指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『泰山木の木の下で』

2019年12月14日 | 演劇
三越劇場で、民芸の『泰山木の木の下で』を見た。作者の小山裕士の作品では、『黄色い波』を早稲田の劇研でやった事がある。
亡くなった役者山本亮の強い推薦でやることになったもので、この『泰山木の木の下で』を見てみると、『黄色い波』は随分と穏健な劇だなと思う。
もちろん、時代的な変化もあり、この劇は戦後早い時期に書かれたものなので、原爆と戦争への強い反対意識がある。
これを現在で見ると、その評価についてはいろいろあるだろうが、それよりも興味深いのは主人公のお婆さん(日色ともゑ)が闇の堕胎をやっていたことである。

           

彼女の方法は、堕胎をしたい女性に漢方薬を与えて流産をさせるものだった。
こんなことができるのかと思うだろうが、江戸時代でも人口中絶は全国で行われていたことだった。
民俗学者の宮本常一によれば、多くのへき地、農村では、堕胎や間引きは横行していたことだったそうだ。
そうしないと貧困な地帯では、大人が生きていけないからで、全国で行われていたのだそうだ。
この婆さんの役は、北林谷栄が持ち役としていたそうで、どこか何を考えているのか分からない北林には適役だっただろう。
対して、日色はまじめなので、この女性の持つ複雑さは表現されていないように思えた。
渋谷幹彦のギターと千葉茂則の唄が良かったが、若妻を演じた神保有輝美が美人なのには驚く。


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