指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

石阪君について

2022年06月15日 | 横浜
2013年に猪瀬直樹が都知事を辞職したとき、私は次のように書いた。
 
猪瀬直樹都知事がついに辞職したが、テレビを見ていて横浜市役所には、彼に似た人がいたことを思い出した。
                 
今は、町田市長として二期目の町田市政にご尽力されている石坂丈一氏である。 石阪氏は、横浜市で主に企画部門を歩み、中田宏氏が2002年に高秀秀信氏を破って横浜市長に就任されたとき、彼は若手改革派として中田市長に大変に重用され、2004年には57歳で港北区長に任命された。
だが、2006年3月、定年直前に退職され、出身地である町田市の市長選挙に、自民・公明の支持で出て、見事当選された。
石阪家は町田の名家だそうで、
「北村透谷の妻・石阪ミナは、俺の先祖なんだよ」と、共に経済局にいたとき彼から直接聞いたこともある。確かに石阪家は三多摩の名家の一つで、明治初期の自由民権運動の支持者でもあったので、民権運動からの挫折者の北村透谷を支え、娘の石阪ミナが彼と結婚したのも故あることだった。
 
だが、すでに忘れられているだろうが、2003年の選挙の時に横浜で総決起大会(「石阪丈一さんを励ます会」)を開催し、その際に横浜市役所職員に参加の呼びかけをしていた事が、政治資金規正法違反になった。
この時、私にも呼び掛けの文書が来て、石阪のことは彼が人事課の職員時代からよく知っていたので、金は出したが、当日の会には行かなかった。
理由は簡単で、彼はパシフィコ横浜では私の前任者で、会社の改革に努力され、そのことを実績として大いに誇っていて、彼から引き継ぎを受けたものとして、その関係書類を読み「到底私にはできないな」と思っていた。
だから、その決起集会は、パシフィコ横浜だろうと思っていた。
だが、大会の会場は新横浜のホテルだった。
こういうのを言行不一致と言うのだろうが、自分の実績の会議施設で決起大会を開かずにどこでやると言うのだろうか。
後に、「その日パシフィコ横浜は満杯だったので、できなかったためか」とパシフィコの担当者に聞くと、予約申し込みはまったくなかったとのこと。
 
さて、何が問題となったかと言えば、総決起大会の呼びかけを横浜市の職員に対して行ったことが、政治資金規正法に抵触したのである。
それは、「地位利用」で、国の高級官僚が、かつて参議院全国区選挙等に出る時、庁内の部下や関係団体を動員して運動をしたことがかつてよくあり、それを規制するための法令だった。
実は、この時、私も寄付者の一人として名前が載っていたので、神奈川県警捜査4課の参考人としての取り調べを受けた。
それは、金沢区区役所の隣の金沢署の中で行われ、二人の刑事からの取調べで大変興味深い、得難い体験で、こうした貴重な体験を与えてくれた石阪氏には、大いに感謝している。
刑事の話では、その大会に役所以外の外部の者が一人でもいれば、地位利用は成立しなかったのだが、全員役人だったので、地位利用になったとのこと。
日頃、「民間的に」を口にしていた石阪氏にとって、本当に応援してくれる人は、民間ではなく市役所の役人しかいなかったというのも実に皮肉な話だが。
この政治資金規正法の規制は、普通に政治家はよく知っていたようで、この後、公明党の幹部に聞いたところ、「それは常識だよ」と言われた。
 
石阪氏も優秀な官僚、行政職員で、企画能力に優れ、中田宏市長の下でも大活躍されたが、政治家としての知識は欠けていたので、この地位利用は知らなくて、罰金の略式命令となった。
 
この事件の後、中田前市長が取った行為は非常におかしなものだった。
「こうした事件が起きた原因は、横浜市職員にコンプライアンス意識が不足していたためだ」とし、事件の責任を石阪を重用し、町田市長選挙の時は推薦もした自分ではなく、部下に転嫁するものになった。
この頃から、中田宏市長の「堕落」は始まったと思われ、その原因を作った人物として石阪氏の責任は非常に大きいと私は思う。
 
さて、猪瀬直樹は、「自分は政策には通じていたが、政務、つまり政治の世界についてはアマチュアだった」との言い訳をした。
だが、政治の素人だろうとプロだろうと、5,000万円の大金を理由もなくもらうことは、人間として大問題であることは言うまでもない。
 
さて、猪瀬直樹と石坂丈一氏には類似している点があった。
それは猪瀬は信州大学、石阪氏は横浜国立大学というかつての「国立二期校」を出ているのは、なにか関係があるのだろうか。
聞くところでは両氏とも、大学在学中はその大学の全共闘幹部として活躍されたそうである。
来年2月には、町田市長選挙になるはずだが、古い知り合いの一人として石阪丈一氏のご健闘を心からお祈りするものである。

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