陰陽血滴子
英題:The Fatal Flying Guillotines
製作:1977年
▼さて、ここまで黄家達(カーター・ウォン)の正統派な出演作をいくつかピックアップしてきましたが、彼は珍妙なB級映画にも幅広く顔を見せています。そこで今回は黄家達が出演した珍品の中で、最もヤバいと言えるかもしれないこの作品の紹介です(笑
本作はタイトルにもなっている暗殺武器・血滴子が大々的に登場します。別名を空とぶギロチンと言い、相手の頭に被さって首を刎ねてしまうという恐ろしい武器です。これまで様々な功夫映画で猛威を振るってきた血滴子には、大きく分けて2つの種類が存在しました。1つはショウブラザーズ作品『空とぶギロチン』に代表される鉄で成型されたタイプ、もう1つは『片腕カンフー対空とぶギロチン』で有名な携帯タイプです。
『死霊のえじき』『Kill Bill』で世界進出を果たし、ショウブラ版のリメイク作『血滴子』の公開も控えている血滴子。本作ではどちらのタイプが登場するか気になるところですが…?
■功夫使いの青年・黄家達は母の病気を治すため、妙薬の書を収蔵している少林寺を訪れていた。門外不出の書を借り受けるべく、彼は徒手格闘や棒術陣などの試練に次々とチャレンジ。最後の高僧・陳少鵬との対戦も、二度目の挑戦でようやくクリアする事ができた。ところが、帰宅途中に黄家達が謎の刺客に襲われ、さらには妙薬を飲んだ母が急死してしまったのだ。
当然、黄家達は激怒して少林寺に乗り込んできた。館長が調べてみると、清朝のスパイであった陳少鵬の仕業だということが発覚(黄家達を襲った刺客もこの男)。追い詰められた陳少鵬は自害し、彼の死を知った黒幕の第4皇子・陸柱石は悔しさに顔を歪めるのだった。
この陸柱石、実は今回の一件とは別にある物を欲していた。2つの血滴子を操る陳星(チン・セイ)が持つ、重要書類を捜し求めていたのである。陳星は近付く者なら誰だろうと首をハネてしまうという恐ろしい男だ。張力・高強・徐忠信ら武芸者たちは陳星討伐隊を組み、黄家達もなぜかこれに参加した。しかし洞窟に仕掛けられた罠やダブル血滴子によって、仲間たちは黄家達を残して全滅を喫してしまう。
その翌日、黄家達に先んじて陳星と接触していた朝廷の使者たち(うち1人が孟海)が、和平を結ぶフリをして陳星に襲いかかっていた。連中はすぐに蹴散らされたが、特殊な器具によって血滴子は封じられてしまう。これ幸いと陳星に挑む黄家達だが、この戦いで最後に笑ったのは意外な人物だった…。
▲台詞やナレーションが多く、ちょっと理解しにくい部分が多々ありましたが、噂に違わぬド直球のイロモノ映画でした(笑
まずもって凄いのが本作に登場する血滴子です。漆黒の鋼鉄製ボディに大きな突起が生えており、先述したどのタイプとも違った外見をしています。そして、装備された首狩り用の刃は機械的な音を立てて高速回転し、投げれば慣性の法則を無視して獲物を追い続ける追跡機能まで装備!もうこれ血滴子じゃないよ!(爆
しかもこのアイアン血滴子(勝手に命名)、出し惜しみをせずにポンポン繰り出されるので、首を飛ばされる犠牲者の数も相当数に上ります。ストーリーはまたも雍正帝を扱った話のようですが、アイアン血滴子のインパクトがあまりにも強烈過ぎるため、最後のどんでん返しもあまり印象に残りませんでした。
しかし、功夫シーンについてはベテラン武術指導家である陳少鵬の手により、水準以上の完成度を保っています。どのファイトもスピード感のある殺陣に仕上がっていて、ラストのアイアン血滴子を交えた黄家達VS陳星も実にスリリングです。でも、最後の結末は後味が悪かったなぁ…。
本作のようなB級映画からクラシカルな武侠片まで、黄家達は多くの作品で経験を積みました。そうして大成した彼は、恩師である郭南宏(ジョセフ・クオ)の新作へ満を持して出演します。黄家達と郭南宏、そして期待の武術指導グループ・袁家班。彼らが出会う時、台湾の功夫映画に新たな歴史が刻まれるのです(次回へ続く!)
