「ラスト・キョンシー」
「キョンシー・セブンキッズ」
原題:靈幻七小寶/靈幻七小子/哈哈小疆屍
英題:Aloha Little Vampire Story/The Cute Vampire
製作:1988年
▼多くの名作を送り出し、台湾映画界に大きな功績を残した巨匠・李作楠(リー・ツォナン)。彼が作る作品は、一筋縄ではいかないストーリーと高度な功夫アクションが持ち味で、郭南宏(ジョセフ・クォ)作品と共に功夫映画ファンからは全幅の信頼を得ている。攻防戦に重点を置いた『鷹爪興蟷螂』、不戦の誓いを立てた男が闘う『勾魂針奪魂拳』、棍術を題材した『セイント・スティック/怒りの聖拳!』等々…どれも傑作と呼ぶに相応しいタイトルばかりだ。
だが、功夫片の時代を過ぎた80年代中期ごろから、李作楠は突然失速してしまう。ニンジャ映画ブームの際には、『地獄のニンジャ軍団・クノイチ部隊』のような見世物小屋的な作品を撮り、以後は羅鋭(アレクサンダー・ルー)作品に参加。キョンシー映画ブームになると、『妖魔伝』『新・桃太郎3』等を手掛けるが、どれもこれも傑作と呼ぶには程遠いものばかり。時折、キラッと光る物を見せる事もあるが、功夫片を作っていた頃と比べるとあまりにもレベルが違いすぎるのだ。
時代が移り変わる中で、流れに乗り切れなかった映画人は大勢いる。しかし、李作楠は時代の主流に乗ろうとせず、ニンジャやキョンシーに固執するという奇妙な行動を見せている。単に「落ちぶれた」という一言では語れない李作楠の動向…果たして、彼は何を思ってこれらの作品群を作っていたのだろうか?
■ある日の夜、キョンシーたちの宴で大人のキョンシーが大ゲンカを繰り広げ、ウンザリしたベビーキョンシー・鄭泰祐が家を飛び出してしまった。
鄭泰祐は山で遊んでいた陳彦儒(『新・桃太郎3』では羅鋭の息子を演じる)たちと出会い、なんだかんだで次第に親睦を深めていく。一方、街の名士・常山(!)は吸血鬼になった男を救うため、子供のキョンシーの血を欲していた。この常山が雇った道士…の息子が陳彦儒とケンカしたことから、道士に鄭泰祐の存在が発覚してしまう。
こうして鄭泰祐は、彼の血を狙う道士&連れ戻そうとする大人のキョンシーの双方から狙われる羽目になった。鄭泰祐は混乱を避けるため、陳彦儒たちと一緒に町から脱出を試みるのだが、道士と大人のキョンシーは追及の手を緩めようとはしなかった。
野を越え山を越え、時にはアクシデントに遭遇しながらも、鄭泰祐を生家へと送り届けようとする子供たち。しかし、鄭泰祐は皆に迷惑をかけまいと、陳彦儒たちの元から去ってしまった。陳彦儒は鄭泰祐を追いかけるのだが、行く手には道士のワナが待ち構えていた…。
▲本作は李作楠と荘胤建の共同監督作であるが、内容はそれほどはっちゃけた物ではなく、ごくごく普通の子供向けキョンシー映画となっている。前半はよくあるキョンシーもののドタバタ劇で、後半からは子供たちの逃避行を描いており、便乗作品としては良心的な部類に入る。
ただ、太陽が苦手である・人間の血を好む・息を止めたら襲ってこない…といったキョンシーの基本設定は完全に忘れ去られているので、キョンシー好きにはちょっと辛いかも?ちなみにラストで常山が悪人であり、道士を騙していたという説明がなされるのだが、常山が何をやりたかったのか解らないまま終わっている。一応、このへんのどんでん返しは李作楠らしいと言えばらしい気はするが…。
そんなわけでストーリー面にアラがあり、とても李作楠の作とは思えない代物になっている本作。しかし、武術指導が羅鋭&李海興であるため、功夫アクションだけは妙に気合が入っているのだ。ラストでは大人のキョンシーVS常山一味のバトルが展開されるが、常山は当たると爆発する電磁グローブを着用し、途中からバリバリ動ける吸血鬼までもが参戦!正直言って、ここだけ羅鋭作品みたいになっちゃってて浮いてます(笑
データベースサイトでは荘胤建の単独監督作として扱われているので、本作を李作楠の監督作だと断定していいのか微妙だが(ただしオープニングではしっかりと導演:荘胤建&李作楠と表記されている)、少なくともキョンシー映画としては悪くない作品だ。李作楠作品とは思わないで、単なるキョンシー映画の便乗作品として見れば、そこそこ楽しめるかもしれない。
