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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『陰陽血滴子』

2011-07-11 21:20:35 | カンフー映画:佳作
陰陽血滴子
英題:The Fatal Flying Guillotines
製作:1977年

▼さて、ここまで黄家達(カーター・ウォン)の正統派な出演作をいくつかピックアップしてきましたが、彼は珍妙なB級映画にも幅広く顔を見せています。そこで今回は黄家達が出演した珍品の中で、最もヤバいと言えるかもしれないこの作品の紹介です(笑
本作はタイトルにもなっている暗殺武器・血滴子が大々的に登場します。別名を空とぶギロチンと言い、相手の頭に被さって首を刎ねてしまうという恐ろしい武器です。これまで様々な功夫映画で猛威を振るってきた血滴子には、大きく分けて2つの種類が存在しました。1つはショウブラザーズ作品『空とぶギロチン』に代表される鉄で成型されたタイプ、もう1つは『片腕カンフー対空とぶギロチン』で有名な携帯タイプです。
『死霊のえじき』『Kill Bill』で世界進出を果たし、ショウブラ版のリメイク作『血滴子』の公開も控えている血滴子。本作ではどちらのタイプが登場するか気になるところですが…?

■功夫使いの青年・黄家達は母の病気を治すため、妙薬の書を収蔵している少林寺を訪れていた。門外不出の書を借り受けるべく、彼は徒手格闘や棒術陣などの試練に次々とチャレンジ。最後の高僧・陳少鵬との対戦も、二度目の挑戦でようやくクリアする事ができた。ところが、帰宅途中に黄家達が謎の刺客に襲われ、さらには妙薬を飲んだ母が急死してしまったのだ。
当然、黄家達は激怒して少林寺に乗り込んできた。館長が調べてみると、清朝のスパイであった陳少鵬の仕業だということが発覚(黄家達を襲った刺客もこの男)。追い詰められた陳少鵬は自害し、彼の死を知った黒幕の第4皇子・陸柱石は悔しさに顔を歪めるのだった。
 この陸柱石、実は今回の一件とは別にある物を欲していた。2つの血滴子を操る陳星(チン・セイ)が持つ、重要書類を捜し求めていたのである。陳星は近付く者なら誰だろうと首をハネてしまうという恐ろしい男だ。張力・高強・徐忠信ら武芸者たちは陳星討伐隊を組み、黄家達もなぜかこれに参加した。しかし洞窟に仕掛けられた罠やダブル血滴子によって、仲間たちは黄家達を残して全滅を喫してしまう。
その翌日、黄家達に先んじて陳星と接触していた朝廷の使者たち(うち1人が孟海)が、和平を結ぶフリをして陳星に襲いかかっていた。連中はすぐに蹴散らされたが、特殊な器具によって血滴子は封じられてしまう。これ幸いと陳星に挑む黄家達だが、この戦いで最後に笑ったのは意外な人物だった…。

▲台詞やナレーションが多く、ちょっと理解しにくい部分が多々ありましたが、噂に違わぬド直球のイロモノ映画でした(笑
まずもって凄いのが本作に登場する血滴子です。漆黒の鋼鉄製ボディに大きな突起が生えており、先述したどのタイプとも違った外見をしています。そして、装備された首狩り用の刃は機械的な音を立てて高速回転し、投げれば慣性の法則を無視して獲物を追い続ける追跡機能まで装備!もうこれ血滴子じゃないよ!(爆
 しかもこのアイアン血滴子(勝手に命名)、出し惜しみをせずにポンポン繰り出されるので、首を飛ばされる犠牲者の数も相当数に上ります。ストーリーはまたも雍正帝を扱った話のようですが、アイアン血滴子のインパクトがあまりにも強烈過ぎるため、最後のどんでん返しもあまり印象に残りませんでした。
しかし、功夫シーンについてはベテラン武術指導家である陳少鵬の手により、水準以上の完成度を保っています。どのファイトもスピード感のある殺陣に仕上がっていて、ラストのアイアン血滴子を交えた黄家達VS陳星も実にスリリングです。でも、最後の結末は後味が悪かったなぁ…。
本作のようなB級映画からクラシカルな武侠片まで、黄家達は多くの作品で経験を積みました。そうして大成した彼は、恩師である郭南宏(ジョセフ・クオ)の新作へ満を持して出演します。黄家達と郭南宏、そして期待の武術指導グループ・袁家班。彼らが出会う時、台湾の功夫映画に新たな歴史が刻まれるのです(次回へ続く!)

