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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『沈黙の復讐』

2011-08-25 22:44:18 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「沈黙の復讐」
原題:BORN TO RAISE HELL
製作:2010年

●シルベスター・スタローンや李連杰(ジェット・リー)など、名だたる筋肉スターが勢揃いした『エクスペンダブルズ』。この超大作を製作するに当たり、多くの格闘俳優たちに出演のオファーが飛び交ったのですが、スティーブン・セガールとジャン・クロード=ヴァン・ダムの2人はそれを蹴ってしまいました。
ヴァンダムは都合により出演をキャンセルしましたが、彼はこの一件を境に他の格闘俳優と共演する機会を増やしていきます。『Assassination Games』でスコット・アドキンスと再会し、『Dragon Eyes』でカン・リーと遭遇。『Universal Soldier: A New Dimension』ではドルフ・ラングレン&アドキンスの2人と顔を合わせ、アニメ映画の『カンフーパンダ2』では声優としてジャッキーと共演していました。

 一方、セガールはプロデューサーであるアヴィ・ラーナーとの確執により出演依頼を断りました。彼は他者との共演に対してオープンになったヴァンダムと違い、ひたすら我が道を突き進んでいます。本作はそんなセガールが『エクスペンダブルズ』以降、唯一ともいえる夢の対決をメインに添えた作品なのです。
本作で彼と闘うのは、なんと『太極神拳』のダレン・シャラヴィ!近年は『イップ・マン』で甄子丹(ドニー・イェン)と闘い、某スパイ大作戦の最新作にも出演が予定されているという名ファイターです。果たして、彼がどこまでセガールに迫れるのか気になるところなのですが……。

 ストーリーはセガールと麻薬の売人グループ(リーダーはダレン)とロシアンマフィアによる、三つ巴の抗争を淡々と描いています。山場らしい山場は無く、テンプレートな死亡フラグで死んでいく部下がいたりと、物語に関しては実に平々凡々。後半では売人グループに妻を殺されたマフィアのボスが、利害の一致したセガールと手を組むという燃える展開があったりします。
さて注目のセガールVSダレンですが、両者の直接対決はラストの一戦のみ。闘いはセガールのペースで進み、開始10秒足らずでダレンが血まみれになってしまうものの、自慢の足技で何とか凌いでいました。残念ながらダレンの実力が発揮されたとは言い難いファイトでしたが、内容は『グリマーマン』のラストバトル、『イン トゥ・ザ・ザン』のVS慮恵光(ケン・ロー)を彷彿とさせる激突だったと思います。

 現在『エクスペンダブルズ』の続編『The Expendables 2』が製作中ですが、待望のチャック・ノリスとジョン・トラボルタ、そしてヴァンダムの参戦が確定しているそうです。しかし、一方で何故か李連杰が離脱し、代わりに甄子丹の加入が検討されています(以前予定されていた楊斯の出演は流れてしまった模様)。今後も出演キャストは変動しそうですが、個人的には今度こそセガールの出演が実現して欲しいと願って止みません!

『マッド・リベンジャー/怒りの鉄拳』

2011-07-22 22:13:22 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「マッド・リベンジャー/怒りの鉄拳」
原題:HARDCASE AND FIST
製作:1987年

●『ゴースト・ハンターズ』への出演により、黄家達(カーター・ウォン)はハリウッドで名前を知られる事になります。折りしも、当時のアメリカでは格闘映画というジャンルが成長期を向かえ、セガールやヴァンダムらの出現が目前に迫っていました。この当時、格闘映画はチャック・ノリスとニンジャ映画が主流でしたが、そこに黄家達も参入していきます。
本作は『ゴースト・ハンターズ』に出演して間もない彼を起用した作品で、アメリカの小プロダクションが製作した低予算アクション映画です。特にビッグな俳優が出演しているわけでもなく、黄家達とテッド・プライアーの2人が巨悪に立ち向かう様子を描いた、テンプレートな作品となっています。

 物語は、ある組織に濡れ衣を着せられてムショ入りしたテッド刑事が、ベトナム戦争の戦友であり組織の一員だったトニー(演者は後述)の助けを借りて脱獄。仲間を失いながらも、誘拐された恋人を助け出して終劇となります。黄家達はテッドと同室の囚人として登場し、別れた妻にひと目会いたいと願う「もう1人の主役」を演じていました。…と、こう書くと悪くないように見えますが、実際は非常にアラの目立つ作品になっています(爆
まず本作は全体的に演出が単調で、カーチェイスやアクションがあまり派手に見えません。ストーリー展開もバランスが変で、主役となるテッドのキャラクター描写が少ない反面、途中で死ぬはずのトニーの設定は妙に充実。それでいて、彼が死ぬシーンではテッドが全くのノーリアクションだったりと、本作は終始こんな感じで進んでいきます(ラストも敵のボスを放置したまま終了)。

