College Kickboxers
製作:1992年
▼事の起こりは、『ベストキッド』が大ヒットを記録した1984年から始まる。
この作品は気弱な少年が老師から武術を教わり、やがて心身ともに成長を遂げていくスポ根ドラマであったが、その筋立ては香港の功夫映画そのまんまだった。これに着目したのが香港の敏腕映画プロデューサーである呉思遠(ウン・シーユェン)で、「その手の映画なら我々に一日の長あり」として『シンデレラ・ボーイ』を製作。ストーリーこそ突飛だったものの、見事な功夫アクションを魅せている。
それから数年後、アメリカでマーシャルアーツ映画が盛んに作られるようになると、呉思遠は香港産の格闘映画を次々と発表していった。ところが、その一方で香港資本の格闘映画を作ろうと追従する者はおらず、ゴールデンハーベストが『チャイナ・オブライエン』シリーズを作り、アメリカに渡った何誌強(ゴッドフリー・ホー)がシンシア・ラスロックの主演作を撮った程度に留まっている。
本作は、そんな香港系スタッフの手によって作られた数少ない格闘映画の1つで、こちらは『天使行動』3部作を生み出した阮立全(ウィリアム・ユエン)と胡珊(テレサ・ウー)の2人が製作に携わっている。主演は『ショウダウン』のケン・マクラウドで、師匠役には武術指導家の榮を召集するなど、「呉思遠に負けてたまるか!」と言わんばかりの陣営で勝負に出ている。
ちなみに製作者の胡珊は実は女性なのだが、脚本を書いた『天使行動』では壮絶な女闘美アクションを見せ、監督作の『天使行動2』では人命軽視の爆破スタントを用意するなど、とても女性とは思えないような仕事ぶりを発揮している。彼女は他にも米国で『カミリオンズ』というSF映画を手掛けており、ひそかにアメリカ進出を目論んでいたのではないかと思われるが、実際のところは不明である。
■ケン・マクラウドは都内の大学にやってきた好青年で、様々な格闘技を身に付けた実力者でもあった。ルームメイトのマーク・ウィリアムズ(『ドラゴンファイト』で最後に李連杰と闘った黒人)とは拳と拳で語る仲となり、同期生のケンドラ・タッカーともお近づきになれた。公私共に充実したスクールライフを送るケンだったが、タイガースと名乗る不良グループに目を付けられ、遂にはボコボコにされてしまう。
そんな絶体絶命のケンを救ったのは、彼のバイト先で料理長をやっていた榮であった。榮は功夫の名手であり、圧倒的な強さでたちまち不良どもを叩きのめした。その強さに驚いたケンは、近々開催される格闘トーナメント(たんまり優勝賞金が出る)で優勝するため、榮に師事しようとする。
しかし、「功夫は金儲けの道具ではない」と榮は一蹴。それでもケンは「俺は強くなりたいんだ!」と彼の自宅の前で粘り続け、"ケンカをしないこと"を条件に弟子入りを認められた。戦闘スタイルの改善・スケートリンク上でのバランス特訓・砂浜に掘られた穴を使った足腰強化・反射神経の鍛錬…様々な修行を経たことで、賞金目当てに頑張っていたケンは純粋に強くなりたいと思うようになっていた(推測)。
一方、ケンは特訓と平行してケンドラとの恋路も楽しんでいたのだが、タイガースの嫌がらせは相変わらず続いていた。しかし、榮は私闘を硬く禁じている…連中との禍根を断つにはただ1つ、格闘トーナメントで決着を付けるだけだ!
タイガースによって負傷欠場を余儀なくされたマークに代わり、ケンは破門を覚悟で大会に出場する。試合は順調に進み、着実に勝ち上がっていくケン。そして大会は決勝戦を向かえ、タイガース最強の男が彼の前に立ちはだかった。ところが、そこへ榮が姿を見せ…?
