴らしい格闘アクションの間には、容易にイコールを書けないのが現実である(特にその点が最も顕著なのはドン・"ザ・ドラゴン"・ウィルソンだろう。キックボクシングのチャンプとして毎回「本物」をウリにしているが、ドン作品の出来は皆さんもご存じの通り)。
もし本物の格闘家を起用するのなら、まず必要なのは格闘家を強く見せられる演出力である。いくら生きのいい素材があっても、料理人の腕が未熟ならたちまちクズ料理になってしまうものなのだが、マーシャルアーツ映画では中々これが上手くいっていない。特にプロレス上がりの役者などを使った場合、よくパワー重視の木偶の坊スタイルに陥ってしまう事が多く、これが「本物」の価値観を失墜させる一因になっているのだが…。

そんなわけで、私は本作を見る前はかなり不安だったのだ。フランス映画ということで知っている役者は皆無だし、「本物」の投入と暗い感じのパッケージも不安を煽る材料となった。
ストーリーはよくある裏社会の闘技場モノで、ケンカで人を殺してしまった元格闘家のクロヴィス・コルニアックが、麻薬組織の口利きで非合法の闘いに立ち向かうという話だ。クロヴィスはそこで娼婦のカロル・ロシェーヌと出会って恋に落ちるのだが、本作は格闘シーンよりもこの恋愛模様の方に尺を割いている。こっちとしては思春期の中学生みたいな態度でアプローチするクロヴィスとかどうでもいいのだが(苦笑)、余計なサブプロットが作品の進行具合を阻んでいるのはどうにかして欲しかったところだ(特に潜入捜査官の部分が余計で、あのオチはいくらなんでも酷い)。
肝心の格闘シーンだが、こちらはK1みたいな総合格闘技タッチで綴られており、寝技や組み技が多用されている。これはこれで力強い感じが出ているが、印象としてはちょっと地味。主人公はタイ式キックボクシングの選手だったという設定があるが、蹴り技はあまり使用しないので派手さも控えめだ。さて問題のジェロム・レ・バンナだが、彼は表の世界の格闘家としてクロヴィスに立ちはだかる最後の強敵として登場。ただし彼自身は悪役ではなく、腕を折られても試合を続行したり、カロルの窮地を知って試合を抜けようとするクロヴィスを見送るなど、少ないカットでフェアなファイターぶりを見せている。
格闘アクションはさすがにクライマックスという事で見せてくれるし、クロヴィスとジェロムが見せる一進一退のバトルはそれなりに面白く、本作における「本物」は面目躍如の役割を果たしていたといってもいい筈だ。しかしこのラストバトルはカロルの危機を知ったクロヴィスが途中で試合を放棄してしまい、かなり中途半端な形で中断(!)。カロルがいる売春組織のボスのところへクロヴィスが向かい、グダグダな形で事件は決着してしまう。
この売春組織ボスのところに強敵がいたらまだマシだったかもしれませんが、特に何も起こらないまま終わってしまうのはどうにも…っていうか、最後の対決なんだから、ちゃんと決着つけてから終わってくれよ!(爆

格闘映画総特集(7)『サンダー・ウォリアーズ』

2009-06-09 20:54:35 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「サンダー・ウォリアーズ」
原題:Kill and Kill Again
製作:1981年(77年?)

▼今回特集で取り上げる作品の中で最も古いタイトルである本作は、珍しく空手をメインに据えて製作された映画だ。マーシャルアーツ映画に出てくる武術は基本的に見栄えが重視されており、キックボクシングやテコンドー系の足技中心の殺陣か、シンプルな拳闘スタイルが多い。そんな中で合気道を取り入れたセガール映画や、カポエイラを使った『オンリー・ザ・ストロング』などの作品が微々たるも存在し、現在では柔術アクションの『レッド・ベルト』なんて物まで作られている。