英題:The Fatal Flying Guillotines
製作:1977年
▼さて、ここまで黄家達(カーター・ウォン)の正統派な出演作をいくつかピックアップしてきましたが、彼は珍妙なB級映画にも幅広く顔を見せています。そこで今回は黄家達が出演した珍品の中で、最もヤバいと言えるかもしれないこの作品の紹介です(笑
本作はタイトルにもなっている暗殺武器・血滴子が大々的に登場します。別名を空とぶギロチンと言い、相手の頭に被さって首を刎ねてしまうという恐ろしい武器です。これまで様々な功夫映画で猛威を振るってきた血滴子には、大きく分けて2つの種類が存在しました。1つはショウブラザーズ作品『空とぶギロチン』に代表される鉄で成型されたタイプ、もう1つは『片腕カンフー対空とぶギロチン』で有名な携帯タイプです。
『死霊のえじき』『Kill Bill』で世界進出を果たし、ショウブラ版のリメイク作『血滴子』の公開も控えている血滴子。本作ではどちらのタイプが登場するか気になるところですが…?
■功夫使いの青年・黄家達は母の病気を治すため、妙薬の書を収蔵している少林寺を訪れていた。門外不出の書を借り受けるべく、彼は徒手格闘や棒術陣などの試練に次々とチャレンジ。最後の高僧・陳少鵬との対戦も、二度目の挑戦でようやくクリアする事ができた。ところが、帰宅途中に黄家達が謎の刺客に襲われ、さらには妙薬を飲んだ母が急死してしまったのだ。
当然、黄家達は激怒して少林寺に乗り込んできた。館長が調べてみると、清朝のスパイであった陳少鵬の仕業だということが発覚(黄家達を襲った刺客もこの男)。追い詰められた陳少鵬は自害し、彼の死を知った黒幕の第4皇子・陸柱石は悔しさに顔を歪めるのだった。
この陸柱石、実は今回の一件とは別にある物を欲していた。2つの血滴子を操る陳星(チン・セイ)が持つ、重要書類を捜し求めていたのである。陳星は近付く者なら誰だろうと首をハネてしまうという恐ろしい男だ。張力・高強・徐忠信ら武芸者たちは陳星討伐隊を組み、黄家達もなぜかこれに参加した。しかし洞窟に仕掛けられた罠やダブル血滴子によって、仲間たちは黄家達を残して全滅を喫してしまう。
その翌日、黄家達に先んじて陳星と接触していた朝廷の使者たち(うち1人が孟海)が、和平を結ぶフリをして陳星に襲いかかっていた。連中はすぐに蹴散らされたが、特殊な器具によって血滴子は封じられてしまう。これ幸いと陳星に挑む黄家達だが、この戦いで最後に笑ったのは意外な人物だった…。
▲台詞やナレーションが多く、ちょっと理解しにくい部分が多々ありましたが、噂に違わぬド直球のイロモノ映画でした(笑
まずもって凄いのが本作に登場する血滴子です。漆黒の鋼鉄製ボディに大きな突起が生えており、先述したどのタイプとも違った外見をしています。そして、装備された首狩り用の刃は機械的な音を立てて高速回転し、投げれば慣性の法則を無視して獲物を追い続ける追跡機能まで装備!もうこれ血滴子じゃないよ!(爆
しかもこのアイアン血滴子(勝手に命名)、出し惜しみをせずにポンポン繰り出されるので、首を飛ばされる犠牲者の数も相当数に上ります。ストーリーはまたも雍正帝を扱った話のようですが、アイアン血滴子のインパクトがあまりにも強烈過ぎるため、最後のどんでん返しもあまり印象に残りませんでした。
しかし、功夫シーンについてはベテラン武術指導家である陳少鵬の手により、水準以上の完成度を保っています。どのファイトもスピード感のある殺陣に仕上がっていて、ラストのアイアン血滴子を交えた黄家達VS陳星も実にスリリングです。でも、最後の結末は後味が悪かったなぁ…。
本作のようなB級映画からクラシカルな武侠片まで、黄家達は多くの作品で経験を積みました。そうして大成した彼は、恩師である郭南宏(ジョセフ・クオ)の新作へ満を持して出演します。黄家達と郭南宏、そして期待の武術指導グループ・袁家班。彼らが出会う時、台湾の功夫映画に新たな歴史が刻まれるのです(次回へ続く!)