▲香港映画のスタッフが関わっているので当たり前なのだが、格闘アクションはかなり良い。本作ではキック系の動きに功夫の要素がミックスされており、動けるキャストも揃っているおかげでファイトシーンにモタつきは見られない。メインとなる格闘大会の尺が若干短く、ケンの殺陣にあまり功夫的な要素が取り入れられていなかったりと不満もあるが、全体的な出来は良好だ(さすがに『シンデレラ・ボーイ』には負けるが)。
中でも凄かったのが榮で、見た目はムッツリした単なるおっさんにしか見えないのだが、いざ戦いとなるとバリバリ動いて香港仕込みの功夫アクションを炸裂させている。さすがは本職の武術指導家というだけあるが、ここまで見事すぎるとケンが完全に喰われちゃってるような気がするのだが…。ま、演技面では何の見せ場も無かったので、これで両者イーブンといったところでしょうか(爆
一方でストーリー面は月並みな展開が多く、功夫の修行と主人公が最初から強いという設定こそ独自性があったものの、それ以外に関してはてんでサッパリ。ラストのオチも役者の演技がしっかり出来ていれば、もっと感動的なラストシーンになったと思うのだが…つくづく残念である。
とはいえ、呉思遠以外に香港映画とマーシャルアーツ映画の合体に挑戦した者がいた証といえる作品だし、アクション的な見どころも多い。ただ、『天使行動』のようなド派手な作品ではないので、ご覧になる方は注意されたし。
製作:1992年
▼事の起こりは、『ベストキッド』が大ヒットを記録した1984年から始まる。
この作品は気弱な少年が老師から武術を教わり、やがて心身ともに成長を遂げていくスポ根ドラマであったが、その筋立ては香港の功夫映画そのまんまだった。これに着目したのが香港の敏腕映画プロデューサーである呉思遠(ウン・シーユェン)で、「その手の映画なら我々に一日の長あり」として『シンデレラ・ボーイ』を製作。ストーリーこそ突飛だったものの、見事な功夫アクションを魅せている。
それから数年後、アメリカでマーシャルアーツ映画が盛んに作られるようになると、呉思遠は香港産の格闘映画を次々と発表していった。ところが、その一方で香港資本の格闘映画を作ろうと追従する者はおらず、ゴールデンハーベストが『チャイナ・オブライエン』シリーズを作り、アメリカに渡った何誌強(ゴッドフリー・ホー)がシンシア・ラスロックの主演作を撮った程度に留まっている。
本作は、そんな香港系スタッフの手によって作られた数少ない格闘映画の1つで、こちらは『天使行動』3部作を生み出した阮立全(ウィリアム・ユエン)と胡珊(テレサ・ウー)の2人が製作に携わっている。主演は『ショウダウン』のケン・マクラウドで、師匠役には武術指導家の榮を召集するなど、「呉思遠に負けてたまるか!」と言わんばかりの陣営で勝負に出ている。
ちなみに製作者の胡珊は実は女性なのだが、脚本を書いた『天使行動』では壮絶な女闘美アクションを見せ、監督作の『天使行動2』では人命軽視の爆破スタントを用意するなど、とても女性とは思えないような仕事ぶりを発揮している。彼女は他にも米国で『カミリオンズ』というSF映画を手掛けており、ひそかにアメリカ進出を目論んでいたのではないかと思われるが、実際のところは不明である。
■ケン・マクラウドは都内の大学にやってきた好青年で、様々な格闘技を身に付けた実力者でもあった。ルームメイトのマーク・ウィリアムズ(『ドラゴンファイト』で最後に李連杰と闘った黒人)とは拳と拳で語る仲となり、同期生のケンドラ・タッカーともお近づきになれた。公私共に充実したスクールライフを送るケンだったが、タイガースと名乗る不良グループに目を付けられ、遂にはボコボコにされてしまう。
そんな絶体絶命のケンを救ったのは、彼のバイト先で料理長をやっていた榮であった。榮は功夫の名手であり、圧倒的な強さでたちまち不良どもを叩きのめした。その強さに驚いたケンは、近々開催される格闘トーナメント(たんまり優勝賞金が出る)で優勝するため、榮に師事しようとする。
しかし、「功夫は金儲けの道具ではない」と榮は一蹴。それでもケンは「俺は強くなりたいんだ!」と彼の自宅の前で粘り続け、"ケンカをしないこと"を条件に弟子入りを認められた。戦闘スタイルの改善・スケートリンク上でのバランス特訓・砂浜に掘られた穴を使った足腰強化・反射神経の鍛錬…様々な修行を経たことで、賞金目当てに頑張っていたケンは純粋に強くなりたいと思うようになっていた(推測)。
一方、ケンは特訓と平行してケンドラとの恋路も楽しんでいたのだが、タイガースの嫌がらせは相変わらず続いていた。しかし、榮は私闘を硬く禁じている…連中との禍根を断つにはただ1つ、格闘トーナメントで決着を付けるだけだ!
タイガースによって負傷欠場を余儀なくされたマークに代わり、ケンは破門を覚悟で大会に出場する。試合は順調に進み、着実に勝ち上がっていくケン。そして大会は決勝戦を向かえ、タイガース最強の男が彼の前に立ちはだかった。ところが、そこへ榮が姿を見せ…?
▲香港映画のスタッフが関わっているので当たり前なのだが、格闘アクションはかなり良い。本作ではキック系の動きに功夫の要素がミックスされており、動けるキャストも揃っているおかげでファイトシーンにモタつきは見られない。メインとなる格闘大会の尺が若干短く、ケンの殺陣にあまり功夫的な要素が取り入れられていなかったりと不満もあるが、全体的な出来は良好だ(さすがに『シンデレラ・ボーイ』には負けるが)。
中でも凄かったのが榮で、見た目はムッツリした単なるおっさんにしか見えないのだが、いざ戦いとなるとバリバリ動いて香港仕込みの功夫アクションを炸裂させている。さすがは本職の武術指導家というだけあるが、ここまで見事すぎるとケンが完全に喰われちゃってるような気がするのだが…。ま、演技面では何の見せ場も無かったので、これで両者イーブンといったところでしょうか(爆
一方でストーリー面は月並みな展開が多く、功夫の修行と主人公が最初から強いという設定こそ独自性があったものの、それ以外に関してはてんでサッパリ。ラストのオチも役者の演技がしっかり出来ていれば、もっと感動的なラストシーンになったと思うのだが…つくづく残念である。
とはいえ、呉思遠以外に香港映画とマーシャルアーツ映画の合体に挑戦した者がいた証といえる作品だし、アクション的な見どころも多い。ただ、『天使行動』のようなド派手な作品ではないので、ご覧になる方は注意されたし。