■ジェームス・ライアンは空手の達人で凄腕の諜報員だが、そんな彼の元に謎の美女アンライン・キリエルが現れる。
彼女が言うには、洗脳薬を作り出してしまった発明家の父が誘拐されたため、助け出して欲しいという。敵は自らを「古代の神」と名乗り、洗脳薬を利用して一個師団を作り上げたマイケル・メイヤーだ。支配された街アイアンビルに本拠を構えるマイケルの下には多くの兵士と用心棒が控えている。そこでライアンは空手家のスタン・シュミット、元プロレスラーのケン・ガンプ、軽業のノーマン・ロビンソン、口八丁のビル・フリンら仲間を集結。キリエルも同行して敵地への潜入作戦が始まるのだった…こちらの情報が敵に筒抜けであることも知らずに。
敵地に向かう道中でジェームスたちは幾度も刺客に襲われるが、次々と突破して目的地のアイアンビルに到着する。このまま作戦は順調に進行するかと思われが、中心部に辿り着いたところで敵に正体がバレてしまう。捕まった一行のうち、ジェームスだけはマイケルに各施設を案内され、そこで発明家の博士と接触。密かに洗脳薬の解毒剤を入手して事態の打開を図る中、憎きマイケルはジェームスたちを闘技場で始末せんと企む。幾重にも交錯する思惑の中、最後の闘いが幕を開くが…。

▲モノとしては『特攻野郎Aチーム』が『燃えよドラゴン』する話であり、古い作品なので演出もそうこなれてはいない。格闘シーンは少々型にはまりすぎてぎこちない面も見られるが、殺陣自体はコテコテの空手アクション風味。所々で炸裂するシャープな蹴りは一見の価値アリで、程よくアクロバティックな動作も加味されているので、それなりに見られるファイトに仕上がっていた。特にファイト・コーディネーターとしても名を連ねるスタンとノーマンの両氏は別格で、ジェームスと共に作品の底上げに貢献している。そこかしこに李小龍の影響が見られるのはご愛嬌だが、これはこれで面白いといえよう。
個人的には『キックボクサー5』でしかジェームスの格闘シーンを確認出来てなかったので、本作でジェームスのアクションシーンが見られただけでも満足でした。なお本作には『殺るか!殺られるか!!』なる前作が存在するのだが…お察しの通り、この作品も未だ発見に至っていません(爆)。前に本作が置いてあるショップで一緒にレンタルされていたのを確認しましたが、そのショップは現在ビデオを取っ払ってDVDオンリーの店になってしまいました。レンタルショップで中古ビデオが捌かれているのは悪くないが、もうちょっとビデオソフトも残して欲しいんだけどなぁ…マーシャルアーツ映画では特にその点が重要なので、ちゃんとして欲しいところであります。

格闘映画総特集(5)『サイレント・アサシン』

2009-05-31 23:14:02 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「サイレント・アサシン」
原題:SILENT ASSASSINS
製作:1987年

●本作は『ショウダウン』同様に前々から見たかった作品の筆頭だった一本だが、期待通りの手ごたえを感じた『ショウダウン』とは打って変わって、本作はちょいと期待はずれだったなぁ…と思ってしまう作品でした(爆
刑事のサム・ジョーンズは凶悪犯のグスタフ・ヴィンタスを取り逃がし、そのうえ相棒までも殺されてしまった。失意の彼は警官を辞め、リンダ・ブレアと共に田舎にでも引っ越そうかと考えていたが、その矢先に再びグスタフが事件を起こしたとの報せを聞いて現場に復帰する。話によると、グスタフは忍者軍団と手を結んで科学者と居合わせた中国人の少女(親はその際に殺害された)を拉致し、何か良からぬ事を企んでいるようだ。殺された中国人の兄弟だったジュン・チョンと共に事件の捜査に乗り出したサムだが、敵は予想以上に強大であり、リンダや上司にも危害が及んだ。
ジュンはヤクザのマコ岩松に協力を頼み、彼の息子であるフィリップ・リーも一時は反発したが仲間に加わった。敵の目的が細菌兵器の開発で、アジトの場所が何とか解ったのも束の間、今度はマコまでもが殺されてしまう。ここに至りサム・ジュン・フィリップの3人は、グスタフや黒幕が潜む敵地に飛び込む!
…とまぁカッコよくストーリーを追ってみたが、実際の作品は非常にお粗末な出来だ。「ジュンやフィリップがニンジャに立ち向かう」という粗筋を聞いた時はもっと派手なものを想像したが、作中で彼らが見せる格闘シーンは後半に集中しており、内容もあまり上質とは言えない。本作でジュンとフィリップは日本刀や棍を駆使して闘っているが、正直言って持て余している感がとても強い。どうせなら得意のテコンドーキックを全面に押し出した殺陣にしていれば、見栄えも更に良くなったはずである。
時折挟まれるスプラッタな演出も邪魔以外の何物でもなく、しこりを残したままのオチも個人的には頂けなかった(ヒットしたら続編でも作る気だったのか?)。作品の方向性にもその迷走っぷりが映し出されており、ニンジャを出すなら荒唐無稽に徹すればいいのに、どっちつかずな作風のままで作品が完結しているのも×。これなら過去にレビューした『ストリート・ソルジャー』や『L.A.ストリートファイターズ』などの方がよっぽどマシだ。前二作を見た人は本作に過度な期待は禁物、とだけ言っておこう。
ところで、ニンジャの中にケン・ナガヤマやサイモン・リーがいるらしいが…どこにいたっけ?