 一方、格闘シーンでは黄家達の存在が光っていて、テッドがモタついてる脇でビシバシと俊敏な殺陣を演じています。当時の格闘映画としては充分良質なファイトを見せていますが、難点は絡み役の動きが鈍いこと。唯一、ストリップバーの乱闘では素早いザコが数人いたので(エンドクレジットを見ると韓国系?のスタントマンが参加している模様)、そこだけは見応えのあるアクションに仕上がっていました。
なお、前半においてテッドや黄家達以上の存在感を示したトニーですが、演じているのは監督のトニー・ザリンダスト。恐らく予算節約のために出たのだと思われますが、さすがに主役まで喰ってしまうのはマズイような…(汗

 しかし作品の出来はさておき、当時の功夫スターとしては例の無い「香港や台湾の資本が介入していない純粋なアメリカ映画への主演」を成し遂げているため、黄家達にとっては重要な作品だったと言えるはずです(その後、彼は2000年にシンシア・ラスロック主演のハリウッド映画『TIGER CLAWS 3』にも出演)。
そして90年代になると、黄家達は懐かしの香港へと戻ります。この頃、映画界では武侠片ブームにより多くのワイヤー古装片が、そして現代動作片が大量に作られていました。80年代に失速してしまった功夫スターにとって、これらの作品は再起を賭けたチャレンジの場となり、かつての名優たちが次々と名乗りを上げていったのです。(次回へ続く!)

『サイバー・コマンドー』

2011-06-04 22:54:28 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「サイバー・コマンドー」
原題:VIRTUAL COMBAT/GRID RUNNERS
製作:1996年

▼先月は格闘映画ばかりだったので、これからは功夫映画を中心に!と決意していた矢先ですが、今月最初の更新はまたもやドン・“ザ・ドラゴン”・ウィルソン主演作です(汗)。本当は多くの日本公開作が控えている甄子丹(ドニー・イェン)の珍品を紹介するつもりでしたが、こちらは次回お送りいたします。
本作はドンが近未来SFアクションに挑戦した作品で、毎回恒例のもっさりした作風で製作された1本です。劇中、セットや特殊効果がショボく見えたり、どう見ても舞台が近未来ではないように感じる事がありますが、そこは『DRAGON BATTLE EVOLUTION』の悲劇を思い出しながら耐え凌ぐことをオススメします(爆

■近未来のラスベガスでは、セックスから格闘技まで様々な体験ができるバーチャルリアリティが流行していた。
そんなある日、クローン技術を応用して仮想空間のプログラムを人間にできる発明が作られ、バーチャル産業の元締めである社長は「仮想現実の女を生み出して大儲けや!」と奮起。すぐに2人の女性を複製してロスに向かったのだが、ひょんな事から格闘技養成プログラムの最強戦士が実体化してしまい、「仲間を複製して世界征服や!」と暴走を始めていく。
ラスベガスの警察官であったドンは、この最強戦士によって同僚が殺されたことで捜査を開始し、背後にバーチャル産業が絡む陰謀の存在に気付いた。かくして、彼は最強戦士とバーチャル産業の大物を相手に、たった1人の孤独な戦いへと身を投じていくのだが…?

▲『デモリションマン』と『トータル・リコール』をミキサーで混ぜて作られたような作品ですが、ストーリーはそれほど冗長ということもないし、思ったより悪くない感じにまとまっています。先述のとおり予算のなさが目に付くものの、『キング・オブ・キックボクサー3』のように極端に詰まらない事もなく、ドン作品としては平均的な出来といえるでしょう。
格闘アクションは実にベターで、ラストバトルも尺が長いだけで精彩を欠いていたと言わざるを得ません。ただし、本作ではヒロインにアクションをさせたり、ドンにヌンチャクやステップをやらせて李小龍っぽくさせたり、主なキャストを何々チャンピオンから格闘俳優に変更するなど、それなりに工夫した形跡はありました(ファイト・コーディネーターはおなじみアート・カマチョ)。
 その格闘俳優たちとドンの絡みは実に貴重で、夢の共演が敬遠されがちな格闘映画において快挙といえる出会いがいくつか実現しています。ドンの同僚を演じた『ショウダウン』のケン・マクラウド、ラスボスの最強戦士を演じた『シュートファイター』のマイケル・ベルナルド(K-1選手とは別人のプロ空手家)など、出来はともかく顔合わせだけでも本作は大きな収穫があったと言えます。
その中でも白眉なのが、社長の側近を演じていたローレン・アヴェドンの存在です。彼は香港系の格闘映画で実力を発揮した人物で、代表作の『キング・オブ・キックボクサー』は傑作中の傑作でした。
本作ではそんな元祖『キング・オブ・キックボクサー』のローレンと、便乗作『キング・オブ・キックボクサー2』のドンによる、新旧キックボクサー同士のバトルを見ることが出来るのです。香港仕込みの蹴り技で迫るローレンに対し、いつものスタイルで挑むドン!ここだけでも本作は見る価値があるといっても過言ではありません!…でも、これでもうちょっと格闘アクションが凄かったらなぁ(涙