『少林寺炎上』

2011-07-07 22:53:00 | カンフー映画:佳作
「少林寺炎上」
原題:火燒少林寺
英題:The Blazing Temple
製作:1976年

▼李小龍が没して間もない1975年ごろから、黄家達(カーター・ウォン)は台湾での仕事をこなしていくようになります。そこで彼は、様々な武侠片を世に送り出してきた台湾きっての巨匠、郭南宏(ジョセフ・クオ)と出会いました。郭南宏の監督作『少林寺への道』に出演した黄家達は、その暑苦しいまでの熱演で注目を浴び、多くの功夫・武侠片に出演します。
本作はそんな彼が台湾時代の初期に出演した作品の1つで、監督はもちろん郭南宏。当時の台湾功夫スターが勢揃いしたオールスター大作で、その規模は台湾映画とは思えないほど大きく、豪華なセットや多量のエキストラが投入されています。物語は「雍正帝と少林寺焼き討ち」というお馴染みの話ですが、数々のスターの中から黄家達が主役として抜擢されているあたりに、彼に対する郭南宏の期待の大きさが窺えます。

■稀代の暴君・雍正帝(易原)は、朝廷に反抗する少林寺が目障りでならなかった。彼の学友である嘉凌(ジュディ・リー)も謀反を起こし、激怒した雍正帝は少林寺の焼き討ちを強行。砲撃の雨が降り注ぐ中、少林僧の張翼(チャン・イー)たちは十八銅人に挑戦して下山を、黄家達たち残りの門弟は禁じられた抜け道からの脱出を試みた。
館長や高僧たちが犠牲になりながらも、なんとか生き延びた少林僧たち。彼らは雍正帝への復讐を誓うが、雍正帝もまた少林僧の皆殺しを目論んでおり、仲間の金剛(カム・カン)が討たれてしまう。少林僧たちはさっそく雍正帝の暗殺に乗り出すが、皇帝の影武者に惑わされて衛子雲(ビリー・チャン)が落命。この暗殺失敗の際、無傷で帰ってきた黄家達にスパイ疑惑が向けられるが、本当のスパイは仲間の1人・唐威であった…。
 隠れ家を追われて後の無くなった少林僧たちは、遂に雍正帝の根城へと突入する。そこで裏切り者の唐威と出会うが、彼は「これは皇帝に近付くための演技だ」と言う。張翼たちは唐威の言葉を信じて動くのだが、すぐに周囲を敵兵に囲まれてしまった。やはり裏切り者は裏切り者か?しかし、まともに闘えるのが黄家達だけとなったその時、姿を現した雍正帝の体を唐威の毒矢が貫いた!
すべては皇帝を倒す決定打を与えるために、憎まれ役を買って出た唐威の策だったのだ。張翼と唐威の死を乗り越え、ただ1人で雍正帝とその軍団を相手取る黄家達。果たして、彼は憎き暴君を倒す事が出来るのか!?

▲郭南宏の監督作といえば、裏切りやヘンテコ銅人などのイメージが先行しがちですが、本作は正統派の少林寺映画として仕上がっていました。嘉凌と雍正帝の確執から幕を開け、ミニチュアセットを交えて描かれる大規模な焼き討ちシーン、ツッコミどころ満載の脱出シークエンス、そしてクライマックスにおける男の友情など、最初から最後まで見せ場が詰まっています。
また、それぞれのキャラクターの立たせ方も見事で、個人的には冷静なリーダーとして戦い抜いた張翼に一番魅力を感じました。一方、黄家達は演技面ではそれほど印象に残りませんが、ラストでは大勢の敵を相手に大立ち回りを展開!肝心なところは突然現れた嘉凌に奪われてしまいますが(苦笑)、決めるところはしっかり決まっていたと思います。
『少林寺への道』を経て、黄家達は郭南宏作品の花形俳優として各個たる地位を築きました。それと同時に、いつしか彼は台湾映画界を代表する功夫スターにまで成長していきます。黄家達にとって、郭南宏とその監督作に出演したことが人生のターニングポイントとなったのです。両者の関係はしばらく続き、最後にタッグを組んだ作品は功夫片史上に残る傑作と呼ばれる事になります。次回はその傑作功夫片…の前に、台湾映画らしい衝撃的なイロモノ映画をひとつ紹介いたします。(次回へ続く!)

『戰龍/搏撃英雄』

2011-06-11 23:31:43 | カンフー映画:佳作
戰龍/搏撃英雄
英題:Death Cage
製作:1988年(1991年説有り)

●タイで行われる格闘マッチに参戦していた仇雲波(ロビン・ショウ)は、海外ジムの金相旭(『紅い愛の伝説』の敵幹部)と接戦を繰り広げていた。しかし凶器攻撃によって彼とトレーナーだった父が負傷し、敗北の末に道場を乗っ取られてしまう。
そんな彼らの元に、父の戦友である龍冠武(ジャック・ロン)が娘を伴って来訪した。思い出を語りあう父と龍冠武…だったが、その背後で海外ジムによる嫌がらせが始まっていた。どうも連中は完全に相手を潰さないと気が済まないようで、仇雲波の妹を誘惑するなどして妨害を続けていく。そこで仇雲波は再戦に向けて特訓を始め、海外ジムもこれを受けて立った。
 案の定、敵は試合前に一服盛るという汚い手を使ってきたが、2度も負けるような仇雲波ではない。金相旭を倒し、妹をたぶらかしたスティーブ・タータリア(『ワンチャイ/天地黎明』で元彪と闘った白人)も一蹴!見事に前回の雪辱を晴らして、奪われたジムを取り戻してみせたのだった。
だが、この結果に激怒した海外ジムは刺客を差し向けて仇雲波を襲撃し、龍冠武が殺されてしまう。そして連中は図々しくも、竹組みドームでのデスマッチを挑んできた。仇雲波たちは正々堂々と試合に臨むが、海外ジムは仇雲波の父を誘拐するという強攻策を実行。最終的に父親は人質にされる事なく帰されたが(じゃあなんで誘拐したんだよ!)、果たしてこの死闘を制するのは誰なのか!?