格闘映画総特集(4)『テロリスト・ウエポン/悪魔の最終兵器』

2009-05-28 19:42:40 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「テロリスト・ウエポン/悪魔の最終兵器」
原題:Bloodfist VI: Ground Zero
製作:1994年

●再びドン・ザ・"ドラゴン"・ウィルソンの主演作だが、原題を見ても解るとおり本作もシリーズ物の一編である。ただし先の『キング・オブ・キックボクサー』系列が日本で勝手に続編にされたものであるのに対し、この『Bloodfist』シリーズは本家が勝手に続編にしたシリーズなのだ。
 まず、第1作である『Bloodfist』(未公開作)は1989年に作られた。この作品はドンがマーシャルアーツ映画に主演した記念すべき最初の作品で、敵役にあのビリー・ブランクスが起用されている点に目を惹かれる。次いで『Bloodfist II』が1990年に第2作として作られ、こちらでは後にドンと何度か共演する事になる格闘家のハワード・ジャクソンと最初のコラボを果たしていた。ところがこの『Bloodfist』シリーズ、なんと第3作からは何の関係も無い単発作品を作り出す「名ばかりのシリーズ」になってしまうのだ。
最初の2本は繋がりのある正当なシリーズで、それ以後のタイトルが無関係な作品で…と言えば、香港映画ファンなら『カンフーキッド/好小子』系列を嫌でも思い出すだろう。『好小子』系列は主演の3人と製作会社しかシリーズの共通点が無く、この『Bloodfist』シリーズも共通点は主演のドンと製作者のロジャー・コーマンだけであるが、実に奇妙な符合だ。徐楓(シー・ファン)とロジャー・コーマンには何か通じるものがあったのだろうか?(笑
 とまぁ徐楓の事はともかく、これ以降の『Bloodfist』シリーズは実にバラエティに富んだシリーズ構成を見せていく。第3作は1991年製作の『オーバーヒート・プリズン(Bloodfist III: Forced to Fight)』で、こちらは監獄モノの要素を取り入れた意欲作。翌年作られた第4作の『ドラゴンチェイサー(Bloodfist IV: Die Trying)』ではゲイリー・ダニエルズと共演し、第5作の『ヒューマン・ターゲット(Bloodfist V: Human Target)』はチャイニーズマフィアとの死闘が展開される。
その後も第7作『Bloodfist VII: Manhunt』、第8作『Bloodfist VIII: Trained to Kill』までシリーズは続いた(余談だが、かのマット・マリンズ主演『ストリート・ファイター2050』には『Bloodfist IX』という副題が存在する)。

 本作は第6作にあたり、軍事基地を舞台にした『ダイ・ハード』タイプの作品である。イスラム原理主義を唱えるテロリストグループにより、核ミサイル基地が占領された。そこにたまたまやって来たドン軍曹(元特殊部隊隊員の経歴アリ)がこの事件に巻き込まれ、頼りにならない特殊部隊を尻目にテロリストたちを叩きのめす…というのが本作のストーリーだ。
物語はお決まりの展開に添って進むオーソドックスなものだが、現場を混乱させるヒロインもいないし演出のテンポも悪くなく、格闘アクションもそれなりに頑張っており(ファイト・コーディネーターはおなじみアート・カマチョ)、休日の昼過ぎに見るには最適な作品と言える。
 この作品で注目すべきは、あのビリー・ブランクスの弟であるマイケル・ブランクスがテロリストのメンバーとして出演している点で、中盤にはドンとタイマン勝負を繰り広げている。マイケルがどれだけの戦歴を残しているかはよく解らないが、ドンはこれでビリーとマイケルの筋肉兄弟と対戦したことになるので、これもまたレア対戦のひとつとして数えられていいだろう。
残念なのは、これだけ素晴らしい動きをしているマイケルが最後の敵ではない事で、加えてラスボスが弱かったのもマイナスポイント。もしマイケルがボスの腹心で最後に戦う相手だったら…もっと本作の評価は上がっていたかもしれない。…ところで、ここまでくるとやはり『Bloodfist』シリーズも全部制覇しなくちゃいけないでしょうか?いやもうこればっかりは勘弁したいところですが…やっぱりやらなくちゃダメ?(爆