『Bodyguard: A New Beginning』

2011-05-23 22:49:18 | マーシャルアーツ映画:中(1)
Bodyguard: A New Beginning
製作:2008年

▼『ヒューマノイド』でハイテンポな格闘シーンを作り、『12 TWELVE』で新たなタイプの格闘映画を構築したチー・ケアン・チャン監督と俳優のマーク・ストレンジ…。日本では今のところ2本の作品が上陸していますが、実はこのコンビによる未公開作がもう1本存在していました。それが今回紹介するこの作品で、香港ノワールに挑戦した野心作となっています。
さてこの映画、単に香港映画を意識しただけの作品ではなく、なんと本場香港との合作で多くの香港系スタッフが投入されているのです。主演も武術指導も助演もほとんどが香港の人で、ロケ地も8割がた香港で占められているため、本作はマーシャルアーツ映画というよりは香港映画に雰囲気が近いといえます。ただ、それがこの作品の長所でもあり短所でもあるのですが…(詳しくは後述にて)。

■施祖男(ヴィンセント・ツェー)は、香港マフィアのドンである呉耀漢(リチャード・ウン)のボディガードとして日夜闘っていた。呉耀漢は施祖男に全幅の信頼を置いていたが、彼の息子の呉嘉龍(カール・ウン…呉耀漢の実子)は自分よりもボディガードを大事にする父親に対し、密かに不満を募らせていた。
そんな中、香港ではケイリー・ヒロユキ・タガワをボスとする新興勢力が現れ、一触即発の状況となっていた。ケイリーは呉耀漢を潰そうと、英国にいる彼の娘?であるステファニー・ラングトンを狙おうと計画。この動きを察知した呉耀漢は施祖男を派遣するが、一方でケイリーは呉嘉龍の心の隙を突き、彼を自陣に引き込んでしまう。
 そうとは知らない施祖男は、イギリスでステファニーを守る任務に就いていた。ボディガード映画の例に漏れず、警護対象の人物と親密になっていく施祖男…しかし、ケイリーの手下となった呉嘉龍の調査で、彼らの所在が発覚してしまう。逃避行を続ける施祖男たちだが、息子の動向に気付かぬほど呉耀漢は愚かではなかった。呉嘉龍は勘当され、頼りにしていたケイリーからも裏切られ、あっという間に全てを失ってしまう。
これを機に呉耀漢とケイリーの両陣営は抗争へと発展し、ケイリー側は仲間や娘を失った。施祖男たちはようやく香港に帰国するが、ケイリーの報復でステファニーが捕まるというアクシデントが発生する。愛する者を助けるため、今ここに最後の死闘の幕が上がった!

▲ぶっちゃけてしまうと、本作はこれまでの『ヒューマノイド』『12 TWELVE』のようなインパクトはありません。確かに本作のプロットは香港ノワールらしい感じが出ているし、マーシャルアーツ映画としては格闘シーンも高度な部類に入ります。海外と香港の役者がいい具合に混ざりあい、歳を取って渋みが増した呉耀漢と呉嘉龍の親子共演など、出演者たちは大いに頑張っていました。
ですが、本作はあまりにも香港映画に近付きすぎたせいで、格闘映画ではなく普通の香港映画にしか見えなくなるという皮肉な結果に至っているのです。マーシャルアーツ映画で香港ノワールをやったのは斬新かもしれませんが、『12 TWELVE』のような作品を見た後では少々食い足りないのも事実。革新的な内容を期待していた身としては、ちょっと期待外れでした。
 ただし本作は水準以上のクオリティは保っており、単にボディガード系のアクション映画として見る分なら普通に楽しめます。特にマーク・ストレンジとネイサン・ルイス演じる殺し屋コンビのアクションが痛快で、初登場シーンでの暴れっぷりは『ヒューマノイド』を彷彿とさせます。武術指導はアンソニー・カルピオ名義で賈仕峰(成家班出身)が担当しているため、格闘アクションの出来は保証済みといえるでしょう。
そして本作でもうひとつ忘れてならないのが、特別ゲストの成奎安(シン・フィオン)です。成奎安といえば香港ノワールで活躍を続けた名脇役だった人で、本作では序盤に呉耀漢の仲間として登場しています。まさに香港ノワール風の本作には最適のゲストといえますが、残念ながら成奎安は2009年にガンで他界…今回が遺作となってしまいました(製作時期を考えると、闘病生活中にも関わらず出演を決断したものと思われます)。
これから本作を視聴する方は、成奎安最後の映画出演となった出演パートにぜひ注目して欲しいです。