 ニンジャ映画とマッハ功夫で知られる戴徹(ロバート・タイ)が、世界的な功夫映画ファンのトビー・ラッセルと組んで製作したキックボクサー?映画です。作品の雰囲気はヴァンダムの『キックボクサー』に似ていますが、あちらが製作されたのは1989年。ラストの竹組みドームは『キング・オブ・キックボクサー』に酷似した物が出ていますが、実は本作の方が早かったりします。
ことストーリーに関してはシンプルで、戴徹らしいツッコミどころ満載の楽しい作品に仕上がっていました。作品のテイストは羅鋭(アレクサンダー・ルー)のニンジャ映画とほぼ同じですが、過剰なお色気シーンや早回しアクションは省かれ、スッキリとした内容になってます。かつての濃すぎるニンジャ映画が苦手な方でも、これなら安心して視聴できるはずです。まぁ、相変わらず血はドバドバ出るんですが(笑
 さて、戴徹といえばニンジャ映画などで見られる現実離れしたアクションが持ち味ですが、本作ではノーマルな格闘戦に徹しています(武術指導は羅鋭と戴徹)。それでいて殺陣のテンポは安定していて、地に足を着けたファイトが見られます。敵の海外ジムには金相旭&スティーブを筆頭に、トビー・ラッセルやジョン・ラダルスキーなどが参加。トビーの意外な動きの良さに驚きましたが、彼とジョンは仇雲波と闘わなかったので、そのへんはちょっと残念でした。
しかし本作での最も特筆すべき点は、ラスボスが『ジャガーNo.1』のジョー・ルイスだという事です。ルイスが格闘シーンを見せるのは最後だけですが、バトルでは年の割りにバリバリ動いて健在ぶりをアピール!ここだけでも格闘映画ファンは必見といえます。ところでHKMDBによると、本作のプロデューサーは羅維(ロー・ウェイ)なのだそうですが…本当かなぁ?

『神腿』

2011-02-22 23:34:41 | カンフー映画:佳作
神腿
英題:The Mar's Villa/Wu Tang Magic Kick
製作:1979年

●ある日、突如として現れた邪悪な武術家・高飛(コー・フェイ)とその一味によって、静かな町の平穏は一瞬にして破られた。町の名士であり功夫の達人、そして自分の道場を荒らされた劉忠良はリベンジに燃えるが、死闘の果てに高飛を殺してしまう。妻である唐寶雲はこのことを憂い、劉忠良は無闇に闘わないことを仏前に誓うのだった。
そんな彼らの元に、高飛の息子・董[王韋](トン・ワイ)が現れる。董[王韋]は報復にと町民を傷付けてまわり、やがて被害は劉忠良の周辺にも波及。ついには道場から唐寶雲が誘拐され、門下生たちも黒幕である高飛の兄・高飛(2役)の兵隊によって全滅し、劉忠良も捕縛されてしまう。彼らの執拗な拷問を受け、とうとう発狂してしまった劉忠良…仲間の中で唯一生き延びた従者・嘉凱がそれを発見し、リハビリと特訓で正気を取り戻させることに成功する。かくして復活した劉忠良&嘉凱は、高飛一味との雪辱戦へと挑む!

 ハチャメチャな監督主演作を連発する一方で、名作・佳作も放っている劉忠良の主演作です。話としては道場VS悪人の攻防戦だけで進みますが、主人公の挫折と敗北・特訓による復活と逆襲などを手堅く描いており、ドラマ面においても深みのあるものとなっています。
特に出色なのが敵側に登場する董[王韋]で、冷酷だった彼が唐寶雲へと次第に惹かれていくという、単なる悪役に留まらない演技を見せています。董[王韋]の出番は序盤から多く、劉忠良が捕まったあたりからは彼が完全にメイン扱いに昇格していました。散り際はちょっとおざなりでしたが、本作の彼はもうひとりの主役ともいえるポジションのキャラとして輝いていたと思います。
 そして劉忠良・董[王韋]・嘉凱・高飛・王折生といった猛者が揃っていることから解る通り、功夫アクションは濃密な内容となっていました。劉忠良VS董[王韋]の蹴り技合戦、嘉凱が所々で見せるファイトもさることながら、ラストの劉忠良&嘉凱VS高飛は迫力のド突きあいが展開され、充実した勝負を見せています。のちに劉忠良は他作品でも何度か高飛と闘いますが、本作での手合わせを見るとかなり相性が良かったことが伺えます(実際、彼と高飛のバトルはそれまでの戦いとテンションが段違いでした)。
なお、劉忠良は再会した唐寶雲を一度は拒絶しますが、最後にはちゃんとハッピーエンドで終わります。2人で抱きしめ合い、手を取り合って荒野を去り行く男と女……って、倒れたままの嘉凱ほっといていいのかよ!(爆

