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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『College Kickboxers』

2010-09-09 21:28:27 | マーシャルアーツ映画:中(1)
College Kickboxers
製作:1992年

▼事の起こりは、『ベストキッド』が大ヒットを記録した1984年から始まる。
この作品は気弱な少年が老師から武術を教わり、やがて心身ともに成長を遂げていくスポ根ドラマであったが、その筋立ては香港の功夫映画そのまんまだった。これに着目したのが香港の敏腕映画プロデューサーである呉思遠(ウン・シーユェン)で、「その手の映画なら我々に一日の長あり」として『シンデレラ・ボーイ』を製作。ストーリーこそ突飛だったものの、見事な功夫アクションを魅せている。
 それから数年後、アメリカでマーシャルアーツ映画が盛んに作られるようになると、呉思遠は香港産の格闘映画を次々と発表していった。ところが、その一方で香港資本の格闘映画を作ろうと追従する者はおらず、ゴールデンハーベストが『チャイナ・オブライエン』シリーズを作り、アメリカに渡った何誌強(ゴッドフリー・ホー)がシンシア・ラスロックの主演作を撮った程度に留まっている。
本作は、そんな香港系スタッフの手によって作られた数少ない格闘映画の1つで、こちらは『天使行動』3部作を生み出した阮立全(ウィリアム・ユエン)と胡珊(テレサ・ウー)の2人が製作に携わっている。主演は『ショウダウン』のケン・マクラウドで、師匠役には武術指導家の榮を召集するなど、「呉思遠に負けてたまるか!」と言わんばかりの陣営で勝負に出ている。
 ちなみに製作者の胡珊は実は女性なのだが、脚本を書いた『天使行動』では壮絶な女闘美アクションを見せ、監督作の『天使行動2』では人命軽視の爆破スタントを用意するなど、とても女性とは思えないような仕事ぶりを発揮している。彼女は他にも米国で『カミリオンズ』というSF映画を手掛けており、ひそかにアメリカ進出を目論んでいたのではないかと思われるが、実際のところは不明である。

■ケン・マクラウドは都内の大学にやってきた好青年で、様々な格闘技を身に付けた実力者でもあった。ルームメイトのマーク・ウィリアムズ(『ドラゴンファイト』で最後に李連杰と闘った黒人)とは拳と拳で語る仲となり、同期生のケンドラ・タッカーともお近づきになれた。公私共に充実したスクールライフを送るケンだったが、タイガースと名乗る不良グループに目を付けられ、遂にはボコボコにされてしまう。
 そんな絶体絶命のケンを救ったのは、彼のバイト先で料理長をやっていた榮であった。榮は功夫の名手であり、圧倒的な強さでたちまち不良どもを叩きのめした。その強さに驚いたケンは、近々開催される格闘トーナメント(たんまり優勝賞金が出る)で優勝するため、榮に師事しようとする。
しかし、「功夫は金儲けの道具ではない」と榮は一蹴。それでもケンは「俺は強くなりたいんだ!」と彼の自宅の前で粘り続け、"ケンカをしないこと"を条件に弟子入りを認められた。戦闘スタイルの改善・スケートリンク上でのバランス特訓・砂浜に掘られた穴を使った足腰強化・反射神経の鍛錬…様々な修行を経たことで、賞金目当てに頑張っていたケンは純粋に強くなりたいと思うようになっていた(推測)。
 一方、ケンは特訓と平行してケンドラとの恋路も楽しんでいたのだが、タイガースの嫌がらせは相変わらず続いていた。しかし、榮は私闘を硬く禁じている…連中との禍根を断つにはただ1つ、格闘トーナメントで決着を付けるだけだ!
タイガースによって負傷欠場を余儀なくされたマークに代わり、ケンは破門を覚悟で大会に出場する。試合は順調に進み、着実に勝ち上がっていくケン。そして大会は決勝戦を向かえ、タイガース最強の男が彼の前に立ちはだかった。ところが、そこへ榮が姿を見せ…?

▲香港映画のスタッフが関わっているので当たり前なのだが、格闘アクションはかなり良い。本作ではキック系の動きに功夫の要素がミックスされており、動けるキャストも揃っているおかげでファイトシーンにモタつきは見られない。メインとなる格闘大会の尺が若干短く、ケンの殺陣にあまり功夫的な要素が取り入れられていなかったりと不満もあるが、全体的な出来は良好だ(さすがに『シンデレラ・ボーイ』には負けるが)。
中でも凄かったのが榮で、見た目はムッツリした単なるおっさんにしか見えないのだが、いざ戦いとなるとバリバリ動いて香港仕込みの功夫アクションを炸裂させている。さすがは本職の武術指導家というだけあるが、ここまで見事すぎるとケンが完全に喰われちゃってるような気がするのだが…。ま、演技面では何の見せ場も無かったので、これで両者イーブンといったところでしょうか(爆
 一方でストーリー面は月並みな展開が多く、功夫の修行と主人公が最初から強いという設定こそ独自性があったものの、それ以外に関してはてんでサッパリ。ラストのオチも役者の演技がしっかり出来ていれば、もっと感動的なラストシーンになったと思うのだが…つくづく残念である。
とはいえ、呉思遠以外に香港映画とマーシャルアーツ映画の合体に挑戦した者がいた証といえる作品だし、アクション的な見どころも多い。ただ、『天使行動』のようなド派手な作品ではないので、ご覧になる方は注意されたし。