『ジェイク・アイデンティティー』

2011-05-11 23:55:45 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ジェイク・アイデンティティー」
原題:Code Name: The Cleaner
製作:2006年

▼この作品は今月の特集で取り上げる物の中で、唯一邦題が存在するタイトルです(過去にスターチャンネルで放送。今のところ国内未ソフト化ですが、私は海外版DVDにて視聴しました)。内容はいたってシンプルなコメディアクションで、主演は『バーバーショップ』のセドリック・ジ・エンターテイナー。製作にはブレット・ラトナーも加わり、小品ながら貧相さはあまり感じさせない作りとなっています。
そんなミニマムな作品をどうしてピックアップするのかと言いますと、ズバリ!本作でルーシー・リュウVSマーク・ダカスコスという夢の対決が実現しているからです。かたや様々な武術を習得した格闘技のサラブレッド、こなたハリウッドで活躍する現代の女ドラゴン…こんな2人が本作で邂逅を果たしているのだから、興味を持てないはずがありません!(嬉

■閑静なホテルの一室で目を覚ましたセドリックは、自分が記憶喪失になっていることに気付いた。おまけに側にはFBI捜査官の死体、その脇にはケースいっぱいに詰め込まれた大金が置かれ、自分の頭には記憶を失う原因になったと思しき傷…?とっさにケースを持ってホテルから逃げ出したセドリックは、自分の妻と称するニコレット・シェリダンに連れられて大豪邸へと通された。
「もしかしてオレって大富豪だったの?」と戸惑いつつ、セレブ生活を満喫するセドリック。しかしニコレットの様子がおかしく、身の危険を感じた彼は豪邸から脱出すると、ホテルに残されたIDカードを手がかりに調査を開始していった。断片的にフラッシュバックする記憶によれば、記憶を失う前の自分は特殊部隊のメンバーだったようだが…さて?
 とにもかくにも、セドリックはIDカードに記載されていたD.A.R.T.という会社まで辿り着いた。が、近場のレストランでルーシー・リュウから「あんたはその会社の清掃員よ」と告げられてしまう。どうにも身元がハッキリしないセドリックだが、何らかの事件に巻き込まれている事だけは確かだ。
彼とルーシーはD.A.R.T.や警察の目をかいくぐりつつ、事件の核心へ近付こうと奔走し続けていった。最終的にニコレットはD.A.R.T.側の人間で、ルーシーはFBI捜査官だという事が発覚。戦いの中で徐々にセドリックの失われた過去も判明していく……。果たして彼は本当に特殊部隊のメンバーなのか?それとも単なる清掃員なのか?敵の根城を舞台に、最後の決戦が始まった!

▲ちょっと大げさに書いていますが、本作は基本的にコメディなので気軽に楽しく見られる作品となっています。ストーリーはスケールの小さい『Who am I ?』みたいですが、太っちょの勘違い気味な主人公が七転八倒する様は『ビバリーヒルズ忍者』に近いものを感じました(あちらほどはっちゃけてはいないのですが)。
ただし本作には『ビバリーヒルズ忍者』のようにビジュアル的なギャグは少なく、口八丁の喋りで笑わせようとするスタイルがメイン。セドリックの正体についても特に大したことは無いし、日本語字幕無しで見るにはちょっと辛いものがありました(苦笑
 さて注目のルーシーVSダカスコスですが、こちらはクライマックスの決戦にて実現しています。ダカスコスは敵の親玉として直々にセドリックたちを襲い、銃撃戦の末に素手の勝負へと移行。ここで僅かですが両者の手合わせが見られます(アクションの密度はボチボチだけど、双方とも良い動きをしていました)。
その後、新たに2人の手下が加勢に現れるのですが、何故かダカスコスはそっちへ襲い掛かります(笑)。皮肉にも、先程のレア対決よりもこちらの方が充実しており、格闘アクションのレベルも上がっていました。ダカスコスは華麗な連続キックで攻め、ルーシーはトイレにあるスッポンを使った棒術を披露!その後の結末がちょっと腰砕けですが、最後の最後にルーシーVSニコレットの女闘美バトルもあったりして、そこそこ満足のいく結果となりました。
総評としては、物語は凡庸で演出も凡庸。格闘シーンもクライマックスに2つほどあるだけですが、ルーシーとダカスコスの共演にどれだけ価値を感じるかが評価の分かれ目…かもしれません。