『十二潭腿』

2010-12-05 23:49:30 | カンフー映画:佳作
十二潭腿
英題:My Kung Fu 12 Kicks/Incredible Master Beggars
製作:1979年

▼この作品はコメディ功夫片ブームの際(なんか最近この手の作品ばっかり紹介しているような・汗)、かつて『帰ってきたドラゴン』で名を馳せた梁小龍(ブルース・リャン)が、夢よもう一度と挑戦したコメディ功夫片である。
梁小龍といえば、凄まじいジャンプと豪快な蹴りが持ち味のパワフルな功夫スターで、『帰ってきたドラゴン』等で印象的な活躍を見せている。そんな彼も流行のコメディ功夫片へ出演することになったのだが、シリアスはもちろんコミカルな演技も得意としていた梁小龍にとって、コメディ作品に順応するのは難しい事ではなかった。加えて身体能力の高さも幸いし、幾つかの秀作功夫片を残しているのだが…その前に少しぐらい痩せてよ!(爆

■しがないスリの梁小龍は、手癖は悪いがケンカの腕はからっきし。今日もスリで失敗してボコボコにされ、友達の韓國材(ハン・クォツァイ)に介抱されながら「やっぱ功夫使えなきゃダメだよなぁ」と愚痴っていたが、突然の転機が訪れた。邪悪な拳士・李海生(リー・ホイサン)の道場破りに遭遇した梁小龍は、李海生の手により重症を負った3人の師匠を匿ったのだ。
身売りされた可哀想な女の子のエピソードを挟みつつ、梁小龍は3人の師匠から功夫を教わる事になった。その結果、いっちょまえの腕前になった梁小龍は、以前自分をボコった賭場の連中にリベンジを決行!大細眼や山怪を思いっきりタコ殴りにするも、梁小龍の養父?だった谷峰(クー・フェン)には簡単にいなされてしまった。
 この谷峰、今は車夫だが昔は最強と呼ばれた"十二路潭腿"の達人だったのだ。特訓は3人の師匠から谷峰にバトンタッチされ、足をとことん鍛えるトレーニングが始まった。基本的な鍛錬からスタートして、手技も足技も満遍なく特訓!特訓!特訓!あまりに修業が長いので特訓だけで話が終わるかと思われたが(笑)ここに来て李海生サイドが動き出した。
実は、梁小龍にやられた賭場の連中は李海生と繋がっており、李海生は息の根を止めそこねた3人の師匠を探していたのである(←推測です)。遂に梁小龍と李海生の直接対決が始まったが、李海生は鐵布杉(少林寺の防御術)を身に付けているので、まったく技が効かなかった。韓國材と谷峰の助けで窮地を脱した梁小龍は、いったん退却して"十二路潭腿"の修業を完遂させると、いよいよ李海生との最終決戦に挑む!

▲ただひたすら特訓!特訓!特訓!な本作だが、なかなか面白い作品である。「ボンクラ青年がヘンテコ修業を経て悪党と闘う」というありきたりな話ながら、ストーリーはテンポ良く進むので冗長さは感じられない。加えて高度な功夫アクションも堪能できるのだから、功夫映画ファンにとっては堪らない逸品となっているのだ(唯一の不満点はヒロインの扱いで、取って付けたように出てきてアッサリ退場するのは、ちょっとどうにかして欲しかったです)。
功夫アクションは梁小龍自ら振り付けており、強敵も出てくるが全編に渡って梁小龍オンステージと化している。この頃は太めの体形になっているが、俊敏な動きと高い蹴りは全盛期の頃からほとんど変わっておらず、やはり香港映画界最強の名は伊達じゃないと改めて驚きました。また、注目の梁小龍VS李海生によるラストバトルも、重厚な手技に対して力強い蹴りで立ち向かう白熱した展開を見せ、お互いの持ち味を生かした名勝負となっている。……でもやっぱり気になるなぁ、動くたびにボテボテしてる梁小龍の腹回りが(涙
蘇化子よりも庶民的で親しみのある谷峰もイイ感じだし、功夫アクションだけなら至高の域に達している本作。ところで、『Gメン75』の梁小龍VS李海生も「足技の梁小龍VS鐵布杉(のような技)を使う李海生」という図式だったけど、本作と何か関係があるのだろうか?気になります。

『オールドマスター 師父出馬』

2010-11-28 23:48:13 | カンフー映画:佳作
「オールドマスター 師父出馬」
原題:師父出馬
英題:The Old Master
製作:1979年