「キョンシー・セブンキッズ」
原題:靈幻七小寶/靈幻七小子/哈哈小疆屍
英題:Aloha Little Vampire Story/The Cute Vampire
製作:1988年
▼多くの名作を送り出し、台湾映画界に大きな功績を残した巨匠・李作楠(リー・ツォナン)。彼が作る作品は、一筋縄ではいかないストーリーと高度な功夫アクションが持ち味で、郭南宏(ジョセフ・クォ)作品と共に功夫映画ファンからは全幅の信頼を得ている。攻防戦に重点を置いた『鷹爪興蟷螂』、不戦の誓いを立てた男が闘う『勾魂針奪魂拳』、棍術を題材した『セイント・スティック/怒りの聖拳!』等々…どれも傑作と呼ぶに相応しいタイトルばかりだ。
だが、功夫片の時代を過ぎた80年代中期ごろから、李作楠は突然失速してしまう。ニンジャ映画ブームの際には、『地獄のニンジャ軍団・クノイチ部隊』のような見世物小屋的な作品を撮り、以後は羅鋭(アレクサンダー・ルー)作品に参加。キョンシー映画ブームになると、『妖魔伝』『新・桃太郎3』等を手掛けるが、どれもこれも傑作と呼ぶには程遠いものばかり。時折、キラッと光る物を見せる事もあるが、功夫片を作っていた頃と比べるとあまりにもレベルが違いすぎるのだ。
時代が移り変わる中で、流れに乗り切れなかった映画人は大勢いる。しかし、李作楠は時代の主流に乗ろうとせず、ニンジャやキョンシーに固執するという奇妙な行動を見せている。単に「落ちぶれた」という一言では語れない李作楠の動向…果たして、彼は何を思ってこれらの作品群を作っていたのだろうか?
■ある日の夜、キョンシーたちの宴で大人のキョンシーが大ゲンカを繰り広げ、ウンザリしたベビーキョンシー・鄭泰祐が家を飛び出してしまった。
鄭泰祐は山で遊んでいた陳彦儒(『新・桃太郎3』では羅鋭の息子を演じる)たちと出会い、なんだかんだで次第に親睦を深めていく。一方、街の名士・常山(!)は吸血鬼になった男を救うため、子供のキョンシーの血を欲していた。この常山が雇った道士…の息子が陳彦儒とケンカしたことから、道士に鄭泰祐の存在が発覚してしまう。
こうして鄭泰祐は、彼の血を狙う道士&連れ戻そうとする大人のキョンシーの双方から狙われる羽目になった。鄭泰祐は混乱を避けるため、陳彦儒たちと一緒に町から脱出を試みるのだが、道士と大人のキョンシーは追及の手を緩めようとはしなかった。
野を越え山を越え、時にはアクシデントに遭遇しながらも、鄭泰祐を生家へと送り届けようとする子供たち。しかし、鄭泰祐は皆に迷惑をかけまいと、陳彦儒たちの元から去ってしまった。陳彦儒は鄭泰祐を追いかけるのだが、行く手には道士のワナが待ち構えていた…。
▲本作は李作楠と荘胤建の共同監督作であるが、内容はそれほどはっちゃけた物ではなく、ごくごく普通の子供向けキョンシー映画となっている。前半はよくあるキョンシーもののドタバタ劇で、後半からは子供たちの逃避行を描いており、便乗作品としては良心的な部類に入る。
ただ、太陽が苦手である・人間の血を好む・息を止めたら襲ってこない…といったキョンシーの基本設定は完全に忘れ去られているので、キョンシー好きにはちょっと辛いかも?ちなみにラストで常山が悪人であり、道士を騙していたという説明がなされるのだが、常山が何をやりたかったのか解らないまま終わっている。一応、このへんのどんでん返しは李作楠らしいと言えばらしい気はするが…。
そんなわけでストーリー面にアラがあり、とても李作楠の作とは思えない代物になっている本作。しかし、武術指導が羅鋭&李海興であるため、功夫アクションだけは妙に気合が入っているのだ。ラストでは大人のキョンシーVS常山一味のバトルが展開されるが、常山は当たると爆発する電磁グローブを着用し、途中からバリバリ動ける吸血鬼までもが参戦!正直言って、ここだけ羅鋭作品みたいになっちゃってて浮いてます(笑
データベースサイトでは荘胤建の単独監督作として扱われているので、本作を李作楠の監督作だと断定していいのか微妙だが(ただしオープニングではしっかりと導演:荘胤建&李作楠と表記されている)、少なくともキョンシー映画としては悪くない作品だ。李作楠作品とは思わないで、単なるキョンシー映画の便乗作品として見れば、そこそこ楽しめるかもしれない。