『Bloodfist II』

2011-05-07 23:39:07 | マーシャルアーツ映画:中(1)
Bloodfist II
製作:1990年

●兄の仇を討ち、数々の死闘を繰り広げた闘いから1年後…ドン・ザ・ドラゴン・ウィルソンは現役キックボクサーとして復帰を果たし、モーリス・スミスをセコンドに迎えて闘い続けていた。だが、ヘビー級のタイトルマッチで対戦相手を死なせてしまい、再びボクサーを辞めることを決意する。それから暫くして、ドンの元にモーリスから「マニラへ来られないか?」と連絡が入り、再び因縁の地を踏みしめる事となった。
 ところが、モーリスから指定された道場で謎の集団に襲われ、ドンは捕らえられてしまう。気付くとそこは船の中で、先の道場にいたファイターたちも捕まっていた。奇妙な島に連行された彼らを待ち受けていたのは、島に居を構える大富豪ジョー・マリ・アヴェラナ(前作とは違う役)と悪に染まったモーリスの姿であった。彼らは、誘拐したファイターと子飼いの戦士を古代ローマの剣闘士のように、死ぬまで闘わせて楽しんでいたのだ。
連行される寸前に脱出したドンは、ファイターたちを解放させようとするが失敗。奮闘むなしく戦いに駆り出されてしまう。しかも分の悪いことに、敵側の戦士たちは特殊なステロイドで強化され、並大抵の力では敵わないほど強くなっていた。負ければ死、勝っても場合によっては殺されるという理不尽な状況の中、ドンたちは必死に闘い続けていくが…。

 前回紹介した『Bloodfist』の正当な続編ですが、今回は路線を『キックボクサー』から『燃えよドラゴン』へと変更。ストーリー性はかなり希薄で、兄の仇討ちと格闘トーナメントという大筋のあった前作とは打って変わって、ただ単に闘って終わるだけの話に退化しています。思わせぶりに登場したヒロインのリナ・レイエスもパッとしないし、敵の悪事も月並みな物でしかありません。
しかし、それだけに格闘アクションは徹底しているので、個々のアクションシーンは前作以上に充実しています。『Bloodfist』では3人の格闘チャンプが起用されていましたが、本作では一気に5人以上に増員されていて、アクションを追っていくだけでも十分に楽しめます。
 味方のファイターには『シンデレラボーイ』で主人公の父を演じたティモシー・D・ベイカー(空手の世界王者)、リチャード・ヒル(この人も空手チャンピオン)、香港映画にも出演経験したモンスー・デル・ロサリオ(フィリピンのテコンドー王者)、キックボクシング世界クルーザー級王者のジェームス・ワーリング等々…一方の敵サイドには実際にドンと試合で闘ったキックボクシングヘビー級チャンプのモーリス以下、前作にも出たクリス・アグラーら強豪が名を連ねているのです。
これでいつものドン作品なら間延びした殺陣になりそうですが、そうはなっていないのが本作のいいところ(ドン作品にとっては相当に凄い事です)。主役のドンを筆頭に全員が白熱したバトルを見せ、クライマックスのドンVSモーリスも良い勝負になっていました。ただ、『燃えよドラゴン』を元にしているので、最後はもちろん大乱闘→主人公が黒幕を追い詰めるという展開になりますが、普通のおっさんであるアヴェラナがラスボスを務めるのは無理がありすぎたような…(爆

『Bloodfist』

2011-05-03 23:43:22 | マーシャルアーツ映画:中(1)
Bloodfist
製作:1989年

▼というわけで今月は国内未公開・未ソフト化の格闘映画特集なのですが、一番手はいきなりドン・ザ・ドラゴン・ウィルソンです(爆)。ドンの主演作といえば本物の格闘技チャンピオンをたくさん起用している反面、アクションは非常にユルいことで知られています。
しかし本作は彼の初主演作であり、その後の作品とは一味違った内容となっていました。用意されている格闘チャンピオンが、それぞれ印象が被らないようなキャラクターになっていること。そして格闘シーンの出来がその後の作品と比べて良い(!)ことなど、初主演作だけあって気合の入った作品に仕上がっているのです。
このへんはドンを売り出そうとするロジャー・コーマンの思惑が見えますが、監督がゴキブリ映画『ザ・ネスト』のテレンス・H・ウィンクレスなのは何故?(笑

■物語は元キックボクサーのドンが兄の死を知るところから始まる。遺体が発見されたマニラに飛んだドンは、遺骨となった兄と悲しみの再会を果たすが、肝心の犯人はまだ逮捕されていないという。手がかりは現場に残された真赤な胴着のみ…ドンは単独で犯人探しを始め、ある格闘大会でその胴着が使われていることを突き止めた。
しかし部外者が立ち入るのは難しく、彼個人ではどうにもならないようだ。そこで武術の達人ジョー・マリ・アヴェラナの協力を受け、出場するための特訓を決行。かくして兄を殺した犯人を突き止めるため、リング上を舞台に死闘が始まるのだが、事の黒幕は意外な所に潜んでいた…!