▼色んな意味で珍しい于占元の主演作だ。于占元とは、ご存知ジャッキーやサモハンら七小福を鍛え上げた京劇の師匠で、その道の大家だった方である。
本作が作られた当時、『少林寺への道』を作り出した台湾の巨匠・郭南宏(ジョセフ・クオ)は、コメディ功夫片の流行に乗ろうとジャッキー風の作品を何本か手掛けていた。だが、郭南宏の元には七小福出身の専属スターがおらず、主演に宛がわれたのは李藝民や劉家勇などの非・七小福系スターばかりであった。そこで郭南宏はジャッキーの師である于占元のネームバリューに目を付け、ついでに当時の七小福を引っ張り出すことで、自作に七小福の風を吹き込んだのだ。
 本作が一風変わっているのは、当時としては珍しい海外ロケの現代劇という点である。普通なら流行りのコメディ功夫片を撮ればいいのに、どうして本作はわざわざ現代劇にしたのか?その答えは、同時期に郭南宏が製作していた他のジャッキー風作品の中にあった。
袁小田を担ぎ出した『ドランクマスター・酔仙拳』、黄正利を出演させた『迷拳三十六招』『五爪十八翻』、オードソックスな作風の『雙馬連環』等々…郭南宏がこれまで作ってきたジャッキースタイルの映画は、古典的なコメディ功夫片ばかりだった。そこで「今回も同じ様な作品にすれば印象が重複してしまう」と危惧した郭南宏は、思い切って本作を現代劇にしたのだと思われる。加えて、京劇界の大物である于占元の主演作を撮る以上、中途半端な作品にしてしまったら失礼千万だ。故に、郭南宏は並々ならぬ意気込みで本作を作り上げたものと思われるが、ではその肝心な内容はというと…?

■チャイナタウンの功夫道場を建て直すため、大師匠の于占元がニューヨークに降り立つ場面から物語は幕を開ける。于占元は弟子の指導に務める傍ら、次々と現れる武術家たちと熾烈な闘いを繰り広げていた。だが、実はこの戦いは現地の師父がゴロツキと共謀して仕組んだもので、于占元は格闘賭博の賭け対象にされていたのだ。この事実は、賭けに負け続けていた相手側がブチギレたことですぐに発覚。激怒した于占元は道場を出て行ってしまうが、門下生の1人・雷小虎が彼を呼び止めた。
雷小虎は真剣に功夫を習いたいと思っていた青年で、先の道場では下働きばかりさせられていたらしい。彼は于占元を自宅に招待すると、「オレっちに功夫を教えてくれ!」と強引に弟子入りを志願。彼の情熱に根負けした于占元は、マンツーマンで雷小虎に修行を施していくのだった。
 働き口も見つかり、オフの日は遊びに出かけたりと異国での生活をエンジョイする于占元。実に楽しげな日々が続いたが、例のチンピラ連中は未だに彼らを付け狙っていた。「そろそろ香港に帰る時が来たようじゃのう…」これ以上のトラブルを避けるため、于占元は帰国する決意を固めつつあった。ところが、帰国の当日に雷小龍のいた道場がゴロツキどもにケンカを売られたとの一報が舞い込んできた。
こうなってしまったのは自業自得。そう一刀両断する于占元に対し、雷小虎はそれでも助けに行くべきだと主張。彼の言葉に突き動かされ、于占元と雷小虎は決戦に挑む!

▲展開される物語は特筆されるような内容ではないが、ほんわかと楽しい作品である。本作の目玉はやはり于占元先生にあり、本作では厳しくも茶目っ気のあるお師匠様に扮し、厳格すぎない親しみを感じるキャラクターを好演している。劇中ではコメディ功夫片っぽい修行を雷小虎に課し、彼と一緒に観光やジョギングに興じたりと、その姿はまるで「元気な親戚のおじいちゃん」といった感じで実に微笑ましい(笑
ただ、さすがにお年なのでアクションシーンではスタントダブルが多用され、于占元本人による功夫ファイトはあまり見ることができない(一応、ラストバトルでは本人が見事な棒術アクションを見せてます)。そこで師匠に代わり、後半のアクション不足を補うのが愛弟子・雷小虎だ!雷小虎は李小龍チックな動きとロボットダンス拳を駆使し、並み居る外人格闘家たちと熱戦を繰り広げている。これで、最後に強敵との一騎打ちならもっと盛り上がったんだけどなぁ……。
作品としては小粒ながら、于占元の暖かいキャラと雷小虎のインチキ李小龍アクションが楽しい佳作。やっぱり功夫映画はアクションが1番だけど、キャラクターの魅力も大切なのだと改めて実感しました。

『龍猫燒鬚』

2010-11-08 22:51:12 | カンフー映画:佳作
龍猫燒鬚
英題:Lethal Contact
製作:1992年

●さてこれは珍しい鄭則仕(ケント・チェン)&樓南光(ビリー・ロウ)の監督兼主演作です。
 鄭則仕は性格俳優として幾多の映画に参加している人で、その芸の幅はとてつもなく広い。黄飛鴻の弟子をコミカルに演じた『ワンチャイ/天地黎明』、その黄飛鴻だった李連杰(リー・リンチェイ)と肩を並べた『ターゲットブルー』、そして悪役としてジャッキーに立ちはだかった『新・ポリスストーリー』等々…元々はヒューマンドラマから人気を博したスターなだけに、善役でも悪役でもボケ役でも堂に入った演技を見せており、その卓越した演技力を垣間見せている。
もう1人の監督兼主役である樓南光は、鄭則仕とは対照的にコメディ一筋で生きてきた俳優であり、日本公開された出演作も多い。中でも『霊幻道士』の警察隊長役は強い印象を残していて、「イヤミったらしくてクドいんだけど憎めない」という独自のキャラを確立している。その奔放な芸風はいろんな作品で見られるが、時には『イースタン・コンドル』のようにシリアスな演技を見せることもある。
多芸な人物が多い香港映画界において、自分だけの演技スタイルを貫いた鄭則仕と樓南光。そんな2人がメガホンを取り、劉鎮偉(ジェフ・ラウ)プロデュースによって作られたのが本作なのだ。