『ストライキング・レンジ』

2010-05-20 21:48:41 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ストライキング・レンジ」
原題:STRIKING RANGE
製作:2006年

●これはルー・ダイアモンド・フィリップス主演のアクション映画だが、もちろん当ブログで普通のアクションものを紹介するハズがない。本作には『パーフェクト・ウェポン』『ナイト・ハンター』等で活躍した、ジェフ・スピークマンが出演しているのだ。
剛柔流空手の実力者であるジェフは、その優れた身体能力を数々のマーシャルアーツ映画で発揮。本来なら、マーク・ダカスコスやゲイリー・ダニエルズらと並び称されるべき存在であったのだが、現在では見る影もないほど体形や容姿が変貌してしまっている。とはいえ、アクションセンスは未だに健在であるらしく、本作でジェフは悪の組織の親玉に扮しており、ワンシーンのみだが格闘アクションを披露している。
 物語は、ルー率いる傭兵部隊が秘密兵器の争奪戦に巻き込まれ、見えざる敵と闘う姿を描いている。あるときワンマン社長の護衛を依頼されたルーは、そこでかつての恋人と再会した。実はこのワンマン社長、科学者の息子(父に疎んじられ気味)に作らせた原子分解光線をジェフ・スピークマンに狙われていて、その事情を伏せたままルーたちに依頼をしてきたのだ。
とりあえず秘密兵器は隠しておいたのだが、ジェフたちの襲撃を受けて本社ビルから脱出。ルーの相棒が「奥さんに逃げられるので金が欲しい」と不満を爆発させる中、謎の襲撃者がワンマン社長に牙を剥こうとしていた…。

 本作がユニークなのは、前半と後半でまるっきり作品のスタイルが違っている点だ。前半はビルを舞台にした『ダイ・ハード』的な限定空間バトルが繰り広げられるのだが、これが割りと面白い。ビル内の照明が落とされたせいで、敵味方全員が暗闇の中で戦う羽目になり、謎の第三者が介入することによって緊迫感を加味させている。
ちなみにジェフの格闘シーンはここで出てくるのだが、まだまだ動けていてひと安心。贅沢を言わせてもらえるなら、もう少し明るい開けた場所でやって欲しかったかも。しかし、後半からはビルから脱出してしまい、アクションも単なる銃撃戦だけになってしまうので、これにはちょっとガッカリしてしまいました。アイディアが尽きたのか、それとも予算が無くなっちゃったのか…(たぶん前者)。
 前半がそれなりに面白かっただけに、後半での失速ぶりが残念な作品。しかし、今でもジェフが格闘アクションを演じられると知って、ほんのちょっとだけ嬉しくなりました(笑

『ブレイザウェイ』

2010-05-07 23:18:11 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ブレイザウェイ」
原題:LETHAL
製作:2004年

●比較的最近のタイトルだが、この作品には往年のマーシャルアーツ映画スターであるロレンツォ・ラマスとフランク・ザガリーノが出演している。ロレンツォ・ラマスは『コブラ・キラー』シリーズ等で活躍し、そこそこワイルドな面構えとそこそこイケてるアクションが持ち味。フランク・ザガリーノはB級以下のC級映画である『ブラッド・ウォリアー』などに出演しているが、演技も格闘センスも並以下という困った人だ(苦笑
物語は、傭兵屋(?)みたいな仕事をしていた元FBI候補生のヘザー・メアリー・マースデンが、とある依頼を受けたことからロシアン・マフィアに狙われ、妹を人質にされながら闘っていく様を描いている。
本作でラマスはマフィアのボスに扮し、ザガリーノはFBIの偉い捜査官を演じている。普通なら反対のキャスティングになりそうなものだが、このへんは意外性があって面白い(改めて見てみると、ラマスって結構悪役ヅラしてるんだなぁ…)。で、なんだかんだあってヘザーはFBIの裏切り者を撃破し、ラマスとの直接対決にも勝利。かつての同僚とラブラブになって一巻の終わりとなる。