格闘映画総特集(1)『アンダー・カバー』

2009-05-19 20:50:15 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「アンダー・カバー」
原題:Martial Law II: Undercover/Karate Cop
製作:1991年

▼というわけで、今回から当ブログ2周年を記念してマーシャルアーツ映画特集の第2弾を開催していきたいと思います。この作品は久々の紹介となるジェフ・ウィンコット主演作で、『ハード・リベンジ』の続編にあたる作品だという事はご存知の通り。今回もカード・アンダーソンが監督を務め、前作から引き続き登場しているシンシア・ラスロックらが充実したサポートぶりを見せている。

■ジェフとシンシアは武闘派警官。今日も銃の取引現場を押さえて手柄を立て、その功績でジェフは刑事に昇格し、別の署で武術指導教官の任に当たることとなった…が、転任早々に旧友だった警官が不審な死を遂げてしまう。ジェフはこの事故に不信感を抱き、死の真相を探ろうと単独で捜査に乗り出した。残された遺留品からシンタックスというクラブが怪しいと睨んだジェフは、休暇中のシンシアに協力を仰いでクラブへの潜入捜査を依頼。ジェフ自身は旧友がある事件を追っていた事を知り、青年実業家のポール・ヨハンソンが裏で糸を引いている事に気付く。
どうやらポールはエヴァン・ルーリーやレオ・リーら用心棒を従え、近々摘発される予定の麻薬を奪う漁夫の利作戦を企んでいるようだ。しかし、この件を嗅ぎまわっているジェフの存在が目障りなポールは、なんとかジェフを潰そうと暗躍を続けていた(ただし全て失敗に終わっていたのだが)。そして遂に麻薬組織摘発の日…警察が押収した麻薬を内通者の悪徳刑事が輸送し、それを強奪せんとポールたちが動き出す。事ここに至り、潜入しているジェフとシンシアも立ち上がって最後の決戦が始まった!

▲若干ストーリーが間延び気味で、ポールの企む悪事もいまいち不明瞭。ラストもあんまり気持ちの良いものではないが、全体的な出来は中々の作品だ。武術指導はお馴染みのジェフ・プルートと坂本浩一コンビで、いつもの痛いスタントシーンは控えめだが、格闘シーンについては一切の妥協が無く、相変わらずの高品質なファイトに仕上がっている。
ジェフがレオ・リーとカリスティックを用いて闘うシーンは中盤のクライマックスで、ラストの決戦も連戦に次ぐ連戦は見応え十分。その連戦でジェフは3人の敵に挑むのだが、この対戦相手の顔ぶれもまた凄い。まず最初に立ちはだかるのはジェフ・プルート!実は対戦する3人の中で一番いい動きをしているのだが(笑)、何気にジェフとプルートの一騎打ちは本作が初だったりする。続いて対戦するのは『リアル・キックボクサー』のエヴァン・ルーリーで、本作ではポールの用心棒として幾度も格闘アクションを披露し、ここでも濃厚なアクションを展開している。惜しむらくはこの対戦がアッサリ目で、最後のVSポール戦が前のエヴァンやプルートと比較すると、少々物足りない点であろうか。
ちなみにラストにおけるシンシアの見せ場は少なく、こちらもアッサリ目の活躍で終わってしまったのは実に残念だ。前作『ハード・リベンジ』でのシンシアはラストバトルでフィリップタンと一騎打ちを展開し、完全に主演のチャド・マックィーンを喰うファイトを見せていた。ところが本作でのシンシアの見せ場は前作とは打って変わって激減。敵のパツキンねーちゃんと闘うのかと思いきや、そのパツキンねーちゃんはあっという間に倒されてしまうし、その後は延々とザコと闘うことに終始している。
このザコの中には坂本浩一やジェームス・リューなどが参加しているが、どうせなら彼らを中ボスにしてシンシアにぶつけていれば、もっとダイナミックなバトルが見られたんじゃないかなぁ…。とはいえ、格闘アクションそのものは申し分無いので、そっち目当てなら大いに楽しめる事だろう。