 ストーリーはあまりよく解らないが、鄭則仕と樓南光の刑事コンビ+捜査官の林俊賢が、犯罪組織を摘発すべく奮闘する様を描いている。3人は聞き込み調査を続け、どうにか組織に接近しようとするが、協力者が暗殺されるなどして捜査は難航。遂には組織の刺客によって、鄭則仕たちの目の前で林俊賢が殺されてしまう。その後、2人の元に謎の美女・朱慧珊(ジャクリーン・チュウ)が現れ、不審な行動を見せていく……という感じの話である。
粗筋だけ見ると典型的な刑事アクションに思えるが、鄭則仕&樓南光のやり取りで物語を勧めているため、アクションの割合はそれほど多くない。この2人が主役なのでコメディ的な描写もあるが、作風は一貫してシリアスな感じになっているので、ストーリーとギャグとの間にかなりの温度差が生じている。コメディにするのかシリアスにするのか…その辺りを割り切れなかったことが、本作を中途半端なものに至らせてしまったようだ。

 しかし、それでいて本作が佳作のカテゴリに入っているのは、ひとえに作中の功夫アクションが見事だったからに他ならない。
林俊賢や上司として登場する胡慧中(シベール・フー)はもちろん、主役の鄭則仕&樓南光まで格闘シーンに挑んでおり、この2人がラストにタイマン勝負までこなすのだから驚きだ。本作の武術指導は『マジック・クリスタル』の梁小熊(トニー・リャン)で、今回も質の高いアクションを構築している。
 個人的には林俊賢のド派手な立ち回りが良かったが、それらを吹っ飛ばすほどのインパクトを残したのが、敵として参戦しているジェフ・ファルコンだ。ジェフは組織の実働部隊のリーダー?で、登場するなり鋭い蹴りをビシバシと部下に叩きこむ強烈なアクションを披露。続いて林俊賢を接戦の末に射殺し、朱慧珊を助けに来た胡慧中まで一瞬で倒すなど、その無敵っぷりを存分にアピールしている。
クライマックスでは鄭則仕たちと銃撃戦になるが、なんとジェフVS鄭則仕のガチンコバトルという異色すぎる対戦に突入していく(笑)。胡慧中との決着を期待していた身としては少々残念だけど、あまりに突飛なカードなのでこれはこれで面白い。ジェフのクールな悪役っぷりはもとより、彼の女装姿(!)や意外な対戦もあるので、ジェフのファンは要チェックな作品かも…?

『迷蹤霍元甲/迷踪霍元甲』

2010-10-29 20:16:40 | カンフー映画:佳作
迷蹤霍元甲/迷踪霍元甲
英題:Young Hero
製作:1980年

▼コメディ功夫片が全盛を極めていた80年代初頭は、七小福にとって最も忙しい時期であった。七小福とは、かつてジャッキーやサモハンらが在籍していた事で知られる京劇グループで、ここから多くの優秀な人材が巣立っている。
『酔拳』のヒット以降、七小福に着目した映画人たちはこぞって彼らの主演作を作り、第2のジャッキーを発掘しようと躍起になっていた。その結果、サモハンとユンピョウは見事に成功を収めたが、主役級のスターとなれたのは彼らぐらい。その他の七小福は中堅俳優や武術指導家としての地位を確保し、スーパースターにこそなれなかったが、現在も様々な分野で活躍している。
 話を80年代に戻すと、当時は孟元文・呉明才・元徳・呉元俊などの主演作が作られていた。本作でも七小福から2名を主役として迎えているが、元武と元菊が主人公とは随分と冒険をしたものである(爆
元武は主にサモハン映画などへ出演し、『燃えよデブゴン7』で韋白(ウェイ・パイ)と闘った棒術使い…といえばご存じの方も多いはず。元菊は映画出演そのものが少ないが、そのアクションセンスは七小福らしくしなやかで華麗。「カンフー映画大全集」で谷垣健治導演が語ったところによると、今は九龍城の定食屋にいるそうだ。