 実にB級らしいヌルめの映画なのだが、それなりにテンポは良いのでのんびり見ていられるのが幸いか。アクションもまったりムードで繰り広げられるが、格闘アクションは割と凝っている。
主演のヘザーさんも十分動けているし、彼女の同僚も一箇所だけだがキレのいいアクションを披露している(ちなみに作中で一番いいアクションをしていたのはこの人)。実は、本作のファイト・コーディネーターは『ハードブロー』のマイケル・ワースその人が担当しているのだ。マイケル自身もカメオ出演しているとのことだが、どうせならメインキャラとして暴れて欲しかったものである。
さて、注目のラマス&ザガリーノだが、残念ながら両者の対決シーンは無し。ラマスは悪役ヅラがマッチしていたし、ラストでヘザーと対決した際もボチボチ動けていたから良しとしよう。
ただ、問題なのはザガリーノの方だ。ぶっちゃけると、先述した裏切り者というのはザガリーノの事だったりするのだが、彼がFBIを裏切ったのは「誰も褒めてくれないしカミさんにも逃げられたし貧乏だったから」という下らない理由によるもの。最後の前哨戦となるヘザーとのバトルも、まるで素人のような立ち回りに終始している。さすがはザガリーノ、何も変わっちゃいないなぁ…(爆
 往年のスターたちが健在なことだけは確認できるが、コテコテのB級アクション映画でしかない本作。休日の暇潰しには使えると思うので、洒落でレンタルしてみるというのも一興かと。ところでヘザーの上司も敵に捕まっていたはずなのだが(拷問されただけで死んだ描写は無し)、ラストで完全に存在を忘れ去られていてズッコケました(笑

『Devon's Ghost: Legend of the Bloody Boy』

2010-03-16 23:16:11 | マーシャルアーツ映画:中(1)
Devon's Ghost: Legend of the Bloody Boy
製作:2005年

▼昨年公開された『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』は驚くべき映画であった。何が驚くべきなのかと言うと、この作品でメガホンを取ったのがあの坂本浩一であった点である。氏は『パワーレンジャー』シリーズなどで既に監督経験はあるものの、日本の…しかも人気特撮番組の劇場版を手掛ける事になるとは、昔を知るファンにとっては非常に嬉しい出来事でありました(涙
その後は『仮面ライダーW』にも進出した坂本監督であるが、『パワーレンジャー』以外の映画作品でも監督業に乗り出している。日本でもリリースされた『ウィケッド・ゲーム』が好例で、それ以外にも何本か作品を撮っているという。そんな中でこの『Devon's Ghost: Legend of the Bloody Boy』は、なんとスラッシャー・ムービー(殺人鬼映画)に挑んだ意欲作である。
もちろん本作が単なるホラーではないことは、ジョニー・ヨング・ボッシュが主演である時点で明々白々。果たして、坂本監督の描くホラー映画とはいかなるものなのだろうか?

■舞台は、新しくハイスクールが開校したキャニオン・シティという街から始まる。10年前、この街では年端もいかぬ子供が人を殺すという事件が起きており、ハイスクールの学生たちも知る伝説「Bloody Boy」として語り継がれていた。事件後、少年はDV夫婦(少年を歪んだ性格にさせ、事件に至らせた間接的な要因となった連中)から祖父母の元に引き取られているが、かつて少年の殺人現場を目撃した学生キャラン・アシュレイ(ジョニーや坂本監督と同じ『パワーレンジャー』出演組)は少年の影に怯えていた。
しばらくは平穏な日々が続いていたのだが、フットボールの試合が行われた夜にBloody Boyは現れた。Bloody BoyはDV夫婦から受けた暴力がトラウマとなり、愛し合っているカップルを見つけては次々と撲殺していく。キャランとその彼氏&ジョニーとその彼女は危機感を抱くのだが、遂には彼女たちの元にもBloody Boyの魔の手が伸び、キャランの彼氏とジョニーの彼女が殺されてしまった。
 Bloody Boyは確実にそこにいる。それを確信したジョニーたちは、Bloody Boyに襲われて入院した彼の祖母(祖父は既に殺害済み)の元を訪ね、Bloody Boyの過去と10年前の事件の真相を聞きだした。それによると、10年前にBloody BoyはDV夫婦によって殺されてしまっているというのだ。では、今まで殺人を繰り返しているアレは一体…?(恐らくこれがタイトルの由来だと思われます)
兎にも角にも、Bloody Boyの祖母から奴の居場所を聞いたジョニーたちは現場へ急行…するのだが、ハイスクールの学長やマスコミのおっさん、そして最後に残っていたジョニーの友人までもがBloody Boyの凶刃に裂かれてしまう。キャランはBloody Boyの居場所に向かい、ジョニーも続こうとするが警官の足止めを喰らってしまった。
即座にBloody Boyはキャランを殺そうとするが、少年時代に彼女と出会ったことを思い出し、思わずその手を止める。そこへ警官たちを突っ切ったジョニーが駆けつけるが…。