▲本作を見て気付いたのは、話が『ストリートファイター2050』に酷似しているという点です。
主人公が異郷の地で兄の死を知ってトーナメントに出る・主人公の友人となったファイターが最強の敵の噛ませ犬となって死ぬ・ヒロインがストリッパー(踊り子)・そして最後のどんでん返しに至るまで、基本となる設定から粗筋までがほぼそのままになっています。どちらの作品にもアヴェラナが出ているところを見ると、もしかしたら『ストリートファイター2050』は本作のリメイクだったのかもしれません。
話の発端が兄がらみの話になっているあたりは『キックボクサー』『キング・オブ・キックボクサー』を意識しているようで微笑ましく、作品そのものも意外と悪くありません。そして先述した通り、格闘アクションにおいても及第点以上のバトルが繰り広げられ、ドン作品らしいモタつきはほとんど感じられませんでした。
 中でもトーナメントでの勝負は白眉で、3人の強豪とドンが熱い戦いを展開しています。まず最初の相手はキックの帝王と呼ばれたキックボクシング世界王者ロブ・カーマン!彼はヴァンダム映画に出演した経歴を持ち、本作ではドンとリアルなキック合戦を見せてくれます。そして2回戦があっさり終り、3回戦の相手としてあのビリー・ブランクスが登場するのですが、動きがキレキレすぎてドンが思いっきり食われています(苦笑
そして最後の相手は友人を殺した極悪ファイターのクリス・アグラー(南アジアのキックボクシングチャンピオン)…なんですが、このときドンは薬を仕込まれて意識が朦朧としているため、あまりいい勝負になっていません。最終的にドンが猛烈なキック連発で勝つのですが、ここまで好勝負が続いていただけに、そしてクリスが太い体格のわりに動けていただけに、ガチンコで闘うファイトにならなかったのは勿体ない気がしました。
全体的にこれといって目立った点は無いものの、初主演作としては手堅くまとまっている佳作。さらにドンは本作と同じ役柄で続編にも出ることになるのですが、この詳細は次回にて!

『オーバーヒート・プリズン』

2011-04-19 23:24:46 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「オーバーヒート・プリズン」
原題:Forced To Fight/Bloodfist III: Forced To Fight
製作:1991年

●前回に引き続いて、今回も先月紹介出来なかった監獄アクション映画の紹介です。次回からは通常通りの更新に戻りますが、5月の特集も現在計画進行中だったりします。詳しい内容は月末の更新履歴で触れるので、今度は中断しないよう頑張りたいと思っています。

 さて、ちょっとイマイチな作品レビューが続いてしまいましたが、本日登場するのはドン・ザ・ドラゴン・ウィルソン主演作の中でも力作…かもしれない1本です(作品としては彼の看板シリーズである『Bloodfist』の第3弾という位置付けですが、実際はクランクアップ後にナンバリングされた後付的なタイトルだったとか)。
ストーリーは実に単純明快で、無実の罪で逮捕されたドンが囚人グループのリーダーたちと対立し、同室の模範囚リチャード・ラウンドトゥリーやメガネ君と親しくなるものの、最終的には悪徳署長との闘いに挑む!というお話です。もちろん、ドンの親友となったメガネ君は悪党に殺され、クライマックスでは囚人たちの反乱が起きたりと監獄アクションのお約束はバッチリと押さえられています。
 しかし本作はそれだけではなく、各キャラクターの個性や動向をきちんと描写しており、それなりに盛り上がる作りとなっているのです。ややご都合主義的な所もありますが、中盤でリチャードがドンを敵視していたグループを説得し、そのまま和解してしまうという展開などは意外性がありました。
ただ、ラスボスとして立ちはだかるリック・ディーン(白人グループの長)とグレゴリー・マッキーニ(黒人グループのリーダー)がそれほど強くなく、ラストバトルがあまり燃えないものとなっています。ラスボスがザコ同然というのは非常に残念ですが、そのかわりドン作品恒例の格闘技チャンピオンが光っていました。