■本作はそんな七小福の起用だけに留まらず、『酔拳』に出演した多数の俳優を呼び寄せ、『酔拳』のように実在の達人・霍元甲を取り上げたりと、とにかく『酔拳』を意識しまくっている。ただしコメディ要素は控えめで、霍元甲が題材なだけに抗日要素を含んでおり、復讐が復讐を呼ぶシリアスな話になっている。
元武は武術の名門・霍家の末っ子で、功夫の腕もそこそこ止まり。トラブルで元菊と闘ったときも、女性である元菊にまったく歯が立たなかった。同じ頃、元武の家に日本人武術家・黄正利(ウォン・チェン・リー)が現れていた。彼は蒋金や陳流を従え、手下と共に各地の武館を荒らし回っており、元武の父・權永文も敗北を喫してしまう。
 元菊が霍家の家庭教師の孫娘だったと判明する中、その霍家では黄正利との再戦に備え、激しい特訓が続いていた。しかし未熟な元武は修業を許されず、兄の王將たちを尻目に机に向かう毎日だ。ところが、元武に勉強を教えている家庭教師が功夫を知っていて、元菊と一緒に教えてくれた(このへんの展開は倉田保昭の『激突!キング・オブ・カンフー』と同じ)。
權永文は「黄正利の足技に負けたからこっちも足技だ!」と足技の強化特訓をスタート。一方で元武もメキメキと腕を上げ、王將とのコンビネーションで黄正利の手下を撃破した。…が、これがまずかった。激怒した黄正利一派が霍家を襲撃し、なんとか退けたものの、家庭教師や王將など多くの人々が犠牲になってしまう。
 霍家で生き残ったのは元武・元菊・權永文の3人だけとなった。生前の家庭教師の教えを胸に、猛特訓を開始する元武と元菊。その後も色々な出来事を経て、道場も「精武會」と名を変えて再建された。だがしかし、そこに黄正利一派が姿を見せ…。

▲コメディ功夫片ブームの際、実在の人物を扱った作品は幾つか存在したが、本作はその題材選びで失敗してしまった作品である。本作でフィーチャーされた霍元甲は迷踪拳の達人で、精武門を創始した存在としても有名だ。だが、日本人による毒殺説や『ドラゴン怒りの鉄拳』の影響により、彼が関係する映画作品は必ずといっていいほど抗日的な要素を含んでいる。
こんなシリアス一辺倒なキャラでコメディ功夫片が作れるはずもなく、本作では話が進むにつれて次々と人が死んでいく悲惨な物語が展開されている。キャスティングに気を配り、ロケ地も『酔拳』と同じ場所を選んだりと、かなり力を入れているのは解るのだが…いかんせん題材が悪かったとしか言いようがない。
 功夫アクションは權永文や王將が自ら担当しているが、ちょっと立ち回りの繋ぎが粗く、アクションのバリエーションもそんなに豊富ではない。が、やはり七小福出身の元武と元菊の動きには目を見張るものがあり、權永文の力強いテコンドーキック、珍しく完全な悪役である蒋金の動き、そして黄正利のパワー溢れる蹴りの数々など、決めるべき所はしっかりと決めている。
ラストバトルは精武會での乱闘から始まり、元菊が死亡して(彼女まで殺さなくても良かったと思うのだが)元武&權永文VS黄正利の対決となる。なぜかロッククライミングや身の隠し合いなどを交えつつ、最後は捨て身の死闘が繰り広げられるのだが、この闘いもなかなか悪くない。…つくづく題材のミスマッチさが惜しい作品である。

『死亡挑戰』

2010-09-18 23:29:32 | カンフー映画:佳作
死亡挑戰
英題:Bloody Ring/Mandarin Magician
製作:1974年

●十分な実力があるものの、いざ実戦となると発揮できずにボチボチ止まり…そんな不遇な男が香港にいた。彼、李錦坤(ラリー・リー)は剛柔流空手の猛者でありながら、出演する映画はどれもB級ばかり。作品に恵まれないまま映画界をフェードアウトしてしまった悲運の存在である。
『一網打盡』では多くの武師からバックアップを受け、『黄飛鴻四大弟子』では梁小龍(ブルース・リャン)や白彪(ジェイソン・パイ)といった一流スターとも共演した。にもかかわらず、これらの援護射撃は彼を成功に導いていない。結局のところ、李錦坤は1本の傑作に巡り会うことも出来ないまま、70年代の終わりに映画界から去っている。不遇にして不運…そんなイメージがついて回る李錦坤だが、そんな彼が光り輝いた数少ない作品が本作なのだ。

 ストーリーはタイのムエタイ道場が日本人空手家たちから挑戦を受けるという話で、李錦坤は臨時のコーチとして就任した主人公を熱演している。本作のサプライズは、武術指導を当時ゴールデンハーベストに在籍していた洪金寶(サモ・ハン・キンポー)が担当している点だろう。
洪金寶が指導した功夫シーンはどれもスピーディーで、まどろっこしい出来だった李錦坤の過去作品とは一線を画している。中盤はムエタイ一辺倒になってしまうが、ラストでは李錦坤がビシバシと拳を叩き込む豪快なファイトを披露!洪金寶本人を筆頭に、林正英や陳龍といった"ご存じの顔"も絡み役で出演していて、彼らとのバトルもサマになっている。
このほかにも、味方サイドには『聾唖剣』の馬海倫(ヘレン・マ)や火星(マース)が名を連ねており、総じてアクションの質は高い(道場生として元華の姿も確認できる)。これで物語がしっかりしていれば李錦坤の最高傑作となったのだが…そう、本作が傑作になりきれなかった最大の理由は、根本となるストーリーそのものに原因があったのだ。