▲実にコテコテなB級ホラー映画である。この手の映画の定番といえそうな要素をいくつも取り入れ(殺されるカップル・暗い過去を持つ殺人鬼・余計な青春ドラマ・ラストで実は…等々)、良くも悪くも安定した作りになっている。こういった作品ではスプラッタな演出が多様されるケースが多いが、本作は直接的な描写を抑えているため、私のようなホラーが苦手な人でも楽しめる内容になっているのだ(その代わり、本作ならではというポイントが見当たらない)。
さて、皆さんが気になる格闘アクションについてだが、こちらも香港式の濃厚なやつが3つも用意されていました。流石は坂本監督、手抜かり無しだ(笑
まず中盤にジョニー対Bloody Boyとキャラン対Bloody Boyがあり、クライマックスのキャラン対Bloody BoyとジョニーVS警官3人、そしてラストのBloody Boy対ジョニーが主な見せ場である。作品の性質上、殺人鬼が理不尽なほど強いので盛り上がりに欠けるものの、どのバトルもそれなりに作り込んであり、格闘映画ファンも納得できる殺陣になっている。
 しかし、スラッシャー・ムービーといえば殺人鬼が傍若無人に暴れまわるのがお約束だが、ここまで互角の戦いをさせてしまって良かったのだろうか?例えば、ジェイソンやマイケル・マイヤーズなんかは得体の知れなさと異様な強さで有名だが、本作のようにいい勝負を展開してしまうと、どうにも恐ろしさを感じなくなってしまうのだ。やはり殺人鬼なら、常人も及ばないような描写があってこそのものだと思うのだが…う~ん、映画って難しいなぁ(苦笑
なお、本作以外にも坂本監督の未公開作に『Broken Path』という作品があるが、こちらも『ウィケッド・ゲーム』ともども将来的に是非拝見したいタイトルである。『ニンジャ in L.A.』みたいにどっかのメーカーさんが出してくれないかなぁ…?

『NINJA ニンジャ in L.A.』

2010-02-23 23:38:46 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「NINJA ニンジャ in L.A.」
原題:HELLBINDERS
製作:2009年

●本作は『スター・ウォーズEp1』のダース・モール役に扮し、見事な二刀流アクションを演じたレイ・パーク主演のホラー・アクション映画である。彼と共に闘う仲間役に『ウィケッド・ゲーム』のジョニー・ヨング・ボッシュ、スタント経験アリのエステバン・クエトの両名が参戦。オマケに監督が3人(いずれもスタントマン出身者)も加わっており、マーシャルアーツ映画ファンとしては期待できる布陣であったのだが…。
 裏社会の始末屋・レイは、あるときロス市警からカルト教団の皆殺しを依頼された。仲間と共に敵地へ乗り込み、すぐに任務は終わるかと思われたが、戦いの中で突然仲間たちに襲われてしまう。不測のハプニングに命からがら逃げ出したレイは、自宅でニンジャ戦士のジョニーと遭遇。彼の口から、教団の人間は全員「鬼(レギオン)」という悪霊に体を奪われ、連中が世界を滅ぼさんとしていることを知らされる。
時を同じくして、エルサレムから不死の体を持つ戦士エステバンが悪霊掃討の命を受け、ロスに到着していた。共通の敵を持った3人は、ジョニーの師であるジェラルド・オカムラの協力を得て、地獄から来た悪魔たちと闘っていくことになる。
オカムラの術によって悪霊を封じ込める特異体質になったレイ、かつての仲間を裏切ってまでも戦い続けるジョニー、そして長きに渡る因縁の決着を付けようとするエステバン…3人はオカムラを失いつつも、地獄の門を開けようと企む悪魔の本陣へと攻め込む決意を固める!

 なかなか凝った設定の作品だが、本作の問題点はまさにその「懲り様」にある。舞台背景を聖書などから引用して趣向を凝らし、キャラクターの発する台詞を凝った言い回しにして、場面転換を漫画のコマ割りのような凝った演出にし、同時に凝ったキャプションを付ける…と、こんな具合に、本作は「凝り様」が凝り固まった、非常に感情移入しづらい作品に仕上がっているのだ。
ストーリーラインだけを追えば単純な構成なのだが、ここまで回りくどい話にしてしまうとは勿体ない。どうも本作の監督3人は、メインキャラ3人のストーリーをそれぞれ監督していたらしく(?)、全体的に構成がまとまってないのはそのせいなのだろう。3人寄れば文殊の知恵という言葉があるが、本作の場合は船頭多くして船山に登る…と言った方が正しいかもしれない(爆
 格闘アクションに関しては、スタントマン関係者が大挙して参加しているだけあって、それなりに派手さはある。
ただ、主役3人の中で最もいい動きができたはずのレイ・パークは、作中において素手のファイトをほとんど披露していない。それどころか、クライマックスでは銃を両手にドンパチするだけという有様で、明らかにキャラクター設計を間違えている。ジョニーは忍者らしく刀を振るい、エステバンはパワーファイターとして頑張っているが、個性を振り分けるのならレイの動きを生かせるようにして欲しかったものである。
なお、最後のオチは続編の可能性を示唆するものだった(ジョニーと因縁のあった悪霊も登場していない)が、本作を見る限りでは次に期待が持てません。あまり無理をしない方がいいのでは?ところで、作中にジョニーの上司が「東京でニンジャの決戦が行われている」と言っていたが、個人的には悪霊よりもこっちの方が凄く気になります(笑