 中盤、トレーニングに励んでいるドンに白人グループが襲いかかるのですが、ここで"ザ・マン"ことスタン・ロンギニディスが現れます。スタンはオーストラリア出身のキックボクサーで、何度も世界王座に君臨した実力派。過去には来日してK-1のリングに上がり、佐竹雅昭やアンティ・フグらとも対戦経験があります。ドンとは『キング・オブ・キックボクサー2』でも共演し、本作ではハイスピードな蹴りの応酬を見せていました(心なしかドンの動きも生き生きとしていた気がします)。
全体的な感想としては、ドラマとアクションは淡白な作風ではあるものの、程よくアクセントが利いていた佳作…といったところでしょうか。ところで本作にはもう1人、こちらもキックボクサーの強豪で『検事Mr.ハー』にも出演したピーター・カニンガムも出演しているのですが、何故かこちらは完全にザコ扱い。老囚人グループの庭を襲い、ドンの前に躍り出たところをワンパンチで倒されるという悲惨な役柄でした(涙

『奪還 DAKKAN アルカトラズ』

2011-04-15 21:33:16 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「奪還 DAKKAN アルカトラズ」
原題:HALF PAST DEAD
製作:2002年

●前の更新から随分と時間が空いてしまいましたが、皆さんお元気だったでしょうか?1ヶ月近く休んでいた当ブログも今回から通常営業に戻りますので、また宜しくお願い致します!
ところで、先月の『ブルージーン・コップ』を最後に監獄アクション特集は中断することにしましたが、このまま終わるのも忍びない…。というわけで、掲載するはずだった記事を2本ほど紹介してみたいと思います(もう1本は次回にて!)。

 今回はヴァンダムの対抗馬、スティーブン・セガールの登場です。しかし彼は今まで単身で数々の巨大組織を陥落させてきたため、普通に刑務所で闘っていると10分で壊滅させかねません。そこで本作では監獄モノの王道パターンを一切使わず、刑務所に謎の敵が現れるという新機軸を用意しています。これなら映画1本くらいの時間は稼げますし、囚人VS第三者という図式も斬新に見えます。
また、本作には香港から『刀/ブレード』『天地大乱』の熊欣欣(チョン・シンシン)が参加し、香港映画的なアクションスタイルを加味しています。その他にも『暴走特急』で気のいい相棒だったモリス・チェスナットが大ボス役で出演していたりと、ファンには嬉しいサプライズが幾つか見られます。あとはセガールが香港アクションと合致し、どれだけ暴れてくれるかが問題なのですが…。

 相棒のジャ・ルールと共に自動車泥棒をしていたセガールは、FBIとの銃撃戦によって重傷を負ってしまう。それから八ヵ月後、一命を取り留めた彼は新装開店したアルカトラズ刑務所へと収監され、ルールとそこで再会を果たした。そのころ、同刑務所では五億ドルの金塊を盗んだブルース・ウェイツの死刑が始まろうとしていたが、そこに武装した集団が現れる。彼らはウェイツが隠した金塊をモノにしようと企んでいて、同席していた裁判官たちを人質に篭城を決め込んだ。何とか難を逃れたセガールは、すぐさま反撃へと転じる!
…と、ストーリーについてはたったこれだけで、良くも悪くもセガール映画といった感じの内容です。主軸となるセガール&ルールの友情物語は悪くないのですが、それ以外のキャラクターに関しては描写が少なく、終始おざなりな描き方になっていました。期待していた囚人VS武装集団のバトルもあまり無く、終盤になってようやく銃撃戦が始まる程度だったのもマイナス要因となっています。

 ただし、格闘アクションはそれほど数はありませんが、熊欣欣のおかげか通常のセガール映画よりひとつ上のレベルに達していました。セガールは前半にザコ2人を得意の腕さばきで制し、鎖にぶら下がりながらモリスと蹴り合ったりと奮闘!相棒のルールも各所で意外といい動きを見せています。特に面白かったのはルールVS敵の女幹部で、窮屈な地下通路で香港映画チックな攻防戦を繰り広げていました。
惜しむらくは終盤の展開で、素手のファイトが一切無いまま銃撃戦やヘリコプター大爆破で終わるという薄味すぎるラストになったこと。やはり最強無敵なセガールを監獄に繋ぎ止めるのは至難の業、縛られぬからこそセガールは強いということなのでしょう…。ところで、モリスは『暴走特急』で脇役ながら敵のヘリを奪うという活躍を見せていましたが、本作ではそんな彼がヘリで死ぬという正反対の画が見られます(笑

『おしゃれイズム』スタローン&ドルフ出演の一幕

2011-01-24 23:50:17 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「おしゃれイズム」
製作:2010年