 本作は当初、主役である李錦坤の視点で始まる。色々あってコーチを引き受けた彼は、ムエタイ道場のエース・ウェイティア(演者不明)と出会った。彼には眼の病を患っている恋人がいて、手術には莫大な費用が必要らしい。その事が気になって修業に身の入らないウェイティアに対し、日本人たちは大金を手に八百長を依頼してくるが…と、こんな感じで中盤からは完全にウェイティアが主役となり、李錦坤の出番がほとんど無くなってしまう(!)のである。
この八百長試合に李錦坤が関わっていれば無理のない話になったと思うのだが、当の李錦坤は終盤まで八百長には全く絡んでこない。この話の流れを考えれば「八百長に関与したウェイティアは因果応報で命を落とし、彼の無念を晴らす為に李錦坤が闘う」という展開になりそうなところだが、まさか全く正反対のラストにしてしまうとは驚きだ。でも、この結末だと李錦坤は無駄死にじゃあ…(爆

そんなわけで、今回も傑作になれる機会を逸した李錦坤主演作だが、李錦坤と洪金寶のコラボレーションが実現しただけでも十分価値のある作品だった。…と言いたいところだけど、こうもB級続きだと李錦坤があまりにも報われなさすぎる。もしかしたら、本作ような煮え切らない作品に最も苦しめられていたのは、他ならぬ李錦坤自身だったのかもしれない。

『痴情快婿/道天驕/賊探世家』

2010-09-15 22:07:37 | カンフー映画:佳作
痴情快婿/道天驕/賊探世家
英題:Fun And Fury
製作:1992年

●黎明(レオン・ライ)と周慧敏(ビビアン・チョウ)はラブラブカップルで、共に将来を誓い合った仲であった。しかし、彼女の父親でありマフィアのボスだった鄭則仕(ケント・チェン)は、知らない男を娘に近づけたくない&黎明が捜査官なので近寄らせたくないご様子。そこで彼はシンガポールから帰国して間もない周慧敏を強引に連れ帰り、黎明は慣れない土地に1人で取り残されてしまった(黎明はシンガポール華僑?)。
旧友で功夫道場の先生・陳勳奇(フランキー・チェン)からは避けられてしまい、女スリのせいでトラブルに巻き込まれたりと災難続きの黎明。とりあえず陳勳奇のところに転がり込んだが、一方で鄭則仕は娘から男を引き離そうと躍起になっていた。鄭則仕の差し金によって、浮気の濡れ衣を着せられた黎明は周慧敏と破局寸前にまで追い詰められてしまう。
 このまま2人は別れてしまうかと思われたが、見かねた母親?の手引きで周慧敏は事実を把握。陳勳奇の取り成しもあって、黎明たちは晴れて復縁を果たしたのだった。その頃、鄭則仕の対抗馬である徐少強(ノーマン・ツイ)の組織が、鄭則仕一家の壊滅を目論んで動き出していた。敵は次々と鄭則仕一家を襲撃し、遂には周慧敏が捕らわれの身に。黎明と陳勳奇は敵の根城へ突入するが、周慧敏はダムの壁際に吊るされて絶体絶命の状況だ。果たして、黎明は周慧敏を助け出す事が出来るのか!?

 当ブログでは珍しい黎明の主演作である。…ってホントに珍しいなぁ。うちのブログでは普通のドラマやコメディはもちろん、食わず嫌いで香港ノワールもレビューしたことが無いので、黎明はもちろん周潤發(チョウ・ユンファ)や張國榮(レスリー・チャン)といった大物の名前はほとんど出てきません。劉華(アンディ・ラウ)ならたまにあるんだけど…まあいいか(爆
この作品は香港映画界でも有数の才人・陳勳奇の監督作で、前半はロミオとジュリエットな恋物語、後半はマフィアとの派手な攻防戦が繰り広げられている。前半と後半で作品のカラーが違っている所はサモハン映画を彷彿とさせるが、どちらのパートもテンポ良く進むので特に不満はナシ。ラストはちゃんとハッピーエンドだし、邪魔臭かった鄭則仕と側近のハゲも痛い目に遭うので、視聴後の後味も悪くない。全体的な出来もなかなかのものと言えるだろう。
 全編に渡って展開される功夫アクションは馮克安(フォン・ハックオン)が指導していて、今回もいいファイトシーンを作ってくれている。この功夫アクションで活躍するのは黎明ではなく、監督も兼ねている陳勳奇が全面的に担当。さすがは幼少時から功夫を習い、『ドラ息子カンフー』で元彪(ユン・ピョウ)とガチバトルをした陳勳奇だけあって、動きは軽快そのものだ。
彼の一番の見せ場はラストのVSキム・マリー・ペン戦で、手足をアーマーで固めたキムに棍棒で立ち向かう陳勳奇との攻防戦がなかなか面白い。もちろん黎明は黎明で頑張ってるけど、個人的には陳勳奇の方に目が行っちゃうのも事実。やはり陳勳奇も土壇場で「ここは俺が主役だ!」と監督権限を発動させちゃったのでしょうか(笑
 ちなみに陳勳奇は自身の監督作に外人ファイター(マーク・ホートンやジェフ・ファルコンなど)を起用する事が多いのだが、陳勳奇にとっては地元の人よりコッチの方が相性良かったのかな?とりあえず動作片としての見せ場が充実してるし、黎明のラブストーリーとしても良い感じなので、今度は陳勳奇の監督作もチェックしていきたいと思います。