『Force: Five』

2010-01-26 23:20:43 | マーシャルアーツ映画:中(1)
Force: Five
製作:1981年

▼本作は長らく「幻の作品」と呼ばれていたが、先頃めでたくDVDが発売され、一般にも流通するようになったのは記憶に新しい。ただ、私はこういった幻の作品が容易に入手できる状況に喜ぶ一方で、なんとなく寂しさのようなものを感じている。
何度かコメントやレビュー中でも触れたが、私はここ10年の間に功夫映画ファンとなった後発の者で、功夫映画との付き合いに関しては「ゆとり世代」と言えなくも無い。功夫映画ブームを体験していないし、テレビで放映されたB級功夫映画も見たことが無いし、ショウブラや本作に関してはここ数年の間にやっと知った身である。
故に、直撃世代の方々とは経た年数が違うため、ショウブラの復刻やハーベストの旧作が発売された際も、特にこれといって驚くことは無かった。むしろ「こんな作品もあったのか」という素っ気無い感想しか抱かなかったのだが、これらに対して直撃世代のファンは歓喜に満ち溢れていた事だろう。だから…だからこそ、私は寂しいのだ。
もっと前の時代に生まれて、もっと早くショウブラや『Force: Five』などの存在を知って、もっと多くの輸入版ビデオを購入して、もっと「幻の作品」に思いを馳せ、もっと経験を積んだ上で旧作の復刻や希少作品のDVD化を体験したかったのだ!生まれる時代間違えちゃったかなぁ…(涙

■というわけで本作の紹介である(切り替え早っ!)。簡単な概要を説明すると、本作は『燃えよドラゴン』のスタッフが夢よもう一度と企画した作品で、『ジャガーNo.1』のジョー・ルイスや『七福星』のリチャード・ノートン、そして『スパルタンX』のベニー・ユキーデといった豪華スターが揃い踏みしたオールスター格闘映画である。
 怪しげなカルト教団に、とある富豪の令嬢が入信した。彼女を連れ戻すように命を受けたのは空手使いのジョー・ルイスだったが、そのカルト教団というのが巨大な島を根城にしており、とても1人で突破するのは不可能に近い(誰の協力も得なかった李小龍とはエラい違いだ・笑)。そこでルイスは一計を案じ、腕っ節の強い奴を集めて「フォースファイブ」を結成しようと考えた。
まず最初にルイスが接触したのはベニー・ユキーデ。後の出演作では見せなかった好青年を演じ、軽快なアクションを披露している。次に連絡を取ったのは『バトル・クリーク・ブロー』のソニー・バーンズで、こちらはパワー担当の黒人さんだ。3番目にルイスが雇ったのはハスラーのリチャード・ノートンで、最後は恋人のパム・パディントンを召集した。ところで本作の打撃音は、どうやら『燃えよドラゴン』からサンプリングしているらしい(打撃音といっしょに李小龍の怪鳥音が聞こえます)。
 やっとこさ集結したフォースファイブだったが、依頼主の富豪はカルト宗教が放った用心棒ボブ・スコットによって殺されてしまう。と、そんな事はさておき(おい!)敵の島に行くためにはペリコプターと操縦者が必要らしいので、フォースファイブは刑務所にいるパイロットの救出に向かった。普通にパイロット雇えよ!という私の願いも虚しく、囚人を解き放ってやりたい放題のフォースファイブご一行。これじゃあどっちが犯罪者か解らないぞ(笑
とりあえずパイロットを助け出し、満を持して敵の本拠に乗り込んだフォースファイブは、身分を偽って潜入する作戦を実行。教祖のボン・ソー・ハンの元には、依頼主を殺したボブの他にも多くの兵士たちが顔を揃えている。一方、何も知らない富豪令嬢は教団内でヒゲの信者(実はニューヨークの記者)と親しくなっていた。果たして我らがフォースファイブは、教団の秘密を暴いて巨悪を倒せるのだろうか?

▲はっきり言ってしまうと、ツッコミどころの多い作品である。
ストーリーは『燃えよドラゴン』の焼き増しで、似たテイストの『サンダー・ウォリアーズ』よりも没個性的であると言える。特に物語については『燃えよドラゴン』そのまんまで、本作独自の枝葉が無かったのも残念だ。本家『燃えよドラゴン』も物語はショボかったが、あの作品は李小龍の魅力があったからこそ傑作になり得た。その点を誤解し、新しいものへ挑戦しようとしなかった本作のスタッフは、『カラテNINJA/ジムカタ』で再び失敗を繰り返している。
 しかし、それでも本作がいささかも輝きを失っていないのは、「3大格闘映画スターが揃い踏みしたオールスター作品であった事」と「この時期の作品としては質の高い格闘アクションだった事(スタント・コーディネーターは『燃えよドラゴン』にも参加したパット・ジョンソン)」の2点が大きかったと言って間違いは無いだろう。個人的には今回が初接触となるジョー・ルイスに期待していたが、本作での動きは中途半端な李小龍スタイルだったため、思ったような収穫はありませんでした(『ジャガーNo.1』は様子見かな?)。
だが、香港映画へ出演する前のノートンとユキーデの動きは格段にレベルが高く、ラストの決戦では両者とも打点の高い蹴りやトンボ切りをビシバシと繰り出し、ルイス以上の大活躍を見せていた。どうせなら最後のルイスVSボン・ソー・ハンにも参加して欲しかったが、そのラストバトルも際立った出来ではなく、この作品の〆とするには少々華に欠けていたと思われる。
 たいしたことはない作品ではあるものの、初期のユキーデやノートンの格闘アクションが見られる点が大きく、マーシャルアーツ映画を見た者なら一度は見るべき逸品か。これでストーリーがもっと面白かったらなぁ…。ところで、本作のラストでノートンは赤い上着にジーンズという姿で闘っているが、『七福星』のラストでも似たような衣装で登場している。もしかして、サモハンは本作を見てノートンを起用したのでは…?(ないない)