『18 Fingers of Death』

2009-04-23 23:09:13 | マーシャルアーツ映画:中(1)
18 Fingers of Death/18 Fingers of Death!
中文題:18索命指
製作:2006年

▼既にこのブログでも何度か取り上げたが、ジェームス・リューという男がいる。武術家であり一流のスタントマンでもある彼は、これまでに多くのマーシャルアーツ映画やアクション映画に関わり、そのたびに様々なスターと共演してきた。
本作はそんなジェームスによる初監督作で、ファイト・コーディネーターや脚本等を担当した意欲作である。私は「きっと、これまで彼が経験してきたスタント人生の全てが注ぎ込まれた入魂の作品なんだろうなぁ」と思いながら見たのだが…先に結論から言ってしまうが、この作品はマーシャルアーツ映画的な期待を抱いて見ると見事に打ち砕かれてしまうので、視聴の際は十分ご注意を。

■ジェームス扮するビューフォード・リー(名前やアクションスタイルは李小龍っぽいが、喋り方はどことなくジャッキー風)は、香港から来た"かつての"功夫映画スター。本作はそのジェームスを追うという内容の擬似ドキュメンタリーで、胡散臭いインタビューを挟みながら『18 Fingers of Death』なる映画を作り上げるまでを描いた作品である。
最初はジェームスのファンや彼の父親(パット・モリタ)の姿を映し、『燃えよカンフー』のバッタもんやセガール(うそ)のスタンドインを演じる模様を撮るなどして一応ドキュメントらしい構成を見せる…が、大物アクションスターへのインタビューから次第に怪しい空気になってくる(笑)。ここでインタビューに答える顔ぶれが傑作で、アクション映画を知っている人なら思わずツッコんでしまいそうになる変名キャラが大挙して登場するのだ。
 ジャッキー・チョン(演じるは仇雲波だが、役名や女好きという設定がシャレになってない・笑)、スティーブン・シーフード(セガールの偽物で大食漢)、チャック・ソノリス(モデルはもちろんあの胸毛オヤジ)、ビリー・ブッフ(モデルは某ブートキャンプのあの方)、アントニオ・バンダナ(こちらを演じているのは何とロレンツォ・ラマス!モデルはデスペラードなあの男)…進行役の黒人は、これら多くのアクションスターや関係者からジェームスの話を聞こうとするが、誰もジェームスなんか知らないのでロクなインタビューにはならなかった(苦笑
しかも大手の製作会社から協力を断られ、『18 Fingers of Death』の製作は暗礁に乗り上げてしまう。だがジェームスは諦めず、いくつものプロダクションを渡り歩いた末に「自費制作で映画を作ろう!」と思い立った。手始めに自分の持っているスターのお宝(李小龍が『燃えよドラゴン』の時に掃いていたソックス、ジャッキーが使った鼻毛抜き、ヴァンダムが『タイム・コップ』の時に着用していたビキニパンツ等々)を売り払って資金を作り、役者はオーディションで素人をかき集めた。
アクション指導にドン・"ザ・ドラゴン"・ウィルソンの教えを受け(何故か彼だけ本人役)、遂に本格的に始動した『18 Fingers of Death』の撮影だが…。

▲作品としては業界の内幕的な要素や皮肉の効いたコメディ映画で、出来そのものは非常にヌルい。
私は英語版DVDを見たので細部に渡って作品を理解できた訳ではないが、コメディとしてもセミ・ドキュメンタリーとしても実に中途半端なものに仕上がっている事だけは確か。このジャンルに挑んだジェームスの意欲は買うが、初監督作でコレはちょっと無謀だったんじゃないか?それにしても、まさかこの近代にジェームスとロレンツォ・ラマスのリターンマッチが見られる日が来るとは思わなかったなぁ…(笑
 しかし個人的な願望を言ってしまうと、ジェームスが監督するのならマーシャルアーツ映画に徹底して欲しかったのが正直な感想である。考えてみて欲しい。ワンシーンだけのチョイ役とはいえ、本作にはロレンツォ・ラマスやドン・ウィルソンや仇雲波といった連中が集まっている。もしこの作品が真っ当なマーシャルアーツ映画で、彼らが真っ向から激突する映画であったなら、どれほど凄い物が出来ていたであろうか?
変にコメディに走るならその手の映画を見たかったのだが、そう思うと本当に惜しい残念な作品。続編を臭わせる終り方をしていたが、もし作るなら是が非でもマトモなマーシャルアーツ映画にして欲しいところです。