●(※画像は『エクスペンダブルズ』のものです)
 昨年、『エクスペンダブルズ』の公開に合わせてシルベスター・スタローンとドルフ・ラングレンが来日を果たしましたが、今回はそのとき2人が出演した番組からこちらをピックアップ致します。この『おしゃれイズム』というのは『おしゃれカンケイ』の後番組で、司会進行はくりぃむしちゅーの上田と森泉&藤木直人。前回に続いて再びくりぃむしちゅーが出ているのは偶然でしょうか(笑
とはいえこの番組、『ズバリ言うわよ!』のようにゲストへ無茶振りをするようなことも無く、ごくごく普通のトーク番組であるため、これまで紹介してきた作品と違って興味深い内容は殆ど見受けられません。しかしスタローンとドルフによる掛け合いはかなり面白く、爆笑必至の場面が次々と繰り広げられていました。こないだのジャッキーがずっとマイペースで通していたのに対し、本番組の2人は実にフランクでとても好感が持てます(ちなみに通訳は翻訳家の戸田奈津子女史)。

 まず最初はレギュラーの前にスタローンとドルフが姿を見せるのですが…で、デカい!スタローンはそうでもないのですが、ドルフが頭ひとつ違います。当初、私は日本のテレビ番組にドルフが出演する事を楽しみにしていましたが、同時にドルフそっちのけで番組が進んでしまうのでは…とも懸念していました。しかしドルフはギャグを飛ばしたり積極的にトークへ絡んできたりと、スタローンにも負けず劣らずのフリーダムっぷりを発揮!さながらコンビ漫才のようでドルフ自身も実に楽しそうでした。
さて、森泉に胸を触られてスタローンが「アォ!」と喘ぐ一幕を挟みつつ(笑)、いきなりスタローンが上田に「李連杰の代わりに続編へ出ない?」と言い出します。もちろんこれはシャレなのですが、有田に続いて上田まで大スターからオファーを受けるとは、何だか不思議な縁を感じます。また、ドルフが極心空手の演舞を見せるという場面もあり、「コォォ…」と低い呼吸をする横でスタローンがわざと吐きマネをするなど、始まって間もないのに2人の暴走が止まりません(爆
なんとか落ち着いてトークになりますが、スタローン曰く「(『エクスペンダブルズ』の撮影は)ランボーの時よりも疲れた」とのこと。スティーブ・オースティンとの絡みで骨折した事にも触れていて、怪我繋がりで話題は『ロッキー4』へと移ります。この作品でもスタローンは大怪我をしたそうですが、現金な彼は「4日間入院したけどヒットしたからいいや」と発言(苦笑)。また、同作へドルフが出演した経緯について、ドルフ本人は「もう覚えてない」と言う一方でスタローンが「彼は僕に泣いて頼んできたよ」と返すなど、もう完全にコンビ芸人状態です。

 若干スタローンが突っ走り気味ですが、ドルフだって負けてはいませんでした。『エクスペンダブルズ』の役柄についての質問で、「俺はクレイジーなスウェーデン人の役で…」と言いかけたところで、上田が「つまり素で出たんですね」と毒のある返しをしますが、その発言をちゃっかり戸田女史が翻訳(たぶん確信犯)。そこでドルフは上田…ではなく近くにいた藤木に襲い掛かったりするなど、終始和やかなムードで進みます。
ですが、終盤に突然何の脈絡も無くケン玉の達人という少女が登場し、トークそっちのけで彼女の独壇場になってしまいました。個人的にはもっと2人のユニークな絡みが見たかっただけに、これはちょっと残念です。スタローンも何とか合わせてくれていましたが、明らかにドルフはつまらなそうでしたし…(苦笑
 そんなわけで最後は尻すぼみでしたが、スタローンとドルフのバラエティに富んだトークで十分お釣りが来る内容でした。なお、番組中に続編の話題が出てきましたが、imdbによるとキャストが少しずつ固まってきたようです。主要メンバーは前作とほぼ同じで、今のところ噂されているセガールやヴァンダムの名前は無し。それより驚くべきは出演予定に楊斯(ボロ・ヤン)が名を連ねている事でしょう。
楊斯といえば、最近では『鉄拳』の三島平八役をオファーされていた事もありましたが(後にケリー・ヒロユキ・タガワに変更)、これが実現したら映画出演は実に5年ぶりとなります。果たして楊斯は出るのか否か?出るとしたら李連杰やジェイソン・スティサムとの絡みはあるのか?また今回もゴネているらしいヴァンダムやセガールは出演するのか?今から来年公開の『The Expendables 2』が楽しみでなりません!