『ファイナルラウンド』

2009-11-22 23:13:35 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ファイナルラウンド」
原題:Final Round/Human Target
製作:1993年

●ロレンツォ・ラマスが妻のキャスリーン・キンモントと出演した格闘映画で、ラマスの主演作としては平均的な出来の作品である。物語はよくある人間狩りモノで、ロケ地も暗い工場の中を右往左往しているだけだが、低予算な作りを上手く逆手に取って緊迫感のある作品に仕上がっている。これといって格闘アクションが多くないのが欠点だが、悪くない作品だ。
ラマスはシュートボクサー兼バイクの修理工だったが、あるときキャスリーンと出会ったことから事件に巻き込まれてしまう。ラマスとキャスリーンは、気が付くと奇妙な密室に閉じ込められていた。部屋にはラマスらと同じく誘拐されてきたクラーク・ジョンソン(子持ちという時点で既にアウトなキャラ・笑)がおり、彼らは人間狩りの標的として連れ去られてきたのだ。人間狩りの模様は衛星を通じて世界中の会員に中継され、賭博によって膨大な利益を上げている。この闇のビジネスの仕掛け人は、マフィアから独立した野心家のアンソニー・デ・ロンジスであった。彼は5人のハンターを飼っていて、今回も大儲けを企んでいたのだが…。
かつてのアンソニーの親分であるスティーブン・メンデルはラマスの腕を買い、標的の方に賭けるとアンソニーに連絡してきた。苦笑するアンソニーであったが、ラマスたちは衝突を繰り返しながらもハンターたちを返り討ちにしていく。これにより賭け率のレートが滅茶苦茶となり、怒り心頭のアンソニーは残りのハンターたちと共にラマスを殺害せんと企む。一方、クラークの死という代償を払いつつも、閉じ込められていた廃工場からの脱出に成功したラマスとキャスリーンだが、執拗にもハンターたちは彼らを狙い続ける!

ミニマムな作品ではあるが、キャラクター描写については良好だ。いつもは無個性なラマスも、本作ではクラークやキャスリーンとの絡みでは人間味のある顔を見せており、敵となるハンターたちも得物やファイトスタイルが違っていたりと、個性を尊重している点は評価できる。物語の性質上、ハンターとの対決は遭遇してすぐに決着してしまうので、出来ることならじっくりとハンターたちの実力を見てみたかった気もするが、ダレる事なく最後まで見ることが出来ました。
特に惹かれたのがラストの展開で、ラマスたちを追っていた最後のハンター2人が仲間割れ!と思ったら最後の敵っぽい方の白眼ナイフ使い(ビデオのジャケに出ているオッサン)があっという間に死亡!と思ったら実は死んでおらず、ラマスを襲っていたハンターを殺害!と思ったら白眼ナイフ使いはあっという間にラマスに火達磨にされて死亡!と思ったらアンソニーが現れてラストバトル!…と、こんな感じでクライマックスはどんでん返しの連続技を炸裂させているのだ。
個人的に、私は白眼ナイフ使いがボスだと面白くないと思っていた(パワータイプの大柄なボスキャラはもう勘弁)のだが、その白眼ナイフ使いがあっさりと死んでしまう展開には驚きました。で、肝心のラストバトルは意外にもアンソニーが担当。しかもこのアンソニー、この手の作品では珍しくマッチョなファイターなどではなく、見た目は普通の男だが強い&ムチ使いというキャラなのが珍しい。
格闘アクションあり、エロ&バイオレンスあり、ユーモア要素あり、無茶な展開あり。決して大層な作品ではないが、ラマス作品では見られる方かと。

『Bamboo Trap/Black Panther Of Shaolin』

2009-10-20 22:41:31 | マーシャルアーツ映画:中(1)
Bamboo Trap/Black Panther Of Shaolin
中文題:少林豹
製作:1975年(1979年説あり)

●(※…画像は本作を収録したDVDパックの物です)
日本では『必殺カンフー ロー・ブロウ』等のB級作品で知られ、李小龍の弟子と呼ばれているレオ・フォンの未公開作だ。共演は"もう1人のブラックドラゴン"ことロン・ヴァン・クリフで、この両名の顔合わせこそが本作最大の売りである。
レオ・フォンは中国広東省の出身で、5歳の時にアメリカへ移住した父を追って渡米。少年期に人種的偏見で虐めを受けていたが、ボクシングと出会った事が彼の運命を大きく変える。大学に進学した彼はボクサーの道を歩み、のちに柔術や功夫を習得。その後はオークランド時代の李小龍に師事し、長きに渡って親交を続けていった…のだが、彼の突然の死によってピリオドが打たれてしまう。皮肉にも、この出来事がレオを映画界に引き込むきっかけとなるのだ。
1974年、李小龍の弟子というネームバリューに目をつけたフィリピンの映画会社が、彼を担ぎ出そうと動き出した。一度は断ったレオだが最終的には承諾し、ロン・マルチーニ主演作『Murder in the Orient』で最初の映画出演を果たす。これ以降のレオは皆さんもご存じの通り、『キルポイント』等のB級マーシャルアーツ映画に多数出演し、同時に武道家としても大成していった。現在レオはジークンドーを発展?させて「Wei Kuen Do」なる格闘技を創始し、自ら映画製作にも乗り出しているという。

だいぶ話が横道に逸れてしまったので本筋に戻ろう。この手の「古いマーシャルアーツ映画」を見る際にポイントとなってくるのは、当時の作品がどのような試みに挑戦しているかという点だ。功夫を通して物語を説く香港映画のようなスキルは無いし、かと言って手本となるような作品も多くはない。そんな中で、果たして先人たちはどんな物語を作り上げたのか?この試行錯誤こそが「古いマーシャルアーツ映画」の肝となってくるのだ。
そんな中にあって、本作が取り入れたのは李小龍的なアプローチであった。ただし怒りの鉄拳アチョーな映画ではなく、李小龍がらみのキャスト2人を起用したもので、有色人種のコンビが活躍するバティ・ムービーの側面も持っている。そう考えると、本作は『ラッシュ・アワー』や『ブラック・ダイヤモンド』のご先祖様と言える…のかもしれない。
ちなみに私が所有しているのは擬似ワイドスクリーン仕様のDVDで、英語音声だがギリシャ語字幕がハミ出て見えるという珍妙なバージョン。おかげで物語の把握が難しかったが、そんなに複雑な作品ではないため視聴に難はありませんでした(笑)。
ストーリーはかなりシンプルで、富豪の令嬢を誘拐した悪党に捜査官のレオ&ロンが立ち向かっていく様を描いている。物語の舞台は中盤からフィリピンに飛び、最後は捕らわれたロンを助け出すため、レオが仲間たちと敵のアジトに攻め込んでの総力戦へ突入。それぞれのキャラクターが強敵と戦うという気の効いた展開を見せ、組織は壊滅して一件落着となる。
香港の資本が一枚噛んでいるためか、本作の格闘アクションはそんなに悪くない。若干動きはカクカクしているが殺陣のテンポはスムーズで、当時のマーシャルアーツ映画としては良い出来だ。ラストでは敵ボスVSレオや空手家VSロンといったバトルが各所で繰り広げられ、スケール感を演出する事にはなんとか成功している。特に敵ボスとレオの戦いが意外と面白く、今回がレオ・フォンの初接触である私にとっても満足のいく結果を残してくれました(これはちょっと『ロー・ブロー』が楽しみになりました)。
ところで本作の別題は『Black Panther Of Shaolin』となっているが、劇中で少林寺なんてどこにも登場していない。まぁこのへんはご愛嬌で済ませられるが、正式なタイトルである『Bamboo Trap』とは何の事なのか?と思いながら視聴していたら、最後の最後で敵ボスが自分の仕掛けた竹製の罠で串刺しになっていました。なので本作の題名は『Bamboo Trap』に決定…って、そんなのタイトルなんかにするなよ!(爆笑

『ファイナルヒート』

2009-08-17 21:14:20 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ファイナルヒート」
原題:FINAL HEAT/UNDEFEATABLE
製作:1994年

●シンシア・ラスロック主演のマーシャルアーツ映画であるが、この作品には色々と複雑な事情が存在する。…が、その前に本作の監督であり幾多のニコイチ映画を製作したことで知られる何誌強(ゴッドフリー・ホー)について触れておこう。
彼はかつてショウ・ブラザーズで張徹(チャン・ツェー)の元に付き、助監督として幾多の功夫・武侠片に関わった。ところが何を血迷ったか、彼はIFDやフィルマークといったアンダーグラウンドの仕事に走り、その映画人生の大半をクズ映画作りに捧げたのだ。多くのニコイチ作品に関わった何誌強だが、フィルマーク最後の仕事とされている『Ninja Empire』を最後に香港の映画界から離脱。以後はアメリカでマーシャルアーツ映画に従事した。
しかし完全に香港から脚抜けしたという訳ではなく、90年代にはレディ・アクションなどを数本撮っている。その中に『摧花狂魔』という作品が存在するのだが、本作はこの『摧花狂魔』の再編集作品であるという。ストーリーは単純明快で、どちらかというと同じシンシア主演の『タイガークロー』に近い。しかし特にこれといって目新しいポイントは無く、はっきり言うと『タイガークロー』の二番煎じのようなもの。格闘アクションは香港系の激しいファイトが中心。こちらは結構面白いので、そちらだけを楽しむほうが無難だろう(ちなみに本作のラストバトルは、米国だと「最低の格闘シーン」と揶揄される事が多いとか)。
シンシアは不良グループを率いる女ドラゴン。ストリートファイトで手にした賞金で、大学に通う妹の学費をまかなっている。一方、妻に逃げられた格闘家くずれのドン・ニアム(例によって特殊性癖持ちのシリアルキラー)は、妻を捜して花柄の服の女性を探しては殺人を重ねていき、遂にはシンシアの妹が犠牲となってしまう。警察官のジョン・ミラーと共に犯人を追うシンシアだったが、ドンは次なるターゲットを定めつつあった…。

本作で気になるのは、「一体どこからどこまでが『摧花狂魔』なのか?」という事だ。
私は『摧花狂魔』は未見だが、タイトルを見る限りでは本作と内容は大差無いものと推測される(『摧花狂魔』の監督は何致謀となっているが、恐らく何誌強の変名だろう)。データによると、武術指導に孔祥・助演に仇雲波(ロビン・ショウ)とあるものの、どちらも『ファイナルヒート』には登場していない。ジョン・ミラーの役柄を仇雲波が演じたのだろうと考えられるが、それ以前にこの『ファイナルヒート』という作品には、再編集の形跡が全く見られないのだ。
これは完全に私の想像だが、『ファイナルヒート』は『摧花狂魔』のストーリーを流用しただけなのではないだろうか。まず最初に『摧花狂魔』が作られ、そこから脚本だけを使用(映像は流用無し?)したものが『ファイナルヒート』となった……これが事の真相だと思われる(とはいえ、こればっかりは流石に『摧花狂魔』を見ないと何とも言えないところなのですが)。
何誌強はこれと同様の手法で『パワーヒート』(元は『縦横天下』)という作品を作っているが、遥かアメリカの地に渡っても相変わらず自己流の映画作りを続けているなんて、流石は何誌強である…としか言い様が無いな、この人は(爆

※追記…寄せられた情報によると『ファイナルヒート』そのものは再編集作品ではなく、『ファイナルヒート』に追加撮影を加えた物が『摧花狂魔』となった模様(情報提供は蛇形酔歩さん・多謝!)。

『エターナル・フィスト』

2009-08-07 20:23:09 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「エターナル・フィスト」
原題:ETERNAL FIST
製作:1993年(1992年説あり)

●この作品は色々と謎の多い作品である。
まず本作の発売元は『ワンチャイ』系列などを発売していた極東ハリウッドシリーズで、作品自体も香港映画という扱いになっている。ビデオ巻末に収録されているオリジナル予告編にはメディア・アジアのロゴも付いているが、どういう訳かHKFAやHKMDBなどの楊麗(シンシア・カーン)のフィルモグラフィーに、本作の情報は一切記載されていないのだ。では本作は香港映画ではないのか?と思うところだが、どうやら製作したダヴィアン・インターナショナルが香港資本の会社だったことからこの混乱が起きたようだ。
ダヴィアンの作品はこれまでに『バトル・ウルフ』『リアル・キックボクサー』と紹介してきたが、ダヴィアンという会社そのものは香港資本で成り立ってはいるが、香港映画の会社という事ではないらしい。つまり厳密に言うと本作は純粋な香港映画ではないのだ(と思われる)が、楊麗が出演している事を考えると香港の映画会社から何らかの介入があった可能性も否定しきれない。現に、本作で主演を飾った楊麗とディル・アポロ・クックが出演している香港映画が存在する。それが『武林聖鬥士』だ。この作品は香港と中国のプロダクションが合作した作品で、于光榮や于海などが顔をそろえている。果たして本作と何か関係があるのだろうか?

…とまぁ、なんとも複雑な事情を孕んだ作品であるが、そんなワケで本作のカテゴリはマーシャルアーツ映画になっている次第です。
物語は『北斗の拳』そのまんまの舞台設定で巻き起こる格闘モノだが、ロケ地は砂漠が大半を占めるというロー・バジェット仕様。ストーリーも驚くほど単純で(闘って復讐するだけ)、こうなってくると最大の見せ場は格闘アクションに集中してくるものだが、本作は格闘シーンに次ぐ格闘シーンで何とか頑張っていました。クックはたまにモタつくが『リアル・キックボクサー』以上のテンションを保ち、楊麗は言わずもがなのファイトを披露(ただし香港映画の時より少々殺陣のレベルが落ちている)。最大の敵となるドン・ナカヤ・ニールセンは、見た目が最高にイケてない(死語)が動きは先の2人に負けておらず、最後のラストバトルも中々の盛り上がりを見せている。
ただ、宣伝文句の「5分に一度の肉弾戦」という言葉通り、作中での格闘シーンは異様に数が多いのが特徴だが、ちょっと多すぎる気がしないでもない。スカスカのストーリーを許容できる人ならば、それなりには楽しめるかな?